強制わいせつ罪で懲役刑の判決を受けたら,強制送還?

(以下の事例はフィクションです)

外国籍のAさんは,東京都に住んでおり,日本人の女性と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得して日本に在留しています。

Aさんは日本の会社に勤めており,日本での生活も20年以上です。

ある日Aさんは,会社の飲み会で飲みすぎてしまい,帰り道に酔った勢いで見ず知らずの女性に抱き着いて服の中まで手を入れて体を触ってしまいました。

その場で通報されてAさんは,東京湾岸警察署で逮捕されてしまいます。Aさんは強制わいせつ罪で起訴され,裁判では懲役1年6月,執行猶予3年という判決が下されました。

Aさんは強制送還されてしまうのか不安に思い,弁護士事務所に相談することにしました。

起訴されることを避ける

事例でAさんは既に逮捕,起訴されてから在留資格についての相談をしようと思ったようです。

後で解説する様に,今回のAさんの事案であれば,裁判の後でもまだ大丈夫だったのですが,それ以外の在留資格の人や違う罪名の刑事事件の方の場合,判決が出た後ではどうしようもない状態になってしまっているという方もいます。特に,「起訴される前に手を打っておけば日本に残れたかもしれないのに」という事案はたくさんあります。

外国人の方で特に日本での刑事事件についてお困りがある方,ご家族や友人の外国人の方の事件についてご不安がある方は早めにご相談ください。

「懲役刑」の場合の強制送還

Aさんの場合,在留資格が「日本人の配偶者等」にあたるため,一般刑法の有罪判決だけで強制送還されるというわけではありません。

刑事裁判においては,一般刑法事件特別法事件という,大きく分けると二種類の事件があります。

一般刑法事件というのは,刑法に規定がある犯罪のことです。暴行や傷害,窃盗,住居侵入,といったものがあります。強制わいせつも一般刑法犯にあたります。

一方,特別法事件というのは刑法以外の法律の違反で刑罰の規定がある事件のことです。ニュースなどで「○○法違反で逮捕」という報道がされることがありますが,このように「○○法違反」と表現されるのはいずれも特別法に違反した刑事事件です。覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反,関税法違反,売春防止法違反,といったものがあります。

Aさんのように就労系の在留資格ではなく,「日本人の配偶者等」の在留資格の方で,一般刑法事件で有罪判決となった場合,1年以上の実刑判決でなければ,すぐに強制送還されるということはありません。Aさんの事例では,「執行猶予付きの判決」になっており実刑判決ではないため,強制送還を免れる可能性があります。

有罪判決が出た場合の在留資格への影響

それでは,実刑判決でなければ在留資格やビザへの影響がないと言えるのでしょうか。

その答えはNOです。

Aさんのように「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している方の多くは「永住者」の在留資格へ変更することを考えているかと思います。

永住許可がもらえれば,在留期間を更新する必要がなくなり,また,日本でも住宅ローンを組みやすくなるなど,生活が大きく変わるからです。

日本で有罪判決を受けてしまうと,永住許可がもらいにくくなります。永住許可が認められるための条件の一つに,日本での素行の善良性というものがあります。「日本のルールを守って正しく生活している」ということです。有罪となって執行猶予付きの判決を受けてしまうと,この「素行の善良性」が悪いと判断されてしまい,永住許可が認められないケースがあります。

もちろん,外国人の方も日本人と同様に「前科」があることによって様々な社会生活上の制限を受ける可能性があります。具体的には仕事を解雇されてしまったり,自営であれば取引が停止してしまったり,職務上の専門資格を失ってしまう可能性もあります。

すぐに強制送還されることがないからと言って安心しきってしまうのではなく,刑事裁判の判決が自分の在留資格へどのように影響するのか,事前に専門家によく相談しておく必要があるでしょう。

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