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強盗致傷に至る万引き抵抗事案と永住者の在留への影響

2026-04-14

強制送還

【想定事例】

仕事帰りの夜、30代の外国籍男性Aさんは、いつものように自宅近くのコンビニエンスストアに立ち寄りました。
Aさんは日本に長く暮らしており、「永住者」の在留資格を持っています。日本語での会話にも特に不自由はなく、日本での生活が日常になっていました。
その日、Aさんは飲み物や軽食を手に取りましたが、出来心で会計をせずにそのまま店を出てしまいます。金額にすれば千円程度の、いわゆる万引きです。
店の外に出たところで、異変に気付いた店員がAさんを呼び止めました。
「お客様、ちょっとお待ちください」
その瞬間、Aさんの頭をよぎったのは、「警察を呼ばれたらどうなるのだろう」「在留資格は大丈夫だろうか」という不安でした。
パニック状態の、Aさんはとっさに店員の手を振り払い、体を押して逃げようとしました。
すると、押された店員はバランスを崩して転倒し、腕や足を打ってけがをしてしまいました。
Aさんはそのまま現場を離れましたが、後日、防犯カメラの映像などから身元が判明し、警察の捜査を受けることになりました。

このような事件が起きると、本人だけでなく、ご家族も「このまま日本で生活を続けられるのか」という強い不安を抱きやすくなります。
しかし、事件後の初動対応を誤らず、刑事手続と入管手続の双方を見据えた動きを取ることで、処分内容や在留の結論が変わる余地は残されています。

なお、本記事は、あくまで一般的な判断の枠組みを整理したものであり、実際の結論は個別の事実関係や在留歴などによって変わり得ます。

刑事手続と入管手続は別の線路で進みます

外国人が犯罪で検挙された場合、退去強制事由に該当すると、刑事手続とは別に、行政手続として退去強制手続が進む可能性があります。
そのため、刑事事件で「不起訴」や「無罪」となった場合であっても、入管の側では、在留の可否(次回の更新・在留資格の変更・在留特別許可など)が別途問題となることがあります。
また、実務上は、刑事手続では釈放となった場合でも、その後、直ちに入管収容(収容令書・退去強制令書)へ切り替わるケースがあります。
「刑事で外に出られた=自宅に帰れる」とは限らない点には注意が必要です。

【刑事】逮捕 → 勾留 → 起訴/不起訴 → 起訴の場合:裁判 → 判決

【入管】違反調査<収容/監理> → 審査 → 口頭審理 → 違反認定/不認定 →
違反認定の場合:退去強制(送還) または 在留特別許可(在留継続)

退去強制の基本構造と刑罰の見方

万引き(窃盗)の直後に、「逮捕を免れる目的」などで暴行や脅迫を加えた場合、その行為は「事後強盗」(刑法238、236条)として評価され得ます。
さらに、その暴行によって店員が負傷した場合には、「強盗致傷」となり、無期または6年以上の拘禁刑が法定されています(刑法240条)。

一方、退去強制(いわゆる強制送還)は、一定の外国人を法律に基づき国外へ退去させる行政措置です。
退去強制事由は入管法24条に列挙されており、類型ごとに要件が異なります。全体像は、概ね次のように整理できます。

退去強制事由(入管法24条
├ 入管法違反型(不法入国・不法残留など)
├ 刑罰法令違反型(一定の刑に処せられた場合)
└ その他(売春関与、難民認定の取り消しなど)
→ 手続 → 退去強制令書 / 在留特別許可

刑罰法令違反に関する退去強制は、次の二つに分けると分かりやすいです。

第一に、在留資格を問わず適用され得る「無期または1年を超える拘禁刑」に関する類型です。実刑の場合ですので、執行猶予の場合は問題ありません。もっとも、薬物事犯の場合などは、例外的に、在留資格に関わらず「有罪」となった時点で(執行猶予だとしても)退去強制の対象となります。

第二に、一定の在留資格を持つ人(永住者は対象外です)について、窃盗や強盗などの一定の犯罪類型で「拘禁刑に処せられたもの」を退去強制事由とする類型です。これは、執行猶予の場合でも対象となってしまいます。

また、退去強制等で日本から出国した外国人で、「1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者」は、原則として日本への上陸を拒否されることになります。
そのため、仮に国外退去となった後の再入国については、別のハードルが生じることになります。

処分別にみる在留への影響

結論としては、「刑事処分が軽いほど在留リスクは下がる傾向にあるものの、ゼロにはならない」というのが実情です。
在留期間更新在留資格変更は、「適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかを、事案や事情から総合的に判断するとされており、この中で刑事トラブルは消極的要素となりやすいのが実情です。

刑事上の結論 退去強制リスク 更新・変更 永住許可申請 再入国・再上陸
不起訴 不許可要因になり得る 素行要件で不利 可能
略式罰金 低~中 不許可要因になり得る 素行要件で強く不利 可能
執行猶予付き拘禁刑 中~高 厳しい

就労許可は特に

原則かなり厳しい 上陸拒否が問題化
実刑(特に1年超) ほぼ確実 極めて厳しい ほぼ見込みにくい 収監+強制送還

+上陸拒否

在留資格タイプ別の注意点

同じ刑事処分であっても、在留資格のタイプによって、退去強制に結び付く条文が異なります。
大きく分けると、身分・地位に基づく別表第二(永住者、日本人の配偶者等、定住者など)と、活動に基づく別表第一(就労、留学など)で、リスクの現れ方が異なります。

身分・地位型の場合、日本での生活実体(婚姻関係、子の監護、居住の定着性など)が積極的要素として評価されやすい傾向があります。
もっとも、本件想定のように強い暴力や負傷結果を伴う事件では、消極的要素として重く評価され得ます。

一方、活動型の場合は、「拘禁刑に処せられたもの」という文言で退去強制に直結し得る点が特徴です。

なお、「特別永住者」については別の法制度が適用されるため、ここでいう「永住者」とは区別して考える必要があります。

想定事例は実際にどのような流れで進むのか

ここまで読んで、「実際には、事件後に何が起きるのか」「どの時点で在留が問題になるのか」と疑問に思われた方も多いと思います。
そこで、先ほどのAさんの想定事例を前提に、事件発生後の一般的な流れを整理してみます。

① 事件発生直後:警察対応と身柄の扱い

Aさんのケースでは、店員がけがをしているため、単なる万引きではなく、強盗致傷の疑いで捜査が進む可能性があります。
その場合、防犯カメラの映像、被害届、被害者の診断書などをもとに、後日、警察から事情聴取の連絡が来たり、状況次第では逮捕されることもあります。
逮捕された場合、最初の数日は警察署で取り調べを受け、その後、検察官に送致されます。
ここで勾留が決まると、最大で20日程度、身体拘束が続くことになります。

② 刑事手続の判断:不起訴か、起訴か

捜査の結果を踏まえて、検察官が起訴するかを判断します。

この判断においては、
・被害の程度
・被害者との示談の有無
・本人の反省状況
・前科前歴の有無
などが総合的に考慮されます。

仮に不起訴となれば、刑事裁判は開かれず、前科にもなりません。
一方、起訴された場合には、裁判が行われ、有罪か無罪か、どのような刑罰が科されるかが決まります。

③ 刑事とは別に動き出す「入管」の手続

刑事手続とは別に、入管手続が動き出す可能性があります。
実務上は、例えば、保釈など刑事事件で釈放された直後に、入管による収容手続へ切り替わるケースも珍しくありません。
この段階で問題となるのが、「退去強制事由に該当するかどうか」「在留特別許可が認められる余地があるか」といった点です。
ここで重要なのは、Aさんが「永住者」であるという点です。

不起訴となった場合

不起訴の場合、刑罰に処せられていないため、刑罰を理由とする退去強制事由には該当しません。
このため、少なくとも刑事的には、退去強制の対象となる可能性はありません。

起訴されたが無罪となった場合

無罪判決が確定した場合も、刑罰に処せられていない以上、退去強制事由には該当しません。

罰金刑となった場合

罰金刑の場合も、「拘禁刑に処せられた」とはいえないため、永住者については、刑罰を理由とする退去強制事由には該当しません。

執行猶予付きの拘禁刑となった場合

執行猶予付き判決の場合、「拘禁刑に処せられた」とはいえるものの、永住者については、執行猶予であれば直ちに退去強制事由に該当するわけではありません。

実刑となった場合(量刑が1年以下)

実刑判決を受けた場合、在留への影響は一気に大きくなります。
もっとも、拘禁刑が1年以下の場合には、刑罰を理由とする退去強制事由に直ちに該当しないケースもあります。例えば、本件が「強盗致傷」ではなく「窃盗と傷害」として起訴された場合、Aさんは1年以下の拘禁刑となる可能性もあります。
本事案では、Aさんは永住者であるため、1年以下の拘禁刑判決であれば、実刑となっても、退去強制事由には該当しないことになります。
※もっとも、暴力性が高く、被害結果も重大な事件の場合、日本の公安を害する行為であると評価され、別途在留の可否が問題とされる可能性は残ります。

実刑となった場合(量刑が1年を超える)

拘禁刑が1年を超える実刑判決となった場合、永住者であっても、刑罰を理由とする退去強制事由に該当します。
この場合、収監後に退去強制手続が進み、刑期終了後に、日本から強制送還されるリスクが現実化します。
また、送還後の再入国についても、「1年以上の拘禁刑に処せられたこと」が重く影響し、再び日本に戻ることは容易ではありません。

④ 在留の判断に影響するポイント

Aさんが本件で1年以上の拘禁刑の実刑判決を受け、退去強制事由に該当することとなってしまった場合、次に在留特別許可の申請を検討します。在留特別許可とは、強制送還となってしまう人が、今回は特別に強制送還とはせず、日本に在留できるよう特別な許可を国に求めることができる制度です。

在留特別許可の判断では、刑事処分の結果だけでなく、
・日本での居住年数
・家族関係(配偶者や子の有無)
・仕事や生活の安定性
・事件後の対応(被害者への謝罪、再犯防止策)
といった事情も考慮されます。

そのため、事件直後の対応が、その後の在留判断に影響することになります。

退去強制を避ける・軽減するための実務ポイント

在留特別許可のガイドラインでは、積極要素と消極要素を比較衡量し、単一の要素で機械的に結論を出さないこととされています。
もっとも、在留特別許可制度は、退去強制の例外的・恩恵的措置であり、その判断は国の広い裁量に委ねられる枠組みとなっています。

在留特別許可について、評価されやすい事情としては、
①被害者対応(謝罪、治療費等の負担、示談の成立など)
②再犯防止策(就労状況、家族の支援体制など)
③生活実体(日本での居住年数、扶養家族、地域との結び付き)
といった点が挙げられます。

本件のように「盗み+暴力+負傷」が絡む事案では、示談の有無が刑事処分だけでなく、入管における評価にも影響し得ます。
そのため、初動段階で被害者にどう対応するかには、大きな意味があります。

事件後の再取得と再入国の現実

退去強制によって送還された場合、日本に再び戻るには、「上陸拒否期間」と「上陸拒否事由」を区別して理解する必要があります。
一般的には、退去強制(初回)で5年、再度の場合で10年、出国命令の場合で1年と整理されています。

ただし、入管法5条の上陸拒否事由として「1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者」に該当すると、上陸拒否の期限は無期限となります。
制度上は上陸特別許可などの例外も用意されていますが、在留特別許可と同様に、あくまで個別事情の総合判断であり、楽観的な見通しはできません。

