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永住者が住居侵入罪で逮捕されてしまったらどうなる?

2024-08-28

【事例】
Aさんは,永住資格を有するB国出身者です。
Aさんは,隣のマンションからの騒音が気になったこと,隣のマンションのどの部屋が騒音を上げているのか分からなかったことから,
昼間に,隣のマンションの共有部分に立ち入り,「私は,隣の家に住んでいるAです。そちらのマンションの騒音,妨害電波,盗聴,盗撮に苦しんでおり,睡眠障害にかかっております。(以下略)」との長文がかかれた紙を玄関ドアのポストに投函したところ,住民が呼んでいた警察官によって逮捕されました。
Aさんは,これまで7度ほど同様の理由で同じマンションに立ち入っており,これまで警察に逮捕されたり取調べを受けたりしたことはありませんでした。
このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるのか
②①の刑事罰により退去強制処分になるのか
以上の点について解説していきます。

(1)住居侵入罪の刑事罰

Aさんは少なくとも,隣のマンションの廊下などの共用部分には立ち入っているため,刑法130条の「住居」に「侵入」しているといえます。
刑法130条の住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
住居侵入罪の具体的な刑罰の重さを,決める際には,①住居に立ち入った回数,②住居に立ち入っていた時間,③住民に対する示談の有無などによって判断されます。
①については,回数が多ければ多いほど重くなります。
②については,住居に立ち入っていた時間が長ければ,長いほど重くなります。
③については,立ち入り被害に遭った住民に被害弁償がされれば,罪を軽くする事情になります。
今回のAさんの事例ですと,Aさんはこれまで7回ほど同様の理由で同じマンションに立ち入っていること,文書のかかれた紙を玄関ドアのポストに投函するための時間であるため,数時間程度の長時間とまではいえないことが言えます。
被害弁償について行っているかは不明ですが,弁護士が就いて被害者と示談交渉を行い被害弁償を行うことができれば,Aさんにとって有利な事情になります。
そのため,Aさんの事件は,示談ができて被害弁償が済んだ場合は不起訴で終わる可能性がありますが,被害弁償が済まなかった場合は罰金や執行猶予付きの有罪判決になる可能性があります。
なお,Aさんが作成した文書の内容から,Aさんに何か精神的な問題があり,善悪の判断が付かず今回の犯罪を行ってしまったのではないかという事情もあります。
しかし,責任能力が無いとして無罪になるためには,良いことと悪いことが精神的な問題から分からなかったことか,精神的な問題から体の動きを止めることができず犯罪を行ってしまったと言える事情が無ければなりません。

今回の事例ですと,何やらAさんに精神的な問題があることが窺えるのですが,精神的な問題の影響によって隣のマンションに立ち入ったのかどうかは分かりません。
そのため,責任能力が無いとして無罪になることを目指す場合,Aさんを精神病院に通わせて,精神的な問題の影響を観察した上で,責任能力がないとの主張をするのか判断することになります。

(2)退去強制になるか

それでは,Aさんの刑事処分により,Aさんが退去強制になるかについて検討していきます。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは永住者ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4号の2には「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となります。しかし,Aさんは別表第2の資格で在留してますので,この同条4号の2の要件に該当しません。

また,同条4号リには,「昭和26年11月1日以後に無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処された者。ただし,刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であってそのうち執行が猶予されなかった部分の期間が一年以下のものを除く。」と規定されています。
これに該当する場合には,別表第2の在留資格であったとしても退去強制の対象になります。

しかし,今回の事件は,Aさんにとって,初犯であることから,悪くて執行猶予,罰金になることが予定される事件です。なので,すぐに退去強制になるという可能性は低いです。
このように,退去強制になる可能性は低いですが,在留資格の更新の際に前科があることを不利益にみられる可能性があります。

(3)弁護活動

弁護活動としては,①示談を行うこと,②責任能力が無いとして無罪を主張すること,③これまでのマンションへの立ち入りについて話さず,今回の1件だけの事件として扱って刑を軽くすることが考えられます。

