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札幌出入国在留管理局のご紹介
出入国在留管理庁は①出入国審査②在留管理③退去強制④難民認定⑤外国人の受け入れ環境整備などの出入国管理行政を管轄する法務省の外局として、2019年4月に設置されました。それまでは法務省の中に入国管理局が置かれていました。
出入国在留管理庁の中に8つの地方出入国在留管理局が置かれ、それぞれの局が出入国在留管理業務を行っています。
北から札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡に置かれ、局の中に支局、出張所が設けられています。
今回は、全国に8つある地方出入国在留管理局のうち、日本で一番北にある出入国在留管理局である、札幌出入国在留管理局をご紹介します。
札幌出入国在留管理局の住所:札幌市中央区大通西12丁目札幌第3合同庁舎
札幌出入国在留管理局の電話番号:011-261-7502
札幌出入国在留管理局への最寄り駅:札幌市市営地下鉄東西線「西11丁目駅」1番出口
札幌出入国在留管理局の管轄
5つの出張所と小樽と苫小牧の分室で構成されています。
出張所は函館、旭川、釧路港、稚内港、千歳苫小牧出張所が設けられています。
千歳苫小牧出張所は空港業務の取扱いであり、申請業務は取り扱っていません。
札幌出入国在留管理局の窓口は、総務課、審査部門、警備部門、小樽分室に分かれており、
総務課は、総務・人事・会計等、審査部門は在留審査一般、警備部門は退去強制業務、
小樽分室は海港業務を行っています。
窓口受付時間は総務課が9時~12時、13時~16時(土・日、休日を除く)
審査部門が9時~12時(土、日曜日、休日を除く)となっています。
札幌出入国在留管理局の特徴
札幌出入国在留管理局管轄の外国人労働者の在留資格において、全国平均と比較した場合、技能実習の割合が高く、身分に基づく在留資格の割合が低い結果となっています。
令和3年10月現在、外国人労働者における在留資格「技能実習」は全国平均で20,4%
に対し、札幌出入国在留管理局管轄では48,8%、身分に基づく在留資格(永住・特別永住者・永住者の配偶者・定住者)の割合は、全国平均が33,6%に対し、札幌出入国在留管理局は12,6%となっています。
札幌出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、札幌市中央区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所札幌支部です。
仙台出入国管理局の紹介
今回は仙台出入国在留管理局のご紹介をいたします。
仙台出入国在留管理局の住所;仙台市宮城野区五輪1-3-20仙台第二法務合同庁舎
仙台出入国在留管理局電話番号:022-256-6076
仙台出入国在留管理局への最寄りの駅:JR仙石線、榴ヶ岡駅出口1から徒歩10分
仙台出入国在留管理局の管轄
仙台出入国在留管理局は、全国に8局ある地方分局の中の一つです。
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県。福島県の東北6県を管轄し、6出張所で構成
されています。
出張所として、青森 盛岡 仙台空港 秋田 酒田港 郡山が置かれています。
仙台出入国在留管理局は、総務課、審査部門、警備部門の3つの部門に分かれています。
営業時間はそれぞれ9時~16時までです。
総務課は、管理局全体の管理、総務・人事・会計等の業務を行います。
人事課は、仙台入管で働く人の管理や局内部のお金の管理を行います。
審査部門は、在留審査一般・海港業務、在留の審査と港で日本に来る外国人を調べます。
警備部門は、退去強制業務、法律を守らなかった外国人に、日本から他の国へ帰る命令をします。
仙台入管にあって出張所にない業務として、警備部門による退去強制業務があります。
よく強制送還とか強制退去とか言われています。
退去強制とは、日本に不法に入国したり、在留許可の範囲を超えて滞在するなど、出入国在留管理法第24条に規定する、退去強制事由に該当する外国人を強制的に国外へ退去させ、日本の安全や利益が害されるのを防ぐのが目的とされています。
仙台出入国在留管理局の特徴
6つある各出張所の業務は、①青森出張所が在留審査一般と海港業務②盛岡出張出張所が在留審査一般と海港業務③仙台空港出張所が空港業務④秋田出張所が在留審査一般と空海港業務⑤酒田港出張所が海港業務と在留審査一般⑥郡山出張所が在留審査一般、空海港業務となっています。
