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ウーバー配達員の資格確認,何が問題だった?

2020-12-25

令和2年12月5日,食事の宅配サービスの大手「ウーバーイーツ」を運営するウーバー・ジャパンが外国人の配達員に在留資格を証明する書類を確認する方式を導入したことを,各種の報道機関が報じています。

中日新聞の記事 https://www.chunichi.co.jp/article/165372

このウーバーイーツの配達員に関して,外国人が配達員を担うことについてどんな問題があり得るのかを解説します。

(さらに…)

不法就労助長罪にならないためにはどうしたらよいか

2020-11-27

不法就労助長罪は,企業にとってのリスク!

不法就労助長罪と外国人を雇う会社や事業主にとって,絶対に避けなければならない事態です。

単に経営者や管理職が逮捕されるたり前科がついたりするというだけではありません。

不法就労させていた事業の希望が大きければ報道される可能性は高まりますし,会社名などが公表されることもあります。実際に,不法就労助長罪により中華料理店を経営する会社の役員が逮捕された事件で,会社名まで公表されたこともありました。不法就労助長罪として検挙されるということは,企業としてのレピュテーションリスクでもあります。「あそこの会社は外国人を安く働かせていた,ひどい搾取をしていた」等と非難される可能性もあります。SNS等の情報媒体が発達した現代において,このような負の情報は一瞬で拡散します。

「ちょっとなら大丈夫」等と考えるのではなく,企業全体として「間違っても不法就労にはさせない」という意識が会社全体を守ることにもつながります。

外国人の雇用の点で分からないことや困ったことがある方は是非ご相談ください。

結局,何に気を付けたらいいのか?

「不法就労は違法です」,「不法就労の助長にならないように気を付けましょう」と出入国管理庁や警察は,積極的に宣伝活動や啓発活動をしています。

しかし,現場の担当者(アルバイトの採用担当者や人事の方)は「結局何に気を付けたらいいのか」と思うかもしれません。

そこで,「これだけは必ず確認しておきたい」という重要な点について解説します。

なお,次に解説する点のみで不法就労ないし不法就労助長に当たるかどうか断定できるものではありません。悩む点がある場合には,後々違法と判断される可能性があるということです。早めに弁護士等に相談しましょう。

1 在留カードを持っているか

日本に中長期在留する外国人の方は,どんな在留資格であろうが,在留カードを持っています。そして,日本に在留している間は在留カードを必ず携帯しなければならないこととされており,携帯していない場合には罰則まであります。

在留カードを持っていない外国人の方というのは,「短期滞在」の在留資格がである可能性があります。「短期滞在」の在留資格では原則日本で働くことができません。

特に採用の時点では,在留カードを持っていることを必ず確認しましょう。採用面接などの時に「今日は在留カードを忘れてしまいました」と言われそのまま確認しないままで済ませてしまうことは絶対にいけません。

外国人の方にとって,在留カードを他人に提示することは何も不利益になることはありません。仮に在留カードの提示を拒まれることや,何度も「忘れた」ということがあれば,担当者としては「何かあるのか」と引っかかるべきポイントです。

 

2 在留資格は何か,「就労不可」と書いていないか

在留カードの表面には「就労の可否」という欄があり,ここに「就労不可」と書かれていた場合には,日本で働くことができない在留資格の方です。

もちろん,在留カードには「在留資格」についての記載もありますが,30以上ある在留資格のそれぞれを確認して,外国人の方が働くことができるのかどうかを確認することはやや大変です。そこで,まずは,在留資格の内容を見る前に,「就労の可否」を確認して,そもそも「働いてよい在留資格なのかどうか」を確認することが簡便です。

また,「就労不可」となっていても資格外活動許可を受けていれば働いたり,アルバイトをしたりできます。その場合には資格外活動許可を受けていることが在留カードに記載がされます。この記載は,「就労不可」の一文のすぐ下欄か,裏面下部分にあります。外国人の方から「資格外活動許可を受けているので大丈夫です」と言わても,在留カードにも,そのとおり記載があるかどうか確認しましょう。

 

3 在留期限はいつまでか,在留カードの有効期限はいつまでか

在留カードを確認して就労の可否を確認したときに,併せて「在留期限」と「在留カードの有効期限」を確認しましょう。

当たり前のことに感じられるかもしれませんが,在留期限を過ぎている方はオーバーステイの状態ですし,有効期限の切れた在留カードでは現在の在留資格を確認できない可能性もあります。オーバーステイ状態で働けば不法就労になりますし,有効期限の切れた在留カードを確認しただけでは現時点での在留資格を確認しなかったものとして不法就労助長罪に問われる可能性もあります。