①示談をして不起訴を目指す場合
示談をして不起訴を目指すためには,被害者となったマンションの管理人やマンションの住人に示談を行うことが考えられます。
その際には,示談を弁護士にお任せする方がいい結果になります。

②責任能力が無いとして不起訴や無罪を主張する場合
責任能力が無いとして無罪になるためには,精神病院の診断書などが必要になるうえ,それらの資料をまとめたうえで弁護士が責任能力が無いと主張することになります。
この主張は精神科の専門的な判断だけではなく,弁護士の専門的な判断が伴いますので,このような主張をする際は,弁護士をつけるべきです。

③刑を軽くする主張について
取調べの際に他の事件について話さず,今回の1件だけで事件として重くないということを主張することが考えられます。
この場合は,弁護士に適切なアドバイスをもらう必要がありますので,弁護士をつけて対応する方が良いと思われます。
そのため,①~③のいずれの主張をするにしても,弁護士が必要となります。

このように,退去強制を回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。
弁護士への相談をご希望の方は,こちらからお問い合わせください。

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建造物侵入罪によって逮捕,会社経営者が強制送還になるリスク

短期滞在で来日した人がオーバーステイになってしまった場合

2024-06-12

【事例(フィクション)】

Aさんは、観光のため短期滞在の在留資格で来日しました。
その後、日本に住みたいと思ったAさんは、在留期間中に帰国せず、在留期間が切れた後も日本に残りました。
Aさんには、日本で同じ母国の友人ができましたが、先日、友人がオーバーステイで捕まったという話を知りました。
Aさんは、自分も拘束されるのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。
まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

参考:国別/入国時の在留資格別の不法残留者数

【オーバーステイ(不法残留)とは】

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。
法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。
オーバーステイは、退去強制の対象となります。

【オーバーステイ発覚前のお悩みについて】

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は
①入管に出頭すべきか
②発覚したらすぐに逮捕されるのか
③もう日本に残ることはできないのか
④出国までずっと入管に収容されるのか
⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。

以下、順に見ていきましょう。

①入管に出頭すべきか

オーバーステイの状態になってから時間が経てば経つほど、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰のリスクが高まってしまうことがあります。
外国人の方それぞれの事情によりますが、出頭した方がいい場合もありますので、手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、適切な対応を取れるようにしましょう。

②発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日本で生活していたところ、職務質問等、何かのきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きが進められることもあります。

③もう日本に残ることはできないのか

オーバーステイ状態の外国人の方は退去強制の対象となります。退去強制の手続きにかかってしまった場合、日本に残る手段は、在留特別許可を受けることだけになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
もっとも、日本人の配偶者や日本での養育が必要な子がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られることもあります。
ただし、在留特別許可は、「こういう事情があれば必ず認められる」といったものではなく、様々な事情の総合考慮による判断なので、在留特別許可を得られる見込みについては、弁護士等の専門家に相談した方がよいです。

④出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、入管に収容されることがあります。
もっとも、オーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。
出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。
また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。
逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。
刑罰を科される行為がオーバーステイだけで前科もなければ、実刑になることはほとんどありませんが、刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイの状態を放置していても、日本での不安定な地位が続くだけで、時間が経てば経つほど手遅れになることもありますので、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、早く弁護士等の専門家に相談し、適切な対応を考えることをおすすめします。

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必ず強制送還になってしまうのか?裁決の通知後の不服申し立て手段

2024-02-07

事例はフィクションです。

Aさんは外国籍(定住者,1年)でしたが,日本で大麻取締法違反の罪で逮捕され,有罪判決の言い渡しを受けてしまいます。Aさんには交際相手がおり,結婚を見据えていたのですが,結婚に向けた準備をしているうちにAさんに対して退去強制令書が発付されてしまい,異議もすべて却下されてしまいました。

AさんとAさんの恋人は,なんとか日本に残る手段がないか弁護士に相談することにしました。

強制送還の手続

Aさんの事例のような薬物事案での強制送還(退去強制)の手続は,刑事裁判が確定した後,出入国管理庁にて行われます。

まずは入国警備官の調査から始まり,入国審査官による違反認定,特別審査官による口頭審理と続いていきます。Aさんのように,何らかの事情から,在留特別許可を受けて日本に留まり続けたいと考える方は,口頭審理の後,法務大臣に対する異議の申出を行う必要があります。