6つある出張所は全て海に面しており、出張所の業務に海港業務が多いのが特徴です。
仙台出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、仙台市青葉区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部です。
解決事例 在留特別許可(日本人の配偶者等)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
(守秘義務の関係上,事実の詳細を明らかにしない部分があります)
事案
ご依頼者であるXさんは,日本国内にて大麻を所持していたという事案によって,執行猶予付きの懲役刑の判決を受けました。
執行猶予付きの判決ではあったものの,大麻取締法違反の事件でしたので,判決が確定後に,入管から違反調査のための呼出が来ることになりました。
ご依頼の経緯
判決の言い渡し前から,Xさんは,「刑事事件の判決によって自分の在留資格がどのようになるか」という点について不安があり,当所へ相談に来られました。
Xさんは日本で育ち,家族のほとんどが日本で生活しているという状況であるため,違反調査の後,強制送還されてしまうと非常に不利益が大きいという状況でもあり,在留特別許可に向けた活動をご希望でした。
刑事事件の判決が言い渡される前からご相談に来られたことで,事前のリサーチなどを行う時間も十分に確保でき,実際に入管からの違反調査が始まって以降は速やかに正式に代理人として受任し,在留特別許可の獲得に向けた活動を行うことができました。
弁護活動
Xさんに対する違反調査,違反認定については,在宅のままで進められました。Xさんは元々日本で生活していた方で,日本人の家族もいたことから,違反調査があっても在留資格は直ちには影響を受けなかったためです。
違反認定の結果,違反事実があり,口頭審理に進むという段階でも,入管の施設内に収容されてしまうということもなく,身元保証人もいたことから,即日仮放免で出てこられました。
代理人弁護士としては,「Xさんが日本にいなければXさんが困る/Xさん以外にも困る人がいる/Xさんを日本に在留させ続けるのが誰にとっても良い」ということを入管にアピールするために,手続の早い段階から,Xさんが置かれた状況について入管の担当者に対して説明を行いました。
口頭審理が行われる前から,先だって在留特別許可を求める具体的な事情を述べ,また,入管が判断する基準に基づいても「在留特別許可するべきである」という意見と理由をつけた意見書を提出しました。ただ意見を言うだけではなく,Xさんのご家族からも嘆願書をもらう等して,資料を集めました。
実際の口頭審理の場でも,弁護士が立ち会い,Xさんに在留資格が付与されるべきであることの意見を述べ,審理の中でXさんにとって不利な供述がなされてしまわないかどうかを立会確認しました。
口頭審理の結果
口頭審理から約2週間程度という速さで,結果が出て,在留特別許可が認められることになりました。
Xさんはもともと,「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留していましたので,在留特別許可(日本人の配偶者等,在留期間1年)という形で認められました。
Xさんは日本で家族との生活を続けられることになり,お仕事についても日本の法律上,何らの問題もなく続けられることとなりました。
ポイント
Xさんの事件では,Xさんが日本に長く在留していたこと,日本に家族がいたことが審理において非常に有利な点として考慮してもらう事ができました。また,Xさんの事例では,Xさん自身が日本で仕事をしていたこと,この仕事が日本や地域社会の利益にもつながっていたことも,入管に対して主張していました。
ただ,大麻をはじめとした薬物事件というのは,やはり入管業務においても重たい事案として扱われていることも事実です。
刑事裁判の結果についても触れて,その責任が必ずしも重大なものではないことについても,刑事弁護的な観点から意見を述べています。
よりよい弁護活動や一貫した弁護活動を目指すのであれば,刑事裁判の段階から入管まで見据えた弁護活動が望ましいでしょう。
今後も在留資格や強制送還に関する手続きでお困りの方,そのご家族の力になれるよう,事案に取り組んでいきたいと思っております。
無免許運転で逮捕された外国人は強制送還されるのか
(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。
