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帰国したいのに帰国できない方へ
日本のみならず,世界の情勢として人の移動,物の移動を制限する状況が長く続いています。
新型の感染症の影響によって,各国も国境を閉鎖したり,出国・入国の禁止や制限を設けていたりします。
日本に在留する外国人の方の中でも,「帰国したいのにできない」という方や,「在留期限が過ぎて帰国したいのに母国へ帰る飛行機がない」という方もいるかもしれません。
現在,日本政府は,「本国等へ帰国が困難な外国人に係る取り扱い」を発表しています。
これは,母国等に帰りたくても帰れない状況が続いている方への救済の措置になります。
内容としては次の2点です。この救済の措置は,入国制限や出国制限などによって母国等に帰れない期間が続いている間,継続することとされています。
短期滞在の在留期間の延長
短期滞在で日本に在留している方は,90日在留期間を延長できます。
もともと,短期滞在の在留資格については特別な事情がない限り在留期間の延長は認められていませんでしたが,帰国が困難な状況が続いている間オーバーステイとしないために,在留期間の延長が認められます。
但し,自動で延長されるものではありませんので,90日おきに手続きが必要です。手続を忘れてしまうとオーバーステイになってしまい,これから先5年間,もしくは10年間,日本に再入国できなくなってしまう可能性があるため注意しなければなりません。
「特定活動」への在留資格の変更
元々帰国する予定だったため,日本での仕事を辞めてしまった方や学校を辞めてしまった方については,在留資格を「特定活動」へ変更することが出来ます。
特定活動というのは,法律で定められている活動以外に個別の活動を指定して在留を認めるというものです。
そして,特定活動の在留資格の場合には,通常働くことは認められていませんが,
・「留学」の在留資格の方(元々留学生で出国準備中だった方も含む)
・「技能実習」,もともとが「特定活動(9号,12号,32号,35号,42号)」だった方
については,週28時間までのアルバイトも認められるようになりました。
これにより,元々の在留資格が取り消されたり資格外活動として検挙されたりするリスクを下げることが出来ます。なお,それ以外の在留資格の方であっても特定活動の在留資格へ変更することはできますが,その期間働くことはできません。生活費を得るためにアルバイトの必要がある場合には,資格外活動許可を得る必要があります。
特定活動に変更した場合の在留期間は6か月,ないし3ヶ月です。
ご自身として在留資格を変更する必要があるのかどうか分からない方や不安な方は一度弁護士にご相談ください。
留学生は卒業後,日本に残れるのか
今回は,留学の在留資格で在留する外国人の方が,学校を卒業した場合について解説します。
仕事を休んだら/退職したら,帰国しないといけない?
このページは,就労ビザ(在留資格)で日本に在留する方が,退職する場合や休職する場合に,在留を続けられるのかどうかを解説します。
就労ビザ(在留資格)について
就労ビザとは,日本で働くことを目的とした在留に認められる在留資格です。
就労ビザと呼ばれる在留資格には,経営・管理(以前の投資・経営の在留資格),法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,特定技能,技能実習,高度専門職が挙げらます。これらの在留資格は,それぞれに対応した職種で働くことを前提として認められている在留資格です。
そのため,「経営・管理」の在留資格で日本にいる方が本来の業務以外で教育の職に就いていたり,通訳業務等についていたりすると,資格外活動として刑罰や在留資格の取消処分が科される可能性があります。在留資格外の活動を行うことについては,出入国管理法において禁止され,刑事罰や行政処分の対象になっているのです。
では,「在留資格に沿った活動をしなかった」という場合には,どうなるのでしょうか。
具体的には退職するという場合,休職するという場合を考えてみます。
退職したら在留資格はどうなる?
