Posts Tagged ‘偽装結婚’
偽装結婚が発覚するとどうなるのか?強制送還の可能性や対処について刑事事件に強い弁護士が解説
【事例】
以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、日本で働いて本国の家族に送金をするため、日本人と偽装結婚をし、日本人の配偶者等の在留資格で来日しました。
その後日本で暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように偽装結婚をしていた外国人の知人が逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も偽装結婚が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。
【偽装結婚と退去強制】
偽装結婚をして日本人の配偶者等の在留資格で来日したAさんは、虚偽の申請をして上陸許可を受けたということで、在留資格が取消され退去強制事由となります。
「偽装結婚とは何か」についてはこちらの記事もご覧ください。
また、適法に上陸した後に偽装結婚をした場合であっても、後述するとおり公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立し、その刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ければ、執行猶予の有無にかかわらず退去強制事由となります。
【偽装結婚発覚前のお悩みについて】
Aさんのように、偽装結婚がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
①発覚したら逮捕されるのか
②もう日本に残ることはできないのか
③出国までずっと入管に収容されるのか
④偽装結婚の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。
①発覚したら逮捕されるのか
偽装結婚が警察に発覚したり、入管に察知され警察に通報された場合、個別事情によるので一概には言えませんが、逮捕されることは多いです。
警察も入管と協働して取り締まり・摘発に積極的な部分です。
参考:警察庁HP
②もう日本に残ることはできないのか
偽装結婚は、前述のとおり、退去強制事由に該当するという結論になる可能性が極めて高く、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
その上、一般的に、偽装結婚で在留特別許可を得ることは非常に困難です。
もっとも、真正な配偶者になる予定の人と相当長期間内縁関係にある、日本での養育が必要な子どもがいるなど、在留特別許可にプラスの事情があれば、100%在留特別許可は無理とも限りません。
在留特別許可が得られる見込みについては、他にも様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。
③出国までずっと入管に収容されるのか
偽装結婚が理由で在留資格を取消される、懲役刑の有罪判決を受けるなどの退去強制事由に該当すると、入管に収容される可能性があります。
もっとも、収容された場合でも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。
④偽装結婚の刑罰はどうなるのか
真正な婚姻をする意思がないのに婚姻の届出をすると、戸籍等に不実の記載(電子化された戸籍等の場合は不実の記録)をさせ、そのような状態の戸籍等を役所に備え付けさせることになり、公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立します。
有罪判決の場合の刑の重さは、懲役刑、ただし執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。最も事件に応じて、個別の事情によるので一概には言えませんが刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。
【おわりに】
偽装結婚により得た身分で日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても不安定な地位は変わらないので、前述のとおりの発覚した場合の様々なリスクを軽減するために出頭をし、真摯な対応をするということも選択肢としてはあります。
いずれにせよ、今後のリスクについて、まずは弁護士等の専門家に相談した方がよいかと思います。
「永住者の配偶者等」のビザを解説
在留資格「永住者の配偶者等」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「永住者の配偶者等」の在留資格に該当する方としては、永住者等の配偶者又は永住者等の子として日本で出生しその後引き続き日本に在留している者です。
「永住者の配偶者等」の該当例としては、永住者・特別永住者の配偶者及び日本で出生し引き続き在留している子などです。
「永住者の配偶者等」の在留期間は、5年・3年・1年又は6月です。
「永住者の配偶者等」の在留資格は、就労制限がないため、自由に仕事をすることができ、仕事のジャンルを問わず転職もできます。
また、「永住者の配偶者等」の在留資格には在留活動に制限がないので、大学や専門学校に通うこともできます。