「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していたYさん(30代男性)は,東京都内の首都高速道路で自家用車を運転していたところ,スピード違反で検挙されてしまいました。警察官から運転免許証の提示を求められたYさんは,実は日本での運転免許を持っておらず,無免許運転をしていたことが発覚し,現行犯逮捕されてしまいました。
Yさんの会社の友人は心配になり,弁護士に相談することにしました。
無免許運転で強制送還になることはあるのか
これまで当サイトにて解説している通り,入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
交通違反の場合,そもそも反則金制度の対象となる違反なのか,罰金刑以上が課される刑事罰の対象なのかという点が,区別として非常に重要です。
無免許運転の場合,反則金の対象とはならず,全て刑事事件として扱われることになります。
無免許運転は,道路交通法違反として3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金が定められています。そのため,無免許運転として検挙されて有罪の判決を受ける場合には,最大で懲役3年の刑が科されることになります。
無免許運転を含んだ道路交通法違反の事件は,上記の「一定の刑法犯」には含まれませんので,「1年を超える実刑判決」とならなければ強制送還の対象とはなりません。
これは,どの在留資格であったとしても同じです。永住者,日本人の配偶者等の在留資格の方であっても,留学や短期滞在(旅行者)の在留資格であっても,1年を超える実刑判決を受けない限り,無免許運転をしたことによって強制送還されるということは原則としてありません。
また,「逮捕された」,「勾留された」というだけでは,強制送還や在留資格の取消事由ともなりません。
Yさんのように,逮捕されただけでは,直ちに強制送還までされるということはありません。無免許運転について事実を争わない(間違いがない)ということであれば,刑事事件として有罪ん判決を受けることになりますが,この時,「1年」を超える実刑判決を受けなければ,強制送還されず,日本での生活を続けることができます。そのため,刑事裁判において,いかに軽い処分を受けられるかという点が非常に重要です。
交通違反と在留資格
強制送還の対象とはならない刑事事件であっても,ビザに影響することはあります。
Yさんのように,逮捕された後に,略式罰金によって罰金の支払いを命じられたり,正式な裁判によって執行猶予付きの懲役刑判決を受けたりした場合には,日本での素行が良くないという事情が生じてしまいます。
そのため,次回の在留期間の更新や在留資格の変更申請をした際に,「素行が不良である」として,申請が不許可となってしまう可能性があります。また,長年日本で生活してきた方が永住許可申請をするときにも,前科があるということは非常に大きなマイナスポイントになってしまいます。
無免許運転のように,強制送還とはならない事件であっても,今後の在留資格に影響する可能性があることを忘れないできちんと対応する必要があります。
交通違反,無免許運転について,ご自身・家族・友人の在留資格について不安なことがある方は,是非一度,専門家にご相談ください。
同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?
日本において,法律上婚姻は「両性の合意」によって成立するものとされています。そのため,日本の民法では異性婚heterosexual marrigeのみが法律上有効なものとして規定されています。
そのため,入管法での「配偶者ビザ」は,日本人夫と婚姻している外国人妻,もしくは日本人妻と婚姻している外国人夫でなければ認められていません。
参考:日本人の配偶者等 日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
ここでいう「配偶者」とは,「法文上,日本人の配偶者であること,すなわち日本人と当該外国人との間の法律上の婚姻関係しか要求していない」ということになる。
コンメンタール出入国管理及び難民認定法2012
ところで近年,性的指向についても異性愛のみならず,同性愛,同性婚に対しても異性婚と同様の法律上の保護を認めようという動きが活発化しています。
