外国人同士で偽装結婚が疑われた事例

外国人同士でも偽装結婚が疑われることをご存知でしょうか。

偽装結婚は,刑法の公正証書原本不実記録罪といって,日本の戸籍に虚偽の記載をさせたという犯罪をいいます。

一般的に偽装結婚というと,「日本人と外国人が嘘の婚姻届けをだして,「日本人の配偶者」のビザを不正に取得する」」という犯罪を思い浮かべられるかもしれません。

しかし,外国人同士の結婚であっても,偽装結婚として逮捕,検挙される例があります。

紹介する裁判例,平成30年10月11日東京地方裁判所判決の事例は,在留特別許可を求めた事案でしたが,外国人同士の偽装結婚についても指摘がなされているところです。

この裁判例の,在留特別許可を求めた部分についてはまた別途解説しますが,今回は外国人同士の偽装結婚について解説します。

外国人同士でも偽装結婚にはなる

結論から言うと,外国人同士でも偽装結婚になる場合があります。

偽装結婚は,「戸籍に嘘の記載をさせた」という犯罪ですので,外国人と日本人の結婚でなくても,「嘘の結婚」であれば犯罪になる可能性はあります。

そして,外国人同士の結婚が偽装結婚と疑われるのは,一方の在留資格が,「永住者」である場合です。永住者と結婚すると,「永住者の配偶者等」というビザ(在留資格)に変更できるようになります。この「永住者の配偶者等」と「日本人の配偶者等」の在留資格は,ほとんど違いがなく,「永住者の配偶者」としての在留資格を得た外国人の方も,3年以上実体のある結婚生活を維持し,日本に1年以上在留していれば,新たに「永住者」への在留資格の変更が見込まれます。

日本での在留中の就労についても特に制限がなく,結婚している「永住者」との結婚生活が続いている間は,よほどの事情がない限り,在留資格が取り消されてたり,退去強制(強制送還)の対象となることもありません。ここでいうよほどの事情というのは,日本で薬物事件を起こして有罪の判決を受けたり,他の犯罪で服役するような重い刑罰を受けたというような場合です。

「永住者の配偶者等」であっても,「日本人の配偶者等」と同じ程度に日本で安定した生活を送ることが出来るため,嘘の結婚であっても永住者と結婚して配偶者ビザを得ようとする人もいます。そのように,ビザを得る目的だけで結婚して婚姻届けを出したという場合には,永住者との結婚であっても,偽装結婚として犯罪になるのです。

具体例

平成30年10月11日の判決では,外国籍の女性Aさんとその子供Bさんが退去強制(強制送還)の手続に付されてしまったため,その取り消しを求めて裁判を起こしました。

Aさんは来日後,日本で「永住者」の在留資格を持っているCさんと結婚し,在留資格を「永住者の配偶者」として在留していました。しかし,AさんはCさんとは不仲になってしまい,一時別居するようになります。その間,Aさんは自身の「永住者の配偶者等」の在留資格について更新する必要があったため当時配偶者であったCさんに対して,更新の手続きに協力してほしい,と頼みましたが,Cさんはこれを断りました。

これに怒ったAさんは,自分の更新が認められないのなら,Cさんも一緒に強制送還されてしまえばいいと考えて,警察に対して,「偽装結婚をしています」と申告しに行ったのです。結局,AさんもCさんも逮捕されて捜査を受けてしまいますが,その後処分保留で釈放され,最終的には不起訴処分(嫌疑不十分)がなされています。

この事件では,Aさんが自分から偽装結婚をしていると申告しに行っている点が特徴ですが,偽装結婚かどうかは,あくまで,婚姻届けを出した時点で結婚生活をする意思があったかどうか

が問題になるのです。結婚後に不仲になって,同居していなかったとしても,それだけで偽装結婚になるわけではありません。

この事例では,Aさんも,自分の手続きに協力してくれないCさんに対して怒ってこのような行動に出たようですので,実際に当初から婚姻生活が嘘のものだったとは証拠上認められなかったようなので,嫌疑不十分となっています。

警察としても,「偽装結婚をしています」という申告を受ければ,その人や配偶者を逮捕して取調べを行うということがあるようですが,より具体的に証拠を集めてみてみると,結婚生活の中でお互いに不満がたまっていき,喧嘩の延長として「偽装結婚だ」と言っただけのケースもあるようです。

外国人同士であっても偽装結婚は成立する可能性があること,また,いかに当人が「偽装結婚だ」と言っても,他の証拠から見て刑法的に判断すれば,犯罪になっていない場合もあるという事例でした。

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