強制送還の手続き上,この異議の申出をしない限りは在留特別許可が出ることはありません。また,「在留特別許可の申請」という個別の手続き自体もありません。よく勘違いされるところですが,「在留特別許可の申請」てはなく,あくまで「異議の申出」という手続きになるのです。

この「異議の申出」を受けて,法務大臣または委任を受けた各地方の出入国管理庁の長が,在留特別許可を行うかどうかについて裁決を行い,その結果を外国人本人に対して通知を行います。

入国管理庁としての手続は,この,「裁決の通知」をもって終了することになります。これ以降,さらに異議の申出をすることはできません。法律上,そのような手続きがないからです。

在留特別許可が認められなかった場合には,退去強制令書という正式書面が発付され,実際の強制送還が実施されることになるのです。

強制送還の手続きについてはこちらでも解説をしています。また,法務省HPでも解説がなされています。

退去強制(強制送還)について

裁決の通知があったらおしまいか?

裁決の通知の結果,在留特別許可をしないとなった後,さらに争うための手続は2通りです。

1つは行政訴訟になります。行政訴訟は,国や地方自治体が行った処分を取り消すように求めるという裁判です。

在留特別許可の関係では,「在留特別許可をしなかった裁決」を取り消すように裁判で求めるのです。

仮に裁判の結果,裁決が取り消されることになれば出入国管理庁(法務大臣)はもう一度裁決を行って通知をする,ということになりますし,裁判所が裁決を取り消したということであれば,同じ内容の処分を行うことはできないためほとんどの場合で在留特別許可が認められることになります。

在留特別許可をしない裁決に対して裁判を起こす場合には,裁決の通知を受け取った日から6か月以内に提訴しなければなりません。6か月を過ぎて取消の裁判を申し立てても,「出訴期間(裁判を起こすことができる期間)を過ぎている」としてすぐに却下されてしまいますから,気をつけましょう。

2つ目は再審情願になります。これは裁判手続とは違い,出入国管理庁に対して「もう一回判断を見直してほしい」とお願いをするものです。

法律上このような手続きは認められていませんが,実際の窓口では再審情願を受け付けています。ただし,再審情願をしたからといって,それに対する出入国管理庁からの返事があるとは限りません。つまり,「判断をもう一回見直してください」と申し立てても,そのまま無視され続けるということもあり得るのです。

再審情願が認められる可能性があるのは,例えば,口頭審理の時点で生じていた事情のうち,「これを伝えていれば在留特別許可が認められたはずだった」という事情について,何らかの理由で当初は伝えられなかった(もしくはうまく伝わっていなかった)ため,再度その点を伝えたい,という場合です。

日本での在留を希望する場合,口頭審理もしくはそれ以前の調査の段階できちんと準備,対応をすることが望ましいです。

ですが,既に裁決の通知を受けてしまったという状態で弁護士に相談するという方もとても多くいます。

裁決の通知の後ではやれることが限られてしまいますので,日本に残り続けたいという方や入管から呼び出しを受けているという方は,出来る限り早い段階から専門家に相談することをおすすめします。

「日本人の配偶者等」の人が交通事故をした場合,在留資格はどうなる?在留期間の更新は大丈夫?