外国人事件に強い弁護士へ早期相談すべき理由

この類型の事件は、窃盗から事後強盗、さらに強盗致傷へと罪名が一気に重くなり得る点で、刑事上の見立てが在留の見通しを直撃します。
加えて、退去強制手続が刑事手続とは別の線で進むため、刑事の結論だけを見ても、在留の最終的な結論を読み切ることは困難です。

特に、在留特別許可は行政裁量が広く、自分だけでの対応には限界があります。
だからこそ、事件の早い段階で、「刑事で何を目指すのか」と「入管で何を積み上げるのか」を同時に設計することが重要になります。

現実的で合理的な選択肢を広げるためにも、弁護士への早期の相談の価値は大きいといえるでしょう。

永住者の外国人が日本で詐欺事件を起こした場合の在留資格と退去強制のリスク

2026-03-31

空港絶望

日本で生活する外国人が刑事事件を起こしてしまった場合、刑事手続きと入管手続きが別々に進むことを理解することが大切です。刑事事件が不起訴執行猶予となっても、入管法に基づく審査は別に行われます。

このコラムでは、永住者の方が詐欺罪に問われた場合を例に、在留資格への影響や強制送還の危険性、再び日本に滞在するためのポイントを分かりやすく解説します。

1.外国人が刑事事件を起こした場合に問題になる2つの手続

刑法は「日本国内で罪を犯したすべての者」に適用されると定め、外国人も日本人と同じ刑事手続きに服します。

しかし外国人の場合、刑事手続きとは別に入管法上の手続きが進む点が特徴です。退去強制は行政処分であり、不起訴執行猶予が付いた場合でも在留資格の更新が難しくなることがあります。このため、事件の結果が入管手続きにどう影響するかを早い段階で確認することが重要です

2.強制送還(退去強制)とは何か

退去強制とは、法務大臣が外国人の在留を認めないと判断したときに日本国外へ退去させる行政手続きです。

入管法24条は、無期または一年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者をなど退去強制事由と規定し、この条文では執行猶予を受けた者が除外されています。

しかし、入管法別表第一在留資格に該当する者が窃盗罪詐欺罪など一定の罪で有罪となった場合、刑の期間や執行猶予の有無にかかわらず退去強制の対象とされます。一方、退去強制後の再入国は禁止期間が設けられており、初回は5年、再度の退去や逃亡者は10年出国命令で出国した場合は1年と定められています。

3.刑事処分別に見る在留資格への影響

刑事処分の内容によって在留資格への影響は大きく異なります。

不起訴処分になれば在留資格は直ちに失われないものが多いですが、次回の更新審査では嫌疑をかけられた事実が考慮され、審査が厳しくなることがあります。罰金刑はそれだけで退去強制の対象とされているわけではありませんが、詐欺罪には罰金刑が規定されておらず、法定刑は十年以下の拘禁刑のみです。執行猶予付き判決や1年以下の実刑判決の場合、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格では退去強制事由に該当しませんが、就労系や留学などの在留資格では多くの犯罪で退去強制事由となります。一方、1年を超える実刑判決を受けると、すべての在留資格退去強制事由となります。

別表第一在留資格者は執行猶予判決でも退去強制となる可能性が高いことを理解しておきましょう。

4.在留資格の種類ごとの注意点

日本の在留資格は、身分や地位に基づく「身分系」と就労や活動内容に基づく「就労系」などに分けられます。

身分系には永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者が含まれ、職種に制限がないため比較的安定しています。これらの資格を持つ場合は、1年以下の実刑や執行猶予付き判決では退去強制事由に該当せず仮に有罪の判決を受けた場合であっても在留資格の更新が認められる余地があります。

一方、就労系の資格(技術・人文知識・国際業務、技能実習など)や留学・家族滞在などは活動内容を理由として在留を許可されているため、詐欺罪など別表第一で列挙された犯罪で有罪判決を受けると、刑の長さや執行猶予の有無にかかわらず退去強制となり得ます。

自分の在留資格がどの分類に当たるかを確認し、刑事処分の見通しと合わせて対応することが重要です。

5.退去強制を回避・軽減するために重要なポイント

退去強制を避けるためには、不起訴処分を得ることや刑を軽減すること、勾留期間内に在留更新手続きを済ませることが効果的です。

特に外国人事件では住居不定や逃亡の懸念から勾留が長期化しやすいため、早期に弁護士が介入して被害者との示談を成立させることが有効とされています。示談交渉では被害者へ謝罪文を準備し、必要に応じて母国語で用意した訳文を添えるなど配慮が必要です。詐欺罪のような財産犯では被害弁償の程度が処分に大きく影響するため、家族や友人の支援を得ながら早めに示談金を準備することが望まれます。

6.刑事事件後に在留資格は再取得できるのか

退去強制処分を受けると、原則として5年間は日本への再入国が認められず、再度の退去や逃亡歴がある場合は10年間に延長されます。出国命令制度を利用した場合は再入国禁止期間が1年に短縮されますが、犯罪歴や退去強制事由が他にある場合には適用されません。また、言い渡された刑期が1年以下の場合の再入国禁止期間は5年ですが、1年を超える場合や薬物事件では再入国禁止が無期限となる例もあります。

退去強制の対象者でも、法務大臣の裁量で在留を認める「在留特別許可」があります。許可の判断では、家族関係や生活基盤、犯罪歴、被害弁償の有無などが総合的に考慮されます。

家族が日本に住んでいる場合や日本で生活を続ける必要性が高い場合には、専門家と協力して在留特別許可上陸拒否期間短縮の申請を検討することが重要です。

7.外国人事件に強い弁護士へ早期に相談すべき理由(事務所紹介)

刑事事件と入管手続きは別々の制度ですが、結果は相互に影響します。早期に刑事事件に強い弁護士に相談し、処分の軽減を目指すことが退去強制を避ける最善の方法です。弁護士は捜査段階から証拠収集や示談交渉を行い、勾留中でも在留更新の手続きを進めるなど入管対応を視野に入れた活動を行います。

また、在留特別許可再入国申請には専門的な知識と経験が必要であり、手続きに不備があると取り返しのつかない結果を招きかねません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と入管手続きに精通した弁護士がそろっており、無料相談を行っています。永住者の方やそのご家族が不安を抱えたときは、早めに専門家へ相談し、適切な対応で将来の在留への影響を最小限に抑えましょう。

19歳の外国籍息子が無免許運転で死亡事故を起こした場合の刑事手続きと退去強制のリスク

2026-03-18

19歳の外国籍息子が無免許運転で死亡事故を起こした場合の刑事手続きと退去強制のリスク

ケース

Aさんの息子(19歳)は「家族滞在」の在留資格で日本に滞在中でしたが、無免許で車を運転し、人身事故を起こして被害者を死亡させてしまいました。今回はこのケースを前提に、以下の2点について解説します。

1. 息子さんが受けることになる 刑事手続き(少年事件手続き)の流れ
2. 上記手続きの結果によって 退去強制(強制送還)となる可能性があるかどうか

特に退去強制のリスクに対処するためには、早期に弁護士へ相談することが重要である点を強調します。それでは順を追って説明していきます。

少年事件手続きの流れ

日本では、20歳以上は成人として通常の刑事手続きにかけられますが、20歳未満の場合はまず捜査が終わった後に家庭裁判所による少年事件の手続きに進みます。証拠不十分等で罪を問えない場合を除いて、すべての20歳未満の刑事事件は家庭裁判所に送致され、少年の更生を図るための措置が検討されます。

18歳・19歳(特定少年)
2022年の少年法改正により、18歳と19歳の少年は「特定少年」と位置付けられました。特定少年も家庭裁判所で審理されますが、従来より厳格な対応が取られることになっています。特に重大事件の場合、家庭裁判所から検察官へ逆送(検察官送致)されて成人と同様の刑事裁判を受ける可能性が高くなっています。今回の息子さんは19歳ですので、この「特定少年」に当たります。

18歳未満
18歳未満の少年も逆送されることはありますが、18・19歳に比べると保護処分(後述)となるケースが多く、更生を重視した対応がなされます。
家庭裁判所での手続き: 家庭裁判所では調査官による環境等の調査や審判を経て、以下のような処分が決定されます。

検察官送致(逆送)
家庭裁判所の判断で事件が検察官に送致される決定です。この場合、手続きは成人と同じ刑事裁判に移行し、刑事罰を科される可能性があります。

少年院送致
少年院に収容して矯正教育を受けさせる処分です。刑罰ではなく保護処分と位置付けられます。

• 保護観察
自宅等に戻し、保護観察官や保護司の指導・監督の下で更生を図る処分です。

児童自立支援施設等送致
自立支援施設で生活指導を受けさせる処分です。

• 不処分
調査の結果、保護処分等の必要性がないと判断された場合は何も処分をせず終了となります。

今回のケースの手続き

息子さんは19歳(特定少年)ですので、まず捜査の後、事件は家庭裁判所に送られます。しかしその後の流れは、認定される罪名等によって大きく変わる可能性があります。

 危険運転致死罪の場合

危険運転致死罪とは、飲酒による酩酊、極度の速度制限超過、著しい技能不足など悪質な運転によって人を死亡させてしまった場合に適用される罪です。その法定刑は「1年以上の有期拘禁刑」と極めて重く、罰金刑の規定はありません。これは通常の過失による人身事故より厳しい刑罰で、裁判員裁判の対象にもなる重大犯罪です。
危険運転致死罪は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に該当し、犯行時16歳以上の少年の場合、少年法上原則として検察官に送致しなければならない事件となります。すなわち、家庭裁判所での審判を経て原則として成人と同じ刑事裁判に回されることが見込まれます。実際にも、特定少年による危険運転致死事件では家庭裁判所からの逆送率が非常に高く、成人同様の裁判を受ける可能性が高いといえます。

無免許運転による過失運転致死の場合

無免許で車を運転し過失により人を死亡させた場合、適用されるのは「無免許過失運転致死罪」(自動車運転処罰法違反)です。無免許過失運転致死罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑」となっており、危険運転致死罪と比べれば刑の重さは軽く設定されています。このように法律上は危険運転致死罪より軽い罪ですが、人が亡くなる重大事故であることに変わりはありません。特に無免許運転という違反が付加されている点も重視されるため、19歳の特定少年が起こした本件では家庭裁判所が厳重に審理するでしょう。
本件は無免許過失運転致死罪となれば特定少年の原則逆送事件にはあたりませんが、家庭裁判所が「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」と判断すれば、検察官送致となり成人と同様の刑事裁判に移行することになります。一方で、事故の態様や本人の反省状況、環境調整などによっては家庭裁判所が保護処分相当と判断し、刑事裁判にせず少年院送致や保護観察等とする可能性もあります。

要約すると、息子さんのケースでは様々な事情次第で、家庭裁判所からの「逆送」(検察官送致)によって成人と同じ刑事手続きに移行する可能性があります。特に危険運転致死罪が適用される場合は原則逆送となり、無免許過失運転致死罪の場合でも特定少年ゆえに厳格な検討がされるでしょう。

退去強制(強制送還)となる可能性

次に、上記の刑事手続きの結果が入管法上の退去強制(強制送還)事由に該当するかどうかを検討します。日本に在留する外国人が犯罪を犯した場合、その刑事処分の内容によっては退去強制の対象となり得ます。息子さんの場合、外国籍ですので、この点は非常に重要です。

入管法の規定

入管法(出入国管理及び難民認定法)第24条各号には退去強制事由が定められており、少年(20歳未満)の場合は第24条4号のトに規定があります。同号によれば、「少年法に規定する少年で、昭和26年11月1日以降に長期3年を超える拘禁刑に処せられたもの」が退去強制の対象になると定められています。ここでいう「長期3年を超える」とは、長期と短期を定める不定期刑において長期が3年を超える拘禁刑を受けた場合を指します。なお成人の場合は「1年以上の拘禁刑」(ただし執行猶予が付かない実刑の場合)が退去強制事由とされています。