例えば東京都では16の市区町村でパートナーシップ制度が導入されています。自治体によって制度の詳細は異なりますが,パートナーシップ宣言をしているカップルに対しては,法律上の家族と同様の扱いをする,例えば行政サービスを受ける時に同じ世帯として扱う,死亡時の情報公開制度の当事者として扱う,医療を受ける時の家族と同じ扱いとする等といった制度です。
では,入管上の扱いはどのようになっているのでしょうか。
基本的には「配偶者等」としていない
2022年時点においては,入管法上の「配偶者」は日本の民法で有効に成立した夫婦,つまり,異性婚の配偶者のみが該当します。
そのため,同性婚をして地方自治体でのパートナーシップ宣言をしていた場合であっても,入管法上の「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することはできないことになっています。
外国人の方が同性婚をして日本での在留を希望する場合には,「日本人の配偶者等」以外の在留資格を得なければならないことになります。
同性婚の場合の在留資格は「特定活動」
同性婚の配偶者の日本でのビザは「特定活動」になります。
平成25年10月18日に,法務省が各地方出入国管理局に対して出した通知には,外国で適法に成立している同性婚の場合には,人道上の理由から外国と同様に安定した生活できるように,原則として「特定活動」としての入国,在留を認めるようにとされています。
※法務省管在第5357号
「外国で成立している同性婚」と挙げられているように,この通知によって「特定活動」の在留資格が認められているのは,外国人同士で同性婚をした場合を指しています。また,同性婚の外国人両方に在留資格を認めるのではなくて,「他の在留資格で日本で生活している外国人」と同性婚をした外国人の方に,特定活動の在留資格を認めるというものです。
例えば,技術人文知識,国際業務のビザを持っているAさんが,Bさんと同性婚をした場合,Bさんは「特定活動」の在留資格を得て日本で生活することができるというわけです。
一方,短期滞在で日本に来たAさんとBさんが同性婚をしたとしても,AさんとBさんの両方に対して「特定活動」のビザが与えられるわけではないのです。
このように,日本の入管法では「外国人同士の同性婚」については在留資格を認めるという運用を行ってきました。その理由が,「外国で同性婚が成立しているのであれば,日本で本国と同じように安定した生活ができるようにしよう」という目的で特定活動を認めていたからです。
そのため,これまでは日本人と同性婚をした外国人の方に対して在留資格を認めていませんでした。この点について,国に対して特定活動の在留資格を認めるように訴えていた方の裁判があり,2022年9月30日に東京地方裁判所での判決が出されました。
次回はこの判決の内容と特定活動,定住者の在留資格について解説をします。
オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?日本人と結婚していた場合を弁護士事務所が解説
(次の事例は解説のための架空の事例です)
Aさん(東京都在住,独身)はSNSを通じて知り合ったX国出身のBさんと仲良くなり,将来結婚することを考えるようになりました。
AさんとBさんは結婚して,日本で生活をしようと思ったため,Bさんは「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しようと考えました。
しかし,実はBさんは留学生ビザで来日したものの,オーバーステイとなり,Aさんと出会った時から不法残留の状態になってしまっていました。
Aさんも,Bさんから不法残留,オーバーステイの事実を聞きましたが,それでも結婚して日本で夫婦生活を継続したいと思い,インターネットサイト等を見たところ,「入管に出頭した方が良い」との記事を見つけます。Aさんは,Bさんに「配偶者ビザをもらうために,一度入管に出頭しよう」と相談しましたが,Bさんは「入管ですぐ逮捕されるのではないか」と不安です。
そこでAさんとBさんは,法律事務所に相談することにしました。
不法残留に対する対応
日本の入管は,基本的に不法残留に対しては退去強制(強制送還)の手続きをとります。
Aさん,Bさんのように「配偶者ビザをもらうために出頭した」という場合であったとしても,まずは退去強制手続きを行います。
この退去強制手続きを行う中で,日本人の配偶者等として在留特別許可をするかどうかについての審査が行われます。
注意しなければならないのは「在留資格の変更」や「新たな取得」を申請することはできない,ということです。
一度日本国内においてオーバーステイとなってしまうと,元々持っていた在留資格が失効(効果がなくなる)しますので,「延長」であるとか,「変更」の手続きをすることはできません。