退職することによって直ちに出国を命じられたり,在留資格が取り消されるということはありません。
出入国管理法には,就労ビザで在留している外国人が日本で退職した場合には,在留資格が取り消される可能性があることを定めています。
それが,在留資格の取消について定めた,出入国管理法22条の4という条文です。
出入国管理法22条の4
第6号 別表第1の上欄の在留資格をもつて在留する者が,当該在留資格に応じた同表の下欄に掲げる活動を継続して3月(カッコ内省略)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)。
元々認められた在留資格に関する活動を継続して3ヶ月以上,正当な理由なく,行わなかった場合には,在留資格を取り消すことがあると定めています。
そのため,退職して3か月以上働かないで何もしないで日本で生活していた場合には,在留資格が取り消されることがあるのです。
ここで重要なのは,「継続して3か月以上」活動をしていないこと,「正当な理由」がなければ在留資格は取り消されないということです。
ですので,退職してから3か月以内に別の同じ職に就いていれば(もちろん,在留資格で認められる範囲の職に限ります)在留を続けられますし,働いていない期間の累計が3か月を超えてしまっても継続していなければ問題はありません。なお,あまりに休みがちだと会社を解雇されてしまったり,在留期間の更新申請が不許可となってしまう可能性もありますので,注意しましょう。
また,正当な理由がある場合であれば在留資格は取り消されません。例えば,自主退職した後も転職活動を続けている場合や,会社が倒産してしまったため止むを得ず解雇されてしまい新しい仕事を探しているような場合,本人や家族が病気などのため一時的に仕事を辞める場合等,本人が仕事を続けたくても続けられないようなやむを得ない事情がある場合であれば,正当な理由があると見られます。
退職したり転職したりしても,在留資格が直ちに変わるわけではありません。ですので,在留資格で認められている範囲外の仕事は資格外活動になりますし,転職するまでの間の繋ぎとして短期間のアルバイトをした場合であっても資格外活動になる可能性があります。
☆退職後に他業種に転職する場合には在留資格の変更申請を忘れずに行いましょう。
休職したらどうなる?
休職している場合にも「継続して3か月以上」,「正当な理由なく」働いていないという場合かどうかによって,在留資格が取り消されるかどうか変わります。
例えば,旅行のために1ヶ月休みをとったという場合であれば「継続して3か月」になっていませんし,病気等の療養のために一時的に仕事を休んでいるという場合には正当な理由があるといえます。本人や家族が入院する必要がある場合等についてはそもそも在留資格を取り消さないという運用がなされています。
今,問題となっているのは,感染症等によって,会社の都合により出社できなくなった場合についでです。
会社の都合で出社できない場合,例えばリモートワーク(在宅勤務)となっている場合等も,きちんと働いているものと考えられますので,在留資格の取消とはなりません。在宅勤務をしていたことの証拠をとっておくためにも,会社でのメールや通話の履歴,Web会議などの履歴はある程度保存しておくと安全です。
更に,リモートワークのみならず,会社都合での休職となっている場合も,「正当な理由」があると言えるでしょう。会社都合での休職の場合には,労働基準法の基準に従って(平均賃金の6割以上),休業手当が支払われなければなりません。但し,会社都合の休職であっても,その間に副業等をする時には,資格外活動にならないように注意しなければなりません。本来の在留資格の目的外の活動を許可なく行ってしまうと,資格外活動として在留資格が取り消されたり,刑罰を受けたりする可能性があります。
まとめ
上記の内容をまとめると,次のようになります。
☆退職する場合には次の職が決まっているかどうか,どんな業種の仕事かによって,在留資格に必要な手続きが異なります。
☆休職する場合にはどんな事情によるのか,どれくらいの期間休むのかによって,在留資格の取消の可能性が変わってきます。
退職/休職の際の手続きに不安がある方は,在留資格を取り消されないためにも,また,今後の在留に関する手続きに禍根を残さないためにも,早めに弁護士などの専門家に相談されると良いでしょう。
不倫と在留資格
このページでは,日本で不倫をした外国人の方や,配偶者の外国人の方が不倫したという方に向けて,不倫が在留資格に影響するのかどうか?と解説します。
なお,このページにおいて「不倫」とは,法律上結婚している人が配偶者以外の人と交際したり情交を結ぶ(性交等をする)ことを指すとします。
配偶者の在留資格について
日本人の方と結婚した外国人の方は,「日本人の配偶者等」という在留資格を取得することが出来ます。
「日本人の配偶者等」の在留資格は,在留中の活動に制限がなく(違法行為でない限り日本でどんな仕事もできます),結婚が継続している限りは在留期間の更新も認められやすく,とても安定した在留資格です。日本人と結婚した方で,ある程度の期間日本に在留することを希望する場合には,「日本人の配偶者等」へ在留資格を変更することが良いでしょう。