保護処分の場合

少年事件で家庭裁判所が保護処分(少年院・保護観察など)を選択した場合、それは刑罰ではなく教育・矯正を目的とした措置です。したがって仮に少年院送致といった重い処分がされたとしても、それ自体は刑事上の「拘禁刑」ではないため退去強制事由には該当しません。保護処分であれば、その処分結果だけをもって在留資格が剥奪されることはない、ということになります。

刑事裁判で有罪判決を受けた場合

一方で、家庭裁判所から逆送されて通常の刑事裁判を受け、有罪判決により拘禁刑が科されれば入管法上の退去強制事由に該当する可能性が出てきます。具体的には、言い渡された刑期の長期が「3年を超える」場合が問題となります。今回のケースに関連する罪について見てみましょう。

危険運転致死罪の場合
法定刑は1年以上の有期拘禁刑と非常に重く設定されています。初犯であっても実刑判決が下されるケースが多く、長期が3年を超える拘禁刑となることも珍しくありません。したがって危険運転致死罪で逆送されて有罪となった場合、退去強制事由に該当するリスクが高いということになります。

無免許過失運転致死罪の場合
無免許過失運転致死罪自体の法定刑は10年以下の拘禁刑危険運転致死罪よりは低いものの、死亡事故である以上やはり重い刑が科されるリスクがあります。逆送されたケースでは執行猶予付き判決の可能性もありますが、仮に不定期刑の長期が3年を超えてしまえば退去強制事由に該当します。過失犯の場合は危険運転致死罪ほど極端な長期刑にならないことが多いですが、被害結果や過失態様の重大性、無免許運転の背景事情などによっては、不定期刑の長期が3年を超えるリスクは否定できません。したがって無免許運転過失致死罪であっても退去強制の対象となり得る点に注意が必要です。

まとめると、息子さんのケースでは、家庭裁判所で保護処分となれば退去強制の心配は基本的にありません。しかし、逆送され刑事裁判により長期が3年を超える拘禁刑の判決が下された場合には、入管法の規定上退去強制(強制送還)の対象となってしまいます。そのため、危険運転致死罪の成否の検討、逆送の回避、刑期の軽減が極めて重要になります。

専門弁護士による弁護活動の重要性

刑事弁護の早期依頼が鍵です。 今回のように死亡事故を伴うケースは、少年であっても非常に重大な刑事事件です。結果として人の命が失われている以上、被害感情も厳しく、仮に成人であれば相当な刑罰が科される犯罪類型に該当します。少年事件とはいえども決して軽くは扱われませんし、危険運転致死罪であれば原則逆送と裁判員裁判の対象となり、複雑な手続と重い心理的負担を伴う法廷審理が行われます。このような重大事案では、刑事事件・少年事件に熟練した弁護士のサポートが不可欠です。

特に退去強制のリスクに直面する可能性がある場合、事前に適切な弁護活動を行うことでそのリスクを最小化できる可能性があります。例えば、家庭裁判所の段階でできるだけ保護処分にもっていけるよう、少年の反省・更生の意欲や環境の改善策を示す弁護活動が考えられます。逆送となり刑事裁判になっても、刑期の軽減を目指すことが重要です。早期に弁護士に相談し、被害者遺族に対する誠意ある対応や再発防止策の準備などを進めることで、裁判官の心証を良くし得るポイントはいくつもあります。
もちろん被害者遺族への謝罪や賠償(被害弁償)は不可欠ですが、それだけでは十分ではありません。将来的に息子さんが在留資格を更新して日本に留まるためにも、また息子さん自身の更生のためにも、できるだけ早い段階で専門の弁護士に依頼し、万全の弁護活動を行うことが肝要です。専門家の適切なサポートを受けることで、結果として退去強制という最悪の事態を避けられる可能性が高まります。

外国籍の少年が刑事事件を起こした場合、その手続きは日本人の少年と同様にまず家庭裁判所で進みますが、18・19歳の特定少年に関しては、成人同様の裁判に移行し厳しい刑事処分が科される可能性が、18歳未満の少年より高いです。そして判決内容次第では退去強制という非常に重大な結果を招きかねません。本件のようなケースでは、早期に刑事弁護に強い弁護士へ相談し、適切な手当てをすることがご家族にとって何より重要な対応策となります。専門家とともに最善を尽くし、息子さんの将来と在留資格を守るための行動をぜひ早めに起こしてください。

永住資格を持つ外国人が業務上横領で有罪となったときの刑事弁護と退去強制への具体的影響

2026-03-03

外国人永住者が業務上横領で逮捕された場合の刑事弁護と強制送還リスク

強制送還

日本で長年暮らし、永住権(永住者の在留資格)を持つ外国人であっても、犯罪を犯して有罪判決を受ければ日本での在留に大きな影響が及ぶ可能性があります。

例えば、勤務先の会社で経理担当者などが社内資金を業務上横領した場合、刑事上の処罰だけでなく、強制送還(退去強制)という重大なリスクも考慮しなければなりません。
本記事では、永住者による業務上横領事件を例に、犯罪の内容や刑事手続き、そして有罪判決が在留資格に与える影響について詳しく解説します。

具体的には、業務上横領罪刑法253条)の概要と量刑相場、前科の有無による違い、永住者が有罪となった場合の退去強制リスクと判断基準、刑事弁護活動の重要性(不起訴や執行猶予判決獲得がもたらす効果)、弁護士による具体的なサポート例(自首への同行、被害弁償や示談交渉、身柄解放、裁判での弁護)とその効果、さらに外国人が直面しうる不利益(永住資格取消し・在留期間更新拒否など)とその回避策、最後に退去強制手続きの流れ(収容・異議申立て・仮放免など)と専門家による対応の重要性について順に説明します。
法律用語についてもできるだけ噛み砕いて説明しますので、類似のケースでお悩みの方の参考になれば幸いです。

1. 業務上横領罪の構成要件と法定刑

業務上横領罪とは、簡単に言えば「仕事上預かっている他人の物を、自分のもののように使い込む犯罪」です。刑法第253条に規定された犯罪で、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」10年以下の拘禁刑に処せられます。

ここで「横領」とは委託された他人の物について権限なく処分し、自分のもののように利益を図る行為を指し、例えば預かった金品を無断で売却したり着服したりすることです。
「業務上自己の占有する他人の物」とは、仕事の一環として他人の物を預かり管理している状況を意味します。

つまり「業務上横領」は、単なる横領(刑法252条、5年以下の拘禁刑)に比べて業務上の地位を悪用したより悪質な横領であり、信頼関係を裏切るため刑が加重されています。

実際、「業務」とは反復継続して委託を受け他人の物を占有・管理する職務をいい、職業的な地位に限らず法令や契約に基づく場合も含まれます。
具体例としては「会社の経理担当者が業務で預かっている現金を着服する行為」などが典型です。

以上が業務上横領罪の構成要件と法律上の刑罰ですが、次にこの犯罪で実際どの程度の刑が科されるのか見てみましょう。

2. 業務上横領の量刑相場と前科の有無が与える影響

業務上横領罪の量刑(実際に科される刑)は、ケースにより大きく異なりますが、最も影響が大きいのは被害金額です。法定刑こそ10年以下の拘禁刑と重いものの、実際には盗んだ金額や犯行期間・回数、被害回復状況、反省の度合いなどが考慮されます。

大まかな目安として、被害額が100万円以下の比較的小規模な横領であれば執行猶予付き判決になることが多く、500万円程度の被害では拘禁刑2年程度の実刑(刑務所収容)が見込まれます。
被害額1,000万円で懲役2年6月、3,000万円規模では懲役3年といった判決例があり、金額の増加に伴い実刑期間も長期化する傾向があります。
もっとも、これはあくまで目安であり、実際の裁判では示談成立の有無や犯行態様も踏まえて量刑が決定されます。

特に被害者との示談(被害弁償)が成立しているか否かで量刑は大きく変わります。

過去の判例でも、同程度の被害額でも示談成立の場合は刑が軽く抑えられる傾向が明らかです。例えば被害額数百万円規模でも、被害者に全額弁償して許しを得られれば執行猶予が付与され刑務所行きを免れる可能性があります。

また、犯人に前科があるかどうかも重要です。
前科がない初犯の場合、被害額が大きくなければ執行猶予となるケースも多いですが、前科が複数ある再犯者では同じ額でも実刑になりやすくなります。

被害金額が小さければ、示談次第で不起訴(起訴猶予)になる場合もありますが、金額が大きい場合には前科がなくても長期の実刑になる可能性があります。つまり、初犯か再犯か、被害額の大小、そして被害者への賠償・謝罪の有無が刑事手続きの結果を大きく左右するわけです。そのため、少しでも刑を軽くしたいなら早期に被害者対応を図るなどの対策が重要となります。

3. 永住者に対する有罪判決と退去強制のリスク

では、永住者たる外国人が業務上横領で有罪判決を受けた場合、在留資格にどのような影響が及ぶでしょうか。

結論から言えば、永住者であっても一定の場合には退去強制(強制送還)の対象となります。日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)第24条には退去強制となる事由(理由)が列挙されています。一般的に外国人が刑事事件で有罪判決を受けた場合、その刑の重さによって退去強制事由に該当することがあります。具体的には、「1年を超える拘禁刑」(執行猶予が付かず実際に1年以上服役する刑)が下された場合、永住者であっても例外ではなく刑期終了後に原則強制送還となります。たとえば拘禁刑2年の実刑判決が確定したようなケースでは、刑務所での服役を終えた時点で入管当局に身柄を引き渡され、本国への送還手続きに入るのが原則です。これは在留資格の種類(永住者か否か)を問わず適用される基準です。

一方、執行猶予付き判決や刑期が1年以下の場合には、直ちに退去強制とはならない可能性があります。入管法上、無期刑または1年を超える拘禁刑が退去強制の基準とされており、逆に言えば「1年を超えない刑罰」であれば通常はその事由には該当しないからです。

例えば永住者が拘禁刑1年・執行猶予3年の判決を受けた場合、それ自体では入管法24条の強制退去事由には該当しません。
ただし注意すべき例外もあります。麻薬・覚醒剤などの薬物犯罪では、刑の種類や長さに関わらず有罪判決を受けた段階で退去強制の対象となります。たとえ執行猶予が付いた場合でも、麻薬取締法違反で有罪となれば判決確定後に入管施設へ収容され、送還手続きに入ります。業務上横領罪自体はこれら特殊な例外規定には該当しませんが、犯罪種別ごとの規定にも留意が必要です。

さらに近年では、永住資格の取消し制度の拡大にも注意が必要です。永住者在留資格は一度許可されれば期間の定めがない強固なものですが、一定の場合には取り消され得ます。

主な取消事由として、偽りその他不正手段による永住許可取得や長期不在のほか、「重大な犯罪行為」が挙げられます。

現行法でも「1年以上の実刑判決」を受けた場合のほか、文書偽造罪麻薬犯罪等で有罪となった場合には永住資格が失われるとされています。加えて2024年の法改正により、詐欺罪など一定の重大犯罪で有罪となった場合も永住許可を取消しできる規定が導入されました。

つまり、永住者であっても犯罪を犯して有罪になれば、判決内容次第では永住資格そのものが剥奪され退去強制につながるリスクがあるのです。永住資格を持っていても1年を超える実刑判決を受ければ原則強制送還となり、逆に執行猶予付き判決や1年以下の刑であれば直ちに退去強制とはならない可能性もあります。
刑事裁判の結果は永住者の在留継続に直結し得る重大事項なのです。

