Posts Tagged ‘不法就労’
「研修」ビザの注意点,実は働かせてはいけなかった?
在留資格「研修」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「研修」の在留資格に該当する活動としては、日本の公私の機関により受け入れられて行う技能等の修得をする活動(技能実習1号、留学における活動を除く。)が該当します。
この「研修」の在留資格の該当例としては、研修生です。
この「研修」の在留資格の在留期間は、1年・6月又は3月です。
この「研修」には、①実務研修を伴わない非実務研修と②実務を伴う研修の2種類があります。
基本的には、一般企業においては実務研修を伴わない非実務研修のみが対象となり、公的機関が行う研修については実務を伴う研修が可能ということになっています。
つまり,「研修」の在留資格の場合には,基本的には労働をしてはいけない(対価が生じるような活動をしてはならない)ことになるのです。
また、この「研修」の在留資格で来日する外国人は、基本的に労働者として取り扱われませんので、日本の労働関連法令(労働基準法や労働契約法など)は基本的に非適用となる点がポイントといえます。
そのため、研修を実施する企業と、研修で来日する外国人との間において、雇用契約を締結する必要はなく、研修を実施する企業としては賃金を支払う必要もないということになります。逆に,賃金を支払うような活動は不法就労や不法就労助長罪になってしまう可能性があります。
ただし、研修を実施する企業は、外国人に対して生活費として研修手当などを支給することがなります。賃金ではなく,あくまで滞在のための費用の援助です。
この「研修」の在留資格は、最長1年の在留期限があり、かつ日本で研修をした後に帰国することを前提としている在留資格ですので、在留資格「家族滞在」の対象となっておらず、家族を帯同することはできません。
「研修」のうち、①実務研修を伴わない非実務研修の場合の要件は、以下の6点です。
- 申請人が修得しようとする技能等が、同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと
- 申請人が18歳以上であり、かつ国籍又は住所を有する国に帰国後、日本において修得した技能等を要する業務に従事することが予定されていること
- 申請人が住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技能等を修得しようとすること
- 申請人が受けようとする研修が研修生を受け入れる日本の公私の機関(以下、受入れ機関)の常勤の職員で、修得しようとする技能等について5年以上の経験を有するものの指導の下に行われること
- 研修実施機関又はあっせん機関が研修生の帰国旅費の確保その他の帰国担保措置を講じていること
- 研修実施機関が研修の実施状況に係る文書を作成し、研修を実施する事業所に備え付け、当該研修の終了の日から1年以上保存することとされていること
この在留資格「研修」が不許可となる典型的なケースとしては、一般企業が受け入れる際に実務研修を伴う内容としてしまう場合が挙げられます。
前述の通り、原則として一般企業においては非実務研修のみに限定されているため、実務研修を伴う活動は認められていません。
一般企業において実務研修を伴う場合は、技能実習などの在留資格を取得する必要となるため、留意が必要です。
以上のように、外国人に「研修」をさせたいという目的で外国人を受け入れる場合で、ご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。
強制送還された後も再入国できる?上陸特別許可の解説
上陸特別許可・上陸拒否の特例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
日本で暮らしていた外国人が、オーバーステイや何かの犯罪をしてしまい有罪判決を受けて本国に帰国したときは、日本から出国したあと再び日本に入国できるでしょうか?
再入国できないのはどんな場合?
