マッチングアプリで偽装結婚?処罰される事案とは

「マッチングアプリで妻を募集した」として日本人と外国人の男性が逮捕されるという報道がありました。

マッチングアプリで日本人女性を募り、外国人男性と偽装結婚させたとして、愛知県警は27日・・・・・・を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕した。

月5万円の「妻」マッチングアプリで募集 偽装結婚容疑(愛知県)

このような事例のうち,具体的にどのような点が処罰の対象となるのでしょう。また,どうしてこのような偽装結婚は起きるのでしょうか。

処罰される「偽装結婚」とは

当サイトでも,繰り返し偽装結婚に関する解説を行ってきましたが,ここで改めて,偽装結婚が処罰される理由を解説します。

報道にもある,電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪というのは,国や市役所が作成する公文書,例えば戸籍謄本や不動産の登記簿などに,虚偽の情報を記録させる行為を言います。

このうち,偽装結婚とは,「結婚する意思がないのに結婚したかのように装って,婚姻届を提出し,実際には夫婦となるつもりがないのに戸籍上夫婦として登録すること」です。

日本の民法上,結婚(婚姻)することによって,元々親族関係のなかった人同士の間に夫婦という家族関係が生じ,様々な権利の関係が大きく動くことになります。

例えば,相続の際には配偶者が第一順位の相続人となりますし,婚姻中に他人と男女関係になれば不貞行為として損害賠償義務を負うことになります。結婚をしていなければ(事実婚にもなっていなければ),道徳上の問題はさて置くとしても,浮気をしても「不貞」となることはほとんどないでしょうし,別れる際にも「財産分与」のような複雑な手続きは生じてきません。恋人が死亡してしまっても,相続の権利はありません。婚姻しない限り,法律上は赤の他人と同じなのです(事実婚の場合には法的な保護があります)。

このように,「婚姻」というのは,様々な権利,義務を発生させる重要な行為です。

この「婚姻」を利用して,本当は夫婦として婚姻生活をするつもりがないのに,あえて嘘の届け出を出すことは,日本の戸籍制度を悪用したものとして,刑法により厳しく処罰されるのです。

特に,偽装結婚として立件されるのは,ほとんどが「外国人同士の結婚」もしくは,「日本人と外国人の結婚」なのです。

報道の事例でも,日本人の女性に対して「外国人と結婚するだけでお金がもらえる」として,結婚相手を募っていたようです。

なぜ偽装結婚をしてしまうのか

偽装結婚,特に「日本人と外国人の結婚」の場合,それぞれ異なった目的で偽装結婚に関わってしまい事が多いようです。

外国人側

外国人の方が日本人と「嘘でもいいから結婚したい」と思う動機は,ほとんどが在留資格(ビザ)のためです。

日本人と結婚すると,「日本人の配偶者等」という在留資格へ変更をすることが出来るようになります。日本人の配偶者等の在留資格へ切り替えると,次のようなメリットが出てきます。

・結婚が続いている限り,在留期間の更新が簡単にできる。

・仕事の内容に制限がなくなる,働く時間に制限がなくなる。

・短時間で永住許可をもらいやすくなる。

このようなメリットは,他の在留資格にはほとんど見られないもので,特に安定した在留資格になっています。

偽装結婚をしてしまう外国人の方の動機としては,「在留資格が取り消されそう」,「在留期間の更新が認められなかった」,「日本で色々働いて稼ぎたい」というものが多いように思われます。

なお,外国人の方が偽装結婚により虚偽の在留資格を取得したと認定されると,在留資格は取り消され,刑事裁判での有罪判決を待たないで強制送還の対象となります。

日本人側

一方,日本人の方にとって,偽装結婚をすることによる動機は一つしかありません。報酬です。

上に記載した通り,本来,婚姻をすると,様々権利義務関係が生じてきます。ですが,結婚生活の実態がない偽装結婚となると,婚姻をしたからといって何か利益が生じるわけではありません。

むしろ,本当に結婚したい人との間では偽装結婚は障害になってしまいますし,仮に離婚したいと思ってもその外国人がどこに住んでいるのかも分からないような状態であることも珍しくありません。

報道にもあったように,日本人が外国人との偽装結婚に関与する理由は,その報酬です。

毎月数万円のお金が,「何もしないで手に入る」という甘い誘いから,関わってしまう場合がほとんどです。

日本人も,外国人も,同じく処罰の対象

報道では,偽装結婚を仲介した男性と,実際に偽装結婚をした外国人男性が逮捕されていたようです。

しかし,電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪は,外国人だけを処罰する規定ではありません。

偽装結婚をした人のうち,外国人の方については「在留資格を不正に取得する目的だったであろう」という疑いが強くかけられるため,立件がされやすいというだけで,不正な目的で偽装結婚をしたのであれば,日本人の方も同様に立件され,逮捕,起訴される可能性があります。

日本人の方の場合,「報酬をもらう目的での結婚だった」,「戸籍を貸すだけだった」と見られれば,立件される可能性が十分にあります。

一方,「本当に結婚して夫婦として生活するつもりだった」という場合には,犯罪が不成立となることもあります。

「戸籍を貸すだけで報酬がもらえる」というのは甘い言葉かもしれませんが,現代の社会でも「戸籍」は重要な身分上のものであり,他人に使わせたり,見ず知らずの他人を親族として記録することは,とても危険な行為であると認識した方が良いでしょう。

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