4. 起訴・不起訴や執行猶予判決が強制送還に与える影響

有罪判決の内容次第で退去強制の対象になるかどうかが決まります。
ここで重要なのは、「起訴されて有罪になるか、それとも不起訴で済むか」という点です。

外国人事件では、たとえ刑事裁判で執行猶予付き判決によって実刑を免れた場合でも、強制退去になってしまう可能性が高いと指摘されています。特に就労ビザなど在留資格「別表第一」に属する外国人(永住者等を除く)の場合、該当犯罪で懲役刑に処せられれば刑期の長短や猶予の有無に関係なく退去強制事由に該当する広範な規定があります。
一方で、不起訴(起訴猶予や嫌疑不十分等で起訴されないこと)となれば在留資格に影響することは基本的にないとされています。

つまり、「有罪判決を受けないこと」こそが外国人にとって最も確実な在留リスク回避策になります。

そのため、外国人が刑事事件を起こした場合、不起訴を獲得することが非常に大切です。不起訴で終われば前科も付かず、日本の入管当局に強制退去事由を問われる心配はひとまずありません(もっとも逮捕歴自体は将来の在留審査で考慮される可能性はありますが、正式な前科とは異なります)。

万が一、起訴が避けられず有罪判決となってしまった場合でも、執行猶予付き判決を得ることには大きな意味があります。
先述のように永住者の場合、執行猶予判決それ自体では直ちに退去強制とはなりませんし、在留資格も判決直後に当然には取り消されません。法律上、退去強制事由に該当しない限り有罪判決を受けても現在の在留資格はそのまま維持されます。ただし「在留資格は維持されても、次回の在留期間更新が難しくなる」リスクが高い点には注意が必要です(この点は後述します)。

いずれにせよ、実刑判決で服役する事態を避け執行猶予を得ることで、送還される可能性を大幅に下げることが期待できます。また執行猶予中は日本社会内で更生する機会が与えられるため、入管当局から特別に在留を許可される(=強制送還を見送る)余地も生まれます。総じて、「不起訴を目指し、起訴された場合も執行猶予付きの軽い判決を確保する」ことが強制送還回避に直結すると言えるでしょう。

一方で、有罪判決が確定して退去強制事由に該当してしまった場合には、刑の執行終了後ただちに入管収容・送還となるケースが多いです。
例えば拘禁刑2年の実刑が確定した永住者は、刑務所出所時にそのまま入国管理局に引き渡され、本国送還の手続きが開始します。この段階ではもはや裁判所の管轄外であり、本人や弁護士ができることは「在留特別許可」を求める嘆願くらいしかありません。
そうなる前に、刑事手続の中で何とか退去強制事由に該当しない結果を得ることが重要なのです。

5. 刑事弁護における具体的な弁護活動とその効果

外国人が刑事事件を起こした場合、日本人以上に慎重かつ積極的な弁護活動が求められます。特に永住者であっても有罪になれば退去強制リスクがある以上、最善の結果を得るために弁護士のサポートは不可欠です。
では具体的に、弁護士はどのような活動を行い、どんな効果が期待できるのでしょうか。

• 自首の同行・事案の早期発覚への対応

もし本人が犯行を認め反省しているなら、事件が警察に発覚する前に自主的に出頭(自首)することも検討されます。刑法上、犯罪事実が発覚する前に自首すると刑が減軽される可能性があります(刑法42条)。業務上横領罪の場合、法定刑10年以下の懲役が自首により上限5年以下に短縮されうるということです。
また自首は「逃亡せず真摯に向き合う態度」と評価され、その後の逮捕や勾留の回避にも有利に働きます。
弁護士は依頼者に付き添って警察へ出頭し、事情聴取に立ち会うなどして権利を守りつつ、自首の効果が最大限認められるようサポートします。

• 被害弁償と示談交渉

業務上横領事件では、被害額の補填と被害者の許し(宥恕)を得ることが極め重要です。弁護士は依頼者と相談の上で会社側(被害者)に謝罪し、盗んだ金銭を全額弁償する交渉を行います。被害者が経済的損失を回復し、加害者を許す内容の示談が成立すれば、検察官が起訴を見送る可能性が高まります。実際にも「横領罪の場合、会社内で事実が発覚した段階で被害弁償をして示談が成立すると、そもそも警察沙汰にならないことも多い」とされます。たとえ告訴・逮捕に至った後でも、示談成立は不起訴獲得や執行猶予判決に向けて強力な材料となります。示談次第では「被害金額が小さければ不起訴になる場合もある」ほど量刑上有利に働きますし、金額が大きく実刑が避けられない場合でも「示談することによって有利になり、身柄拘束期間も短くなる可能性」があります。弁護士が間に入ることで被害者との冷静な交渉が可能となり、示談成立への道が開けるのです。

• 身柄解放活動(勾留阻止・保釈請求)

外国人の場合、逃亡や国外逃避の恐れがあるとみなされ勾留が長引く傾向があります。しかし弁護士が付くことで、適切な住居や身元引受人の確保、パスポート預託など逃亡防止策を提示し、早期の身柄解放を目指せます。逮捕直後であれば検察官・裁判官に対し勾留しないよう働きかけ、勾留決定後であっても速やかに準抗告(不服申立て)や保釈請求を行います。正規の在留資格を有している限り、外国人であっても日本人同様に保釈は法律上認められます。
実際、弁護士の尽力により「外国人では珍しく保釈許可が出された」例も報告されています。身柄が解放されていれば自由に働いて賠償金を工面することもできますし、裁判の準備も十分に行えます。ひいては裁判官に「社会内で更生できる環境がある」とアピールでき、執行猶予判決を得やすくなるメリットもあります。

• 裁判での弁護活動

起訴後の刑事裁判では、被告人に有利な事情をできる限り裁判所に伝え、執行猶予付き判決や減刑を獲得する弁論を行います。具体的には「反省して再犯防止に努めていること」「家族が監督し更生を支援すること」「被害が回復し被害者が許していること」「犯行が一時的な迷いによるもので計画的・常習的ではないこと」等を主張立証します。
また必要に応じて情状証人(家族や職場上司など)の意見陳述を手配し、被告人の人柄や今後の更生見込みを証言してもらいます。否認事件(やっていない主張)であれば、検察側の立証不十分を突いて無罪や証拠不採用を勝ち取るべく法的主張を展開します。
業務上横領は証拠書類の分析や金銭流れの解明が重要となるため、弁護士の専門知識が不可欠です。適切な弁護活動により、判決で執行猶予が付与されれば前述のように強制送還の可能性も低減しますし、仮に実刑でも刑期を短くできれば在留特別許可の望みをつなぐことができます。

以上のように、刑事弁護人は事件の発覚前から裁判後まで多岐にわたる支援を行い、依頼者の権利と日本での生活基盤を守るため尽力します。特に外国人の場合は「刑事手続だけでなく入管上の対応策も常に念頭に置いておく必要」があると指摘されており、刑事弁護と並行して在留資格の維持に向けた戦略を取ることが重要です。

早めに弁護士に依頼することで、刑事手続の段階から適切な対応が可能となり、強制送還のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

6. 外国人被告人が直面する不利益と回避策

外国人が刑事事件を起こすと、日本人にはない追加の不利益が生じ得ます。
最大のものはこれまで述べてきた在留資格への影響、すなわち本国への強制送還ですが、たとえ強制送還を免れた場合でも油断はできません。ここでは外国人ゆえに直面する主な不利益と、その回避・軽減策について整理します。

• 永住資格の取消し

永住者の場合、有罪判決を受けたことで直接に永住資格が取り消される可能性があります(入管法第22条の4等)。前述のとおり、近年の改正で特定の重大犯罪で有罪となれば永住許可を取り消し得る規定が設けられました。
例えば詐欺罪麻薬取引の有罪判決が出たケースでは、刑が軽くても法務大臣の裁量で永住資格を剥奪される場合があります。

永住資格が取り消されれば在留資格自体が失われ不法滞在の状態となるため、結局は退去強制手続きにかけられてしまいます。業務上横領罪詐欺罪等と並ぶ財産犯であり、改正法の運用次第では同様に重く見られる可能性も否定できません(現時点で明示的に横領が取消事由とはされていませんが、判例上「重大な犯罪」と評価されれば取消しうる余地があります)。
回避策としては、まずそもそも有罪判決(特に実刑判決)を受けないよう努めることです。その上で、万一有罪となってしまった場合でも、退去強制手続きの中で在留特別許可を働きかけるなどして強制送還を避け、結果的に永住資格の取消しを免れる道を探ることになります。

• 在留期間更新の拒否

永住者以外の在留資格(就労ビザや留学ビザなど)を持つ外国人が有罪判決を受けた場合、仮に退去強制をまぬがれても次回の在留期間更新で許可が下りない可能性があります。
入管法21条では在留期間更新について「法務大臣は」「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に「許可できる」と定められており、その判断基準として素行が善良であることが要求されています。入管当局のガイドラインによれば、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為」は素行不良と判断され、更新不許可の消極要素となるとされています。たとえ退去強制事由に当たらない有罪判決でも、前科が付いた事実自体が「素行不良」とみなされ更新が困難となる危険が高いのです。
例えば技術・人文知識・国際業務ビザなどで日本に滞在している人が執行猶予付きでも有罪となれば、「善良な素行」とはいえないとして次回の在留審査で敬遠されるでしょう。回避策としては、これもまず不起訴・無罪を目指すことが第一です。もし有罪になってしまった場合、判決後に一定期間問題を起こさず更生に努めることで、時間の経過とともに情状が好転する可能性もあります。
具体的には、更生状況を示す資料(勤務先の評価書、地域社会での奉仕活動記録など)を揃え、在留期間更新時に提出して法務大臣に情状を訴えるという方法も考えられます。また、どうしても更新が難しい場合には在留資格の変更(例えば日本人配偶者等ビザへの変更など)を検討する余地もあります。ただし前科があるとどの在留資格でも審査は厳しくなるため、専門家の助言を得て綿密に対策を講じる必要があります。

• 社会的信用の低下と就労上の不利益

前科が付くことにより、日本国内での社会的信用も低下します。就職や転職の際に前科が障害となったり、資格職では欠格事由に該当して職を失う可能性もあります。特に外国人の場合、一度日本での在留資格を失えば就労の機会自体がなくなってしまいます。たとえ強制送還されなくても、前科を理由に雇用契約を打ち切られたり解雇されるケースも考えられます。これらは法的な制裁ではなく社会的・経済的な不利益ですが、外国人にとって日本で生活基盤を維持する上で深刻な問題です。
回避策として、雇用主や周囲の理解を得る努力が必要です。弁護士を通じて雇用主に事情を説明し、示談成立によって企業からの宥恕を得ていれば寛大な対応が期待できる場合もあります。また、有罪判決後であっても真摯に更生し働き続けることで、時間とともに信頼を回復する道もあります。しかしながら、こうした社会的信用の回復には長い年月と本人の不断の努力が求められるため、そもそも前科をつくらないことが最善策である点は否めません。

以上のように、外国人が刑事事件を起こすと在留資格の剥奪・更新拒否という重大な不利益や、社会生活上の困難が生じます。このような不利益を避けるには、繰り返しになりますが刑事弁護の段階で最善を尽くし、有罪判決や実刑を回避することが最も効果的です。また万一、退去強制の手続きに入ってしまった場合でも、次に述べるとおり専門家の助力の下で在留特別許可など最後の望みに賭けることができます。大切なのは「自分は永住者だから大丈夫」「執行猶予だから平気」と安易に考えないことです。永住者であっても場合によっては退去強制されることがありますし、そうならずとも今後の在留が危うくなることは十分にありえます。最悪の事態(日本で築いた生活基盤の喪失)を防ぐため、早期に弁護士へ相談し適切な対応を取ることが肝要です。