延長や変更は,「元々,適法に持っていた在留資格を別のものに変更したり,在留期間を延長したりする」という手続きですから,適法な在留資格がないオーバーステイ状態では取れない手続きということになります。
Aさんのように,親しい方や婚約者である外国籍の人がオーバーステイ(不法残留)であることが分かった時の対応の仕方として,入管へ出頭する,というのは一つの選択肢であります。
というのも,Bさんのように不法残留の状態だと,放っておいても在留資格が認められることはないため,仮にきちんとした在留資格を取得しようと思うのであれば,入管へ出頭する以外には現実的な手段がないのです。
入管に出頭したら逮捕されるのか
それではBさんのように,不法残留の状態で入管に出頭した場合,その場で逮捕されてしまうのでしょうか。
結論としては,逮捕されない場合もあるというものになります。
というのも,確かに入管は不法残留や不法就労について摘発を行うことがありますが,実際に不法残留について逮捕したり捜査を行ったりするのは,警察官がほとんどです。
また,不法残留の人が入管に出頭したという場合であっても,すぐに入管が警察へ連絡するというわけでもありません。
実際には,不法残留になった期間や日本での生活の状況,出頭した経緯や在留特別許可となる見込みがどれだけあるか等といった事情を加味して,入管としての対応が決まることになります。
たとえば,不法残留になってからの期間が短かった,不法残留以外には日本での法律違反がない,出頭した事情から見て在留特別許可がされる可能性が高い,というものであれば,入管としても警察へ通報しないということがあるでしょう。
逆に,在留カードを偽造していた場合や,長い期間にわたって不法就労をしていたというような場合,不法残留以外に日本での法律違反がある等という場合には,入管から警察への通報がなされるということがあります。
在留特別許可については法務省が許可した事例と不許可にした事例を公表しています。
Bさんの事例のように,「日本人の配偶者等」としての在留資格を求めて出頭したという場合ですと,他に法律違反がなければ,逮捕されないままで手続きが進むということも考えられるでしょう。
ただ,Bさんのように「入管に出頭したら逮捕されてしまうのではないか」と不安に思うのも無理ありません。実際にオーバーステイの状態になってしまっているのであれば,なおさらです。
不法残留(オーバーステイ)の状態になっているけれども日本でのビザが欲しい,きちんとビザをもらうために入管に出頭したい,と考えている方も,あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士が,入管の手続きについても対応します。刑事事件については多数の経験がありますから,逮捕される可能性がある事案についても,ご依頼者様の利益を最大化できるような選択肢を一緒に考えていきましょう。
外国人に対する判決期日での手続
日本に在留する外国人の方が日本国内で刑事裁判を受ける場合,判決の結果によって在留資格が影響を受けたり,退去強制に関する手続きが開始されたりします。
2021年の統計資料によると,2021年のうちに日本で起訴された外国人は7932人になります(検察統計調査2021年罪名別 起訴又は起訴猶予の処分に付した外国人被疑事件の国籍別人員)。
この人数は,有罪となった人,無罪となった人の両方を含みますが,大半の人が何らかの罪名で有罪の判決を受けたであろうと推測されます。
起訴された方の罪名として,特に数が多いのが,窃盗罪(1716人),出入国管理及び難民認定法違反(2270人)です。
これらの罪名について,判決の言い渡しがあり,有罪判決となった後の手続はどのようになるのでしょう。
一般的な手続きの流れ
外国人の方が刑事事件の被告人となった場合,多くの場合では勾留されたまま裁判を受けることになります。日本に在留している外国人の方の場合,「裁判期間中に母国へ出国してそのまま帰ってこないかもしれない」という疑いをもたれ,逮捕される事案が多いからです。
事実関係について認めている事件であれば,結審すると,次回期日が判決の言い渡しとなります。
判決の言い渡し期日では有罪の判決が言い渡されると,有罪の起訴となった罪名とその人の在留資格に応じて退去強制(強制送還)の手続きが開始されることがあります。
具体的には,判決言渡し期日に入管職員が傍聴に来ており,期日が終結すると,そのまま入管職員が被告人(外国籍の方)を連れて最寄りの入管へ行きます。そこで退去強制手続きに伴う収容状が発布され,今度は入管の収容場に収容されることとなります。
