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偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?

2022-12-16

(以下は解説のための架空の事例です)

事例-偽装結婚についての判決後

Cさんは日本国籍の男性ですが,ある時,「戸籍を貸してくれたら毎月10万円振り込む」といわれて,外国籍女性のEさんと偽装結婚をしてしまいました。

その後,CさんはEさんとは何も関係することなく生活していましたが,ある日池袋警察署の警察官がCさんの自宅に捜索差し押さえを行い,Cさんは公正証書原本不実記録罪によって逮捕されてしまいました。

Cさんは起訴され,刑事裁判で有罪の判決を受けました。幸いにして執行猶予判決となりましたが,Cさんは「Eさんとの戸籍はどうなるのだろう」と思い,外国人事件,入管事件に詳しい弁護士に相談しようと思いました。

偽装結婚の罪

一般的に偽装結婚と呼ばれるものの中には,公正証書原本不実記録,同供用罪という犯罪に該当するものがあります。

これは,公務員(市役所職員など)に対して,嘘の申立てや届出を行い,登記簿や戸籍簿と呼ばれる公正証書の原本に虚偽の記載をさせた,またはその原本を供え置かせるというものです。

難しいように聞こえるかもしれませんが,結婚するつもりがないのに婚姻届けを提出して,戸籍上も婚姻したことにした場合には,犯罪が成立することになります。

偽装結婚というと,「結婚するつもりがないのに結婚したことにして婚姻届けを出す」という意味が一般的ですが,まさにこれが犯罪です。

一方,婚姻届けを出したときは幸せいっぱいの夫婦だったけれども結婚生活の中ですれ違い,今はただ「夫婦」という体を保っているだけという,いわゆる「仮面夫婦」のような状態だけでは犯罪とは言えません。あくまで,虚偽の届出を出して,戸籍に虚偽の記載をさせるというのが犯罪なのです。

Cさんのように,当初から婚姻生活を送るつもりがなく,また金銭を得るだけ(もしくは外国人に在留資格を得させるだけ)の目的でした婚姻届の提出なのであれば,公正証書原本不実記録罪に該当するでしょう。

同罪は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

有罪の判決が出た後はどうなるのか

Cさんのように日本人の立場からすると,偽装結婚がばれた後に自分の戸籍がどうなるのかという点が気になる方もいるかもしれません。

というのも,刑事裁判では「有罪(刑の重さ)/無罪」を決めるだけで,戸籍そのものについては何も訂正をしてくれないからです。

刑事裁判の後,Cさんはある困った問題に直面します。それは再婚ができないというものです。

戸籍が元に戻る(CさんとEさんの結婚が虚偽のものだからという理由で訂正される)までは,Cさんは戸籍上既婚者という立場が続くことになります。一方,Eさんと離婚に向けた手続きを行おうとしても,刑事裁判が確定すればEさんのような人は,ほとんど強制送還されるため,そもそもCさんはEさんと連絡を取る事すら難しくなってしまいます。

このような場合に,Cさんの戸籍を訂正して,再婚できるようにするためには次のような手続きが必要です。

まず一つ目は,役所内部での処理を待つというものです。

偽装結婚であることの刑事裁判が確定すると,検察庁から市区町村役場に対して,「あの婚姻届けは虚偽のものでしたよ」という通報がなされます。この通報を受けて,役所が内部の処理として,戸籍を自分たちで訂正するというものです。この手続には時間が掛かり,判決が確定した後,少なくとも数か月かかることになります。

次の手段としては,Cさんのような本人が裁判所に申立てをする場合です。

刑事裁判の中で偽装結婚であることが認められているのであれば,その裁判資料を使って家庭裁判所に対して「戸籍を直すことを許可してください」という申立てをすることができます。この場合には自分たちである程度資料を集めて手続きを行う必要がありますが,役所が自分たちで戸籍を訂正するよりも早く手続きが進むことが期待できます。

戸籍の訂正など,裁判所での手続きについては専門家へ依頼することを検討された方が良いでしょう。

もしも刑事裁判になっていなかったら?

Cさんのように,刑事裁判が確定していればよいですが,もしも刑事裁判になっていないという場合に戸籍を訂正しようと思ったら,どうしたらよいでしょう。

その場合には,そもそも婚姻届の提出自体が無効だったのだということを確定させるために,婚姻無効確認訴訟を起こして,裁判所に「結婚が無効である」ことの判決をもらわなくてはなりません。

また,刑事裁判になっていないという場合には,偽装結婚の相手となった外国籍の人が今どこで何をしているのかということの調査まで行わなければなりません。

加えて,警察には何も知られていない状態で,裁判で「偽装結婚をしていました」と話すことのリスクについても考えなければなりません。

もしも,過去に偽装結婚をしたまま戸籍を放置してしまっているという方,偽装結婚でお悩み・お困りの方がいれば,早めに弁護士などの専門家にご相談ください。

家族や友達の偽装結婚でもビザが取り消される?