7. 退去強制手続の流れと専門的対応の重要性

仮に有罪判決が確定して退去強制事由に該当してしまった場合、あるいは在留資格取消し等で退去強制手続に入った場合、その後の流れは刑事手続とは別に進みます。退去強制は入管法に基づく行政手続であり、以下のような標準的なステップで行われます。

• ステップ①

入国警備官による「違反調査」 – 入管当局の係官(入国警備官)が対象外国人の違反事実を調査します。刑事事件で有罪判決を受けた場合はその判決書が根拠となり、刑務所出所時や判決確定後に身柄が引き渡されることもあります。

• ステップ②

身柄の「収容」と「監理措置」 – 対象者は原則として入国者収容所等に収容(身柄拘束)されます。収容令書に基づき行われ、不服申立て(仮放免申請など)がなければ送還まで拘束が続きます。ただし2023年の入管法改正で導入された「監理措置」により、一定の要件下では収容に代えて監督人の下で生活しながら手続を進める制度もあります。もっとも監理措置は適用に裁量があり、基本的にはまず収容されると考えておくべきでしょう。

仮放免の申請

– 収容された場合でも、健康上や人道上の理由がある場合などには仮放免を申請することが可能です。仮放免が許可されれば保証金を納付し、一時的に収容先から出て生活することが認められます(定期的な出頭義務等があります)。退去強制手続きが長期化する際には仮放免で負担軽減を図ることが重要です。

• ステップ③

入国審査官による「違反審査」 – 入国審査官が改めてその外国人が退去強制事由に該当するかどうかを審査します。ここでは主に書面審査で、有罪判決の写しや在留経緯などを確認し、明らかに事由該当ならば次のステップへ送致します。違反審査の結果、退去強制令書の発付や口頭審理への付託、あるいは在留特別許可の許可といった判断がなされます。
例えば「1年以上の実刑判決」に該当する場合、ほとんど争いようがないため審査官段階で退去強制令書が発付されることも多いです。一方、永住者などで家族事情等斟酌すべき事情がある場合、特別審理官による口頭審理へ回されることがあります。

• ステップ④

特別審理官による「口頭審理」 – 裁判でいう公判に相当する手続きで、法務大臣から指名された特別審理官が外国人本人やその代理人(弁護士・行政書士)から事情を聴取します。ここでは本人に母国に送還されたくない理由や日本にとどまる必要性などを弁明する機会が与えられます。例えば日本に生活基盤があり扶養すべき家族(日本人配偶者や子)がいること、犯罪が一過的なもので深く反省していること、再犯の恐れが乏しいことなどを主張します。特別審理官は口頭審理の結果、「異議申出」の可否を本人に通知します。もし異議申出権が認められず即時に退去強制令書発付とされた場合、本人はその場で強制送還が決定してしまいます。

• ステップ⑤

法務大臣の「裁決」(異議申出審査) – 特別審理官が異議の申出を認めた場合、または本人がそれに不服で異議申出を行った場合(通知日から3日以内に書面提出が必要です)、最終的に法務大臣または地方出入国在留管理局長による裁決が下されます。この過程で考慮されるのが在留特別許可の可否です。法務大臣の裁量で例外的に日本への在留を認めるのが在留特別許可であり、家族状況や生活実態、人道上の理由など個別事情が総合考慮されます。永住者で日本に日本人配偶者や子がいる場合などは強制送還すればその家族が深刻な影響を受けるため、在留特別許可が与えられるケースもあります。裁決の結果、在留特別許可が下りればそのまま日本に残留できますが、許可されなければ退去強制令書が発付され強制送還が確定します。

以上が退去強制手続きのおおまかな流れです。刑事裁判とは別個に進むため複雑に感じられるかもしれませんが、本人としては弁明の機会が複数与えられることになります。しかし注意すべきは、一度「退去強制」の最終決定が下されると覆すことは極めて困難である点です。そのため、この手続きでは最初から専門家(弁護士・行政書士)のサポートを受けることが極めて重要です。

専門家は、本人や家族から詳しい事情を聴き取り、在留特別許可の嘆願書を作成したり、有利な資料(嘆願書署名、身元保証書、勤務先からの陳情書など)を揃えたりします。口頭審理にも代理人として同行し、法務当局に対して法律的・人道的観点から在留継続の必要性を訴えます。
また仮放免の申請手続きも代理して行い、収容中であれば少しでも早く解放されるよう働きかけます。とくに異議申出の期限(通知から3日以内)は非常に短いため、専門家の迅速な対応がなければ権利を行使し損ねるおそれもあります。残念ながら退去強制令書が発付されてしまった場合でも、場合によっては行政訴訟で争うなど最後の手段も考えられますが、成功率は高くありません。そのため、そうなる前の行政段階でいかに適切な主張を展開できるかが勝負となります。

いずれにせよ、退去強制は「突然」やってくることもあります。刑事裁判中でも、例えば在留資格を持たない被告人であれば判決前に入管収容・送還されてしまうケースすらあります。永住者の場合は判決確定までは在留資格があるため通常は刑事手続終了後に移行しますが、決して人ごとではありません。

「自分は大丈夫」と思わず、手遅れになる前に専門家へ相談することが肝要です。適切な弁護活動と入管手続きへの対応によって、日本で築いた生活を守る可能性は大いに高まります。強制送還という最悪の結果を避けるためにも、刑事弁護士と入管実務に強い専門家の協力の下、早期から万全の対策を講じましょう。

外国人永住者が業務上横領で逮捕された場合、刑事責任だけでなく強制送還のリスクも生じます。本記事では業務上横領罪の内容や量刑相場、有罪判決と退去強制の関係、執行猶予や不起訴の重要性、弁護士による対応について分かりやすく解説します。

永住者が無免許運転で逮捕されたら強制送還の可能性はある? 刑事弁護専門家へご相談を

2026-02-17

永住者が無免許運転で逮捕されたら:刑事弁護専門家への相談を

強制送還されてしまう可能性は?

ケース紹介:永住者Aさんの無免許運転事件

日本に永住者在留資格で暮らす外国人のAさんは、トラックドライバーとして働いていました。かつては運転免許証を持っていましたが、8年前に飲酒運転が発覚して罰金刑を受けた際に免許取消処分となっています。ところが、その後も仕事でトラックの運転を続けてしまいました。
6年前、Aさんは一時停止違反をきっかけに警察に停止を求められ、このとき無免許運転が発覚しました。その結果、懲役1年4か月・執行猶予5年の有罪判決を受けています。にもかかわらずAさんは反省せず、更に無免許での運転を続行。そして今年になって高速道路で「もらい事故」に遭い、駆けつけた警察官から免許証の提示を求められたことで無免許運転が再び発覚し、現行犯逮捕されてしまいました。

無免許運転の刑事罰と量刑の見通し

無免許運転(無免許での自動車運転)は日本の法律で刑事罰の対象となる重大な違反行為です。道路交通法の規定では、無免許運転をした場合「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という厳しい法定刑が定められています。初犯であっても見逃されることはなく、正式な刑事処分を受ける可能性があります。

実際に科される刑罰の重さ(量刑)は、事件の具体的事情によって変わります。特に次のような点が量刑判断で考慮されます

• 運転の頻度: 無免許でどれだけ頻繁に車を運転していたか
頻繁で常習的であるほど悪質と判断され、刑が重くなりがちです

• 運転を続けていた期間: 免許を失ってからどれくらい長期間にわたり無免許運転をしていたか
期間が長いほど反省がないとみられ、不利になります。

• 同種の前科の有無: 過去に無免許運転飲酒運転など類似の違反で処罰された前科があるか
前科がある場合、処分は回を重ねるごとに重くなるのが通常です。特に前回執行猶予だった場合、再犯時には実刑となる可能性が高まります。

• 反省・謝罪の行動: 被害者の有無にかかわらず、反省の意思を示す行動を取っているか。
例えば、無事故でも交通安全に関する団体へ寄付を行うなど謝罪・贖罪の意思表示があれば、多少は有利な情状として考慮される場合があります。

量刑の傾向として、前科のない初犯の無免許運転なら罰金刑で済むことが多いですが、繰り返している場合は執行猶予付き判決、さらに重なると実刑(刑務所での服役)が選択される傾向があります。
実際、Aさんのように過去に2度の前科飲酒運転による罰金刑と、無免許運転による執行猶予付き判決)があるケースでは、今回3度目の発覚では処分は一層重くなるでしょう。前回の執行猶予期間自体は既に経過していますが、それでも今回は執行猶予の付かない実刑判決が下される可能性が高いと考えられます。予想される刑期は、同種事例の傾向から見て、適切な弁護活動を行えば、6か月から10か月程度の拘禁刑になる見通しです。実刑となれば刑務所で服役しなければならず、Aさんは長期間にわたり社会から隔離されることになります。

強制送還(退去強制)される可能性はあるか?

外国人の方が刑事事件で有罪判決を受けた場合、「退去強制処分(いわゆる強制送還)」になるかどうかも大きな懸念点です。とくに永住者であっても、一定の重大な犯罪で有罪となれば日本からの退去を強制される可能性があります。
入管法(出入国管理及び難民認定法)24条4号リの規定では、「無期もしくは1年を超える拘禁刑の実刑判決」を受けた場合に退去強制事由に該当すると定められています。簡単に言えば、「実刑で1年を超える刑」が確定すると原則として強制送還対象になるということです。ただし執行猶予付き判決(刑が全部猶予)であれば直ちに強制送還とはなりません(一部執行猶予の場合も、猶予されず服役する部分が1年以下であれば強制送還の対象外です)。

今回のAさんのケースでは、適切な弁護活動を行えば、前述のとおり見込まれる刑期は1年未満(6~10か月程度)です。そのため入管法上の強制退去事由には該当しないと考えられます。つまり、有罪判決を受けてもその刑罰だけで直ちに強制送還になる可能性は低いでしょう。永住者という在留資格は期限の定めがなく更新の必要もありませんから、刑期が終わった後もAさんは引き続き日本に在留できる見込みです。

なお、今回の無免許運転が前回の執行猶予期間中に行われていた場合については、注意が必要です。
この場合、新たな無免許運転について有罪判決を受けると、前回の執行猶予が取り消され、猶予されていた刑の執行が開始される可能性があります。
ここで重要なのは、入管法上の退去強制事由の判断方法です。
入管法24条4号リが定める「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」に該当するかどうかは、事件ごとに宣告された刑の内容によって判断されるのであり、執行猶予が取り消された結果、複数の刑期を合算して1年を超えるかどうかで判断されるものではありません。

したがって、仮に前回の執行猶予が取り消され、
• 前の事件について、懲役刑1年4か月が課され
• 今回の事件について、例えば拘禁刑8か月の実刑が言い渡された
という場合、服役期間は「2年2か月」と「1年を超える」ことになりますが、今回の事件における宣告刑が「8か月」、即ち「1年以下」である限り、入管法24条4号リの退去強制事由に該当することにはなりません。

もっとも、前回の事件について宣告された刑自体が、結果として「1年を超える実刑」となった以上、その前回判決の確定時点で既に退去強制事由に該当し得る立場にあったこと、また、同種の犯罪を重ねているという事実が入管実務上きわめて不利に評価されることには注意が必要です。
実際には、退去強制該当性の有無とは別に、在留資格更新の可否などに重大な悪影響を及ぼす可能性が高いといえます。