ただし,その後の手続の見通しや日本に身元引受人がいるかどうかといった点を考慮して,収容状が発付されたとしても当日中に仮放免が認められる場合が多くあります。
「有罪判決の言い渡しを受けた後,入管へ行ったけれども,一旦かえって良いと言われた」という方もいますが,その場合のほとんどは当日中に仮放免を受けているということになります。
単純なオーバーステイであるとか,退去強制事由に該当するとしても在留特別許可が認められる可能性があるという事案であれば,当日中に仮放免になるということもあります。
入管の施設に収容された場合であっても,一時仮放免が認められた場合であっても,その後の「違反調査」は進められることになります。
特に,入管に収容されたままで退去強制に関する手続きが進んでしまった場合,判決から60日以内に「口頭審理」という手続きまで進むことになります。仮に,有罪判決後も日本での在留を希望する場合には,この「口頭審理」での手続きが非常に重要になります。
すぐに入管へ行く場合/後日呼び出される場合
判決言い渡し期日に入管職員が控えている場合と,そうでない場合とがあります。
この違いは,判決の言い渡し後すぐに退去強制手続きがスタートするかどうかという点です。
では,退去強制手続きがいつスタートするかというと,それは在留資格や有罪となった罪名によって異なります。
外国人で刑事事件となるケースの中で特に多い,出入国管理及び難民認定法違反(いわゆる,入管法違反)や窃盗罪で有罪となった場合,判決言い渡し後直ちに退去強制手続きがスタートするというわけではありません。有罪の判決によって退去強制の理由となるには,判決が確定する必要があります。この判決が確定するまでは,控訴を申し立てないまま,判決言い渡し日を含めて15日が経過することで確定します。
一定の入管法違反の場合には在留資格を問わず,窃盗罪の場合には就労系の在留資格や留学等の在留資格の場合,判決の確定によって退去強制手続きがスタートすることになります。
「判決の確定」が退去強制の理由となる場合には,後日入管から呼び出されて,退去強制に関する手続きがスタートすることになります。
一方,入管法違反,特に,オーバーステイの場合には,刑事裁判が始まる前から,警察署や拘置所の中で入管職員が外国人の方から事情聴取を行っています。その場合,刑事裁判の確定を待たず,「オーバーステイをしていた」こと自体が退去強制を行う理由となるのです。そのため,判決の言い渡し期日にも入管職員が控えており,刑事裁判が終わったら直ちに入管での手続きが進むことになるため,そのまま入管へ連れていかれる,ということになるのです。
同じ外国人の方であっても,刑事裁判の後すぐに入管へ行くのか,後日呼び出しがあるのか,退去強制に関する手続きがどのように進んでいくのか,というのは,その人が置かれた状況によって異なります。
日本で刑事裁判の判決を控えているという方,特に,判決後も日本での在留を希望するという方は,早めに弁護士などの専門家に相談しておいた方が良いでしょう。
裁判中に在留期間が切れそうになったらどうしたらいいのか
(次の事例はフィクションです)
Aさんは,日本の企業に勤める外国籍の人で,「技術,人文知識・国際業務」の在留資格で「5年」の在留期間をもらっていました。
ある日,Aさんは会社のお金を横領した疑いをもたれ,警察の取調べを受けました。
Aさんは身に覚えがなかったため否認していましたが,検察官はAさんを「業務上横領罪」で在宅起訴しました。
この裁判期間中に,Aさんの在留期間の更新の期限が迫ってきたため,Aさんは在留期間について弁護士と相談することにしました。
在留期間の更新申請
Aさんのように,「永住者」の在留資格以外の外国人の人が,在留期間の後も日本で生活することを希望する場合,在留期間の更新申請をしなければなりません。
在留期間の更新申請は,最寄りの入管(出張所でも手続きができる場合があります)に,「在留期間更新許可申請書」を提出して,審査を受けます。
最新の統計によると,在留期間更新申請については,申請をしてから審査が終わるまでにかかる期間は,平均して約20日程度です(2022年1月1日~2022年3月31日までに処理された申請に関する統計001371836.pdf (moj.go.jp))。
在留期間の更新申請の時に審査の対象となるのは,
- 在留資格に適合した活動をしているか
- 在留期間を延長(更新)することが適当か(ふさわしいか)
