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脅迫で逮捕されたらどうなるのか,強制送還される可能性はあるのか

2024-03-06

(事例はフィクションです)

Aさん(外国籍,日本人の配偶者等・3年)はある時,日本に在留している外国人コミュニティー内でお金の貸し借りからトラブルになってしまいました。
Aさんは知人に,お金を返してもらおうと思ってつい強い口調になってしまい,これに怯えた被害者の方が警察に相談したところ,Aさんは脅迫の犯人として原宿警察署で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は,これからどうなるのか不安に思い刑事事件に強い弁護士事務所に相談することにしました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕された方の下へ弁護士を派遣する初回接見サービスを行っています。
弊所の東京支部から原宿警察署までの初回接見費用は3万5530円(接見日当3万3000円,交通費2530円)です。
原宿警察署で逮捕されてしまったという外国人の方,そのご家族やご友人の方は「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。

脅迫罪による逮捕

脅迫罪は刑法222条1項に定められている犯罪です。

脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。

人を「脅迫した」場合に成立する犯罪です。Aさんのように「お金を貸した/返済してほしい」という立場であっても,言動があまりに強すぎた場合,脅迫に該当する可能性があります。
上記の事例のように,知人同士での間柄の事件の場合,事件の蒸し返しや不当な働きかけをすることを疑われるため,逮捕されてしまうという事例が多くあります。

また,事件を起こしてしまったことを争わなかった場合,被害者と示談ができなければ起訴されてしまい,有罪の判決を受けてしまいます。
脅迫罪で起訴されてしまった場合,前科がなかったとしても懲役刑が科されてしまう可能性もあります。懲役刑が科されると,外国籍の方の場合,在留資格に大きな影響があります。
在留資格への不利益を一番に避けるためには,起訴されないための弁護活動,すなわち被害者との示談交渉が重要です。
不起訴処分となれば,脅迫罪の場合,直ちに強制送還となる可能性を最小限まで引き下げることができます。

脅迫罪の示談交渉についてお困りの方は,「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。

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退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例の場合,日本人の配偶者のビザであり,かつ,脅迫罪による懲役刑ということであれば直ちに強制送還とまでなる可能性は高くありません。
Aさんの立場でいうと,「1年を超える懲役刑」を科された場合に,強制送還となります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「1年を超える懲役刑」となった場合には強制送還になってしまう可能性が高くありますが,Aさんの事情を考慮すると,在留特別許可をもらえる可能性もあります。
また,すぐに強制送還にならないとしても,次回の在留期間の更新の際に不利な事情となってしまいます。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事の手続の中で早急に示談をして不起訴処分を獲得することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

「日本人の配偶者等」の人が交通事故をした場合,在留資格はどうなる?在留期間の更新は大丈夫?

2024-01-17

(事例はフィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により捜査が行われました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんが在留期間の更新をする際にどのように影響するのか
以上の点について解説していきたいと思います。

過失運転致傷の刑事罰

Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には、危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度、②事故を起こした側の過失の程度、③被害者の側の過失の程度、④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。

  • ①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
  • ②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
  • ③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
  • ④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。

Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。
反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

日本人の配偶者の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用、動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
今回Aさんは、過失運転致傷罪という罪を犯しています。処分がどのような者になるかについては⑴の通りです。
そこで、まずこの刑事処分がAさんにとって「退去強制事由」になるかどうかを見てみます。

Aさんは「日本人の配偶者」ですので、入管表別表第2に記載されている在留資格を有しています。この在留資格の場合には、「無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」(入管法24条4号リ)に該当する場合には、罪名関係なく退去強制を受ける事由となります。
今回のAさんの場合には、起訴猶予処分や罰金の処分となった場合にはこれに該当しません。また、この4号リで問題とされるのは、実刑、つまり刑務所に行かなければならないような判決だけですから、執行猶予付きの禁錮刑であればAさんにとっては退去強制事由には該当しないということになります。

次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。
そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

「日本人の配偶者等」の在留資格における各種申請のための書類についてはこちらのページにまとめられていますのでご確認ください。

また,在留期間の延長についてはこちらのページでも解説していますので,併せてご覧下さい。

在留期間を延長する手続き

示談交渉は必要か

さて、先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは
話をしないことが通常です。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から
知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新を安全なものとするためにも、いち早く弁護士にご相談ください。

偽装結婚が発覚するとどうなるのか?強制送還の可能性や対処について刑事事件に強い弁護士が解説

2023-12-27

【事例】

以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、日本で働いて本国の家族に送金をするため、日本人と偽装結婚をし、日本人の配偶者等の在留資格で来日しました。
その後日本で暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように偽装結婚をしていた外国人の知人が逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も偽装結婚が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。

【偽装結婚と退去強制】

偽装結婚をして日本人の配偶者等の在留資格で来日したAさんは、虚偽の申請をして上陸許可を受けたということで、在留資格が取消され退去強制事由となります。

「偽装結婚とは何か」についてはこちらの記事もご覧ください。

偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?

