前科があると帰化申請の時に不利になるのか?道路交通法違反で罰金刑になった場合を解説

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

帰化申請の要件

他の在留資格と異なり、帰化については国籍法に定めがあります。
国籍法第4条2項により、帰化をするためには法務大臣の許可が必要とされていますが、その許可をするための条件は国籍法5条から9条に定めがあります。

①一般帰化
国籍法5条に定めている帰化のための条件は
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
です。ただ、この条文は「次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。」とされていますので、これら6項の条件をすべて満たせば帰化ができるというものではなく、
反対にこれら6項の中に該当するものがあれば帰化をすることができないと考えることになります。

②簡易帰化
国籍法5条には、より日本との結びつきが強い関係の者について、5条より簡易な条件での帰化を認めています。

次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの
二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き十年以上日本に居所を有する者

この場合には
ア 現に日本に住所を有し
イ 1~3号のいずれかの要件を満たす場合
には①の1号の要件「引き続き5年以上日本に住所があること」という部分を満たさない場合でも、帰化を認めるものとなります。ただ、アとイの要件を満たせば直ちに帰化が認められるというものではないことに注意が必要です。

③日本人の配偶者の帰化
日本人の配偶者の場合にも、一部条件が緩和されています(国籍法7条)

日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。

この場合の要件は
ア 日本国民の配偶者であること
イ 引き続き3年以上日本に住所又は居所があること
ウ 現に日本に住所があること
エ 5条3~6号の条件を満たすこと
若しくは
ア 日本国民と婚姻の日から3年が経過していること
イ 引き続き1年以上日本に住所を有すること
ウ 5条3~6号の条件を満たすこと
となります。

交通前科と帰化の関係

Aさんは日本人の配偶者ですので、婚姻期間や滞在年数によっては国籍法7条による帰化が考えられます。
今回の場合、Aさんには交通前科がありますから、「素行が善良であること」ということの条件を満たすかどうかが問題となります。
ところで、永住許可を含めた在留資格についての手続きは、出入国在留管理庁へ申請を行います。
しかし、帰化の申請は、法務局へ申請することとなっています。
いずれも法務省に属する組織ではあるのですが、形式上は別の役所ということになります。帰化の手続きに関する法務省の案内はこちらです。
そのため、出入国在留管理庁の指針をそのまま法務局が採用するとは限りませんが、同庁のガイドラインは帰化申請においても参考になると思われます。
在留期間の更新の際に問題となる「素行が善良であること」についての考え方としては「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」との審査要領が定められています。
これを参考にすれば、道路交通法違反による罰金前科については、素行善良の要件の際に大きな問題とはならないと考えられます。
ただし、最初にも述べた通り、帰化申請は「全条件を満たすと帰化ができる」というものではなく「全条件を満たさなければ帰化できない→全条件を満たすときに帰化を許可するかは法務大臣の裁量である」
という考え方を採用していますから、罰金前科が全く否定的な評価を受けないとは限りません。
ですので、帰化申請の際には、前科についての顛末の説明や、反省の態度や再発防止策を記載した文書を提出したほうがよいでしょう。

交通事故や交通違反についてお困りの方,前科が理由で帰化やビザの手続きについてご不安なことがある方は,一度ご相談ください。

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