2024-01-17

(事例はフィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により捜査が行われました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんが在留期間の更新をする際にどのように影響するのか
以上の点について解説していきたいと思います。

過失運転致傷の刑事罰

Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には、危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度、②事故を起こした側の過失の程度、③被害者の側の過失の程度、④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。

  • ①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
  • ②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
  • ③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
  • ④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。

Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。
反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

日本人の配偶者の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用、動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
今回Aさんは、過失運転致傷罪という罪を犯しています。処分がどのような者になるかについては⑴の通りです。
そこで、まずこの刑事処分がAさんにとって「退去強制事由」になるかどうかを見てみます。

Aさんは「日本人の配偶者」ですので、入管表別表第2に記載されている在留資格を有しています。この在留資格の場合には、「無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」(入管法24条4号リ)に該当する場合には、罪名関係なく退去強制を受ける事由となります。
今回のAさんの場合には、起訴猶予処分や罰金の処分となった場合にはこれに該当しません。また、この4号リで問題とされるのは、実刑、つまり刑務所に行かなければならないような判決だけですから、執行猶予付きの禁錮刑であればAさんにとっては退去強制事由には該当しないということになります。

次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。
そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

「日本人の配偶者等」の在留資格における各種申請のための書類についてはこちらのページにまとめられていますのでご確認ください。

また,在留期間の延長についてはこちらのページでも解説していますので,併せてご覧下さい。

在留期間を延長する手続き

示談交渉は必要か

さて、先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは
話をしないことが通常です。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から
知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新を安全なものとするためにも、いち早く弁護士にご相談ください。

技能実習生のオーバーステイ事案,逮捕されてしまうのか?入国管理局へ出頭した方が良い?

2024-01-10

【事例(フィクション)】

Aさんは、技能実習の在留資格で来日し、技能実習生として日本の工場で働き始めました。
当初は慣れない日本で、日本語を勉強しながら技能実習生として頑張って働いていました。
ところが、長時間労働にもかかわらず、残業代は払われず、元々の賃金も低く、渡航費用のためにした借金も全然減っていかないAさんは、精神的に追い詰められて、技能実習先から逃げ出してしまいました。
その後、技能実習の在留期間が切れてしまったAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されるのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。
まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

【オーバーステイ(不法残留)とは】

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。
法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。
オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイとなってしまう理由は人それぞれ様々でしょう。

更新の期限を忘れていた場合や,更新手続きが認められなかったという場合,何らかの理由で出入国管理局に手続きに行くことができなかったなどなどの理由が考えられます。期限内に手続きをしていたのにオーバーステイになってしまったという方もいるかもしれません。その場合,在留期間の特例があります。特例についてはこちらでも解説をしています。

在留期間更新とその特例,期限を過ぎてしまったらどうなるのか

【オーバーステイ発覚前のお悩みについて】

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は
①入管に出頭すべきか
②発覚したらすぐに逮捕されるのか
③もう日本に残ることはできないのか
④出国までずっと入管に収容されるのか
⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①入管に出頭すべきか

②~⑤で説明しますが、オーバーステイ状態になってから時間が経てば経つほど状況は悪化しかねず、出頭をしないままオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰のリスクが高まります。
手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

②発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

③もう日本に残ることはできないのか

オーバーステイは退去強制の対象となります。退去強制の手続きにかかった外国人の方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
もっとも、日本人の配偶者や日本での養育が必要な子がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られることもあります。
オーバーステイ状態を放置していても、日本での不安定な地位が続くだけなので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応を考えましょう。

④出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、入管に収容されることがあります。
もっとも、Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。
出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。
逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。
刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していたら状況は悪化していくかもしれないので、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

飲酒運転をしてしまうと「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に影響が出るのか・延長申請ができない?強制送還になる?

2024-01-03

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
 今回Aさんは、道路交通法違反により刑事処分を受けています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。ですので、道路交通法違反の罰金前科があるからと言って上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。Aさんは罰金刑を受けており、これは懲役や禁錮よりも軽い刑ですから、この条文には該当しません。
次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている道路交通法違反は、この列挙された犯罪に含まれていませんし、罰金刑は執行猶予付き判決よりも軽いものですから、これには該当しません。
最後に、次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんの場合には、道路交通法違反による罰金刑を受けているだけですから、かっこ書きの中にある「道路交通法違反による罰金」に該当しますので、素行不良要件には該当しないと考えられます。
以上のような事情からすれば、Aさんの在留期間の更新は認められる可能性が高いと思われます。ただし,永住申請する際には別途検討が必要です。永住に関するガイドラインについては出入国管理局がHPじょうでも公開しており,こちらから確認ができます。

