飲酒運転をしてしまうと「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に影響が出るのか・延長申請ができない?強制送還になる?

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
 今回Aさんは、道路交通法違反により刑事処分を受けています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。ですので、道路交通法違反の罰金前科があるからと言って上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。Aさんは罰金刑を受けており、これは懲役や禁錮よりも軽い刑ですから、この条文には該当しません。
次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている道路交通法違反は、この列挙された犯罪に含まれていませんし、罰金刑は執行猶予付き判決よりも軽いものですから、これには該当しません。
最後に、次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんの場合には、道路交通法違反による罰金刑を受けているだけですから、かっこ書きの中にある「道路交通法違反による罰金」に該当しますので、素行不良要件には該当しないと考えられます。
以上のような事情からすれば、Aさんの在留期間の更新は認められる可能性が高いと思われます。ただし,永住申請する際には別途検討が必要です。永住に関するガイドラインについては出入国管理局がHPじょうでも公開しており,こちらから確認ができます。

他の在留資格に関してはこちらのページでも解説しています。

酒気帯び運転で前科が付くと在留資格が更新できなくなる?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

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