2022-11-08

Kさんは日本で「定住者」の在留資格をもって在留している外国人でしたが,Kさんの妹が日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することになりました。

Kさんは,妹が日本で結婚する証人になることになり,婚姻届の「証人」の欄に署名をしました。その後,Kさんの妹は日本人配偶者等の在留資格で来日しました。

しかし後日,実はKさんの妹がした結婚は偽装結婚であり,来日してからは全く家族としての生活をしていないことが分かりました。

Kさんは,妹の偽装結婚の証人となってしまったことで自分の在留資格も影響が出るのではないかと思い,弁護士に相談することにしました。

偽装結婚は重い罪

事例のように,偽装結婚というのは入管実務上でも非常に悪質な犯罪とされており,刑法上も重たい刑罰が定められています。

「本当は夫婦として結婚生活を送るつもりがないのに,ビザをもらうためだけに婚姻届けを出して結婚したことにする」というのは,公正証書原本不実記録,供用罪という犯罪にあたり,最大で5年の懲役刑が科されることになります。

また,公正証書原本不実記録,供用罪で有罪の判決を受け,懲役の判決を受けた場合(執行猶予付きの判決も含みます)には,在留資格によっては強制送還の対象となってしまいます。

さらに,元々の在留資格を問わず,

・自分が偽装結婚をして在留資格を不正に取得したり,在留資格の変更,更新の許可等を得た場合

・偽装結婚によって他人に在留資格を不正に取得させたり,在留資格を変更,更新の許可を得させた場合

には,在留資格の取消し,強制送還の対象となってしまいます。この場合,仮に有罪の判決を受けていなかったとしても,入管の独自の調査によってビザが取り消されたり,強制送還に向けた手続きが進んでしまうことがあります。

特に,逮捕されて警察で取調べを受けているという状態の場合,それと並行しながらビザの取消しに向けた調査が進んでいるという場合があります。警察の取調べについては国選弁護士でも対応をしてくれますが,ビザの取消しに関しては国選弁護士も任務の範囲外になってしまいます。逮捕されている事件でビザの取消しも防ぎたいという場合には,早急に自分たちで弁護士に依頼しましょう。

Kさんの事例の場合,「他人の偽装結婚の証人になっている」ということですから,Kさん自身の在留資格については何ら不正をしていないとしても,「Kさんの妹の在留資格について不正な手段を用いた」と疑われてしまうと,強制送還に関する違反調査が始まってしまう可能性があります。

強制送還の対象になるのか

Kさんのように他人の偽装結婚に関わってしまった場合,強制送還されてしまうのでしょうか。

まず,強制送還の対象となる可能性のある場合の法律は,次のとおりです。

三 他の外国人に不正に前章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可又は前二節若しくは次章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくはこれを助けた者

難しいことが書かれているように見えるのですが,簡単にまとめると次のようになります。

誰の在留資格についてか

自分以外の外国人

どんな目的だったか

不正に在留資格を得させる目的で

何をした場合か

文書を偽造した,文書に嘘の記載をした,偽造や嘘の文書を提出/所持/提供した,またはこれらの行為の手助けをした

これらにすべて該当するのであれば,強制送還の対象となる可能性があります。

Kさんの場合には,自分で虚偽の婚姻届を作ったり入管への文書を偽造したというものではないと思われます。そのため,証人になったからと言って,直ちに強制送還の対象になってしまうということはないでしょう。

ただそ,仮に「妹の結婚が偽装結婚であることを最初から知って証人となった場合」には,文書に虚偽の記載をする手助けをしたものとして,強制送還の対象になる可能性もあります。

入管当局は,偽装結婚に対しては特に厳しい態度で臨んでいます。「日本人の配偶者等」の在留資格は,比較的日本で安定した生活を送るためのビザですが,ビザの条件が「結婚」というものだけであることから悪用されることも多いのです。

もしも他人の偽装結婚に関わってしまったという場合には,適切に対応しなければご自身の在留資格まで取り消されて,強制送還されてしまう可能性もあります。偽装結婚に関わってしまったという外国人の方は,早めに弁護士までご相談ください。

永住権が取り消されることもある?永住権を守るためにどうしたらいいか

2022-06-04

このページでは,永住許可が取り消されることがあるのか,取り消されそうになった時にどのように対応すべきなのかについて解説をします。

永住権は取り消される?

