外国人従業員と日本人従業員の待遇

1 「外国人である」ことを理由に賃金や待遇に差を設けてよいか?

昨今の労働力不足を受けて,外国人の方を積極的に受け入れて,雇用する企業が増えています。日本語が得意な方であれば問題が無いかと思いますが,中には日本語が得意ではない方もいらっしゃいます。また,外国人の方の方から「給料は安くてもいいから雇ってほしい」「就業規則以上の残業をさせてほしい」等の要望を受けることもあります。

外国人を雇う際に,日本人従業員との間で,賃金や労働時間に違いを設けてもよいのかを解説します。

 

2 労働基準法の違反になる可能性があります

まず,労働基準法3条には

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない(均等待遇の原則)。

と定められています。

労働基準法は,日本で人を雇う限り適用されます。外国人を雇う場合であっても,労働基準法の適用を受けます。

そのため,「外国人だから」という理由で賃金に差をつけたり,労働時間を長くしたり短くしたりする等,労働条件に違いを設けると,労働基準法違反となり,

6月以下の懲役又は30万円以下の罰金

の罰則が科される可能性があります。

いかに労働者が同意しているからといって,労働条件に不合理な差別をすることは許されません。

一方で,合理的な区別に留まるものは認められます。

その最たるものとして,外国人の就労について,資格外活動許可の条件として,就労を「週28時間未満」とされている場合があります。この場合,労働時間を他の正規雇用と同一にして週28時間を超える時間を超えて働かせると,不法就労助長罪として入管法の違反になってしまいます。このような方の労働時間を,他の日本人従業員より短くしたとしても,労働基準法の違反にはなりません。同じだけ働かせた場合には法律違反になるのです。

また,「外国人であること」以外の事情に基づいて,労働条件に差を設けることは許されます。例えば,勤続年数や職業柄必要になる能力差に基づいて,賃金に差を設けることは労働基準法上も,合理的な範囲の区別とされるでしょう。ただし,「日本語がうまくないから」というだけでは,「外国人であること」を理由とした差別とみられる可能性があります。

均等待遇の原則のみではなく日本人従業員と同様に,最低賃金水準を守ること,法定労働時間を超える場合には労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要がある等,労働基準法に基づいた規制があり,外国人を雇う場合もこれらの規制を遵守しなければなりません。

 

3 在留資格に問題が生じます

外国人の給料を日本人よりも低くしてしまった場合,外国人の在留資格が影響を受けることがあります。

「技術・人文知識・国際業務」や「教育」のような就労の在留資格の場合,日本人と同等額以上の報酬を受けていることが在留資格を認める条件となっています。日本人と同等額以上の報酬を受けていないとなると,在留資格が認められなかったり,在留期間の延長が認められなかったりする可能性があります。

日本人と同等額の報酬といえるかどうかは,日本人と同じ条件(勤務年数や学歴,職業上の能力)で働いたときに,日本人と同じかそれ以上の報酬をもらっているかどうかで判断されます。「外国人であること」を理由として賃金を低くしている場合には,日本人と同等額の報酬を受けているとはいえません。しかし,学歴や資格などの影響で,結果として他の従業員よりも低い報酬になってしまったとしても,日本人と同等額の報酬を受けていると言える場合があります。

各企業の事業内容や営業の形態によって報酬規程に違いがあるかと思いますが,同じ企業内で「同じ報酬規程」に基づいていることが重要です。

 

4 まとめ

外国人を雇う場合であっても,基本的には日本人を雇い入れる場合と同様の法規制がかかります。

国籍の違いや言語の違いは,それ自体によって労働条件を変更することは許されませんが,職業上必要になる能力や経験の違いによって労働条件に差を設けることは認められます。その場合であっても,同一企業内では,同一の基準によって区別されなければなりません。

外国人を雇う際の条件面でお困りのことがある方は,専門の弁護士や社労士に相談しましょう。

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