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「日本人の配偶者等」の在留期間が短くなったらどうする
現在,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本に在留している外国人の方が多くいます。
「短期滞在」(旅行者など)の在留資格で入国する方を除くと,「定住者」についで数の多い在留資格です。
この「日本人の配偶者等」の在留資格も,「永住者」と違って在留期間が設定されており,永続的な日本での在留を希望する場合には都度,更新をしなければなりません。
「日本に滞在できる期間」という点で,在留期間の定めには意味があるものですが,実際にはさらに重要になる場面があります。
また,「思っていたよりも短い期間しか更新が認められなかった」という場合もあります。
在留期間の長さが重要になる場合
在留期間の長さが重要になる場合,それは永住許可申請をしようとする場合です。
永住許可を受ける場合に必要な条件の中に,次のようなものがあります。
・入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
在留期間について,「最長の期間が認められている場合でなければ永住許可をしないよ」ということです。
そして,当面の期間はこの「最長の在留期間」とは「3年」とされています。
「日本人の配偶者等」の在留資格の場合,在留期間については
5年,3年,1年,6か月
のいずれかが付与されることになっています。
そのため,3年の在留期間となるのか,1年の在留期間となるのかという点は,永住許可申請をすることができるかどうかについて非常に大きな差となるのです。
どのようにして在留期間が決まるのか
「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することを証明できたとして,実際の資格付与の際には具体的な在留期間が決定されます。
この「在留期間」の決め方は,個別の在留資格によって異なります。
「日本人の配偶者等」の場合についてみると,在留資格を取得した最初のタイミングだと1年,その後の更新の際に3年,5年と延長が認められる場合が多くあります。
特に,実態を伴った婚姻生活が継続していることが,長期間の在留期間が認められるためには重要になります。「日本人の配偶者等」の在留資格を最初に取得した際の在留期間が1年とされるのも,「これから先きちんと実態のある婚姻生活が継続するかどうか」という点がまだ分からない(結婚してその後の生活が安定するかどうか分からない)という点から,「1年」の在留期間とされるのです。
その後,更新を重ねていく中で「日本での婚姻生活が継続している」と認められれば,3年,5年の在留期間が認められることになります。
逆に,全く別居していて夫婦間での交流がなく経済的にも完全に独立している,といった夫婦の場合だと,「実態を伴った婚姻生活が継続していない」として長期の在留期間が認められない場合もあります。
在留期間の更新の際にも,夫婦関係が継続していることをきちんと疎明しておく必要があるでしょう。
不倫と在留資格
このページでは,日本で不倫をした外国人の方や,配偶者の外国人の方が不倫したという方に向けて,不倫が在留資格に影響するのかどうか?と解説します。
なお,このページにおいて「不倫」とは,法律上結婚している人が配偶者以外の人と交際したり情交を結ぶ(性交等をする)ことを指すとします。
配偶者の在留資格について
日本人の方と結婚した外国人の方は,「日本人の配偶者等」という在留資格を取得することが出来ます。
「日本人の配偶者等」の在留資格は,在留中の活動に制限がなく(違法行為でない限り日本でどんな仕事もできます),結婚が継続している限りは在留期間の更新も認められやすく,とても安定した在留資格です。日本人と結婚した方で,ある程度の期間日本に在留することを希望する場合には,「日本人の配偶者等」へ在留資格を変更することが良いでしょう。
この在留資格は,「日本人と結婚していること」を前提として認める在留資格です。そのため,離婚した場合等,すでに結婚生活を行っていない場合には在留資格を認める前提がなくなってしまいます。結婚生活が行われていない状態が6か月以上継続し,在留資格を変更していないままでいると,在留資格が取り消されてしまうことになります。在留資格が取り消されると,30日間の出国準備期間が設けられ,その間に本邦から出国しなければならなくなります。
配偶者の在留資格と不倫 ~外国人の方が不倫してしまった場合~
※この項は外国人の方の方向けの解説です。
不倫をしてしまった場合,在留資格を取り消されてしまうのでしょうか。結論から言うと,すぐに取り消されるわけではありません。
在留資格が取り消されるかどうかは,日本人の方との結婚生活が続いているかどうかによって決まります。
不倫関係が数年に及んでいる場合や,夫婦で別居して家計が別々になっているような場合,お互いに離婚に向けた話し合いや調停が進んでいるような場合であれば,結婚生活は既に破綻して修復する可能性もないとして,在留資格が取り消されたり,更新が不許可となる可能性もあります。また,不倫相手との関係を日本で続けるために離婚しないだけ,というような場合も,日本人との蹴痕生活が続いていないと判断される可能性があります。
一方,そうではない場合,例えば,夫婦として同居を続けている場合や不倫があったとしても結婚関係を修復していく姿勢である場合には,引き続き在留資格を認められる可能性もあります。
不倫自体は在留資格を取り消す理由にはなりませんが,結婚生活の実態次第では在留資格が取り消される可能性があるということになります。
宗教間や文化によって「結婚」に対する考え方が異なるのは当然ですが,日本で不倫をするということは,それだけのリスクがある行為ということになります。
配偶者の在留資格と不倫 ~配偶者である外国人の方が不倫してしまった場合~
※この項は,不倫をしてしまった外国人の方の配偶者の方向けの解説です。
男女問わず,外国人である配偶者の方が不倫してしまった場合,当該外国人の方の在留資格がどうなるのかというのは上記のとおりです。
そして,不倫をされた日本人の方としては,このまま結婚生活を続けるのか,離婚を考えていくのか,が大きな問題になります。これは日本人同士の結婚でも同じかもしれませんが,外国人の方と結婚している場合には,
①相手の在留資格
②慰謝料の請求方法
③子供がいる場合には子供の親権や国籍
の問題があります。
結婚を続ける方向であれば,相手の在留資格の保持や更新申請の許可に向けた準備が必要になります。上記のとおり,不倫があったことのみで在留資格が取り消されたり強制退去になることはありませんが,資格の更新が不許可となったり,更新の期間が短くなったりする可能性があります。
一方,離婚する方向なのであれば,相手が日本から大挙してしまう可能性があるので,②,③についても考えなければなりません。
このページでは①に限って解説をしていますが,②,③についても簡単に触れると,いずれも相手が日本にとどまっているうちに請求や手続をしておく方が良いでしょう。相手が帰国してしまった場合,日本の裁判所で手続きができなくなってしまったり,適法される法律が変わってしまうことがあるためです。
まとめ
今回は,不倫の在留資格に対する影響について解説してきました。
既にふれた通り,「結婚」や「不倫」に対する考え方については,個々人の思想や信条によって異なることは確かです。しかし,日本の法律の仕組みというのも,ここでお話しした通りです。
昔日本には,「不倫は文化」という言葉もあったようですが,外国人の方の在留資格の関係で言うと,「不倫はリスク」です。
「日本人の配偶者等」の在留資格はとても安定しており,日本での在留を希望されるのであれば保持しておきたいものです。「日本人の配偶者等」の在留資格についてご不安のある外国人の方,日本人の方は一度ご相談下さい。