日本において「永住者」の在留資格の申請する場合に、「永住者」と婚姻することにより、「永住者」の在留要件が短縮されます。
「永住者の配偶者等」の要件についての留意点を以下にてご説明いたします。
まず、永住者等の配偶者(夫または妻)の場合、永住者等の配偶者の身分を有する者であるといえることが必要です。
ここでいう「配偶者」とは、現に婚姻関係中の者を意味し、永住者等の方が既に死亡している場合や永住者の方と離婚した場合は含まれません。
また、婚姻は法的に有効なものである必要があるので、内縁関係や同性婚の場合には法的に有効な婚姻であるとは認められません。
さらに、この場合は、日本において夫婦で共同生活をすることを前提にしていますので、配偶者である永住者等の方と原則として同居する必要があります。
次に、永住者等の子である場合、永住者等の子として日本で出生し、出生後引き続き日本に在留する者であるといえることが必要です。
①出生時に父または母が永住者のビザをもって日本で生活をしていたこと又は②出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡したときに永住者ビザをもっていたことのいずれか一方に該当することが必要です。
また、ここでいう子とは「実子」を意味するので、嫡出子・認知された非嫡出子は子として認められますが、養子は含まれません。
そして、子は「日本で出生した」ことが必要です。
したがって、例えば母が海外で子を出産したために、日本国外で出生したという場合には、この要件が認められないことになります。
最後に、「永住者の配偶者等」の審査のポイントについてご説明いたします。
申請者が永住者・特別永住者と婚姻していることを前提に当該婚姻関係が偽装ではないことを証明することが最大のポイントといえます。
日本においては、偽装結婚については厳格に判断することになっており、上記の「永住者の配偶者等」の在留資格のような配偶者の在留資格を取得されたいと考えられている方は、婚姻関係が偽装ではないことを証明することが必要になりますので、「永住者の配偶者等」の在留資格についてご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。
結婚相手がいなくなった?婚約を解消するためにはどうしたらよいか
外国人との結婚で,安易に偽装結婚の相手となってしまった場合,公正証書原本不実記録罪という犯罪になってしまう可能性があります。
犯罪になるのかどうかという点については,前回の記事でもご紹介しています。
今回は,偽装結婚を解消するためにはどうしたらよいかという点について解説をします。
「離婚」をする場合,できない場合
婚姻状態を解消するとなると,まず思いつくのは「離婚」ではないでしょうか。
日本で離婚をする場合,お互いに合意して書面(離婚届)で届け出て行う方法と,裁判や審判で決める方法があります。
お互いに「離婚しましょう/そうしましょう」という意思の合致があるのであれば,裁判や審判を行う必要はないということです。
離婚の方法は国によっても異なり,「裁判をしないと離婚を認めない」という国もあります(宗教や文化の違いに基づくものです)。
一方,どちらか一方が離婚する意思がない場合には離婚届を出して離婚をするということができません。その場合には,裁判所の手続きによるしかありません。この,「離婚する意思がない場合」というのは,「離婚したくない!」という意思を持っている場合に限らず,「離婚したいのかしたくないのか,意思が分からない」という場合や,「そもそもどこにいるのか分からない」という場合まで含みます。
それでは,もしも偽装結婚の相手になってしまった場合,何らかの離婚のための手段を採ればよいのでしょうか。
実はここに落とし穴があります。そもそも,「偽装結婚」で作られた戸籍は,虚偽の戸籍です。そして,離婚は,真正な結婚を解消するというものですから,偽装結婚を解消するための離婚も虚偽の届出になってしまうのです。
偽装結婚を解消するためとはいえ,勝手に離婚をしてしまうと大変なことになってしまいます。
偽装結婚を解消するためには,事前に専門家とよく相談しておかなければなりません。
偽装結婚解消のための手続
それでは,偽装結婚を解消するには,何らかの裁判所での手続きを経る必要があります。
しかしながら,ほとんどの偽装結婚の場合,婚姻届けを出した後は,相手と連絡が取れなくなってしまうということがほとんどです。
どこにいるのか分からない外国人を相手に裁判を起こすことは,極めて困難です。
出入国管理局から資料を取り寄せる等して,そもそも裁判の相手が日本にいるのかどうかを調査する必要があります。
また,「今どこにいるのか」と言うことについて必要な調査を尽くさなければなりません。裁判所に対して「今どこにいるのか分かりません」と申告するだけでは足りず,「色んな調査活動をして,相手がどこにいるのか調べて,裁判のために出てきてくださいと言ってきたけれども,それでもわかりませんでした」と言えなければ,裁判所も取り合ってもらえません。
この調査活動は裁判を起こすの準備として必要になります。当然のことながら,これに加えて,裁判そのものの準備も必要です。
偽装結婚を解消したい,解消したいけれども相手がどこにいるのか分からない,という方は,弁護士等の専門家にご相談ください。
戸籍を貸したらになったら犯罪者!?偽装結婚は何罪になる?