入管法5条1項では、外国人の日本への上陸拒否(入国を認めない)にあたる事項を列挙しています。
上陸拒否に当たるもので代表的なものとして
- 過去に退去強制されたり,出国命令を受けて出国したりしたことがない場合の上陸拒否期間は,退去強制された日から5年
- 過去に退去強制されたり,出国命令を受けて出国したりしたことがある場合(「複数回退去強制」)の上陸拒否期間は,退去強制された日から10年
- 出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は,出国した日から1年
- 日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた場合
「懲役刑等(1年以上)」は無期限上陸拒否、「等」には執行猶予も含む。
- 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の法令に違反して刑に処せられた者は無期限上陸拒否
- となっています。
該当者が執行猶予を含む1年以上の有罪判決を受けて判決が確定した場合、一旦日本から出国すると、法律上は永久に日本に入国することが出来ないという極めて厳しい規定となっています。
また薬物事犯の場合は、1年以下の有罪でも無期限上陸拒否となります。
①はオーバーステイにより退去強制を受けた場合、それが初回であり、かつ過去に出国命令を受けたことのない場合の上陸特別拒否期間について規定しており、退去強制の日から5年間は再び日本に入国することが出来ませんというものです。
最近一部マスコミ等でオーバーステイにあたる者に対して「非正規滞在者」という表現を使用していることと関係しているのか、時々ご相談の方から「オーバーステイは犯罪じゃないですよ」というお話しをされることがあります。
しかし,出入国管理及び難民認定法ではオーバーステイは「三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する」と規定されていることから、あくまで法律上オーバーステイは罰則のある犯罪です。
オーバーステイは「非正規滞在」だから「非正規労働者」みたいなもので、特に法律上問題はないだろう,と思われることが,上記のようなお話をされる理由かもしれませんが,法律上は誤りです。オーバーステイで逮捕されるということは全く珍しくありませんし,仮に刑事事件で扱われなくても行政処分として出国後5年間は日本に上陸が出来ません。
それゆえオーバーステイを安易に考えることは出来ません。
なお出入国在留管理局を含む法務省、総務省等の官公庁は、オーバーステイに対する表現を「不法滞在」で統一しています。
再入国できる場合とは?
入管法7条1項各号では、外国人が日本に上陸するための条件が規定されています。
この条件に適合しない場合、本来なら日本に上陸することができませんが、法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると判断した場合に、法務大臣の裁量により上陸が認められる場合があります。この法務大臣による許可を「上陸特別許可」といいます。
H21年に入管法が改正され上陸拒否の特例(法5の2)が設けられました。
入管法5条1項で規定する上陸拒否事由に該当する場合であっても、法務大臣が法務省令に該当する場合であって相当と認める時には、入国審査官,特別審理官,法務大臣と三段階の手続を経る上陸特別許可(法12条1項)を行わずに、入国審査官が上陸許可の証印をできるようにする規定です。(『入管法と外国人労務管理・監査の業務』857P)
申請の方法として、あらかじめ在留資格認定証明書交付申請を行い、審査の結果、同証明書が交付されると申請人は在外公館で査証発給を得て、我が国の空港などで上陸申請を行い日本に入国します。
上陸特別許可、上陸拒否の特例に関してご心配や困りごとのあるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。
留学の在留資格取得手続
このページでは,「留学」の在留資格取得について解説をします。
在留資格を持って中長期的に日本に滞在している外国人の方の中でも,「留学」ビザで在留している人の割合は高く,中長期滞在者の約10%(2020年度の統計データ)が留学生です。
各都市のロックダウンや出入国制限などによって,2020年は留学生の数は大きく減りましたが(2019年に比べると約半分以下)それでも,中長期滞在者に占める「留学」ビザの割合は,上位5位となっています。
資格外活動許可申請の審査基準
日本で生活されている方,特に,留学生や家族滞在の在留資格で日本に在留している方の中には,資格外活動の申請をしている方が多いのではないでしょうか。就労ビザを持っている人であれば良いですが,留学生や家族滞在の在留資格の方が日本でアルバイトやパートで働くときには,資格外活動許可を受けなければ不法就労になってしまいます。
以前,不法就労になってしまうのかどうかについての解説記事もアップしています。
今回は,資格外活動申請をしたとして,その後はどんな審査がなされるのかについて出入国管理庁の審査基準などについて解説します。申請を出すときに,どんなポイントに気を付けないといけないのか,どんなことを書いたら不許可になるのかについても解説しますので,気になる方は最後までよく読んで申請を出しましょう。
外国人労働者の雇用指針
厚生労働省は,『外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針』(以下指針とします)というものを発表しています。
これは厚生労働所のホームページでも公開されているもので,誰でも閲覧可能です。
この指針は,事業主が外国人を雇うときに従うべきガイドラインのようなものですが,その内容は難しく,パッと見とても複雑そうに見えるかもしれません。
そこで,このページでは指針のうち特に重要,もしくは守らないと罰則があるかもしれない,というものをピックアップして解説します。外国人の雇い入れについて詳しくお知りになりたい方や,外国人の雇い入れについて手続が分からなくて困っている,何が分からないのかが分からなくて困っている,という方も是非ご相談ください。
ウーバー配達員の資格確認,何が問題だった?
