元カレ,元カノを日本から追い出せる?

日本に住む外国人の方も増えており,在留資格を持って日本に滞在する外国人の数は,統計上,約300万人弱ほどになります。これは日本の人口の,約2%に該当します。単純計算で考えても,50人に1人は外国人,小中学校の2クラスのうち1人は外国籍であってもおかしくないと言えます。

したがって,比率だけで考えても結婚する25組に1人は国際結婚ということになります。もちろん,人口比や地域差などは考慮しない,あくまで数字の上での話です。

結婚があれば結婚前の恋愛関係(デーティング期間も含む)や,離婚もあるわけです。交際していたものの,結婚せずにお別れしてしまったり,浮気や不倫だってありうるでしょう。

参考までに外国人の不倫の問題点について解説した記事もあります。

中には,別れ際の恨み辛みから「あの外国人を日本から追い出してやりたい!」とまで思う人がいるかもしれません。しかし,そのようなことは可能なのでしょうか?

今回は,素朴な,カジュアル(?)な話題に解説してみたいと思います。

まず,結論から言ってしまいますが,一私人が外国人の方を日本から追放するために訴えるということはできません。お気持ちは分からないでもないのですが,外国人の方であっても移動の自由が憲法上も保障されているため,国家権力が法律に従って手続する場合を除いては,日本から追い出されないということになります。婚前交際をしていた方の浮気や婚約破棄があったとしても,在留資格が取り消されたり強制送還されたりすることはないのです。

国外退去を求める民事訴訟というものも提起することはできないでしょう。ただし,場合によっては日本人と交際等していた外国人が在留資格を失う可能性があります。

 

1つ目の場合としては,日本人と結婚していた場合です。日本人の配偶者の在留資格を取得していた外国人の方が離婚すると,在留資格の前提となった家族関係が消滅することになります。離婚後,外国人の方が新しく在留資格を取得しない限りは日本に在留し続けることはできなくなるため,退去せざるを得なくなります。

※日本法では,一方の当事者だけが「離婚したい!」と言っても離婚はできません。合意の上で離婚ができないとなれば,まずは調停の手続きを踏んで,裁判で離婚を求めることになります。

※※似たようなパターンですが,日本人の方が,「外国人と偽装結婚していた」と主張される場合があります。本当に偽装結婚だったという場合もありますが,別れ間際のネガティブな感情のあまり,大袈裟に言ってしまう方もいます。

本当に偽装結婚,つまり外国人の方が日本での在留資格欲しさのためだけに結婚していたという場合だったとすると,外国人の方は在留資格が取り消されます。しかし,本当に偽装結婚だったとなると,日本人の方も刑罰に問われることになります。一方は偽装結婚のつもりだったけれども,もう一方は本物の結婚だったという場合は考えにくいからです。

結婚する男女の片方が「この人と結婚生活をしよう」と考えてその通りに行動していたのであれば,それに付き合っていたもう片方にも「結婚生活をしよう」という意思がなかったとは認められにくいです。また,外国人の方が日本人と結婚する時に,「この人と結婚すれば安定的なビザが取得できる」と考えていたからと言って直ちに偽装結婚になるというわけではありません。「この人と結婚したい」という気持ちと,「この人と結婚すれば安定したビザがもらえる」という気持ちは,相反するものではないですし,併存していても何ら不思議はないからです。

専ら偽装結婚をするつもりだったと言えるような状況,つまり,婚姻届けを出して在留資格の変更手続きが終わった途端に別居するようになったとか,別の異性と交際をするようになったなどの事情がなければ,「片方は偽装結婚のつもり,片方は本物の結婚のつもり」とは認められにくいのです。

 

2つ目の場合としては,外国人の方が犯罪行為をしたという場合です。

例えば,交際相手の外国人のDVが原因となって別れる場合などです。日本人同士の場合でもそうですが,男女の別れ際にはトラブルがつきものです。事によっては刑事事件にまで発展することもあります。外国人の方が犯罪をしてしまった場合,それに対する処分や刑の重さによっては,強制送還の対象となることがあります。

ただし,この場合であっても,一私人の方が「日本から追い出してくれ」とまでいうことはできず,あくまで刑事事件について「犯人に対して厳しい処罰を求めます」という意思を伝えるところまでとなります。

 

3つ目の場合としては,日本人の方が,外国人が不法滞在等の強制送還の理由となるような事情を知っていた場合があります。日本人の方が,警察や入管へ通報をして捜査が始まっていくことになります。

外国人の方が法律に違反しているのであれば,それを警察や入管へ通報すること自体は問題ありません。この場合であっても気を付けなければならないのが,本当に法律に違反しているのかどうかという点です。もしも,法律に違反していないのに「この人は入管法に違反しているので厳重に処罰してください」等と言って,実は違っていたという場合には,虚偽告訴罪という刑罰に触れてしまう可能性があります。警察や入管へ通報する場合であっても,事前にきちんとした調査を踏まえて,専門家の意見も聞いて行動した方が安全でしょう。

 

最後に,別れた異性へのネガティブな感情から,様々な手段を思いついてしまうこと自体はおかしなことではないと思います。実際に行動に移そうとしたとき問題になってしまわないかどうかと,一歩立ち止まって,冷静に考えることが大切であると思います。

 

関連記事はこちら

外国人の方の不倫の問題点

同居している外国人が不法滞在だった場合

外国人との結婚について

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5989-0843電話番号リンク 問い合わせバナー