(架空の事例です)
Aさんは東京都内で生活する会社員でした。ある時知人から「戸籍を貸してくれたら毎月20万円もらえる」という話を聞き,怪しいなと思いながらもその話にのっていましました。
Aさんは,その知人から言われるまま,戸籍謄本を取り寄せ,印鑑と一緒に渡してしまいました。その後の話を聞くと,どうやら,Aさんは外国人であるBさんと婚姻届けを出して結婚したことになっていたようです。Aさんは当時独身で,交際相手もいなかったことや,お金がもらえるならば良いと思って,Bさんとの婚姻届けをそのままにしてしまいました。結局,AさんはBさんと一度も会うことがありませんでした。
その3年後,戸塚警察署の警察官がAさんの自宅にやってきて,Aさんは事情聴取を受けてしまいます。
Aさんにはどのような犯罪が成立し,Aさんはどのようになってしまうのでしょうか。
「戸籍を貸す」だけでも犯罪になることがある
Aさんは軽い気持ちから戸籍を貸す,つまり,Bさんの結婚相手となってしまったようです。これが,本当にBさんと結婚して婚姻生活を営むつもりがあったのであれば良いですが,「結婚して夫婦として生活するつもりはないのに,婚姻届けを出す」ということであれば,犯罪に該当します。
いわゆる「偽装結婚」と言われるようなものです。偽装結婚の場合には,公正証書原本不実記録罪が成立します。
これは,嘘や虚偽の申告をして,戸籍や住民票といった公の文書に真実と異なる記載をさせたことに対する罪です。偽装結婚のほかに,地上げ行為や車庫飛ばし等と言った行為もあります。
偽装結婚,公正証書原本不実記録罪は,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性がある犯罪です。
戸籍を使わせるだけだから良いと思った,お金がもらえるし誰に迷惑をかけるわけではないから良いと思った,という方もいますが,れっきとした犯罪であることを覚えておきましょう。
Aさんは逮捕される?起訴される?
偽装結婚をして公正証書原本不実記録罪に該当してしまった場合,逮捕される可能性が非常に高いです。
逮捕されるか/されないかという判断では,事件が重大なものであるかどうか,また,口裏合わせがされるかどうかという点が判断ポイントになります。
偽装結婚のような事件では,「戸籍」という日本の家族制度の根底をなすものに嘘の記載がなされたということになりますから,重大な事案とみなされることがあります。
また,偽装結婚は一人ではできない,すなわち,相手となる外国人の存在があります。警察当局としては「二人で『本当に結婚して夫婦として生活するつもりがありました』と口裏を合わせられるかもしれない」と疑う事案です。さらに,結婚相手を斡旋するものの存在,いわゆるブローカーの存在も窺われる事件ですから,逮捕される可能性も高いのです。
加えて,公正証書原本不実記録罪には,明確な被害者がいません。そのため,示談をして不起訴を狙うということができない事件です。上記の通り,「戸籍」の制度そのものを害する犯罪になりますから,重大な事案として初犯であっても起訴される可能性が高いです。
偽装結婚について不安なことがある,お心当たりがあるという方は是非一度,専門家にご相談ください。
Aさんは再婚できないのか?