令和2年12月5日,食事の宅配サービスの大手「ウーバーイーツ」を運営するウーバー・ジャパンが外国人の配達員に在留資格を証明する書類を確認する方式を導入したことを,各種の報道機関が報じています。
中日新聞の記事 https://www.chunichi.co.jp/article/165372
このウーバーイーツの配達員に関して,外国人が配達員を担うことについてどんな問題があり得るのかを解説します。
不法就労助長罪にならないためにはどうしたらよいか
不法就労助長罪は,企業にとってのリスク!
不法就労助長罪と外国人を雇う会社や事業主にとって,絶対に避けなければならない事態です。
単に経営者や管理職が逮捕されるたり前科がついたりするというだけではありません。
不法就労させていた事業の希望が大きければ報道される可能性は高まりますし,会社名などが公表されることもあります。実際に,不法就労助長罪により中華料理店を経営する会社の役員が逮捕された事件で,会社名まで公表されたこともありました。不法就労助長罪として検挙されるということは,企業としてのレピュテーションリスクでもあります。「あそこの会社は外国人を安く働かせていた,ひどい搾取をしていた」等と非難される可能性もあります。SNS等の情報媒体が発達した現代において,このような負の情報は一瞬で拡散します。
「ちょっとなら大丈夫」等と考えるのではなく,企業全体として「間違っても不法就労にはさせない」という意識が会社全体を守ることにもつながります。
外国人の雇用の点で分からないことや困ったことがある方は是非ご相談ください。
結局,何に気を付けたらいいのか?
「不法就労は違法です」,「不法就労の助長にならないように気を付けましょう」と出入国管理庁や警察は,積極的に宣伝活動や啓発活動をしています。
しかし,現場の担当者(アルバイトの採用担当者や人事の方)は「結局何に気を付けたらいいのか」と思うかもしれません。
そこで,「これだけは必ず確認しておきたい」という重要な点について解説します。
なお,次に解説する点のみで不法就労ないし不法就労助長に当たるかどうか断定できるものではありません。悩む点がある場合には,後々違法と判断される可能性があるということです。早めに弁護士等に相談しましょう。
1 在留カードを持っているか
日本に中長期在留する外国人の方は,どんな在留資格であろうが,在留カードを持っています。そして,日本に在留している間は在留カードを必ず携帯しなければならないこととされており,携帯していない場合には罰則まであります。
在留カードを持っていない外国人の方というのは,「短期滞在」の在留資格がである可能性があります。「短期滞在」の在留資格では原則日本で働くことができません。
特に採用の時点では,在留カードを持っていることを必ず確認しましょう。採用面接などの時に「今日は在留カードを忘れてしまいました」と言われそのまま確認しないままで済ませてしまうことは絶対にいけません。
外国人の方にとって,在留カードを他人に提示することは何も不利益になることはありません。仮に在留カードの提示を拒まれることや,何度も「忘れた」ということがあれば,担当者としては「何かあるのか」と引っかかるべきポイントです。
2 在留資格は何か,「就労不可」と書いていないか
在留カードの表面には「就労の可否」という欄があり,ここに「就労不可」と書かれていた場合には,日本で働くことができない在留資格の方です。
もちろん,在留カードには「在留資格」についての記載もありますが,30以上ある在留資格のそれぞれを確認して,外国人の方が働くことができるのかどうかを確認することはやや大変です。そこで,まずは,在留資格の内容を見る前に,「就労の可否」を確認して,そもそも「働いてよい在留資格なのかどうか」を確認することが簡便です。
また,「就労不可」となっていても資格外活動許可を受けていれば働いたり,アルバイトをしたりできます。その場合には資格外活動許可を受けていることが在留カードに記載がされます。この記載は,「就労不可」の一文のすぐ下欄か,裏面下部分にあります。外国人の方から「資格外活動許可を受けているので大丈夫です」と言わても,在留カードにも,そのとおり記載があるかどうか確認しましょう。
3 在留期限はいつまでか,在留カードの有効期限はいつまでか
在留カードを確認して就労の可否を確認したときに,併せて「在留期限」と「在留カードの有効期限」を確認しましょう。