「永住者」(永住権)の在留資格は,日本で生活する外国人の方にとって,最も安定した在留資格であって,長期間日本で生活することを考えている方であれば,「できれば永住許可を受けたい」と思う方が多いのではないでしょうか。

「永住者」のメリットとしては

  1. 在留期間が無期限で更新する必要がない
  2. 仕事の制限がない
  3. 結婚したら配偶者は「永住者の配偶者等」という在留資格となり,ほぼ永住者と同じ扱いを得られる

というものがあります。これらのメリットは,他の在留資格における手間やリスクといったものを覆すようなもので,「永住者」が「最も安定した在留資格」と言われる理由でもあります。

ただ,この「永住者」の在留資格であっても,取り消される場合というのがあります。

「永住者」であっても在留資格を取り消される場合としてありうるのは,大きく分けて次のような場合です。

  • 永住許可申請の時に虚偽の申立てをしたり,偽造した文書を提出して永住許可を受けていた場合
  • 日本で犯罪をした事によって,一定の処分や刑罰を受けた場合

虚偽の申立て等をした場合としては,例えば日本で犯罪歴があったのに申告しなかった場合や,仕事場や住所・家族構成について虚偽の申請をした場合,納税や社会保険料の納付に関して文書を偽造して提出していたという場合があります。

また,日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けた場合,永住者の方であっても,退去強制(強制送還)の手続きが始まることがあります。

永住者であっても退去強制(強制送還)となってしまう可能性があるものとしては,

  売春に従事しているとされた

  1年以上の実刑判決

  入管法違反,旅券法違反,薬物関係の事件で有罪の判決を受けた

と言ったものがあります。これらの場合には,たとえ永住者であったとしても強制送還されるおそれがあり,そうなると永住者としての在留資格も失ってしまうことになります。

永住権を守るために出来ること

それでは,永住者としての在留資格が取り消されてしまうかもしれない場合において,どのようなことができるでしょうか。

まず,虚偽の申立てや偽造した文書を提出したことを理由として永住許可が取り消されそうになってしまったという場合,申し立ての内容や提出した文書に誤りがないかどうかをよく確認する必要があります。本当に,永住許可が欲しくて嘘をついてしまったのか,それとも勘違いや誤解から真実と異なる申立てをしてしまっただけなのかによって,永住許可が取り消されるかどうかが変わってきます。

永住許可の取り消しについても,入管で事情聴取がありますから,勘違いや誤解があるという場合には説得的にそれを主張しなければなりません。

また,本当に嘘をついてしまったという場合や日本で犯罪をした事によって処分や刑罰を受けたという場合,強制送還に関する手続きの中で,在留特別許可を求めていかなければなりません。

この在留特別許可を求める際に,過去に「永住者」の在留資格を取得していた,ということは,それだけ日本で定着して生活をしていたということですから,在留特別許可をもらいやすくなる事情として働きます。

「永住者だった」というだけでなく,個別の事件における事情や,日本に残らなければならないという事情,日本から出国してしまうと困る事情を広く集めて,入管での事情聴取や口頭審理(インタビュー)手続きの中で強く主張しておかなければなりません。

口頭審理の手続きについて,事前に準備しておくべきことはこちらでも解説しています。

【日本に残るために】口頭審理の前の準備

入管での口頭審理手続きについては,家族とは別で弁護士も立ち会うことができます。

永住許可の取消や強制送還の手続きでお困りのことがある方は,一度弁護士にも相談してみましょう。

偽装結婚,解消するための法的手段2つ!

2021-10-06

偽装結婚をしてしまったら,どうやって解消したらよいのでしょうか。

また,家族や婚約者が過去に偽装結婚していることが分かった時,どう対応していったらよいのでしょうか。

多くの方は,「離婚をしたらいいのでは」と思うかもしれませんが,実はそうでもないのです。

偽装結婚状態の解消方法について,解説します。 (さらに…)

マッチングアプリで偽装結婚?処罰される事案とは

2021-08-24

「マッチングアプリで妻を募集した」として日本人と外国人の男性が逮捕されるという報道がありました。

マッチングアプリで日本人女性を募り、外国人男性と偽装結婚させたとして、愛知県警は27日・・・・・・を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で逮捕した。

月5万円の「妻」マッチングアプリで募集 偽装結婚容疑(愛知県)

このような事例のうち,具体的にどのような点が処罰の対象となるのでしょう。また,どうしてこのような偽装結婚は起きるのでしょうか。

(さらに…)

外国人同士で偽装結婚が疑われた事例

2021-05-13

外国人同士でも偽装結婚が疑われることをご存知でしょうか。

偽装結婚は,刑法の公正証書原本不実記録罪といって,日本の戸籍に虚偽の記載をさせたという犯罪をいいます。

一般的に偽装結婚というと,「日本人と外国人が嘘の婚姻届けをだして,「日本人の配偶者」のビザを不正に取得する」」という犯罪を思い浮かべられるかもしれません。

しかし,外国人同士の結婚であっても,偽装結婚として逮捕,検挙される例があります。

紹介する裁判例,平成30年10月11日東京地方裁判所判決の事例は,在留特別許可を求めた事案でしたが,外国人同士の偽装結婚についても指摘がなされているところです。

この裁判例の,在留特別許可を求めた部分についてはまた別途解説しますが,今回は外国人同士の偽装結婚について解説します。

(さらに…)

偽装結婚かどうかが争われた裁判例 その1

2021-04-26

このページでは,偽装結婚かどうかを争った刑事裁判について,判決を解説します。

今回の事例は,平成23年12月27日に静岡地方裁判所浜松支部で判決が言い渡された事例です。 (さらに…)

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