外国人の逮捕の問題点

1 外国人は逮捕,勾留されやすい?保釈がなされにくい?

外国人の方は刑事事件の捜査を受けると,「逮捕されやすい」であるとか,「保釈がなされにくい」と考えていらっしゃる方が多いようです。

実際に統計を取っているわけではないですが,やはり外国人の方の事件の場合には逮捕等の身体拘束が認められやすい傾向が見受けられます。

このページでは,なぜそのようなことが起きるのか・それに対してどのように対応するべきなのか,また,身体拘束されると具体的にどんなことが待ち受けているのかについて,詳しく見てみたいと思います。

 

2 逃亡すると疑われる?

逮捕や勾留は,犯罪をしたという疑いだけでなされるのではありません。法律では,「被疑者(疑われている人)が逃亡する可能性がある」ことが逮捕や勾留の要件とされています。

外国人の方が被疑者となった場合,この逃亡の要件が認められやすく,身体拘束がなされやすいという現状があります。

その理由としては,「外国籍の人は,いざとなれば母国へ逃げることができるから海外へ逃亡するかもしれない。日本国内でも安定した生活の拠点がないことが多いから,国内でも逃亡するかもしれない。」とみられることが多いためです。

実際に外国人の方の逃亡率が高いわけではありませんが,一部の検察官や裁判官はこのように考えてしまうことがあります。

外国人の方が逮捕されてしまった場合,弁護士として身柄解放活動を行うにあたってはまずこのような偏見と闘わなくてはなりません。具体的にはパスポートを預かる,日本での生活が安定していることや身元引受人がいること等を具体的にアピールしていかなければなりません。十分な資料を集めるためにも,早期の釈放を目指すためにも,逮捕されしまった時にはすぐに弁護士を派遣する必要があります。

 

3 在留資格が取り消される,退去強制手続きが始まる

外国人の方と日本人の方との一番の違いは,日本国籍があるかどうか,すなわち,日本に滞在するために在留資格が必要かどうかという点です。売春防止法など犯罪に該当する場合には在留資格が取り消されることがありますし,粗暴事件や薬物事件の場合には退去強制の手続きがなされます。

刑事事件で嫌疑をかけられたり,有罪の判決を受けたりすると,外国人の方は日本に在留できなくなってしまう恐れがあるのです。そのため,検察官や裁判官においても,「この被疑者は近い将来,在留資格の取消しや退去強制の対象になるかもしれない。その手続きを恐れて逃げたり証拠隠滅をしたりするかもしれない」と考えることがあり,身体拘束を容易にしてしまうことがあります。

刑事事件と在留の問題は深く絡み合っている問題で,一方の問題のみを対処すれば何とかなるというものではありません。逮捕されてしまった場合,その事件が在留にどの程度影響を与えるのかどうか,初期の段階から見通しを立てたうえで弁護活動を展開する必要があります。一定以下の重さの刑であれば在留資格が取り消されない事件もあります。その場合には不起訴を目指していくことや,減刑を求めた情状弁護を目指すことになります。

 

4 オーバーステイになってしまう!

外国人の方が逮捕,勾留されることによって生じる不利益の最たるものとしては,身体拘束期間中に不法残留(オーバーステイ)になってしまう,というものがあります。逮捕されて留置場にいるとしても,在留期間を過ぎてしまうとオーバーステイとなってしまいます。「逮捕されていたから在留期間の更新の申請ができなかった」といっても,オーバーステイとなってしまうのです。

特に,在留資格が短期滞在や興行などで短い方,在留期間の満了が近いという方は,逮捕,勾留中にオーバーステイになってしまう危険が高いと言えます。

また,オーバーステイになってしまうと,日本での適法な在留資格がなくなってしまい,保釈が認められにくくなってしまいます。保釈中は基本的に,日本国内の決められた場所で生活しなければなりませんが,オーバーステイになってしまうと,保釈中であっても入管の施設に収容されてしまう可能性があるためです。

外国人の方が逮捕されてしまった場合には,すぐに弁護士を派遣して,在留資格と在留期間を確認しなければなりません。そのうえで,今ある在留資格を延長する手続きを取っていくのか,在留特別許可を求める方向で準備を進めるのか,弁護士とよく話し合う必要があります。

もちろん,内容と状況によっては後々日本に残ることが難しいような場合もあります。そのような場合にもオーバーステイだけは回避しつつ,将来,日本に再上陸しやすいような状況を整えて日本から出国することも目指します。

身体拘束もオーバーステイの問題も,1日1日でも早い対応が必須です。なるべく早く動いてもらえる弁護士さんを探して対応を依頼するのがよいでしょう。

 

☆捜査官側は何を考えているか

ここで視点を変えて,事件を捜査する捜査官の立場に立って考えてみます。

昨今,来日した外国人が日本国内で組織的な犯罪を実行するという例があり,当局も検挙態勢を強めています(参考資料として,警察庁の統計資料があります

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kokusaisousa/kokusai/H26_rainichi.pdf))。

外国人の犯罪の場合,日本国内での外国人コミュニティーで犯罪の共謀がなされていたのではないか,道具や情報を提供した者がいたのではないか等と様々な事態を想像して捜査を進めていきます。そして,組織的な犯罪なのであれば,組織全体を検挙するために捜査をしなければならない,そのためにも逮捕して証拠隠滅をされる前に取調べや捜査を進めたい,という考えが生まれてきます。そうなると,身体拘束も長引いていく可能性が高まります。

そこで,組織的な犯罪でない場合には,その点を捜査側にしっかりと説明していけばよいのです。ただ単に「早く釈放してくれ」と主張するだけではなく,「釈放しても問題ないでしょう」と捜査官を安心させることも,釈放に向けた活動としては重要なポイントです。

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