Aさんは今後,逮捕,起訴されて刑事事件として扱われる可能性が非常に高いです。
しかし,刑事事件は,あくまで「その人に対して刑罰を科すかどうか」を判断する手続きです。そのため,刑事事件を通してAさんの戸籍が完全に回復される,というものではありません。
公正証書原本不実記録罪によって処罰された方の場合,有罪の判決が確定すると,検察庁から各自治体に対して「この人の戸籍は嘘の記載がありましたよ」と通知がなされます。
この通知を受けて,各自治体が戸籍を訂正することになります。
そのため,Aさんが逮捕,起訴されれれば,ある程度時間がたったところで修正される可能性があります。
偽装結婚をしてしまった後の戸籍についてご不安なことがある方は,是非弊所まで一度ご相談ください。
もしも,Aさんがばれていなかったら・・・?
仮に,Aさんが警察から指摘されることなく生活していたらどうなるのでしょうか。
もちろん,Aさんが自分で手続きを行わない限り,戸籍上はBさんと結婚している状態が続くことになります。
そのため,もしAさんが別の人と結婚したいと思っても,重婚になってしまうためできません。また,Aさんの家族としても,Aさんがなくなった場合,戸籍上はBさんが法定相続人になってしまうため,相続に大きな影響が生じてしまいます。
もちろん,Bさんの居場所が分かって,手続きに協力してくれるようであれば,離婚をしたり,戸籍の訂正を申し立てたりすることができます。しかし,偽装結婚の場合,Bさんがそのように協力的であることはないでしょう。
Aさんが自分で婚姻状態を解消しようと思った場合,裁判所での手続きを経なくてはなりません。
相手の居場所も分からない結婚を解消するのは,非常に困難です。
偽装結婚をしたけれども解消できないで困っている,警察に出頭すべきなのかどうか分からなくて困っているという方は,是非弊所までご相談ください。
外国人事件,刑事事件の両方について経験のある弁護士が,最善の手段のためのアドバイスを提供します。
下記のフォームからもお問い合わせをすることができます。
偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?
(以下は解説のための架空の事例です)
事例-偽装結婚についての判決後
Cさんは日本国籍の男性ですが,ある時,「戸籍を貸してくれたら毎月10万円振り込む」といわれて,外国籍女性のEさんと偽装結婚をしてしまいました。
その後,CさんはEさんとは何も関係することなく生活していましたが,ある日池袋警察署の警察官がCさんの自宅に捜索差し押さえを行い,Cさんは公正証書原本不実記録罪によって逮捕されてしまいました。
Cさんは起訴され,刑事裁判で有罪の判決を受けました。幸いにして執行猶予判決となりましたが,Cさんは「Eさんとの戸籍はどうなるのだろう」と思い,外国人事件,入管事件に詳しい弁護士に相談しようと思いました。
偽装結婚の罪
一般的に偽装結婚と呼ばれるものの中には,公正証書原本不実記録,同供用罪という犯罪に該当するものがあります。
これは,公務員(市役所職員など)に対して,嘘の申立てや届出を行い,登記簿や戸籍簿と呼ばれる公正証書の原本に虚偽の記載をさせた,またはその原本を供え置かせるというものです。
難しいように聞こえるかもしれませんが,結婚するつもりがないのに婚姻届けを提出して,戸籍上も婚姻したことにした場合には,犯罪が成立することになります。
偽装結婚というと,「結婚するつもりがないのに結婚したことにして婚姻届けを出す」という意味が一般的ですが,まさにこれが犯罪です。
一方,婚姻届けを出したときは幸せいっぱいの夫婦だったけれども結婚生活の中ですれ違い,今はただ「夫婦」という体を保っているだけという,いわゆる「仮面夫婦」のような状態だけでは犯罪とは言えません。あくまで,虚偽の届出を出して,戸籍に虚偽の記載をさせるというのが犯罪なのです。