他の在留資格に関してはこちらのページでも解説しています。

酒気帯び運転で前科が付くと在留資格が更新できなくなる?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

偽装結婚が発覚するとどうなるのか?強制送還の可能性や対処について刑事事件に強い弁護士が解説

2023-12-27

【事例】

以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、日本で働いて本国の家族に送金をするため、日本人と偽装結婚をし、日本人の配偶者等の在留資格で来日しました。
その後日本で暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように偽装結婚をしていた外国人の知人が逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も偽装結婚が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。

【偽装結婚と退去強制】

偽装結婚をして日本人の配偶者等の在留資格で来日したAさんは、虚偽の申請をして上陸許可を受けたということで、在留資格が取消され退去強制事由となります。

「偽装結婚とは何か」についてはこちらの記事もご覧ください。

偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?

また、適法に上陸した後に偽装結婚をした場合であっても、後述するとおり公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立し、その刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ければ、執行猶予の有無にかかわらず退去強制事由となります。

【偽装結婚発覚前のお悩みについて】

Aさんのように、偽装結婚がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
 ①発覚したら逮捕されるのか
 ②もう日本に残ることはできないのか
 ③出国までずっと入管に収容されるのか
 ④偽装結婚の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①発覚したら逮捕されるのか

偽装結婚が警察に発覚したり、入管に察知され警察に通報された場合、個別事情によるので一概には言えませんが、逮捕されることは多いです。

警察も入管と協働して取り締まり・摘発に積極的な部分です。

参考:警察庁HP

②もう日本に残ることはできないのか

偽装結婚は、前述のとおり、退去強制事由に該当するという結論になる可能性が極めて高く、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
その上、一般的に、偽装結婚で在留特別許可を得ることは非常に困難です。
もっとも、真正な配偶者になる予定の人と相当長期間内縁関係にある、日本での養育が必要な子どもがいるなど、在留特別許可にプラスの事情があれば、100%在留特別許可は無理とも限りません。
在留特別許可が得られる見込みについては、他にも様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。

③出国までずっと入管に収容されるのか

偽装結婚が理由で在留資格を取消される、懲役刑の有罪判決を受けるなどの退去強制事由に該当すると、入管に収容される可能性があります。
もっとも、収容された場合でも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

④偽装結婚の刑罰はどうなるのか

真正な婚姻をする意思がないのに婚姻の届出をすると、戸籍等に不実の記載(電子化された戸籍等の場合は不実の記録)をさせ、そのような状態の戸籍等を役所に備え付けさせることになり、公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立します。
有罪判決の場合の刑の重さは、懲役刑、ただし執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。最も事件に応じて、個別の事情によるので一概には言えませんが刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【おわりに】

偽装結婚により得た身分で日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても不安定な地位は変わらないので、前述のとおりの発覚した場合の様々なリスクを軽減するために出頭をし、真摯な対応をするということも選択肢としてはあります。
いずれにせよ、今後のリスクについて、まずは弁護士等の専門家に相談した方がよいかと思います。

前科があると帰化申請の時に不利になるのか?道路交通法違反で罰金刑になった場合を解説

2023-12-20

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

帰化申請の要件

他の在留資格と異なり、帰化については国籍法に定めがあります。
国籍法第4条2項により、帰化をするためには法務大臣の許可が必要とされていますが、その許可をするための条件は国籍法5条から9条に定めがあります。

①一般帰化
国籍法5条に定めている帰化のための条件は
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
です。ただ、この条文は「次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。」とされていますので、これら6項の条件をすべて満たせば帰化ができるというものではなく、
反対にこれら6項の中に該当するものがあれば帰化をすることができないと考えることになります。

②簡易帰化
国籍法5条には、より日本との結びつきが強い関係の者について、5条より簡易な条件での帰化を認めています。

次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者

この場合には
ア 現に日本に住所を有し
イ 1~3号のいずれかの要件を満たす場合
には①の1号の要件「引き続き5年以上日本に住所があること」という部分を満たさない場合でも、帰化を認めるものとなります。ただ、アとイの要件を満たせば直ちに帰化が認められるというものではないことに注意が必要です。