当たり前のことに感じられるかもしれませんが,在留期限を過ぎている方はオーバーステイの状態ですし,有効期限の切れた在留カードでは現在の在留資格を確認できない可能性もあります。オーバーステイ状態で働けば不法就労になりますし,有効期限の切れた在留カードを確認しただけでは現時点での在留資格を確認しなかったものとして不法就労助長罪に問われる可能性もあります。
なお,在留期限を確認することは人事戦略的にも重要です。外国人の方の在留期限は,必ずしも延長されるものではありませんが,多くの方は在留期限いっぱいまで日本での在留を希望されます。在留期限を見ておくことで,いつまで日本に在留する人なのか,いつ以降は日本にいない可能性がある人なのか,を考えることもできます。
少し特別な対応をする場合
☆永住者,日本人の配偶者等の場合
永住者や日本人の配偶者等の在留資格のように,日本での在留中の活動に何らの制限のない方もいます。この場合,その在留資格が有効である限り,不法就労となることはありません。
在留カードを見て「永住者」や「日本人等の配偶者」とあれば不法就労助長となるリスクは極めて低いと言えます。「永住者」や「日本人等の配偶者等」の在留資格の方の場合には,「在留期限」が過ぎていないかという点と,「在留カードの有効期限」が過ぎていないかを確認しておきましょう。
なお,よく似ているように見えますが「家族滞在」の在留資格は全く違う在留資格ですので気を付けましょう。
☆中途採用の場合
これまで日本に在留していた中途採用となる外国人の方 を新しく雇入れる場合,在留資格の変更の必要があるのかどうかを確認する必要があります。同種の職であれば,多くの場合には在留資格の変更を必要としませんが,稀に「前職から不法就労状態であった」という場合もあります。
前の在留資格を確認しておくことももちろん重要ですが,それを軽々に信用するのではなく,あくまで自社で調査,確認することを心がけていただく必要があると思います。
まとめ
不法就労助長罪とならないために,現場の担当者の方にぜひ気を付けて頂きたい点について解説してきました。
ここに挙げたのは外国人の方を雇入れようとする際に最低限知っておきたい点になります。
より個別の場面,個々の職種や業態に応じて,担当者の方として「この時はどうしたらいいんだろう」と悩むこともあるかもしれません。
不法就労助長罪として摘発されるというのは,企業において絶対に避けなければならないリスクです。
分からないことがある場合には,そのままにせず,弁護士などの専門家へ相談しましょう。
不法就労助長罪による逮捕・処罰
このページでは,不法就労助長罪について詳しく解説します。
外国人を雇う事業主の方には必ず知っておいていただきたい内容になります。出入国管理法が定めている不法就労助長罪は「そんな法律は知らなかった」と言っても逃れられない規制ですし,「逮捕されるとは思わなかった」,「前科がつくなんて知らなかった」と思っていると,思わぬ結果になってしまうこともある事件です。
不安な点がある方は早めに弁護士に相談しましょう。
不法就労助長罪はどんな罪か
不法就労助長罪とは,日本で働くことが認められていない外国人を
1 事業のために働かせたり
2 日本で働くように自分の下で支配,管理したり
3 繰り返し(法律上は「業として」)日本での働き先を紹介したり
等した場合に犯罪になるというものです。
出入国管理法73条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
「不法就労活動」とは何か
「不法就労活動」とは,働く内容が違法かどうかという点ではなく,その外国人の方が「日本で適法に働く資格があるかどうか」が問題となります。
不法就労活動の典型例としては次のようなものがあります。
・在留資格がないが日本での生活費のために働く
・在留期間を過ぎてオーバーステイになったが生活費のために働く
・出国準備の在留資格や短期滞在の在留資格で働く
・週28時間のアルバイトが認められているがそれを超過して働く
このような場合には,出入国管理法上は不法就労活動として扱われることになります。
「させた」,「させる」とは何か
不法就労を「させる」とは,事業主として働かせた場合や,監督下で働くことを認めていた場合のことを言います。
「勝手に働いていたので知らない」と主張される方もいますが,外国人が自分の判断で働いていたとしても,その労働に対して給料を払っていた場合や会社に利益があったような場合には監督下で働くことを認めていたと判断され,不法就労をさせていたと見られることがあります。
逮捕されるのか
不法就労助長罪については事業主の方が最初に検挙されたり逮捕されたりするということは多くありません。