Cさんのように,当初から婚姻生活を送るつもりがなく,また金銭を得るだけ(もしくは外国人に在留資格を得させるだけ)の目的でした婚姻届の提出なのであれば,公正証書原本不実記録罪に該当するでしょう。
同罪は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
有罪の判決が出た後はどうなるのか
Cさんのように日本人の立場からすると,偽装結婚がばれた後に自分の戸籍がどうなるのかという点が気になる方もいるかもしれません。
というのも,刑事裁判では「有罪(刑の重さ)/無罪」を決めるだけで,戸籍そのものについては何も訂正をしてくれないからです。
刑事裁判の後,Cさんはある困った問題に直面します。それは再婚ができないというものです。
戸籍が元に戻る(CさんとEさんの結婚が虚偽のものだからという理由で訂正される)までは,Cさんは戸籍上既婚者という立場が続くことになります。一方,Eさんと離婚に向けた手続きを行おうとしても,刑事裁判が確定すればEさんのような人は,ほとんど強制送還されるため,そもそもCさんはEさんと連絡を取る事すら難しくなってしまいます。
このような場合に,Cさんの戸籍を訂正して,再婚できるようにするためには次のような手続きが必要です。
まず一つ目は,役所内部での処理を待つというものです。
偽装結婚であることの刑事裁判が確定すると,検察庁から市区町村役場に対して,「あの婚姻届けは虚偽のものでしたよ」という通報がなされます。この通報を受けて,役所が内部の処理として,戸籍を自分たちで訂正するというものです。この手続には時間が掛かり,判決が確定した後,少なくとも数か月かかることになります。
次の手段としては,Cさんのような本人が裁判所に申立てをする場合です。
刑事裁判の中で偽装結婚であることが認められているのであれば,その裁判資料を使って家庭裁判所に対して「戸籍を直すことを許可してください」という申立てをすることができます。この場合には自分たちである程度資料を集めて手続きを行う必要がありますが,役所が自分たちで戸籍を訂正するよりも早く手続きが進むことが期待できます。
戸籍の訂正など,裁判所での手続きについては専門家へ依頼することを検討された方が良いでしょう。
もしも刑事裁判になっていなかったら?
Cさんのように,刑事裁判が確定していればよいですが,もしも刑事裁判になっていないという場合に戸籍を訂正しようと思ったら,どうしたらよいでしょう。
その場合には,そもそも婚姻届の提出自体が無効だったのだということを確定させるために,婚姻無効確認訴訟を起こして,裁判所に「結婚が無効である」ことの判決をもらわなくてはなりません。
また,刑事裁判になっていないという場合には,偽装結婚の相手となった外国籍の人が今どこで何をしているのかということの調査まで行わなければなりません。
加えて,警察には何も知られていない状態で,裁判で「偽装結婚をしていました」と話すことのリスクについても考えなければなりません。
もしも,過去に偽装結婚をしたまま戸籍を放置してしまっているという方,偽装結婚でお悩み・お困りの方がいれば,早めに弁護士などの専門家にご相談ください。
家族や友達の偽装結婚でもビザが取り消される?
Kさんは日本で「定住者」の在留資格をもって在留している外国人でしたが,Kさんの妹が日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することになりました。
Kさんは,妹が日本で結婚する証人になることになり,婚姻届の「証人」の欄に署名をしました。その後,Kさんの妹は日本人配偶者等の在留資格で来日しました。
しかし後日,実はKさんの妹がした結婚は偽装結婚であり,来日してからは全く家族としての生活をしていないことが分かりました。
Kさんは,妹の偽装結婚の証人となってしまったことで自分の在留資格も影響が出るのではないかと思い,弁護士に相談することにしました。
偽装結婚は重い罪
事例のように,偽装結婚というのは入管実務上でも非常に悪質な犯罪とされており,刑法上も重たい刑罰が定められています。