③日本人の配偶者の帰化
日本人の配偶者の場合にも、一部条件が緩和されています(国籍法7条)

日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。

この場合の要件は
ア 日本国民の配偶者であること
イ 引き続き3年以上日本に住所又は居所があること
ウ 現に日本に住所があること
エ 5条3~6号の条件を満たすこと
若しくは
ア 日本国民と婚姻の日から3年が経過していること
イ 引き続き1年以上日本に住所を有すること
ウ 5条3~6号の条件を満たすこと
となります。

交通前科と帰化の関係

Aさんは日本人の配偶者ですので、婚姻期間や滞在年数によっては国籍法7条による帰化が考えられます。
今回の場合、Aさんには交通前科がありますから、「素行が善良であること」ということの条件を満たすかどうかが問題となります。
ところで、永住許可を含めた在留資格についての手続きは、出入国在留管理庁へ申請を行います。
しかし、帰化の申請は、法務局へ申請することとなっています。
いずれも法務省に属する組織ではあるのですが、形式上は別の役所ということになります。帰化の手続きに関する法務省の案内はこちらです。
そのため、出入国在留管理庁の指針をそのまま法務局が採用するとは限りませんが、同庁のガイドラインは帰化申請においても参考になると思われます。
在留期間の更新の際に問題となる「素行が善良であること」についての考え方としては「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」との審査要領が定められています。
これを参考にすれば、道路交通法違反による罰金前科については、素行善良の要件の際に大きな問題とはならないと考えられます。
ただし、最初にも述べた通り、帰化申請は「全条件を満たすと帰化ができる」というものではなく「全条件を満たさなければ帰化できない→全条件を満たすときに帰化を許可するかは法務大臣の裁量である」
という考え方を採用していますから、罰金前科が全く否定的な評価を受けないとは限りません。
ですので、帰化申請の際には、前科についての顛末の説明や、反省の態度や再発防止策を記載した文書を提出したほうがよいでしょう。

交通事故や交通違反についてお困りの方,前科が理由で帰化やビザの手続きについてご不安なことがある方は,一度ご相談ください。

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酒気帯び運転で検挙されると永住許可が認められなくなるのか?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

法律相談についてはこちらからも受け付けています。

密航で日本に来たことが発覚するとどうなる?不法入国での逮捕,強制送還はどうなるのか

2023-12-13

事例

以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、密航によって日本に来ました。
日本で生活していく中でAさんは、日本人と恋をして結婚し、2人の間には子どもが生まれました。
日本でできた家族と一緒に暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように日本に密航をしてきた同郷の知人が、不法滞在で逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も不法滞在が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。

不法入国・不法上陸と退去強制

不法滞在という言葉がありますが、この言葉には、適法に日本に入国・上陸した後、在留資格の期限が過ぎても日本に滞在し続ける不法残留(オーバーステイ)と、密航等、日本への入国・上陸自体が違法である不法入国・不法上陸の外国人の滞在が含まれます。
オーバーステイ、不法入国・不法上陸といった事情で不法滞在中の外国人の方は、退去強制の対象となります。

不法入国・不法上陸発覚前のお悩みについて

Aさんのように、不法入国・不法上陸がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
①発覚したら逮捕されるのか
②もう日本に残ることはできないのか
③出国までずっと入管に収容されるのか
④不法入国・不法上陸の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①発覚したら逮捕されるのか

逮捕、収容、退去強制といったことが怖くて出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や、同じく不法滞在をしている知人の逮捕等のきっかけで不法滞在が警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。

不法入国,不法滞在についてはこちらでも解説をしています。

うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?