この在留資格は,「日本人と結婚していること」を前提として認める在留資格です。そのため,離婚した場合等,すでに結婚生活を行っていない場合には在留資格を認める前提がなくなってしまいます。結婚生活が行われていない状態が6か月以上継続し,在留資格を変更していないままでいると,在留資格が取り消されてしまうことになります。在留資格が取り消されると,30日間の出国準備期間が設けられ,その間に本邦から出国しなければならなくなります。
配偶者の在留資格と不倫 ~外国人の方が不倫してしまった場合~
※この項は外国人の方の方向けの解説です。
不倫をしてしまった場合,在留資格を取り消されてしまうのでしょうか。結論から言うと,すぐに取り消されるわけではありません。
在留資格が取り消されるかどうかは,日本人の方との結婚生活が続いているかどうかによって決まります。
不倫関係が数年に及んでいる場合や,夫婦で別居して家計が別々になっているような場合,お互いに離婚に向けた話し合いや調停が進んでいるような場合であれば,結婚生活は既に破綻して修復する可能性もないとして,在留資格が取り消されたり,更新が不許可となる可能性もあります。また,不倫相手との関係を日本で続けるために離婚しないだけ,というような場合も,日本人との蹴痕生活が続いていないと判断される可能性があります。
一方,そうではない場合,例えば,夫婦として同居を続けている場合や不倫があったとしても結婚関係を修復していく姿勢である場合には,引き続き在留資格を認められる可能性もあります。
不倫自体は在留資格を取り消す理由にはなりませんが,結婚生活の実態次第では在留資格が取り消される可能性があるということになります。
宗教間や文化によって「結婚」に対する考え方が異なるのは当然ですが,日本で不倫をするということは,それだけのリスクがある行為ということになります。
配偶者の在留資格と不倫 ~配偶者である外国人の方が不倫してしまった場合~
※この項は,不倫をしてしまった外国人の方の配偶者の方向けの解説です。
男女問わず,外国人である配偶者の方が不倫してしまった場合,当該外国人の方の在留資格がどうなるのかというのは上記のとおりです。
そして,不倫をされた日本人の方としては,このまま結婚生活を続けるのか,離婚を考えていくのか,が大きな問題になります。これは日本人同士の結婚でも同じかもしれませんが,外国人の方と結婚している場合には,
①相手の在留資格
②慰謝料の請求方法
③子供がいる場合には子供の親権や国籍
の問題があります。
結婚を続ける方向であれば,相手の在留資格の保持や更新申請の許可に向けた準備が必要になります。上記のとおり,不倫があったことのみで在留資格が取り消されたり強制退去になることはありませんが,資格の更新が不許可となったり,更新の期間が短くなったりする可能性があります。
一方,離婚する方向なのであれば,相手が日本から大挙してしまう可能性があるので,②,③についても考えなければなりません。
このページでは①に限って解説をしていますが,②,③についても簡単に触れると,いずれも相手が日本にとどまっているうちに請求や手続をしておく方が良いでしょう。相手が帰国してしまった場合,日本の裁判所で手続きができなくなってしまったり,適法される法律が変わってしまうことがあるためです。
まとめ
今回は,不倫の在留資格に対する影響について解説してきました。
既にふれた通り,「結婚」や「不倫」に対する考え方については,個々人の思想や信条によって異なることは確かです。しかし,日本の法律の仕組みというのも,ここでお話しした通りです。
昔日本には,「不倫は文化」という言葉もあったようですが,外国人の方の在留資格の関係で言うと,「不倫はリスク」です。
「日本人の配偶者等」の在留資格はとても安定しており,日本での在留を希望されるのであれば保持しておきたいものです。「日本人の配偶者等」の在留資格についてご不安のある外国人の方,日本人の方は一度ご相談下さい。
外国人の社会保険
日本に住んでいる外国人の方に対して,日本の各種社会保険制度は適用されるのでしょうか。
また,日本で働く外国人の方は,日本の保険料を払わなければならないのでしょうか。
外国籍の方だけでなく,外国人を雇い入れようとする事業主の方も,気になる点なのではないでしょうか。
そんな,外国人の方々に対する日本の社会保険制度について解説します。ここでは主に,健康保険と国民年金(厚生年金)について詳しく解説します。介護保険,労災保険,雇用保険の他,年齢や状況によっては種々の制度がありますが,個別の取り扱いについて不明点がある場合には各機関の窓口,専門家へ相談することをおすすめします。
日本に滞在する外国人の戸籍や住民票はどうなる?
このページでは,日本に在留する外国人の方の戸籍や住民票の扱いについて解説して,日本国内で必要となる,戸籍や住民票に関連する手続についてご説明します。
日本でいう「戸籍」や「住民票」のように国民や市民を把握,管理するシステムは,国や文化によって異なります。
今回は,日本における外国人の方の扱いについて,解説したいと思います。
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