いずれにせよ、執行猶予中の再犯や、複数回にわたる無免許運転は、刑事面・入管面の双方で極めてリスクが高い状況を招きます。刑事責任の見通しだけでなく、在留資格への影響を正確に見据えたうえで、早期に専門家へ相談することが不可欠です。

刑事弁護の専門家に依頼することの重要性

以上のように、無免許運転を繰り返したAさんは実刑の危機に直面しており、場合によっては1年以上の実刑判決を受けるなど、在留資格にも重大な影響が及ぶ可能性があります。このような状況では、できるだけ早期に刑事弁護に詳しい弁護士(刑事弁護人)に相談・依頼することが極めて重要です。

経験豊富な弁護士であれば、まず適切な情状弁護活動を通じて少しでも刑を軽くできるよう尽力してくれます。具体的には、取調べに対するアドバイスや、反省を示すための措置について提案してくれるでしょう。
例えばAさんの場合、繰り返し無免許運転をしていた点は不利ですが、弁護士の助言に従い二度と運転しない誓いを立てて職を転換することや、交通違反防止活動への寄付を行うことなど、反省の姿勢を示す行動を取れば裁判所の心証が幾分か良くなる可能性があります。弁護士はこうした有利な事情を的確に裁判所へ伝え、執行猶予付き判決の獲得や刑期の減軽を目指して働きかけてくれます。

また、Aさんのように逮捕・勾留されてしまった場合には、身柄解放に向けた働きかけも弁護士の重要な役割です。弁護士は検察や裁判所に対して「逃亡や証拠隠滅のおそれが低い」ことを主張し、勾留を認めないよう求めたり、早期に保釈を請求したりできます。実際、今回の事例では無免許である事実関係は争いようがなく証拠隠滅の心配は小さいと思われます。弁護士が付けば、勾留の必要性が低いことを説得的に示し、一日も早くAさんが身柄の拘束から解放されるよう手続きを取ってくれるでしょう。

さらに、仮に刑事裁判の結果によって入管法上の強制退去手続きが問題となる場合(例えば実刑が1年を超えてしまった場合など)には、弁護士は在留特別許可の取得に向けた対応についてもアドバイスできます。在留特別許可とは、強制送還事由に該当する外国人であっても情状しだいで法務大臣の裁量により日本に残留を認めてもらう制度です。永住者として日本に長年住み、家族も日本にいるような場合にはこの許可が下りる余地を探ることになりますが、そのためには刑事手続と並行して入管当局への働きかけや資料準備が必要です。刑事弁護に強い弁護士であれば、こうした入管手続きにも精通した専門家と連携し、できる限りの手を尽くしてくれるはずです。

外国人の方が日本で刑事事件を起こしてしまった場合、自分だけで事態に対応するのは非常に困難です。言葉の問題や法制度への不案内もあり、不利な状況を招きかねません。Aさんのように前科があるケースであればなおさら一刻を争います。早期に専門の弁護士に相談し、適切な対策を講じることで、刑事処分の軽減や在留資格への影響最小化を目指すことができます。ご本人が日本語での対応に不安がある場合は、周囲のご家族やご友人がサポートして速やかに弁護士に連絡を取ることも検討してください。状況が深刻化する前にプロの力を借りることで、将来への悪影響を可能な限り減らすことができるでしょう。

結論として、無免許運転のような刑事事件を起こしてしまった永住者の外国人の方は、一日でも早く刑事弁護の専門家へ相談されることを強くお勧めいたします。専門家のサポートを受けることで、有利な事情を最大限に汲み取った弁護活動がなされ、処分の軽減や日本での生活の保全につながる可能性が高まります。困ったときこそ一人で悩まず、ぜひ専門家に頼ってください。安心して再出発を図るためにも、迅速な行動が肝心です。

永住外国人が酔って店の看板を壊し逮捕!器物損壊事件で起訴・強制送還を防ぐ弁護の重要性

2026-02-03

永住外国人が酔って店の看板を壊し逮捕!器物損壊事件で起訴・強制送還を防ぐ弁護の重要性

お酒と手錠

日本で暮らす永住者の外国人が、ある日お酒に酔った勢いで店の看板を壊してしまい、器物損壊罪逮捕されてしまったらどうなるでしょうか。
ご本人もご家族も突然の逮捕に大きな不安を抱えることでしょう。
「このまま起訴されて前科がついてしまうのか」「刑務所に入ることになるのか」「永住資格があるのに強制送還されてしまうのか」と、夜も眠れない思いかもしれません。
そこで本記事では、外国人の器物損壊事件を題材に、器物損壊罪とはどのような犯罪か、起訴・不起訴や強制送還の可能性に刑事弁護活動がどう影響するのかを、弁護士がわかりやすく解説します。

器物損壊罪とは?

器物損壊罪(きぶつそんかいざい)とは、刑法第261条で定められた犯罪で、簡単にいえば「他人の物」を故意に壊したり価値を損なわせたりする行為を指します(詳しくはこちらをご覧ください。)。
法定刑(法律で定められた刑罰)の上限は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料と規定されています。
ここでいう「損壊」とは、単に物を物理的に破壊するだけでなく、その物の本来の効用(使いみち)を損なう行為も広く含まれます。

例えば、他人の店先の看板を叩き壊したり、他人の衣服にペンキを塗って着られなくしたりするようなケースも、器物損壊罪に該当し得ます。

事例:永住者の外国人が酔って看板を壊し逮捕

では、永住資格を持つ外国人のAさんが酔った勢いでお店の看板を壊してしまい、器物損壊罪の容疑で現行犯逮捕されたケースを考えてみましょう。Aさんは酒に酔っていたためその場の感情に任せて看板を倒してしまい、駆け付けた警察官によって逮捕されました。
突然の逮捕にAさん自身もショックを受け、翌日には自分のしたことの重大さに気づいて深く反省しています。
しかし日本の刑事手続では、「酔っていた」は言い訳にはならず、Aさんが故意に看板を壊した以上、刑事上の責任を問われる立場に置かれてしまいます。
Aさんは警察署の留置場で身柄を拘束されています。Aさんの家族も、「このまま起訴されてしまうのか」「国外退去にならないか」と不安を募らせています。

刑事処分とその影響(起訴・不起訴)

刑事事件では、警察に逮捕された後、検察官が起訴(正式に裁判にかけること)するか、または不起訴とするかを決定します。

特に器物損壊罪は被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪(しんこくざい)であり、被害者である店側との間で早期に示談(和解)が成立すれば、そもそも告訴されず刑事事件化を防ぐことが可能です。

仮に被害届や告訴状が出された後でも、弁護士を通じて被害者との示談がまとまれば、告訴を取り下げてもらい不起訴処分を獲得できる場合があります。

不起訴になれば裁判を経ずに釈放され、前科もつきません。一方、起訴されてしまうと、事実に争いがない以上、有罪が確定すれば罰金刑や拘禁刑などの刑事処分が科され前科がついてしまいます。なお、一度起訴が決まってしまった後に被害者が告訴を取り下げても、起訴自体は取り消せないため注意が必要です。

永住者であっても強制送還される可能性

永住者だからといって安心できない点として、日本で罪を犯し有罪判決を受ければ、たとえ永住権を持っていても強制送還(退去強制)される可能性があることが挙げられます。

出入国管理及び難民認定法(入管法)では、外国人が一定の重大な犯罪で有罪となった場合に強制退去となる事由が定められており、その一つに「**1年を超える拘禁刑**に処せられた場合」という規定があります。
つまり、もし裁判で執行猶予の付かない1年を超える実刑判決が確定すると、刑務所での服役後に在留資格が取り消され、日本から強制的に退去させられるおそれがあります。

一方で、刑事弁護によって不起訴執行猶予付き判決など比較的軽い処分を得られれば、強制送還のリスクを低減することができます(※執行猶予判決や1年以下の刑の場合、入管法上原則として強制送還の対象とはなりません)。

詳しくはこちらをご覧ください。

弁護士による刑事弁護の重要性

以上のように、起訴されるか否かや刑の重さ次第で、その後の前科の有無や在留資格への影響(強制送還の有無)が大きく変わります。そのため、早期に刑事弁護に強い弁護士を付けることが極めて重要です。

弁護士であれば、逮捕直後から警察や検察との間に立って適切な弁護活動を行えます。
例えば、被害者との示談交渉は弁護士が代理人として行うことでスムーズに進み、早期の示談成立によって不起訴処分を引き出せる可能性が高まります。
仮に起訴されてしまった場合でも、裁判において弁護士が積極的に情状酌量を求めることで罰金刑や執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。

特に本件のように酔って犯行に及んだケースでは、弁護士が被告人に代わって「今後は断酒する」「更生に努める」といった反省の意志を裁判所に示し、有利な判断を得られるよう働きかけます。適切な弁護活動により刑事処分が軽減されれば、前科を防ぎ、ひいては強制送還の回避にも繋がるのです。

外国人に強い弁護士を選ぶ理由

外国籍の被疑者・被告人の事件では、経験豊富な「外国人事件に強い」弁護士に依頼することが特に重要です。
なぜなら、外国人が刑事事件を起こした場合には、日本人の場合と比べて退去強制(強制送還)の問題や言語・文化の壁など、追加の配慮事項が生じるからです。日本の捜査機関での取り調べ手続は他国と異なる点も多く、母国の感覚で対応すると不利益を被る恐れがあります。
その点、外国人事件の実績が豊富な弁護士であれば、刑事手続の段階から在留資格取消し・強制退去の可能性を視野に入れた弁護方針を立てることができます。

また、通訳人の手配や多言語でのやり取りにも精通しているため、言葉の問題にも適切に対応してくれます。

困惑しがちな外国人の依頼者に寄り添い、日本の法律や手続を丁寧に説明してくれる点でも、外国人案件に強い弁護士を選ぶメリットは大きいでしょう。

事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件と少年事件を専門に扱う法律事務所です。
名古屋を本部とし、東京や大阪をはじめ全国各地に支部を有し、刑事弁護に精通した弁護士が多数在籍しています。

特に外国人の刑事事件にも力を入れており、中国・韓国・アメリカ・ヨーロッパなど様々な国籍の方の弁護実績が豊富です。国籍や事件内容に応じて経験豊かな通訳人を迅速に手配できる体制が整っているため、言葉の心配も不要です。

また、24時間365日体制での無料相談受付初回接見サービスにも対応しており、突然の逮捕にもスピーディーに対応いたします。

ご家族が逮捕されてお困りの方や、外国人の刑事事件でお悩みの方は、ぜひ弊所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、不安を抱える皆様に寄り添いながら最善を尽くしてサポートいたします。

永住者が私文書偽造罪・詐欺罪で逮捕された場合の刑事弁護の必要性と強制送還リスク

2026-01-05

日本で長年生活し永住権を持つ外国人であっても、罪を犯して有罪判決を受ければ、日本での在留に大きな影響が及ぶ可能性があります。

実際に、永住者の方が私文書偽造罪や詐欺罪で検挙されるケースも起きています。
こうした場合、刑事上の処罰だけでなく、強制送還(退去強制)という重大なリスクも考慮しなければなりません。
この記事では、私文書偽造罪・詐欺罪で検挙された永住者のケースをもとに、刑事事件が永住者に与える影響や強制送還の可能性、永住資格取消の条件、家族(配偶者・子)への影響、そして早めに弁護士を依頼するメリットや、刑事弁護と入管手続きの両面に対応できる専門家の重要性について具体的に解説します。最後に、詐欺事件の弁護経験や外国人支援の実績が豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のサポート内容も紹介します。

