海外にいる外国人を雇うときに気を付ける点

1 海外にいる外国人を雇いたい

外国人を雇うとき,その外国人の方が必ずしも日本に居住しているとは限りません。昨今,採用の募集はインターネット上でも掲載できますし,テレビ電話などを利用した採用面接も可能です。有能な人材を採用するにあたって,ヘッドハンティングをかけることもあるでしょう。そのような場合の手続と注意点についてご紹介します。

 

2 外国人の「呼び寄せ」の手続

日本国外にいる外国人の方を雇って日本で働いてもらう場合,所定の手続きを踏んで来日してもらう必要があります。雇い入れの場合や海外にいる家族を日本に来てもらうことを,呼び寄せということがあります。呼び寄せの手続きは,大まかに次のような手続になります。

  • ※Aが来日する外国人,B社が雇用主とします。

海外にいる外国人を雇うときに気を付ける点

【解説】

① A→B社への手続

B社がAから,入社にあたって必要な書類と「在留資格認定証明書」の申請依頼を受けます。

「在留資格認定証明書」とは,Aが日本に上陸する際に,「日本での在留資格の認定が受けられますよ」ということを証明する書類です。この申請はA本人かがするか,Aから依頼を受けた人が代理人としてすることも可能ですが,日本の入国管理局での手続になります。この証明書がないと,いざ日本に上陸するとなった時に在留資格が認められず,そのまま出発国へ帰国しなければならない可能性があります。また,この申請の手続きのためだけに一度日本へ来るのも,時間と手間がかかります。

そこで,日本にいる雇い主や家族の方,手続に不安があれば弁護士などの専門家が,代理人となって在留資格認定証明書の申請手続きを行います。

この際にB社は,Aから申請書や委任状を送ってもらうほかに,事業内容に応じた書類(AがB社の従業員となることや業務の内容が在留資格に適合すること)等の書類を作成します。

 

②B社→入国管理局への手続

Aから必要書類の提出を受け,B社での書類も整ったら,B社ないし代理人が,日本の入国管理局に対して,「在留資格認定証明書交付申請」を行います。

提出する入国管理局は,居住予定地か勤務予定地を管轄している地方入国管理局です。

 

③入国管理局→B社への手続

在留資格認定証明書交付申請を行ってから,通常1~3か月程度の期間を要します。

在留資格を認定する,との判断であれば,在留資格認定証明書がB社に送付されます。

在留資格を認定しない,という判断の場合には,申請の内容か書類に不備があると考えられます。各入国管理局に対して認定しない理由を問い合わせたり,専門家に相談したりする必要があります。

 

④B社→Aへの手続

③で在留資格認定証明書が発行されたら,B社からAに送付します。

 

⑤A→在外日本大使館への手続

Aは在留資格認定証明書を受け取ったら,その書類をもって各国の日本大使館に対して査証(ビザ)の申請をします。

査証(ビザ)が発給されると,パスポートに査証(ビザ)のシールが貼られます。

 

⑥A入国,上陸手続(入国審査)

在留資格認定証明書と査証(ビザ)の発給を受けたら,航空機や船舶で日本へ入国し,上陸審査を受けます。在留資格認定証明書,ビザはそれぞれ有効期限が「発行されてから」3ヶ月です。どちらかでも有効期限が切れていると再手続きが必要になりますので,注意しましょう。

ここまでの手続で特段問題がなければ,上陸許可がなされ,パスポートに上陸許可の証印が押されます。

上陸許可がなされると,在留カードが発行されます。在留カードには日本での在留資格や在留期間,就労の可否などが記載されます。日本に在留している間,在留カードはパスポートと同じくらい大切なものですので,大切に取り扱いましょう。

※なお,「短期滞在」の在留資格で日本に上陸する場合には,①~④の手続は必要ありません。国によっては⑤の査証の不要の場合があります。

「短期滞在」の在留資格の外国人が,日本国内で働くことはできませんし,短期滞在の外国人を雇ってしまうと不法就労助長罪として処罰される可能性があります。雇い入れの際には必ず在留資格を確認し,呼び寄せる場合には適切な在留資格を選択しましょう。

 

3 入国時のフォロー等

日本への入国の際,呼び寄せの手続の他に,事業主側としてフォローが必要な場面があります。

 

☆住居について

日本への上陸の前に,日本での住居を確保しておかなければなりません。日本で戸建て住宅やマンションを所有している外国人でない限り,住居を賃借することになります。

日本の賃貸借では,外国人が部屋を借りにくいという実情がありますし,借りられた後もトラブルになることが多くあります。せっかく有能な人材として日本に来てもらっているのに,大家さんに部屋を追い出されてしまっては日本で働くことも難しくなってしまいます。

雇い入れる外国人の方が安心して働けるよう,住まい探しに同行したり,会社名義で部屋を借りて許可を受けたうえで転借したり,社宅を用意したりするなどして,住居を確保しておくとよいでしょう。

また,部屋を借りられない,大家とトラブルになる等といった事態の原因の多くは,文化の違いにあります。家の中では靴の脱ぐ,ゴミ出しは決められた日にする,むやみに友達に部屋を貸さない,というのは,日本の常識かもしれませんが,外国の方にとってはなじみのないルールかもしれません。日本での生活様式も上陸前に一通り指導しておくと事前のトラブルを防止できます。

 

☆社会保険の手続

けんぽ等の健康保険に加入している企業,事業主の場合には,日本人と同じように,雇い入れ時の手続を行います。一方,外国人の方が市区町村の国民健康保険に加入する必要がある場合,市区町村での手続きが必要となりますので,入国後の手続として教示しておいた方が良いでしょう。

 

☆入管への各種届出

日本で在留している間にも各種の手続が必要になります。引越しで住所が変わった場合や,結婚や離婚によって氏名が変わった時には14日以内に入国管理局に対して届け出なければなりません。

また,在留期間が近づいてきた場合には,期間の更新手続きをする必要があります。主老鶏の在留資格で日本に在留している場合であっても,入管から雇用主に対して外国人の在留資格の更新について,お知らせなどはありません。在留資格の更新は各外国人に任されている状況ですが,できれば雇用主側でも在留期限を把握しておき,オーバーステイ(不法残留)となってしまわないようにしましょう。万一,オーバーステイの外国人を雇い続けてしまうと,不法就労助長罪や不法滞在の幇助として疑われてしまうことがあります。

 

 

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