というのも,不法就労助長罪が発覚する場合というのは,まずは,労働者である外国人の方が不法残留(オーバーステイ)や資格外活動などにより,外国人の方が検挙され,そこから雇用主である事業主の方に対して捜査が及ぶことが多いようです。また,同業者や取引先からの告発や通報によって発覚するというケースもあるようです。
いずれのきっかけにしても,警察や出入国管理局が不法就労助長罪の疑いがあると判断すれば,他の従業員との口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあるとして,逮捕されてしまう可能性があります。
実際に,事業主の方が逮捕される事例も多く発表されています。
↓不法就労助長罪による逮捕の報道例
在留資格のない外国人を工場に派遣していたとされる事件 https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20201118/1000056343.html
中国人留学生を風俗店で働かせていたとされる事件 https://www.sankei.com/west/news/201101/wst2011010008-n1.html
不法就労助長罪の疑いがかかると,逮捕から引き続いて最長20日間勾留されるおそれがあるほか,複数の従業員を別々の機会で働かせていた場合には再逮捕されることもあります。
逮捕されてしまってからでは自分で弁護士を探したり相談に行ったりすることが出来なくなります。少しでも不安な点がある方やこれから外国人を雇って事業を拡大しようと考えている方はあらかじめ専門家に相談しましょう。
前科がつくのか
不法就労助長罪について検挙,逮捕され,捜査された結果,不法就労助長罪の証拠が揃ったと見られると,多くの場合には起訴され,裁判になります。
不法就労助長罪は特定の被害者がいる事件ではありませんので,示談をして不起訴となるという事件ではありません。
不法就労助長罪については,「外国人が働けない状態だったとは知らなかった」と言っても処罰されることがあります。
出入国管理法上は,外国人が不法就労活動をしていることについて知らなかったとしても,事業者,雇用主の側に過失がなかった場合には処罰を免れないことが規定されています。やや難しい規定ですが,
不法就労であるかどうか確認をしていた | 不法就労であるかどうか確認をしなかった | |
不法就労であることを知っていた | 処罰される | 処罰される |
不法就労であることを知らなかった | 処罰されないことがある | 処罰される可能性あり |
上の表にあるように,処罰される場合の方が広くなっています。
不法就労助長罪について有罪となると,不法就労をさせていた規模や利益の程度,不法就労の内容が社会的に非難されるものかどうかという点に応じて,刑の重さが決められます。
不法就労によって大きな利益を得ていたこと(平成29年3月10日前橋地方裁判所太田支部),不法就労の規模が大きいこと(令和元年10月9日札幌地方裁判所),就労内容に売春が含まれていたこと(平成29年4月24日前橋地方裁判所)が刑を重くする事情として見られています。
会社や事業所の代表の方に対しては懲役刑と罰金刑の両方,法人に対しては罰金刑が科されることが多くなっています。これらはいずれも前科として扱われます。前科の内容によっては,会社の役員となることが出来ないことがある,各種許認可の手続ができないことがある,海外への渡航に制限が付くことがある等,種々のデメリットがあります。また,技能実習や特定技能の受け入れ機関となることが出来なくなるというデメリットもあります。
まとめ
不法就労助長罪の内容や逮捕されるのかどうか,前科がつくのかどうかという点について解説しました。
次回のページでは,不法就労助長にならないために気を付けるべき点について解説しますので,併せて読んでいただければと思います。
資格外活動への処分その1
このページでは,日本に在留する外国人の方が資格外活動をしてしまった場合の刑罰やその後の処分について解説します。 (さらに…)
資格外活動として検挙される場合
このページでは,どのような場合に資格外活動として摘発されるかを解説します。
資格外活動に当たる場合
日本に在留する外国人の方は,在留中の活動に応じた在留資格が付与されています。それぞれの在留資格に応じて,日本でできること/できないことが変わります。
在留資格で認められる範囲外の活動を行う場合には資格外活動許可が必要になります。資格外活動許可の申請については,前回のページ「資格外活動許可の申請手続き」でも解説していますので併せてご覧下さい。
資格外活動とは,出入国管理法19条1項に反する行為を指します。
« Older Entries