1. 私文書偽造罪と詐欺罪が永住者に与える刑事的・入管的影響

私文書偽造罪や詐欺罪は非常に重大な犯罪であり、永住者であっても例外ではありません。

詐欺罪(刑法246条)の法定刑は10年以下の拘禁刑と重く、私文書偽造罪(刑法159条)の法定刑も3月以上5年以下の拘禁刑とされています。
実際の詐欺事件では、犯行の過程で書類を偽造する場合も多く、文書偽造罪と詐欺罪が併せて適用されるケースも少なくありません。有罪判決となれば刑務所に服役する可能性があるのはもちろん、その刑の重さによっては在留資格にも影響が及びます。特に1年を超える実刑判決が下された場合、永住者であっても入管法に基づき強制送還となります。逆に、執行猶予付き判決や1年以下の刑であれば直ちに退去強制とはならない可能性もあります。いずれにせよ、刑事裁判の結果は永住資格に直結し得る重大事であり、十分な注意と対策が必要です。

2. 強制送還の可能性と入管法の規定

外国人が日本で刑事事件を起こし有罪判決を受けた場合、その内容によって入管法に定める退去強制事由(強制送還の理由)に該当することがあります。
一般的には「1年以上の拘禁刑」が退去強制の対象とされており、永住者であっても例外ではありません。つまり、たとえ永住資格を持っていても1年を超える実刑判決を受ければ、刑期終了後に原則として強制送還が可能となります。一方、刑期が1年以下の場合や執行猶予付き判決の場合は、特別な事情がない限り直ちに強制送還とはなりません(もっとも、麻薬など特定の犯罪では、判決の種類にかかわらず有罪になった段階で強制送還の対象となります)。強制送還のリスクがある以上、刑事手続だけでなく入管上の対応策も常に念頭に置いておく必要があります。

3. 永住資格が取り消される条件

永住者の在留資格(いわゆる永住権)は一度許可されれば期限のない強固な資格ですが、一定の場合には取り消されることがあります。主な取消事由として、次のようなケースが挙げられます。

• 不正手段による永住許可取得:偽造書類の提出や虚偽の申告などにより不正に永住許可を得ていたことが発覚した場合、永住許可は取り消されます。
• 重大な犯罪行為:重大な犯罪をした場合、永住資格も結果的に剥奪され退去強制となります。現行法でも1年以上の実刑判決だけでなく、文書偽造罪や麻薬犯罪等の有罪判決があれば永住資格は失われます。加えて、2024年の改正により詐欺罪など一定の重大犯罪で有罪となれば取消可能になりました。
• 納税・社会保険料の故意の未納:2027年に施行される入管法の改正により、悪質な税金等の滞納も永住許可の取消事由となります。

このように、永住資格といえども違法・不適切な行為があれば取消される可能性があります。特に刑事事件による有罪判決は深刻な影響を及ぼしうるため、永住者の方は十分注意が必要です。
つまり、文書偽造や詐欺の検挙されたケースの場合、有罪となれば、実刑判決を受けなくとも永住許可が取り消され、日本から退去強制となる可能性が大きいのです。

4. 家族への影響(配偶者・子の在留資格や生活)

永住者本人が刑事事件で逮捕・起訴されると、その配偶者や子を含む家族にも多大な影響が及びます。まず生活面では、家計の中心者が拘束・服役すれば収入が途絶え、家族の精神的負担も大きくなるでしょう。さらに法的な面でも、家族の在留資格に変化が生じる可能性があります。
例えば、配偶者が「永住者の配偶者等」の在留資格で滞在している場合、主たる永住者が強制退去となればその配偶者ビザの更新はできず、永住者とともに帰国するか、「定住者」など別の在留資格への変更が必要になってきます。また、子どもが外国籍で永住者の子として在留している場合、親の永住資格が取消されても直ちに子の資格が失われるわけではありませんが、将来の在留資格更新時には扶養者である親が日本にいなくなるため、資格の変更や帰国を検討せざるを得なくなる可能性があります。

このように、永住者本人の刑事事件は家族の生活基盤や在留資格にも影響を及ぼします。日本に残る家族が離れ離れになってしまう事態を防ぐためにも、早い段階から法的な対策を講じることが重要です。

5. 弁護士の早期介入によるメリット

永住者が刑事事件で検挙された場合、できるだけ早く弁護士に相談・依頼することが極めて重要です。早期に弁護士が介入することで、次のようなメリットが期待できます。

• 迅速な対応と身柄解放:弁護士が早期に動けば保釈により身柄を早期に解放できる可能性があります。また、取調べに関する助言を受けることで不利な供述を避けられます。
• 被害者との示談交渉:被害者と示談を成立させることで、不起訴や執行猶予となる可能性が高まります。もっとも、本人が被害者と直接交渉するのは困難なため、弁護士が代理で交渉します。
• 入管手続への備え:刑事手続と並行して退去強制への対策も講じることができます。家族の嘆願書などを早めに整え、在留特別許可の申請に備えることが可能です。

このように、弁護士を早期に依頼することで刑事手続と入管手続の双方に万全の備えをすることができます。特に永住者の刑事事件では、今後も日本に住み続けたいという本人・家族の願いを守るためにも、初動の対応が肝心です。

6. 刑事弁護と入管手続きの両面に対応できる専門家の重要性

前述のとおり、外国人の刑事事件では刑事裁判の行方が在留資格に密接に関わってきます。そのため、刑事手続と入管手続の両方に精通した専門家に依頼することが理想的です。刑事事件のみを扱う弁護士では判決後の入管対応が後手に回るおそれがあり、逆に入管業務のみの専門家では刑事裁判自体の弁護活動ができません。両方の知識を備えた弁護士であれば、判決確定前の段階から退去強制への対策まで一貫して対応できます。永住者の方が自身や家族の日本での生活を守るためには、このような総合力を持つ専門家のサポートが不可欠と言えるでしょう。

7. 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の紹介

永住者が関わる文書偽造・詐欺事件の弁護を依頼するなら、刑事事件と入管法務を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が心強い味方になります。

同事務所は刑事事件・少年事件を専門に扱っており、文書偽造罪や詐欺罪をはじめとする財産事件で多数の実績があります。示談交渉や迅速な対応によって不起訴処分や執行猶予判決を獲得したケースも多く、依頼者への丁寧な説明も高く評価されています。また、外国人の刑事弁護にも注力しており、入管対応についても経験豊富な弁護士が在籍しています。必要に応じて質の高い通訳を迅速に手配でき、文化や言語の違いにも配慮した弁護が可能です。無料法律相談も土日夜間含め24時間体制で受け付けているので、永住者の方やご家族が文書偽造や詐欺事件でお困りの際はぜひ一度ご相談ください。

永住者が売春あっせんで逮捕されたら?刑事処分と退去強制リスクを徹底解説

2025-12-05

風俗店やマッサージ店を装い売春行為を行っていた場合、たとえ永住者であっても刑事罰や在留資格への重大な影響が及ぶ可能性があります。本記事では、売春防止法が規定する売春あっせんの刑事責任と処罰内容、永住者に対する退去強制・在留資格取消しの基準、弁護士が提供できる刑事弁護および入管対応策、そして実際に同様の案件を扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の実績について解説します。法律的根拠と実務的ポイントを押さえ、適切な対応策を検討する一助としていただければ幸いです。

売春あっせんとは何か―適用法令と犯罪成立要件

「売春あっせん」とは、売春をしようとする人と客を仲介・紹介する行為を指し、売春防止法により明確に禁止された犯罪行為です。売春そのものは同法で禁止されているものの処罰規定はなく、当事者同士が合意した性交自体は刑事罰の対象外です(ただし、自分自身で客を、いわゆる立ちんぼやインターネット上を介して売春の相手を見つけた場合には、処罰対象となり得ます。)。しかし、第三者が売春を勧めたり周旋(仲介)した場合は処罰対象となり、たとえ店舗型のマッサージ店やガールズバーを装っていても、実質的に顧客と女性を引き合わせて性的サービスを提供していれば「売春周旋罪」が成立します。例えば「客引きして性行為相手を紹介する」「デリバリーヘルスの名目で実際は本番行為をさせている」等は、この売春あっせん行為に該当し得ます。

売春防止法が定める処罰内容と刑罰の重さ

売春あっせん(売春周旋罪)に対する法定刑は2年以下の拘禁刑または5万円以下の罰金と規定されています(売春防止法6条)。一見すると刑の上限は高くないようにも思えますが、拘禁刑が含まれているため有罪になれば前科が付きうる重大な犯罪です。実際の量刑は事案の悪質性により大きく異なります。単独でこっそり行っていた程度の比較的軽微なケースであれば、起訴されても罰金刑執行猶予付き判決にとどまる可能性が高く、初犯で深く反省している場合には不起訴処分で終結するケースもあります。一方、組織的・常習的に大規模な売春クラブを運営し暴力団の資金源になっているような悪質事案や、児童を対象とした売春あっせんが絡む場合などは実刑判決(拘禁刑)となる可能性が高まります。つまり、売春あっせん罪の法定刑自体は比較的軽い部類ですが、その科される刑罰の重さは事案の態様次第で大きく変わり得る点に注意が必要です。

売春防止法違反の刑事事件についての解説はこちらから

売春周旋と初回接見

永住者でも退去強制となり得る事例と法律上の基準

日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)では、たとえ「永住者」の在留資格を有する外国人であっても、一定の重大な違反行為を行えば在留資格の取消しや強制退去(強制送還)の対象になり得ます。その典型例の一つが売春に関わる行為です。入管法第24条は、外国人が「売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務」に従事した場合を退去強制事由の一つとして明記しています。つまり、売春防止法に違反する行為で有罪判決を受ければ、永住者であろうと在留資格を剥奪され強制送還される可能性が生じます。実務上も、入管当局は売春事犯に厳しく対応しており、売春事件で起訴された被告人の判決公判には入管職員が傍聴に訪れ、有罪判決が言い渡されると同時に被告人を収容して退去強制手続に移行する運用が現に行われています。このように、永住資格があっても絶対安心ではなく、売春あっせん等の犯罪によっては直ちに日本からの退去を余儀なくされるリスクがあるのです。

売春絡みで在留資格を失う具体的ケースと退去強制の実例

入管法の規定する退去強制事由は抽象的に感じられるかもしれませんが、実際に売春に関与したことで在留資格を失ったケースも報告されています。

例えば2020年11月、東京・日暮里の中国エステ店(いわゆる「チャイエス」)が無許可営業の摘発を受け、40代の日本人経営者と30代の中国人女性店長が風営法違反容疑で逮捕されました。その際、その店で働いていたベトナム人女性従業員3名も売春への関与や不法就労の疑いで身柄を拘束されています。この店には約30人もの外国人女性が在籍し、月に1億円近い売上を上げていたと報じられましたが、逮捕後、外国人従業員らは入管法違反で処罰され、順次強制送還の手続きに移行したものと推測されます。

表向き「マッサージ店」「ガールズバー」と称していても実態が売春であれば風営法上の風俗営業に該当し、在留資格に致命的な影響が及んでしまいます。入管法24条に該当する行為があった時点で永住者であっても退去強制の対象となり(実際、麻薬・覚醒剤取引や売春斡旋などで拘禁刑(執行猶予判決の場合をも含みます。)を科されれば退去強制手続きが開始されてしまい)、以降の在留は原則認められなくなります。