なお,在留期限を確認することは人事戦略的にも重要です。外国人の方の在留期限は,必ずしも延長されるものではありませんが,多くの方は在留期限いっぱいまで日本での在留を希望されます。在留期限を見ておくことで,いつまで日本に在留する人なのか,いつ以降は日本にいない可能性がある人なのか,を考えることもできます。

 

少し特別な対応をする場合

☆永住者,日本人の配偶者等の場合

永住者や日本人の配偶者等の在留資格のように,日本での在留中の活動に何らの制限のない方もいます。この場合,その在留資格が有効である限り,不法就労となることはありません。

在留カードを見て「永住者」や「日本人等の配偶者」とあれば不法就労助長となるリスクは極めて低いと言えます。「永住者」や「日本人等の配偶者等」の在留資格の方の場合には,「在留期限」が過ぎていないかという点と,「在留カードの有効期限」が過ぎていないかを確認しておきましょう。

なお,よく似ているように見えますが「家族滞在」の在留資格は全く違う在留資格ですので気を付けましょう。

 

☆中途採用の場合

これまで日本に在留していた中途採用となる外国人の方 を新しく雇入れる場合,在留資格の変更の必要があるのかどうかを確認する必要があります。同種の職であれば,多くの場合には在留資格の変更を必要としませんが,稀に「前職から不法就労状態であった」という場合もあります。

前の在留資格を確認しておくことももちろん重要ですが,それを軽々に信用するのではなく,あくまで自社で調査,確認することを心がけていただく必要があると思います。

 

まとめ

不法就労助長罪とならないために,現場の担当者の方にぜひ気を付けて頂きたい点について解説してきました。

ここに挙げたのは外国人の方を雇入れようとする際に最低限知っておきたい点になります。

より個別の場面,個々の職種や業態に応じて,担当者の方として「この時はどうしたらいいんだろう」と悩むこともあるかもしれません。

不法就労助長罪として摘発されるというのは,企業において絶対に避けなければならないリスクです。

分からないことがある場合には,そのままにせず,弁護士などの専門家へ相談しましょう。

不法就労助長罪による逮捕・処罰

2020-11-24

このページでは,不法就労助長罪について詳しく解説します。

外国人を雇う事業主の方には必ず知っておいていただきたい内容になります。出入国管理法が定めている不法就労助長罪は「そんな法律は知らなかった」と言っても逃れられない規制ですし,「逮捕されるとは思わなかった」,「前科がつくなんて知らなかった」と思っていると,思わぬ結果になってしまうこともある事件です。

不安な点がある方は早めに弁護士に相談しましょう。

不法就労助長罪はどんな罪か

不法就労助長罪とは,日本で働くことが認められていない外国人を

1 事業のために働かせたり

2 日本で働くように自分の下で支配,管理したり

3 繰り返し(法律上は「業として」)日本での働き先を紹介したり

等した場合に犯罪になるというものです。


出入国管理法73条の2

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三  業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者


 

不法就労活動」とは何か

不法就労活動」とは,働く内容が違法かどうかという点ではなく,その外国人の方が「日本で適法に働く資格があるかどうか」が問題となります。

不法就労活動の典型例としては次のようなものがあります。

・在留資格がないが日本での生活費のために働く

・在留期間を過ぎてオーバーステイになったが生活費のために働く

・出国準備の在留資格や短期滞在の在留資格で働く

・週28時間のアルバイトが認められているがそれを超過して働く

このような場合には,出入国管理法上は不法就労活動として扱われることになります。

 

「させた」,「させる」とは何か

不法就労を「させる」とは,事業主として働かせた場合や,監督下で働くことを認めていた場合のことを言います。

「勝手に働いていたので知らない」と主張される方もいますが,外国人が自分の判断で働いていたとしても,その労働に対して給料を払っていた場合や会社に利益があったような場合には監督下で働くことを認めていたと判断され,不法就労をさせていたと見られることがあります。

 

逮捕されるのか

不法就労助長罪については事業主の方が最初に検挙されたり逮捕されたりするということは多くありません。

というのも,不法就労助長罪が発覚する場合というのは,まずは,労働者である外国人の方が不法残留(オーバーステイ)や資格外活動などにより,外国人の方が検挙され,そこから雇用主である事業主の方に対して捜査が及ぶことが多いようです。また,同業者や取引先からの告発や通報によって発覚するというケースもあるようです。