また、適法に上陸した後に偽装結婚をした場合であっても、後述するとおり公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立し、その刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ければ、執行猶予の有無にかかわらず退去強制事由となります。

【偽装結婚発覚前のお悩みについて】

Aさんのように、偽装結婚がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
 ①発覚したら逮捕されるのか
 ②もう日本に残ることはできないのか
 ③出国までずっと入管に収容されるのか
 ④偽装結婚の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①発覚したら逮捕されるのか

偽装結婚が警察に発覚したり、入管に察知され警察に通報された場合、個別事情によるので一概には言えませんが、逮捕されることは多いです。

警察も入管と協働して取り締まり・摘発に積極的な部分です。

参考:警察庁HP

②もう日本に残ることはできないのか

偽装結婚は、前述のとおり、退去強制事由に該当するという結論になる可能性が極めて高く、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
その上、一般的に、偽装結婚で在留特別許可を得ることは非常に困難です。
もっとも、真正な配偶者になる予定の人と相当長期間内縁関係にある、日本での養育が必要な子どもがいるなど、在留特別許可にプラスの事情があれば、100%在留特別許可は無理とも限りません。
在留特別許可が得られる見込みについては、他にも様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。

③出国までずっと入管に収容されるのか

偽装結婚が理由で在留資格を取消される、懲役刑の有罪判決を受けるなどの退去強制事由に該当すると、入管に収容される可能性があります。
もっとも、収容された場合でも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

④偽装結婚の刑罰はどうなるのか

真正な婚姻をする意思がないのに婚姻の届出をすると、戸籍等に不実の記載(電子化された戸籍等の場合は不実の記録)をさせ、そのような状態の戸籍等を役所に備え付けさせることになり、公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立します。
有罪判決の場合の刑の重さは、懲役刑、ただし執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。最も事件に応じて、個別の事情によるので一概には言えませんが刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【おわりに】

偽装結婚により得た身分で日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても不安定な地位は変わらないので、前述のとおりの発覚した場合の様々なリスクを軽減するために出頭をし、真摯な対応をするということも選択肢としてはあります。
いずれにせよ、今後のリスクについて、まずは弁護士等の専門家に相談した方がよいかと思います。

酒気帯び運転で前科が付くと在留資格が更新できなくなる?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

2023-12-06

事例(フィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

日本人の配偶者の在留資格について

 在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
 今回Aさんは、道路交通法違反により刑事処分を受けています。
 そこで、まずこの刑事処分がAさんにとって「退去強制事由」になるかどうかを見てみます。
 Aさんは「日本人の配偶者」ですので、入管表別表第2に記載されている在留資格を有しています。この在留資格の場合には、「無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」(入管法24条4号リ)に該当する場合には、罪名関係なく退去強制を受ける事由となります。
今回のAさんの場合には、罰金30万円となっています。罰金刑は、懲役の刑よりも軽い刑罰となっていますので、この4号リには該当しませんから、Aさんにとっては退去強制事由には該当しないということになります。
 次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
 この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんの場合には、道路交通法違反による罰金刑を受けているだけですから、かっこ書きの中にある「道路交通法違反による罰金」に該当しますので、素行不良要件には該当しないと考えられます。
 よって、現在の資格である「日本人の配偶者」資格の期間を更新するにあたっては、酒気帯び運転による罰金刑は大きな問題とはならないと考えられます。
 ただし,永住許可を申請する時には,罰金前科があることはマイナスの事情になってしまいます。
出入国管理庁は永住許可の審査についてガイドラインも公開しています。ガイドラインはこちらです。
日本人配偶者の在留資格で在留している方の多くは,ゆくゆくは永住許可を取って長く日本に在留することを希望しています。
罰金刑の前科が付くかつかないかで,今後の手続きに影響が出てくるという方は,早いうちに弁護士に相談する必要があります。

永住者ビザ(永住許可)

酒気帯び運転で検挙されると永住許可が認められなくなるのか?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

「日本人の配偶者」の在留資格はどんな場合に認められる?結婚すれば必ずもらえるのか?

