不法入国,オーバーステイとは何か

1 不法入国とは何か           

不法入国とは,有効な旅券(パスポート)を持たないで,もしくは入国審査官から上陸許可を受けないで上陸する目的で入国することを言います。

ここでいう「入国」とは,日本の領域内に入ることを言います。飛行機が日本の領空に入った時点,船が日本の領海内に入った時点で「入国」になります。一方「上陸」とは,港や空港の上陸審査場の外に立ち入ることを言います。そのため,飛行機で日本に来て,飛行機から降りて,空港の到着ターミナルに入っただけでは「上陸」したとは言えません。

不法入国罪に対しては,「3年以下の懲役もしくは禁固又は300万円以下の罰金」が定められています。また,不法入国は,有罪の判決がなくとも退去強制事由に該当します。

似ている言葉として,不法上陸罪,不法在留罪というのもあります。

不法上陸罪は,入国審査を経ないで日本に上陸することを言います。不法在留罪とは,不法入国した後引き続き日本に在留していることを言います。法律上の刑の重さや退去強制該当性は,どちらも不法入国罪と同じです。

 

2 オーバーステイとはなにか

いわゆるオーバーステイとは,不法残留のことを指します。不法残留とは,有効な在留資格を持っていたものの,在留期間を過ぎた後も日本に在留していることを言います。なお,在留期間を過ぎても日本に在留できる場合として,

  1. 出国準備期間を付された場合
  2. 在留期間内に更新や変更の申請をしたものの,それに対する返答が在留期間内になかった場合

がありますが,これらの場合には不法残留とはなりません。

法律上の刑の重さや退去強制該当性は,不法入国の場合と同じです。

 

☆不法在留と不法残留,何が違うのか?

不法在留罪は,不法入国に引き続いて不法に日本に在留している場合に成立します。

一方,不法在留とは,在留資格を過ぎて日本に在留することを言います。

両者の違いは,日本への入国が適法なものか,違法なものであるのかという点にあります。

 

3 不法入国,オーバーステイの場合の刑事手続き

不法入国やオーバーステイが警察に発覚するパターンの多くは,職務質問や,他の罪を犯してしまい余罪として不法入国やオーバーステイも発覚するというものです。多くの場合には逮捕,勾留されてしまいます。のちに入管に引き渡されることになりますし,捜査手続き中に逃亡するおそれがあるとみられるためです。

オーバーステイのみの事案で前科や前歴がなく,過去に強制送還の対象になったことがない方や,オーバーステイが発覚しないために偽造工作(他人の在留カードを使った等)をしたという事情がないのであれば,在留の期間にもよりますが,不起訴処分となることがあります。その場合は直ちに入管に身柄が引き渡されて(入管法64条1項),退去強制に向けた違反調査がなされます。

一方,不法入国や不法残留となっている事案や,過去に退去強制された歴があるオーバーステイの事案,前科のある方の事案等の場合には,正式な裁判になることがあります。起訴されると,勾留が継続することになりますが,不法入国やオーバーステイの事案の場合は保釈も認められにくいことが多くあります。

不法入国やオーバーステイで起訴された場合,多くは執行猶予付きの判決が見込まれます。一方前科や執行猶予期間中の再犯だった場合,不法入国にあたって集団密航のような計画的事案の主犯格とされると,場合によっては実刑判決を受けることもあります。

 

4 不法入国,オーバーステイで有罪になった後の手続き

単純なオーバーステイの事案(残留年数が10年単位になるような事案)であれば,不起訴となったのち,そのまま検察庁から入管へと事件が引き継がれ,違反調査と入管の施設への収容がなされます。

起訴されて有罪の判決を受ける場合,執行猶予が見込まれるような事件であれば,判決言い渡しの期日に入管の職員が傍聴に来ており,閉廷後直ちに入管が違反調査を開始するという流れになります。

その後入管での審査を経て,事実に間違いがなければ退去強制令書が発布され,退去強制(強制送還)がなされます。日本への再入国の禁止期間は,初めての退去強制であれば5年間,2回目以降の退去強制の場合には10年間になります。

 

5 不法入国,オーバーステイでの弁護活動

不法入国,オーバーステイの事案の場合,逮捕勾留されることが多いため,いかに身体拘束の期間を短く済ませられるかが重要です。

起訴されることが少ない単純なオーバーステイの事案であれば,警察や検察官と交渉して速やかに事件を入管へ引き継いでもらう必要があります。起訴されることが見込まれるような事件であれば,起訴から判決までの期間が通常よりも短い,特別な裁判手続きとするよう求めます。これらは,刑事弁護人として,弁護士にしかできない弁護活動です。

入管へ事件が引き継がれたら,直ちに仮放免の申請を行います。入管に事件が引き継がれるタイミングが分かっていれば,事前に仮放免の申請を行うことを伝えたり事前の交渉を行ったりしておくことで,仮放免の決定がスムーズになされます。仮放免の間に出国の準備を整えたり,日本に在留することを希望する場合には難民申請や在留特別許可を求める準備を行ったりします。

また,オーバーステイしているけれどもまだ入管にも警察にも発覚していないという場合には,いっそ自ら出頭して,出国命令制度による出国を検討します。出国命令制度の該当者であれば,不法残留罪として捜査されたり起訴されたりすることはほとんどありませんし,入管に収容されることもありません。

もしくは,日本での在留年数が長期化しておりその間何の問題もなく在留していた場合や,オーバーステイであっても適法な在留資格を得たい場合には,在留特別許可の取得を目指すことになります。

不法入国やオーバーステイの刑事事件と入管の手続きは一連の流れに沿って行われますので,一番最初から一貫した弁護活動を展開する必要があります。不法入国やオーバーステイでお悩みの方,ご家族や周りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。不法入国やオーバーステイの事件について,一括して対応できます。

 

 

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