いずれのきっかけにしても,警察や出入国管理局が不法就労助長罪の疑いがあると判断すれば,他の従業員との口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあるとして,逮捕されてしまう可能性があります。

実際に,事業主の方が逮捕される事例も多く発表されています。

不法就労助長罪による逮捕の報道例

在留資格のない外国人を工場に派遣していたとされる事件 https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20201118/1000056343.html

中国人留学生を風俗店で働かせていたとされる事件 https://www.sankei.com/west/news/201101/wst2011010008-n1.html

不法就労助長罪の疑いがかかると,逮捕から引き続いて最長20日間勾留されるおそれがあるほか,複数の従業員を別々の機会で働かせていた場合には再逮捕されることもあります。

逮捕されてしまってからでは自分で弁護士を探したり相談に行ったりすることが出来なくなります。少しでも不安な点がある方やこれから外国人を雇って事業を拡大しようと考えている方はあらかじめ専門家に相談しましょう。

 

前科がつくのか

不法就労助長罪について検挙,逮捕され,捜査された結果,不法就労助長罪の証拠が揃ったと見られると,多くの場合には起訴され,裁判になります。

不法就労助長罪は特定の被害者がいる事件ではありませんので,示談をして不起訴となるという事件ではありません。

不法就労助長罪については,「外国人が働けない状態だったとは知らなかった」と言っても処罰されることがあります。

出入国管理法上は,外国人が不法就労活動をしていることについて知らなかったとしても,事業者,雇用主の側に過失がなかった場合には処罰を免れないことが規定されています。やや難しい規定ですが,

  不法就労であるかどうか確認をしていた 不法就労であるかどうか確認をしなかった
不法就労であることを知っていた 処罰される 処罰される
不法就労であることを知らなかった 処罰されないことがある 処罰される可能性あり

上の表にあるように,処罰される場合の方が広くなっています。

不法就労助長罪について有罪となると,不法就労をさせていた規模や利益の程度,不法就労の内容が社会的に非難されるものかどうかという点に応じて,刑の重さが決められます。

不法就労によって大きな利益を得ていたこと(平成29年3月10日前橋地方裁判所太田支部),不法就労の規模が大きいこと(令和元年10月9日札幌地方裁判所),就労内容に売春が含まれていたこと(平成29年4月24日前橋地方裁判所)が刑を重くする事情として見られています。

会社や事業所の代表の方に対しては懲役刑と罰金刑の両方,法人に対しては罰金刑が科されることが多くなっています。これらはいずれも前科として扱われます。前科の内容によっては,会社の役員となることが出来ないことがある,各種許認可の手続ができないことがある,海外への渡航に制限が付くことがある等,種々のデメリットがあります。また,技能実習や特定技能の受け入れ機関となることが出来なくなるというデメリットもあります。

 

まとめ

不法就労助長罪の内容や逮捕されるのかどうか,前科がつくのかどうかという点について解説しました。

次回のページでは,不法就労助長にならないために気を付けるべき点について解説しますので,併せて読んでいただければと思います。

資格外活動への処分その1

2020-10-30

このページでは,日本に在留する外国人の方が資格外活動をしてしまった場合の刑罰その後の処分について解説します。 (さらに…)

資格外活動として検挙される場合

2020-10-28

このページでは,どのような場合に資格外活動として摘発されるかを解説します。

 

資格外活動に当たる場合

日本に在留する外国人の方は,在留中の活動に応じた在留資格が付与されています。それぞれの在留資格に応じて,日本でできること/できないことが変わります。

在留資格で認められる範囲外の活動を行う場合には資格外活動許可が必要になります。資格外活動許可の申請については,前回のページ「資格外活動許可の申請手続き」でも解説していますので併せてご覧下さい。

資格外活動とは,出入国管理法19条1項に反する行為を指します。

(さらに…)

就労資格証明書の取得手続

2020-10-20

このページでは,就労資格証明書について,解説します。

 

就労資格証明書とは何か

就労資格証明書とは,『既に取得している在留資格の範囲内で日本で働くことができることと,仕事の内容』を証明するものです。

在留資格には,いわゆる「就労ビザ」と呼ばれるものがあり,特定の仕事をするために日本に在留する際に認められるものがあります。

しかし,就労ビザは,「経営管理」や「教授」「教育」など,種類だけ聞いても「この在留資格でこの仕事に就くことはできるのか?」と判断しにくいものもあります。特に,「技術・人文知識・国際業務」は,パッと見ただけではどんな仕事を含むのか判断しづらく,「これは人文知識の在留資格で働ける仕事なのか」と悩むことも多くあります。