もっとも、家族関係など特段の事情がある場合には在留特別許可により日本に留まれる例もあり、例えば日本人配偶者を持つ永住者が退去強制事由に該当したものの特別に残留が許可されたケースでは、一旦永住資格は失うものの在留特別許可により退去を免れ、数年後に再度永住許可を申請できたという報告もあります。しかしこれは極めて例外的な措置であり、大前提として売春に関与すれば永住資格すら剥奪されるという厳しい現実を認識しておかなければなりません。

刑事手続において弁護士ができること(刑事弁護)

こうした売春あっせん事件で逮捕・起訴された場合、早期に刑事事件に強い弁護士に依頼することが極めて重要です。弁護士は逮捕直後から取調べへの同席や適切な助言を通じて被疑者の権利を守り、不当な自白の強要などを防ぎます。また、検察官との交渉においては、違法行為に至った経緯や本人の反省、更生の意思などの有利な情状を主張し、起訴猶予(不起訴)や罰金刑で済ませるよう働きかけることが期待できます。

実際、前述のように売春防止法違反は初犯で反省が顕著な場合、不起訴処分や略式罰金で済むケースもあります。弁護士の適切な弁護活動によって執行猶予付き判決を得られれば実刑を免れますし、罰金刑で済めば長期間の身柄拘束や収監を避けることができます。これは本人の社会復帰に資するだけでなく、後述する入管手続き上も極めて重要です。なぜなら、刑が軽いほど退去強制を回避できる余地が広がる可能性があるためです。さらに外国人被告の場合、日本の裁判では言葉の壁も問題になりますが、弁護士が通訳人と連携して法廷で不利益が生じないよう配慮することもできます。このように、刑事弁護人の果たす役割は逮捕後から判決に至るまで非常に大きいと言えるでしょう。

入管対応において弁護士ができること(在留手続と特別許可)

刑事処分が下った後は、入国在留管理庁による退去強制手続きが問題となります。ここでも弁護士が果たす役割は重要です。刑事事件を担当した弁護士であれば、判決前から入管対応を見据えた活動を並行して行います。具体的には、在留資格取消しや退去強制を避けるため、情状に配慮した在留特別許可を求める申出の準備を進めます。例えば、日本に日本人の配偶者や未成年の子どもがいる、長年日本で生活基盤を築いて納税義務も果たしている、といった事情は強力な在留の理由となり得るため、そうした人道的配慮事項を綿密に立証して入管当局に訴えていきます。

また、弁護士は必要に応じて入管当局と交渉し、在留特別許可(法務大臣の裁量で退去を猶予し在留を認める制度)の取得を目指します。入管手続は行政処分の領域ですが、弁護士であれば聴聞の場で本人の代理人となって意見を述べたり、取消し処分に対する不服申立てを行うことも可能です。

実務上、刑が確定すると即日収容・送還となる例もありますが、弁護士が事前に入管側と連絡を取り、自主的な出頭や旅券手配などを調整することで「判決直後の即時収容」を避けたケースもあります。いずれにせよ、「日本に残りたい」という意思がある場合は刑事手続の段階から入管対策を講じておく必要があるため、刑事弁護と入管対応を一貫して依頼できる弁護士に早めに相談することが肝要です。

類似案件における弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の実績

今回のケースのように、売春防止法違反と入管法上の問題が絡む事件を扱うには、刑事弁護と外国人の在留手続き双方に精通した法律事務所のサポートが不可欠です。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を専門に取り扱っており、風営法違反や入管法違反を含む様々な刑事事件で豊富な実績を有しています。同事務所には外国人案件に精通した弁護士が在籍しており、言語の壁がある場合でも適切に対処できる体制が整っています。実際、当事務所が運営する入管問題専門サイトでは、外国人従業員を雇って無許可営業をしていた風俗店の摘発事例(前述の日暮里のケースに類似するケース)について解説を行うなど、蓄積された知見を積極的に発信しています。これらの情報提供は、同事務所が風俗店経営に絡む刑事事件と外国人の在留問題を数多く手掛けてきた裏付けと言えるでしょう。また、初回無料相談を実施し、逮捕前後を問わず365日24時間相談に応じる体制を整えるなど、依頼者が一刻も早く適切な助言と弁護を受けられるよう尽力しています。永住者の方が売春あっせん容疑でお困りの場合、同事務所のように刑事弁護と入管対応の両面に強い弁護士に相談することで、最善の結果を目指すことができるでしょう。

まとめ

風俗営業を装った売春行為のあっせんは、売春防止法違反として拘禁刑も含む刑事罰の対象となり、永住者であっても有罪となれば在留資格の取消し・強制送還が現実味を帯びる深刻な事態です。 しかし、早期に専門の弁護士のサポートを受けることで、刑事手続上は不起訴や執行猶予を獲得し、入管手続上も在留特別許可の可能性を模索する道が開けます。 万一このような嫌疑をかけられた場合には、本記事で解説したポイントを踏まえ、速やかに信頼できる弁護士に相談することを強くお勧めします。専門的な知識と経験に基づく適切な対応によって、人生を左右する危機を乗り越える可能性を最大限に高めましょう。

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経営・管理ビザの外国人が速度違反で罰金!在留資格更新や退去強制への影響とは?

2025-11-08

「経営、管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周りの景色に気を取られてしまったことが原因で、思ったより速度が出てしまいました。
たまたま速度違反の取り調べを受けていた警察官によって速度が計測されてしまい、違反の事実が明らかになってしまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

⑴速度違反の刑事罰

今回は速度違反についての問題です。
速度違反については、「反則金」(青切符)で処理される場合と、「罰金」(赤切符)で処理される場合の2種類があります。
どちらになるのかは、①どのような道路での違反か②何キロオーバーかの2つの点から決定されることになります。
一般道の場合、30キロオーバー以上が赤切符であり、それ未満は青切符です。
高速道路などの場合には、40キロオーバー以上が赤切符であり、それ未満は青切符です。
青切符の場合、いわゆる行政罰の一種として処理されることになりますので、前科にはなりません。
これに対して赤切符の場合には、「罰金」ですから、前科となります。
ですので、Aさんがどこで、何キロオーバーしたかで処分が異なるということになります。

スピード違反事件の刑事弁護についてはこちら

スピード違反

⑵「経営、管理」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。

このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。ですので、仮に過失運転致傷によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える拘禁刑に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。この4号リで問題とされるのは、実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。速度違反の罪で実刑の判決となるのは複数回検挙されるとか、想定し難い速度違反等に限られると思われますので、典型的な速度違反ではこれに該当しない可能性の方が高いと思われます。

次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で拘禁刑に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている速度違反は、この列挙された犯罪に含まれていませんから、これには該当しません。

最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。
この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、速度違反での赤切符はこれに該当します。
だからといってこの赤切符のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

在留資格を持っている状態で速度違反をしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。

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永住者が偽造クレジットカード事件で逮捕された場合の刑事罰と強制送還の可能性

2025-11-01

永住者が偽造クレジットカード事件に関与した場合の刑事罰と入管法上のリスク

永住権を持つ外国人が偽造クレジットカードの密輸に関与した場合、日本の法律でどのような刑事罰を受ける可能性があるのか、また入管法上のリスクとして退去強制(強制送還)があり得るのかについて解説します。具体的な事例として、永住者であるAさんが母国から帰国する際に偽造クレジットカードの原料(いわゆる「生カード」)を大量に持ち込もうとして逮捕されたケースを参考に説明します。

偽造クレジットカードを輸入した場合の刑事処分

まず、クレジットカードの原料となるプラスチック製の生カード(カード情報を書き込む前のブランクカード)は、日本の関税法で輸入が禁止されています。関税法第69条の11第1項6号は、偽造通貨や偽造有価証券と並んで、「不正に作られた支払用カード(預貯金の引出用のカード)を構成する電磁的記録をその構成部分とするカード(その原料となるべきカードを含む)」を輸入禁止品に指定しています。

この規定に違反して禁止品を密輸入した場合、関税法第109条1項により10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(またはその併科)という重い刑罰が科せられます。

量刑を左右するポイント

偽造クレジットカードの原料を密輸した場合の刑事処分の重さは、以下のような事情によって判断されます。

  • 持ち込んだ枚数: 持ち込んだ生カードの枚数が多いほど犯行は重大と見做され、刑が重くなる傾向があります。

  • 認識の程度: 密輸した物が偽造カード用だと知っていたか、その認識の深さも量刑に影響します。故意が明確であるほど不利になります。

  • 完成品か否か: 偽造カードそのもの(カード情報が記録された完成品)を持ち込んだ場合と、情報を書き込む前の生カードを持ち込んだ場合とでは、後者の方がいくらか情状が考慮され得ます。

  • 前科の有無: 過去に同種またはその他の犯罪歴がない初犯であれば、量刑上有利な事情となります。

今回のAさんの事例では、生カードを3,000枚と極めて多数持ち込もうとした点や、カード会社勤務の友人から「クレジットカードの原料」と聞かされて依頼を引き受けている点から、悪質性が高いと判断される可能性があります。一方で有利な事情としては、完成品の偽造カードそのものではなく原料の持込であったこと、そして前科がない初犯である点が挙げられます。

判例や傾向を見ると、1,000枚を超える規模で生カードを密輸した場合は執行猶予の付かない1年以上の実刑判決も視野に入ってきます。
数千枚規模の生カード密輸事件で実刑判決が言い渡された例もあり、今回のAさんも裁判では実刑かどうかが争われるか可能性が高いと言えるでしょう。

永住者に対する入管法上のリスク(退去強制処分)

次に、刑事罰を受けた場合の入管法上のリスクについてです。外国人の永住者であっても、一定の重大な犯罪で有罪判決を受けた場合には退去強制(日本からの強制送還)の対象となり得ます。入管法第24条第4号のリ(4号ニ~チに該当する場合を除く)では、「昭和26年11月1日以降に無期または1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」は退去強制事由に該当すると規定されています。今回のAさんのケースでは、上述のとおり1年以上の実刑判決が見込まれるため、この規定に該当し強制送還は避けがたい状況と言えます。

※ただし入管法の規定上、「1年を超える刑」が対象であり、刑がちょうど1年であった場合や刑の全部執行猶予が付いた場合などは直ちに退去強制とはなりません。
Aさんの場合、情状からして執行猶予なしの実刑となるか、執行猶予となるか、刑事裁判でも激しく争われることが予想されます。刑事裁判での判決内容が、入管法上のリスクと直結することになるため、刑事裁判の時点で適切な弁護活動を実践するのが好ましいでしょう。

弁護士による対応策と早期相談の重要性

このような事態に陥った場合、刑事弁護人として取れる対応策はいくつか考えられます。

  1. 無罪主張(故意の否定) – 持ち込んだ生カードが違法なものとは知らなかった等、犯意がなかったことを主張して無罪を争う方法です。しかし、本件では友人から「クレジットカードの原料」と説明を受けており違法性の認識を完全に否定するのは難しく、現実的には無罪を勝ち取るのは困難でしょう。

  2. 在留特別許可の申請 – 実刑判決が言い渡された場合でも、日本に生活基盤があり引き続き在留を希望するのであれば、法務大臣の裁量による在留特別許可の取得を目指すことになります。刑事裁判の段階から将来的な在留特別許可を見据えて情状を積み重ねるなどの弁護活動が必要であり、家族関係や更生の可能性を示して退去強制を免れるよう働きかけます。

いずれにせよ、家族や知人が偽造クレジットカードの密輸に関与して逮捕されてしまった場合、早急に刑事事件と入管手続双方に精通した弁護士に相談することを強くお勧めします。適切な弁護活動によって、刑事処分の減軽や在留継続の可能性を探ることができるからです。

具体的な事件についてお困りの方はこちらからお問い合わせください。

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