不法就労助長罪にならないためにはどうしたらよいか

不法就労助長罪は,企業にとってのリスク!

不法就労助長罪と外国人を雇う会社や事業主にとって,絶対に避けなければならない事態です。

単に経営者や管理職が逮捕されるたり前科がついたりするというだけではありません。

不法就労させていた事業の希望が大きければ報道される可能性は高まりますし,会社名などが公表されることもあります。実際に,不法就労助長罪により中華料理店を経営する会社の役員が逮捕された事件で,会社名まで公表されたこともありました。不法就労助長罪として検挙されるということは,企業としてのレピュテーションリスクでもあります。「あそこの会社は外国人を安く働かせていた,ひどい搾取をしていた」等と非難される可能性もあります。SNS等の情報媒体が発達した現代において,このような負の情報は一瞬で拡散します。

「ちょっとなら大丈夫」等と考えるのではなく,企業全体として「間違っても不法就労にはさせない」という意識が会社全体を守ることにもつながります。

外国人の雇用の点で分からないことや困ったことがある方は是非ご相談ください。

結局,何に気を付けたらいいのか?

「不法就労は違法です」,「不法就労の助長にならないように気を付けましょう」と出入国管理庁や警察は,積極的に宣伝活動や啓発活動をしています。

しかし,現場の担当者(アルバイトの採用担当者や人事の方)は「結局何に気を付けたらいいのか」と思うかもしれません。

そこで,「これだけは必ず確認しておきたい」という重要な点について解説します。

なお,次に解説する点のみで不法就労ないし不法就労助長に当たるかどうか断定できるものではありません。悩む点がある場合には,後々違法と判断される可能性があるということです。早めに弁護士等に相談しましょう。

1 在留カードを持っているか

日本に中長期在留する外国人の方は,どんな在留資格であろうが,在留カードを持っています。そして,日本に在留している間は在留カードを必ず携帯しなければならないこととされており,携帯していない場合には罰則まであります。

在留カードを持っていない外国人の方というのは,「短期滞在」の在留資格がである可能性があります。「短期滞在」の在留資格では原則日本で働くことができません。

特に採用の時点では,在留カードを持っていることを必ず確認しましょう。採用面接などの時に「今日は在留カードを忘れてしまいました」と言われそのまま確認しないままで済ませてしまうことは絶対にいけません。

外国人の方にとって,在留カードを他人に提示することは何も不利益になることはありません。仮に在留カードの提示を拒まれることや,何度も「忘れた」ということがあれば,担当者としては「何かあるのか」と引っかかるべきポイントです。

 

2 在留資格は何か,「就労不可」と書いていないか

在留カードの表面には「就労の可否」という欄があり,ここに「就労不可」と書かれていた場合には,日本で働くことができない在留資格の方です。

もちろん,在留カードには「在留資格」についての記載もありますが,30以上ある在留資格のそれぞれを確認して,外国人の方が働くことができるのかどうかを確認することはやや大変です。そこで,まずは,在留資格の内容を見る前に,「就労の可否」を確認して,そもそも「働いてよい在留資格なのかどうか」を確認することが簡便です。

また,「就労不可」となっていても資格外活動許可を受けていれば働いたり,アルバイトをしたりできます。その場合には資格外活動許可を受けていることが在留カードに記載がされます。この記載は,「就労不可」の一文のすぐ下欄か,裏面下部分にあります。外国人の方から「資格外活動許可を受けているので大丈夫です」と言わても,在留カードにも,そのとおり記載があるかどうか確認しましょう。

 

3 在留期限はいつまでか,在留カードの有効期限はいつまでか

在留カードを確認して就労の可否を確認したときに,併せて「在留期限」と「在留カードの有効期限」を確認しましょう。

当たり前のことに感じられるかもしれませんが,在留期限を過ぎている方はオーバーステイの状態ですし,有効期限の切れた在留カードでは現在の在留資格を確認できない可能性もあります。オーバーステイ状態で働けば不法就労になりますし,有効期限の切れた在留カードを確認しただけでは現時点での在留資格を確認しなかったものとして不法就労助長罪に問われる可能性もあります。

なお,在留期限を確認することは人事戦略的にも重要です。外国人の方の在留期限は,必ずしも延長されるものではありませんが,多くの方は在留期限いっぱいまで日本での在留を希望されます。在留期限を見ておくことで,いつまで日本に在留する人なのか,いつ以降は日本にいない可能性がある人なのか,を考えることもできます。

 

少し特別な対応をする場合

☆永住者,日本人の配偶者等の場合

永住者や日本人の配偶者等の在留資格のように,日本での在留中の活動に何らの制限のない方もいます。この場合,その在留資格が有効である限り,不法就労となることはありません。

在留カードを見て「永住者」や「日本人等の配偶者」とあれば不法就労助長となるリスクは極めて低いと言えます。「永住者」や「日本人等の配偶者等」の在留資格の方の場合には,「在留期限」が過ぎていないかという点と,「在留カードの有効期限」が過ぎていないかを確認しておきましょう。

なお,よく似ているように見えますが「家族滞在」の在留資格は全く違う在留資格ですので気を付けましょう。

 

☆中途採用の場合

これまで日本に在留していた中途採用となる外国人の方 を新しく雇入れる場合,在留資格の変更の必要があるのかどうかを確認する必要があります。同種の職であれば,多くの場合には在留資格の変更を必要としませんが,稀に「前職から不法就労状態であった」という場合もあります。

前の在留資格を確認しておくことももちろん重要ですが,それを軽々に信用するのではなく,あくまで自社で調査,確認することを心がけていただく必要があると思います。

 

まとめ

不法就労助長罪とならないために,現場の担当者の方にぜひ気を付けて頂きたい点について解説してきました。

ここに挙げたのは外国人の方を雇入れようとする際に最低限知っておきたい点になります。

より個別の場面,個々の職種や業態に応じて,担当者の方として「この時はどうしたらいいんだろう」と悩むこともあるかもしれません。

不法就労助長罪として摘発されるというのは,企業において絶対に避けなければならないリスクです。

分からないことがある場合には,そのままにせず,弁護士などの専門家へ相談しましょう。

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