「本当は夫婦として結婚生活を送るつもりがないのに,ビザをもらうためだけに婚姻届けを出して結婚したことにする」というのは,公正証書原本不実記録,供用罪という犯罪にあたり,最大で5年の懲役刑が科されることになります。
また,公正証書原本不実記録,供用罪で有罪の判決を受け,懲役の判決を受けた場合(執行猶予付きの判決も含みます)には,在留資格によっては強制送還の対象となってしまいます。
さらに,元々の在留資格を問わず,
・自分が偽装結婚をして在留資格を不正に取得したり,在留資格の変更,更新の許可等を得た場合
・偽装結婚によって他人に在留資格を不正に取得させたり,在留資格を変更,更新の許可を得させた場合
には,在留資格の取消し,強制送還の対象となってしまいます。この場合,仮に有罪の判決を受けていなかったとしても,入管の独自の調査によってビザが取り消されたり,強制送還に向けた手続きが進んでしまうことがあります。
特に,逮捕されて警察で取調べを受けているという状態の場合,それと並行しながらビザの取消しに向けた調査が進んでいるという場合があります。警察の取調べについては国選弁護士でも対応をしてくれますが,ビザの取消しに関しては国選弁護士も任務の範囲外になってしまいます。逮捕されている事件でビザの取消しも防ぎたいという場合には,早急に自分たちで弁護士に依頼しましょう。
Kさんの事例の場合,「他人の偽装結婚の証人になっている」ということですから,Kさん自身の在留資格については何ら不正をしていないとしても,「Kさんの妹の在留資格について不正な手段を用いた」と疑われてしまうと,強制送還に関する違反調査が始まってしまう可能性があります。
強制送還の対象になるのか
Kさんのように他人の偽装結婚に関わってしまった場合,強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強制送還の対象となる可能性のある場合の法律は,次のとおりです。
三 他の外国人に不正に前章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可又は前二節若しくは次章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくはこれを助けた者
難しいことが書かれているように見えるのですが,簡単にまとめると次のようになります。
誰の在留資格についてか
自分以外の外国人
どんな目的だったか
不正に在留資格を得させる目的で
何をした場合か
文書を偽造した,文書に嘘の記載をした,偽造や嘘の文書を提出/所持/提供した,またはこれらの行為の手助けをした
これらにすべて該当するのであれば,強制送還の対象となる可能性があります。
Kさんの場合には,自分で虚偽の婚姻届を作ったり入管への文書を偽造したというものではないと思われます。そのため,証人になったからと言って,直ちに強制送還の対象になってしまうということはないでしょう。
ただそ,仮に「妹の結婚が偽装結婚であることを最初から知って証人となった場合」には,文書に虚偽の記載をする手助けをしたものとして,強制送還の対象になる可能性もあります。
入管当局は,偽装結婚に対しては特に厳しい態度で臨んでいます。「日本人の配偶者等」の在留資格は,比較的日本で安定した生活を送るためのビザですが,ビザの条件が「結婚」というものだけであることから悪用されることも多いのです。
もしも他人の偽装結婚に関わってしまったという場合には,適切に対応しなければご自身の在留資格まで取り消されて,強制送還されてしまう可能性もあります。偽装結婚に関わってしまったという外国人の方は,早めに弁護士までご相談ください。
永住権が取り消されることもある?永住権を守るためにどうしたらいいか
このページでは,永住許可が取り消されることがあるのか,取り消されそうになった時にどのように対応すべきなのかについて解説をします。
永住権は取り消される?