②もう日本に残ることはできないのか

不法入国・不法上陸は退去強制事由にあたりますので、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
また、一般的に、来日の入口が適法であるオーバーステイに比べて、来日の入口から違法である不法入国・不法上陸の方が、在留特別許可の判断にあたってマイナスにはたらくことが多いです。
もっとも、Aさんのような、日本人の配偶者がいて、子どももいるという事情は、在留特別許可の判断にあたってプラスになります。
他にも、違反の悪質性、日本での在留期間、婚姻期間、子どもの年齢や日本での養育を必要とする事情、退去強制歴はないか、日本での行状等、様々な要素が絡むので一概には言えませんが、不法入国・不法上陸の場合でも、在留特別許可が得られるケースはあります。

在留特別許可の判断についてはガイドラインが策定されており,判断の参考になります。

不法入国・不法上陸により日本に滞在している方は、いつまで経っても不安定な地位は解消されないままなので、入管に出頭し、真摯な態度を示した上で在留特別許可を得るための努力をするということも検討されてはいかがでしょうか。
在留特別許可が得られる見込みについては、前述のとおり様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。

③出国までずっと入管に収容されるのか

不法入国・不法上陸のような退去強制事由にあたると判断されると、多くの場合は、入管に収容されることになります。
もっとも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

④不法入国・不法上陸の刑罰はどうなるのか

これも事情によるので一概には言えませんが、懲役刑については、執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。
刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

おわりに

不法入国・不法上陸により日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても終わらないお悩みをそのままにしておくより、出頭して在留特別許可を得るという対応等について、まずは弁護士等の専門家にご相談ください。

うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?

2023-11-22

事例

(フィクションです)

Aさんは、技能の在留資格(いわゆる就労ビザの中の1つ)で来日し、調理人として日本のお店で働いてきました。

在留期間の終わりが迫る中、Aさんは日々のお店での業務が忙しく、在留資格の更新手続きを後回しにしていたところ、うっかり在留期間を過ぎることになってしまいました。

後で在留期間が過ぎてしまったことに気付いたAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されて本国へ退去強制させられてしまうのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。

まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

オーバーステイ(不法残留)とは

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。

法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。不法残留によって逮捕、起訴されてしまうと法律上、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課されます。

オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイ発覚前のお悩みについて

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は

  • 入管に出頭すべきか
  • 発覚したらすぐに逮捕されるのか
  • もう日本に残ることはできないのか
  • 出国までずっと入管に収容されるのか
  • オーバーステイの刑罰はどうなるのか

といったことでお悩みかと思います。

以下、順に見ていきましょう。

関連記事はこちら

オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?日本人と結婚していた場合を弁護士事務所が解説

入管に出頭すべきか

オーバーステイ状態になってからは、時間が経てば経つほど状況は悪化し、出頭をしないままでオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰といったリスクが高まります。

手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や交通違反の時の手続等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

「入管への出頭≠警察での逮捕」ですから,もしも日本での在留を希望する場合には早めに手を打たなければいけません。

もう日本に残ることはできないのか

在留期間の最後の日から2か月以内であれば、在留資格更新の「特別受理」といって、更新を申請できて許可されることがあります。

特別受理が認められるのは、病気や怪我などのやむを得ない事情で在留期間中に更新手続きを行えなかった場合が典型ですが、Aさんのようにうっかり在留期間を過ぎてしまった場合でも、他の事情次第で認めれらる余地があります。

2か月を過ぎてしまっていたり、事情により特別受理が認められないのであれば、オーバーステイの方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。

在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。

もっとも、Aさんのように、うっかり在留期間を過ぎただけで他には退去強制にあたることはしていない方の場合は、日本で長期間生活している、日本に家族がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られる可能性があります。

オーバーステイを放置して時間が経てば経つほど、隠れながらあえて残留し続けていたと見られ、在留特別許可の判断は厳しくなっていきますので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応しましょう。

出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、手続き上,全ての事件で入管に収容されることになります。

これを「全件収容主義」といい,入管当局は基本的に「退去強制事由がある事件については全ての事件で収容のための手続きをとる」としているのです。

ただ,入管に収容する手続きが取られてしまっても,例外的に釈放する手続きが設けられています。

Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。

出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。

仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。

逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していても状況は悪化していくだけです。

  • 日本に残り続けたい
  • 入管での収容を避けたい

という方は,速やかに弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

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