不法就労,不法就労助長罪とはなにか

1 不法就労とは

不法就労罪とは,在留中の活動に制限のある外国人が,資格外活動許可を得ないで収入を伴う活動や報酬を受ける活動をするものです。

例えば,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に在留している間(資格外活動許可:なし)に,コンビニで品出しのアルバイトをしていた場合がこれにあたります。

一方,同一の在留資格の範囲内の就労,例えば,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で英会話塾のA社に勤めている方が,別の英会話塾のB社に転職するのは,不法就労とはなりません(もちろん,入管に対して届け出る義務はあります)

不法就労は,日本に在留している間「専ら」その資格外活動許可をしていたと「明らかに認められる」かどうかで適用される条文が変わります。

  •  「専ら」行っていたと「明らかに認められる」場合
    ・・・3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の罰金
    ・・・退去強制あり
  •  「専ら」行っていたと明らかには認められない場合
    ・・・1年以下の懲役もしくは禁固または200万円以下の罰金
    ・・・懲役または禁錮なら退去強制あり,罰金は退去強制なし
    ※この場合でも,本来の在留資格に関する活動を3か月以上行っていないと,在留資格の取消しがありうる。

ここで「専ら」収入ないし報酬を伴う資格外就労をしていたと「明らかに」認められるかどうかについては,本来の在留資格の活動と資格外就労について,どれだけ行っているのか・対価がいくら何かを考慮して,在留の目的が変わったと言えるかどうかによって判断されます。

上と同じ例で考えると,コンビニのアルバイトだけで生計を立てていたのであれば「専ら」資格外の就労をしていると「明らかに認められる」可能性がありますが,コンビニのアルバイトを副業として週数時間程度していたのであれば,「専ら」資格外就労をしていると「明らかに」は認められない可能性があります。ただ,その場合でも入管法の違反になりますし,在留資格の延長や永住権申請の際には不利な事情になります。

なお,不法就労は,在留中の活動に制限がある在留資格の方についてのみ成立します。そのため,別表2の在留資格(永住者,特別永住者,定住者,日本人の配偶者等)で在留する方は不法就労とはなりません。

また,不法入国,不法上陸等により,そもそも日本の在留資格を持たない方の就労は不法就労とはなりません。この場合,不法入国罪や不法上陸罪のみが成立することになります。

 

☆不法就労とならないためには?

不法就労となってしまわないためには,自分の在留資格と就労の制限をよく確認することが何よりも大切です。特に,在留期間中に転職や副業をしたいと考えた際には,資格外の就労になっていないか,在留資格を変更する必要がないかをよく見ておかなければなりません。

 

☆不法就労の際の弁護活動は?

不法就労罪で捜査機関に検挙されてしまった場合,退去強制がありうること等から,多くの場合で逮捕されてしまいます。

その後の裁判では資格外就労の内容やその期間を考慮して刑罰が定められますが,刑事裁判としないで入管に引き継がれる場合や,罰金刑のみで済むこともあります。刑事裁判後に在留特別許可を求めるような場合には,裁判の場でも真摯に反省している姿勢を示すことが重要です。

 

2 不法就労助長とは

不法就労助長とは,外国人に対して不法就労をあっせんしたり助長したりする行為をいい,不法就労罪とは別個に独立して処罰されるもので,当然日本人も処罰の対象となります。

不法就労助長には,次のようは3つの類型があり,3年以下の懲役もしくは禁固または300万円以下の刑が定められています。

法人についても罰金刑が科されますし,外国人の方であれば,退去強制の対象となります。

  1. 自らの事業活動について,外国人に不法就労活動をさせること
  2. 外国人に不法就労活動をさせるために自己の支配下に置くこと
  3. 業として1や2の行為をあっせんすること

この不法就労活動とは,上記の「不法就労」に加えて,在留資格がない人やオーバーステイにより在留期間を過ぎた人が収入を伴う活動を行うことも含みます。外国人の方が不法就労罪になるかどうかと,事業主に不法就労助長罪が成立するかどうかは別の問題と考えなければなりません。

不法就労助長罪は,外国人に不法就労活動を「させる」ことをいうため,外国人が事業主などの指示に従わず,独自の判断で不法就労活動をした場合には,犯罪となりません。

そして事業主は,外国人の就労が不法就労活動になることを知らなかったとしても,無過失でなければ処罰を免れないとされています。例えば自己の営業のため外国人留学生を雇入れた際,その留学生の在留資格が「留学」であることを知らなかった(「留学」の在留資格では原則働いてはダメ)とか,資格外活動許可を得ていると思っていた,というだけでは処罰されることがあります。これは,在留管理制度に在留カードが導入され,雇用主が外国人を雇入れる際に在留カードを確認することが義務付けられるようになったためです。

雇入れの際に在留カードを確認しなかった,提示を求めたが断られたので見ていなかった,というだけでは,不法就労活動になることについて過失があったと判断される可能性が非常に高いです。事業主の方は外国人を雇入れるときには,必ず在留カードの確認(在留資格,就労の制限,在留期限は必ず確認しましょう)を行いましょう。

なお,提示されたのが偽造された在留カードであった場合等,事業主も確認義務を果たしたとみられる場合には,不法就労助長とはなりません。

近年,日本でも労働力不足から,外国人の方に不法就労活動をさせて摘発される日本の企業が増加しています。在留カードの確認等を徹底して不法就労助長罪をしてしまわないのはもちろんですが,どうしても外国人労働力が必要な場合には,適法に雇入れる手段を検討するのが必要でしょう。例えば,資格外活動許可を取らせる,雇入れできる在留資格に変更するよう促す,営業の分野によっては技能実習や特定技能の外国人を多く受け入れる等があります。

事業主側の法令遵守と外国人従業員の適正な管理のためにも,外国人を雇入れる方,雇入れを検討されている方は弁護士などの専門家に相談しておきましょう。万一に不法就労助長となってしまった場合に弁護できるのは,専門家の中でも弁護士だけです。

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