外国人の刑事裁判について

1 外国人の裁判は日本人の裁判とちがうのか?

当然のことと思われるでしょうが,外国人の方であっても,日本で裁判を受ける場合,基本的に手続きの流れは変わりません。ですが,母国語が日本語ではないという点,日本での在留について出入国管理局からの管理を受ける点で特徴があります。

 

2 法廷での通訳人がつく

日本の裁判所で行う裁判では日本語を用いて裁判を行うことが法律で定められています(裁判所法74条)。裁判官や弁護士,検察官が法廷でしゃべるのは,すべて日本語になります。

外国人の方が裁判を受ける場合には,裁判所の選任した通訳人が同席し,日本語での発言を,逐一外国語に通訳して伝えることになります。また,外国人の方が外国語で発言した場合には,通訳人が日本語に通訳して,法廷にいる人に対して伝えます。

通訳する言語が英語などのメジャーな言語であれば,能力も経験ものある通訳人の方が日本に多くいますが,少数話者しか話さない言語の場合,適切な通訳人を探すのに時間がかかることもあります。また,通訳人自体が少ない場合,法廷通訳の経験がある通訳人も少ないことがあります。

多くの刑事裁判の場では,被告人の発言が有利にも不利にも証拠となり,判決に影響を与えます。外国人の方が被告人として裁判を受けている場合,外国語の言葉のニュアンスが,日本語に訳される時に変わってしまうことがあります。

表現や文法などが特徴的な言語を話す場合や,日本語で適切な訳語がない言葉が問題となる事件の場合には,弁護士との打ち合わせの時点からよく確認しておきましょう。裁判の場で話す言葉について,外国語から日本語へ通訳するときにニュアンスが変わってしまわないかどうか,通訳人にも確認しておく必要があります。

 

3 入管の職員が裁判所に来ることがある

判決の時点で既にオーバーステイや在留資格の取消しを受けている場合や,売春に従事していたとして起訴されていた場合,判決の言い渡しの期日に入管職員が傍聴に来ています。刑事裁判として起訴された内容が認められて,有罪の判決が言い渡されると,判決の確定を待つことなく入管に収容され,退去強制の手続きが開始される,という運用がなされています。

※このような「刑事裁判⇒退去強制の手続き」という流れがあるため,外国人の方は保釈されにくいという実務上の問題点があります。

刑事裁判中であっても在留期限を過ぎてしまうとオーバーステイになってしまいますので,更新できる在留資格があれば忘れずに手続きをしておきましょう。

更新できる在留資格がないと,判決を待っている間にオーバーステイになってしまいます。その場合であっても,判決後に入管へ出頭することと自費で出国することを,事前に入管へ連絡を取って調整しておくことで,判決直後の収容を避けることができます。

退去強制になっても日本への在留を希望する場合には在留特別許可を求める弁護活動の準備を進める必要がありますので,刑事事件の担当の弁護士と,事前によく相談しておきましょう。

 

☆判決後の在留資格について

刑事裁判を受けても在留資格の取消しや退去強制の対象とならない犯罪もあります。よくあるものとしては,一定速度以上でのスピード違反や軽微な交通事故による有罪判決(罰金や執行猶予判決が多いでしょう)が言い渡されるような場合があります。

この場合,直ちに日本での在留が不可能となるわけではありませんが,在留期間の更新の時や永住申請の時に,日本における素行の判断要素として,日本で有罪判決を受けたことが不利に扱われることがあります。

更新や永住申請の場合には,有罪判決を受けた内容について反省文を書くなどして,申請書類に添付します。

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