という点になります。
冒頭の事例にあったAさんのような場面でも,日本での在留を引き続き希望するのであれば,
- 「技術,人文知識・国際業務」の在留資格に適合する活動(仕事)を続けているか
- 在留期間を延長するにふさわしい人物か(具体的には,納税をしているか,社会保険料を支払っているか,素行不良でないか,入管法で必要とされる手続きをきちんと果たしているか)
といった点が審査の対象となります。
裁判中でも在留期間を延長できるのか
通常,日本の刑事裁判は始まってから第一審の判決が出るまでに2か月程度かかります。
Aさんの事件のように「身に覚えがない事件だ」として否認して争っている場合だと,さらに審理のために時間がかかり,判決が出るまでに6か月,場合によっては1年以上の期間がかかることもあります。
そうなると,Aさんのように,裁判をしている間に在留期間を迎えてしまうという方もいるかもしれません。
裁判期間中であっても在留期間の更新,延長は認められるのでしょうか。
まず,多くの方が「裁判になってしまったら在留資格も取り消されたり強制送還されてしまうのではないか」と不安に思われるかもしれません。
しかし,入管法上,逮捕されたり起訴されたりしただけで,在留資格が取り消されたり強制送還の対象となることは極めて例外的です。Aさんの事例のような業務上横領罪といった財産犯では,判決が確定しない限りは強制送還の対象になりません。第一審の判決が出るまでの間は,無罪の推定がありますから,裁判を受けているというだけで素行が悪いと判断することもできないのです。
在留資格が取り消されたり強制送還の対象となるのではないかと不安に感じている方は,早めに弁護士などの専門家に相談しましょう。
Aさんも,業務上横領罪が疑われている裁判が終わるまでは,在留資格が取り消されたり強制送還の対象とはなりませんから,在留期間の更新が認められる可能性も十分にあります。
ただし,このような事例で注意しなければならないのは,
- 在留資格に適合した活動を続けているかどうか
という点です。
Aさんの事例のように,職場内で疑われた事件だと,刑事裁判の判決が出る前に懲戒免職となったり,雇用契約が解除されてしまったりしている可能性もあります。職を失ってしまった場合,在留資格に適合した活動を続けていないとして,在留期間の更新が認められなくなってしまいます。
そのような場合には,元の在留資格のままで期間の更新申請をするのではなく,裁判を受けることや転職活動をすることを目的とした,「特定活動」の在留資格へ資格を変更することを考えなければなりません。
在留期間内に裁判を受けるとして,裁判を受けること自体は更新申請手続きに影響するものではありませんが,元々の在留資格の内容や事件の内容によっては,単に期間の更新申請するのではなく,資格の変更申請をした方が良いという場合があります。
在留期間内であっても裁判との関係で,在留資格が取り消されたり更新が不許可になるのではないかとご不安な方は,一度弁護士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。
「日本人の配偶者等」の在留期間が短くなったらどうする
現在,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本に在留している外国人の方が多くいます。
「短期滞在」(旅行者など)の在留資格で入国する方を除くと,「定住者」についで数の多い在留資格です。
この「日本人の配偶者等」の在留資格も,「永住者」と違って在留期間が設定されており,永続的な日本での在留を希望する場合には都度,更新をしなければなりません。
「日本に滞在できる期間」という点で,在留期間の定めには意味があるものですが,実際にはさらに重要になる場面があります。
また,「思っていたよりも短い期間しか更新が認められなかった」という場合もあります。
在留期間の長さが重要になる場合
在留期間の長さが重要になる場合,それは永住許可申請をしようとする場合です。
永住許可を受ける場合に必要な条件の中に,次のようなものがあります。
・入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
在留期間について,「最長の期間が認められている場合でなければ永住許可をしないよ」ということです。
そして,当面の期間はこの「最長の在留期間」とは「3年」とされています。
「日本人の配偶者等」の在留資格の場合,在留期間については
5年,3年,1年,6か月
のいずれかが付与されることになっています。