「永住者」(永住権)の在留資格は,日本で生活する外国人の方にとって,最も安定した在留資格であって,長期間日本で生活することを考えている方であれば,「できれば永住許可を受けたい」と思う方が多いのではないでしょうか。
「永住者」のメリットとしては
- 在留期間が無期限で更新する必要がない
- 仕事の制限がない
- 結婚したら配偶者は「永住者の配偶者等」という在留資格となり,ほぼ永住者と同じ扱いを得られる
というものがあります。これらのメリットは,他の在留資格における手間やリスクといったものを覆すようなもので,「永住者」が「最も安定した在留資格」と言われる理由でもあります。
ただ,この「永住者」の在留資格であっても,取り消される場合というのがあります。
「永住者」であっても在留資格を取り消される場合としてありうるのは,大きく分けて次のような場合です。
- 永住許可申請の時に虚偽の申立てをしたり,偽造した文書を提出して永住許可を受けていた場合
- 日本で犯罪をした事によって,一定の処分や刑罰を受けた場合
虚偽の申立て等をした場合としては,例えば日本で犯罪歴があったのに申告しなかった場合や,仕事場や住所・家族構成について虚偽の申請をした場合,納税や社会保険料の納付に関して文書を偽造して提出していたという場合があります。
また,日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けた場合,永住者の方であっても,退去強制(強制送還)の手続きが始まることがあります。
永住者であっても退去強制(強制送還)となってしまう可能性があるものとしては,
売春に従事しているとされた
1年以上の実刑判決
入管法違反,旅券法違反,薬物関係の事件で有罪の判決を受けた
と言ったものがあります。これらの場合には,たとえ永住者であったとしても強制送還されるおそれがあり,そうなると永住者としての在留資格も失ってしまうことになります。
永住権を守るために出来ること
それでは,永住者としての在留資格が取り消されてしまうかもしれない場合において,どのようなことができるでしょうか。
まず,虚偽の申立てや偽造した文書を提出したことを理由として永住許可が取り消されそうになってしまったという場合,申し立ての内容や提出した文書に誤りがないかどうかをよく確認する必要があります。本当に,永住許可が欲しくて嘘をついてしまったのか,それとも勘違いや誤解から真実と異なる申立てをしてしまっただけなのかによって,永住許可が取り消されるかどうかが変わってきます。
永住許可の取り消しについても,入管で事情聴取がありますから,勘違いや誤解があるという場合には説得的にそれを主張しなければなりません。
また,本当に嘘をついてしまったという場合や日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けたという場合,強制送還に関する手続きの中で,在留特別許可を求めていかなければなりません。
この在留特別許可を求める際に,過去に「永住者」の在留資格を取得していた,ということは,それだけ日本で定着して生活をしていたということですから,在留特別許可をもらいやすくなる事情として働きます。
「永住者だった」というだけでなく,個別の事件における事情や,日本に残らなければならないという事情,日本から出国してしまうと困る事情を広く集めて,入管での事情聴取や口頭審理(インタビュー)手続きの中で強く主張しておかなければなりません。
口頭審理の手続きについて,事前に準備しておくべきことはこちらでも解説しています。
入管での口頭審理手続きについては,家族とは別で弁護士も立ち会うことができます。
永住許可の取消や強制送還の手続きでお困りのことがある方は,一度弁護士にも相談してみましょう。
偽装結婚,解消するための法的手段2つ!
偽装結婚をしてしまったら,どうやって解消したらよいのでしょうか。
また,家族や婚約者が過去に偽装結婚していることが分かった時,どう対応していったらよいのでしょうか。
多くの方は,「離婚をしたらいいのでは」と思うかもしれませんが,実はそうでもないのです。
偽装結婚状態の解消方法について,解説します。 (さらに…)
マッチングアプリで偽装結婚?処罰される事案とは
「マッチングアプリで妻を募集した」として日本人と外国人の男性が逮捕されるという報道がありました。
マッチングアプリで日本人女性を募り、外国人男性と偽装結婚させたとして、愛知県警は27日・・・・・・を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕した。
月5万円の「妻」マッチングアプリで募集 偽装結婚容疑(愛知県)
このような事例のうち,具体的にどのような点が処罰の対象となるのでしょう。また,どうしてこのような偽装結婚は起きるのでしょうか。
外国人同士で偽装結婚が疑われた事例
外国人同士でも偽装結婚が疑われることをご存知でしょうか。
偽装結婚は,刑法の公正証書原本不実記録罪といって,日本の戸籍に虚偽の記載をさせたという犯罪をいいます。
一般的に偽装結婚というと,「日本人と外国人が嘘の婚姻届けをだして,「日本人の配偶者」のビザを不正に取得する」」という犯罪を思い浮かべられるかもしれません。
しかし,外国人同士の結婚であっても,偽装結婚として逮捕,検挙される例があります。
紹介する裁判例,平成30年10月11日東京地方裁判所判決の事例は,在留特別許可を求めた事案でしたが,外国人同士の偽装結婚についても指摘がなされているところです。
この裁判例の,在留特別許可を求めた部分についてはまた別途解説しますが,今回は外国人同士の偽装結婚について解説します。
« Older Entries