せっかく就労の在留資格が取得できても,それを使って日本で働けるのかどうか分からないというのでは,在留資格を申請する意味がありません。

そこで,「就労資格証明書」を取得することによって,取得した在留資格によって働くことが出来る内容を証明することが出来るのです。

 

どのように申請したらよいか

就労資格証明書の申請には,次の書類を準備します。

申請書(こちらからもダウンロードできます) 1通

・在留カード,旅券を提示(提示できないときは理由書を提出する)

・申請手数料1200円(窓口で払う)

就労資格証明書の申請は,各地方出入国管理局の窓口で,平日・日中の時間帯に申請書を提出します。

申請から証明書が発行されるまでにかかる期間は,通常その日のうちに発行されますが,転職する場合だと1~3か月程度かかることもあります。

特に,転職にあたって就労資格証明書を申請する場合には期間の余裕を持って申請手続きを行いましょう。

 

どんな時に使えるのか

就労資格証明書を活用すべき場合とは,上記で触れたように,就労ビザで日本に在留している外国人の方が転職しようとする場合です。

日本人の配偶者や永住許可を受けている方は,日本での就労に大きな制限はないので,基本的には就労資格証明書を使うことは少ないかと思います。

日本国内で転職する際,転職後の仕事の内容についての「就労資格証明書」を取得しておくことで,

①転職先に対して適法な在留資格を持っていることを証明できる。

②次回の在留期間の延長の時に手続きが円滑に進む。

というメリットがあります。

もちろん,就労資格証明書がなくても同じ在留資格に適合する範囲内であれば転職するは可能です。

ただ,就労資格証明書を得ておくことによって,在留資格を変更しないままで問題ないことを転職先に示すことで,転職先の会社としても「この人を雇っても不法就労にはならない」と安心することが出来ます。一般の企業でも,仕事の内容が在留資格に適合しているものなのかどうか,判断するのは非常に難しい場合があります(特に,技術・人文知識・国際業務の在留資格。就労系の在留資格として最も取得されているものですが,その範囲については漠然としています)。

また,通常,転職後の在留期間の延長の審査には追加の書類が多数必要になることに加えて,審査にも時間がかかります。在留期間の延長審査をしている間に,在留期間の満了を迎えてしまう,ということも考えられます。

事前に就労資格証明書を取得しておけば,在留期間の延長申請の時に慌てなくてすみます。

 

更に,万が一,就労資格証明書が交付さなかった場合には,再度転職活動を続けるということもできます。

もしも,転職した後に在留期間の延長申請をして,「転職後の仕事では在留資格が認められない」ということが分かったとすると,延長申請が認められないだけではなく,在留資格が特定活動へと変更され,日本からの出国準備をしなければならなくなります。そうなると,転職先での仕事を続けることはできなくなってしまいますし,仕事を続けると資格外活動として出入国管理法違反の刑罰にも問われかねません。

そうなる前に就労資格証明書を申請して,転職後の仕事も在留資格に適合するかどうか一度審査を受けておくことで,余裕を持った転職活動ができることになります。

 

まとめ

就労資格証明書は,①のような事業者にとってのメリット,②のような外国人側にとってのメリットの両方のあるものですが,あまり活用されていないようです。

中途採用やヘッドハンティング等で外国人の採用を考えている事業主の方,在留資格を変えないままで転職しようと考えている外国人の方は,就労資格証明書の取得,活用を検討されると良いでしょう。

就労資格証明書の取得にあたって,手続上分からないことがある方や,手続の代理をお願いしたいという方は,事前に弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。

 

日本に留学中の外国人は働けるのか

2020-09-29

留学生を雇うと問題があるのか?

※このページは主に日本の事業主の方に向けた解説です。

留学のために来日する外国人留学生は年々増加しており,平成30年の統計によると,約33万人の外国人留学生が日本に在留しています(なお,日本における大学生の総数が約280万人程度と言われています)。

完全に自分一人で事業を行っている方を除けば,大半の事業主の方は人を雇って事業を営まれているかと思います。また,事業の形態や規模にもよりますが,正規の社員ではなく,アルバイトとして人を雇っているという方もいらっしゃるかと思います。

そして,現在のように外国人留学生が増加している中で,「留学生がアルバイト応募してきたのだけれど雇っていいのかな」という質問を持たれる方もいらっしゃいます。

今回は,留学生を雇う場合の問題点について取り上げます。

(さらに…)

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