ウーバー配達員の資格確認,何が問題だった?

令和2年12月5日,食事の宅配サービスの大手「ウーバーイーツ」を運営するウーバー・ジャパンが外国人の配達員に在留資格を証明する書類を確認する方式を導入したことを,各種の報道機関が報じています。

中日新聞の記事 https://www.chunichi.co.jp/article/165372

このウーバーイーツの配達員に関して,外国人が配達員を担うことについてどんな問題があり得るのかを解説します。

ウーバー配達員は外国人でもできる?

結論としては・・・

結論から言うと,「外国人であっても食品配達を適法にできる『場合がある』」ということになります。

ウーバーイーツの配達員も,商品をお店からお客さんの下へと運ぶことによって対価を得ることを目的としますので,入管法における「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬(括弧書き内省略)を受ける活動」にあたる可能性が高いと言えます(入管法19条1項1号)。

そのため,「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」以外の在留資格で日本に在留する方の場合には,「資格外活動」に当たる可能性が高いと思われます。

この「資格外活動」を行うためには「資格外活動許可」を受けなければなりません。

「留学」と「家族滞在」の在留資格の場合,資格外活動許可の申請が認められれば,一週間に28時間以内であれば職種の制限なく(風俗営業を除く)アルバイトなどをすることができるため,資格外活動許可を受けて食事配達員としてもアルバイトができます。この在留資格については,通常,資格外活動許可は認められやすいと言えます(生活の糧を得るために必要と見られやすいため)。

一方,「人文知識・国際業務」や「技能実習」等のいわゆる就労ビザ(就労のための在留資格)をもって,在留している場合,ウーバーなどの配達員をするための資格外活動許可は認められにくいでしょう。なぜなら,元々の就労によって日本での生計を得るのが原則であるため,更に加えて副業をする必要があるとは考えにくいからです。

また,「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格の外国人の方であれば日本での就労の制限はなく,特別な申請をすることなく日本で働くことができます。もちろん,ウーバー配達員として働くこともできますし,時間などの制限もありません。

ウーバー配達員のための就労ビザはある?

なお,ウーバー配達員のような「食品を運送する業務をするため」の在留資格はおそらく認められないでしょう。

入管法では日本での目的に応じた在留資格が定められており,働くことを目的とした場合にも,仕事の内容に応じて在留資格が定められています。しかし,いずれの在留資格も「単純作業(労働)」は認めないとされており,ウーバー配達員のような運送作業も「単純作業」とみなされる可能性が高いと言えます。

配達員をする時に気を付ける点は?

ウーバーに限らず,このような食事配達の仕事をする際にも,まずは在留資格の関係上,資格外活動とならないかどうか注意が必要です。

「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」以外の在留資格で日本に在留している場合には,資格外活動許可が必要となる可能性が高いことに注意しましょう。

また,業務形態が「雇用契約」になっていなければなりません。業務委託の形の場合には,外国人本人が事業をしていることになり,アルバイトではなくなってしまいます。

そして就労時間が一週間に28時間以上とならないように気を付けなければなりません。資格外活動許可を得ている場合であっても,一週間に28時間以上働いてしまうと,資格外活動として違法になってしまいます。

配達員として働いている場合,配達時間について正確にタイムカードを付けて記録することが難しかったり,勤務形態によっては待機時間も就労時間として含まれる場合もあります。働きすぎてしまうと,資格外活動許可が取り消されたり,在留資格の取消しや在留期間の延長申請が不許可となったりする可能性が高まります。

実際に,留学生の方が資格外活動許可で認められているよりも長くアルバイトをしてしまったことで,在留期間の延長が認められなかった,という例もあります。

雇う側は何に気を付ける必要がある?

ここで,報道にあるような在留資格の確認という点について法的な問題点を考えてみます。

上記のような,適切な在留資格や資格外活動許可のないまま食事配達員として働いた場合には,資格外活動にとどまらず,不法就労となることがあります。在留資格がないにもかかわらず,友人の名前などを借りて配達員として登録していたという場合等が典型的な事例です。

このような不法就労がなされてしまうと,事業主としては不法就労助長罪に該当してしまう可能性があります。この不法就労助長罪は,「知らなかった」としても責任を逃れられない可能性があります。事業主側で在留資格の確認を怠っていた場合には,知らなかったという弁解は認められないことがあるからです(過失責任)。

報道などによると,今後ウーバージャパンは,配達員として登録する際には対面での確認を行うこととされていますが,これまでは対面による確認がなされていなかったのかもしれません。在留カードが本物であるかどうか,有効なものであるかどうか,登録する配達員と在留カードの持ち主が同一人物であるかどうかといった情報は,対面でなければ確認が難しいとも言えます。不法就労を未然に防止するという意味でも,登録時の対面での確認は必要不可欠なものと言えるでしょう。

また,登録後も,いわゆる「名義貸し」(登録時だけ別人の名前を借りて仕事をする)の形による不法就労がなされることが無いことが望ましいでしょう。

※帰国困難者に対する措置

2020年の世界情勢では,日本から帰国したくても,できない,という外国人の方もいらっしゃいます。一方で,元々の在留資格では日本で働けない,もしくは在留期限が切れてしまう,という方もいらっしゃいました。

そのため,帰国できるまでの間,「特定活動」の在留資格が認められる場合があります。特定活動の在留資格の場合,留学の在留資格と同様に資格外活動許可を受ければ,一週間に28時間以内のアルバイトができるようになります。

詳しくはこちらのページ「帰国したいのに帰国できない方へ」や,出入国管理庁のホームページなどを参照してください。

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