そのため,3年の在留期間となるのか,1年の在留期間となるのかという点は,永住許可申請をすることができるかどうかについて非常に大きな差となるのです。
どのようにして在留期間が決まるのか
「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することを証明できたとして,実際の資格付与の際には具体的な在留期間が決定されます。
この「在留期間」の決め方は,個別の在留資格によって異なります。
「日本人の配偶者等」の場合についてみると,在留資格を取得した最初のタイミングだと1年,その後の更新の際に3年,5年と延長が認められる場合が多くあります。
特に,実態を伴った婚姻生活が継続していることが,長期間の在留期間が認められるためには重要になります。「日本人の配偶者等」の在留資格を最初に取得した際の在留期間が1年とされるのも,「これから先きちんと実態のある婚姻生活が継続するかどうか」という点がまだ分からない(結婚してその後の生活が安定するかどうか分からない)という点から,「1年」の在留期間とされるのです。
その後,更新を重ねていく中で「日本での婚姻生活が継続している」と認められれば,3年,5年の在留期間が認められることになります。
逆に,全く別居していて夫婦間での交流がなく経済的にも完全に独立している,といった夫婦の場合だと,「実態を伴った婚姻生活が継続していない」として長期の在留期間が認められない場合もあります。
在留期間の更新の際にも,夫婦関係が継続していることをきちんと疎明しておく必要があるでしょう。
解決事例 永住許可が認められた事例
当所の扱った事案について,永住許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
事案・ご依頼の経緯
ご依頼者であるXさんは「定住者」の在留資格を取得して日本で生活していました。
日本での生活が10年以上にわたり,より安定してた生活を送り,長期間にわたって日本で在留し続けたいと考えたXさんは,「永住許可」を申請しました。
しかし10年以上日本で生活していた実績があるにもかかわらず,Xさんの永住許可申請は「不許可」となってしまいました。
「定住者」としての在留資格は維持できていたものの,在留期間の更新手続きを行わなければならないこと点や日本でのローンが組みにくい点など,日本での生活に不便さがありました。
そこで,Xさんは再度,永住許可申請をしようと考え,申請の際には弁護士に手続きを依頼することにしました。
永住許可に向けた活動
永住許可申請は法律上,外国人本人でも行える手続きです。しかし,実際にはどんな場合に永住許可がもらえるのか,永住許可のためにはどんな事情や書類が必要なのかということについては,あまり理解されていないことが多くあります。
永住が認められる場合というのは,
の全てを満たしている場合です。
詳しくはこちらでも解説しています。
Xさんの事例でもそうだったのですが,永住許可申請のためには大量の書類を整理して入管に提出しなければなりません。
そのうち一部の書類が欠けているだけで,永住が不許可となってしまいます。実際,きちんと書類を全部出していれば「永住者」になれたはずなのに,書類がなかったからという理由で永住申請が「不許可」となることはとても多いのです。
Xさんの依頼を受けた弁護士も,ご本人や入管から書類を取り寄せて,永住申請のために必要な書類を整理して寄り分けて,申請書を作成しました。
提出する書類が大量にあるということは,そのすべてに矛盾しないような申請書を作成しなければいけません。書類同士で記載が違っていたり,提出した書類と申請書とで食い違いがあると,入管からは「虚偽の申請をしているのではないか」という疑いをかけられることになり,申請が不許可となってしまう可能性があります。
また,申請書を提出した後も,入管から資料の追加や理由書の提出を求められることがあります。入管がこのように求めて来るということは「今の申請書や書類だけでは永住許可することが難しい」と考えているということです。追加提出資料についてもきちんと対応する必要があります。
Xさんの事例でも,申請書類,提出資料を整えて提出し,入管から追加提出の指示があった資料に関しても適切に対応したところ,申請から約3か月ほどで永住許可が認められました。
ご自身で在留資格の変更申請,永住許可申請をしたものの不許可だったという方は,一度弁護士にもご相談ください。
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