2023-07-25

「日本人の配偶者等」の在留資格について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

いわゆる「配偶者ビザ」は,日本に住んでいる外国人の方にとって,最も手堅く安全な在留資格と言えます。

ビザによる就労の制限はなく,在留期間についても更新が容易であり,何よりも永住者の在留資格を取得しやすいという点が魅力的です。

在留資格「日本人の配偶者」としてどのような要件が必要かについて、まず第一に「日本人の配偶者としての身分を有する者」であることが必要です。     
「日本人の配偶者」における「配偶者」とは、現に婚姻中の者をいい、相手方の配偶者が死亡した者又は離婚した者は含まれないとされています(審査要領)。
では、ここでの「婚姻」は、法律上の結婚で足りるのか?あるいは他に何らかの要件が必要なのでしょうか?
この「日本人の配偶者等」における「婚姻」の判断について、最高裁まで争われた事件がありました。
争いとなった事件の概要は、およそ以下のようなものでした。

出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)別表第一の三の表所定の「短期滞在」の在留資格で本邦(日本)に在留していたタイ王国の国籍を有する被上告人が、上告人(国・出入国在留管理局)に対し、法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格への変更申請(以下「本件申請」という。)をしたところ、上告人がこれを不許可とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたため、被上告人が本件処分の取消しを求めたもので、日本人と婚姻関係にある外国人(タイ王国の国籍者)が、日本上陸後約1年3か月の同居生活の後、約4年8か月間別居生活を続け、その間、婚姻関係修復に向けた実質的、実効的な交渉等はなく、独立して生計を営んでいたなどの事情の下において、当該外国人の日本における活動は、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するといえるか、「日本人の配偶者等」の在留資格該当性が争点となりました。

最高裁(平成14年10月17日)は、「日本人の配偶者等」の「配偶者」としての在留資格該当性について、およそ以下のような判断を下しました。

1.「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには、単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があるだけでは足りない。
2.日本人配偶者との間に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真しな意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という
  特別な身分関係を有する者として日本活動しようとすることに基づくものと解される。
3.婚姻関係が法律上存続している場合であっても、夫婦の一方又は双方が既に婚姻継続の意思を確定的に喪失しているとともに、夫婦としての共同生活
  の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至ったときは、当該婚姻はもはや社会生活上の実質的基礎を失っている者というべきである。

本判決は、「配偶者としての活動を行う者」とする者の在留資格が付与されるべき者について、日本人との婚姻が法律上有効なものであれば足りるものとする(平成6年5月26日東京地方裁判所判決)の考えを否定して、在留資格「日本人の配偶者等」での「婚姻」といえるためには「単なる法律上の婚姻だけでは足りない。」とする国側(出入国在留管理局)の主張を採用しました。
今となっては当たり前のように見える判断ですが、下級審で判決のあった平成8年当時は、決して当たり前の判断基準ではなかったということです。
この最高裁判決が、在留資格「日本人の配偶者等」の在留資格該当性における現在の判断基準となっています。
参考:最高裁判所判例,出入国在留管理局審査要領

強制わいせつ罪で懲役刑の判決を受けたら,強制送還?

2023-06-30

(以下の事例はフィクションです)

外国籍のAさんは,東京都に住んでおり,日本人の女性と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得して日本に在留しています。

Aさんは日本の会社に勤めており,日本での生活も20年以上です。

ある日Aさんは,会社の飲み会で飲みすぎてしまい,帰り道に酔った勢いで見ず知らずの女性に抱き着いて服の中まで手を入れて体を触ってしまいました。

その場で通報されてAさんは,東京湾岸警察署で逮捕されてしまいます。Aさんは強制わいせつ罪で起訴され,裁判では懲役1年6月,執行猶予3年という判決が下されました。

Aさんは強制送還されてしまうのか不安に思い,弁護士事務所に相談することにしました。

起訴されることを避ける

事例でAさんは既に逮捕,起訴されてから在留資格についての相談をしようと思ったようです。

後で解説する様に,今回のAさんの事案であれば,裁判の後でもまだ大丈夫だったのですが,それ以外の在留資格の人や違う罪名の刑事事件の方の場合,判決が出た後ではどうしようもない状態になってしまっているという方もいます。特に,「起訴される前に手を打っておけば日本に残れたかもしれないのに」という事案はたくさんあります。

外国人の方で特に日本での刑事事件についてお困りがある方,ご家族や友人の外国人の方の事件についてご不安がある方は早めにご相談ください。

「懲役刑」の場合の強制送還

Aさんの場合,在留資格が「日本人の配偶者等」にあたるため,一般刑法の有罪判決だけで強制送還されるというわけではありません。

刑事裁判においては,一般刑法事件特別法事件という,大きく分けると二種類の事件があります。

一般刑法事件というのは,刑法に規定がある犯罪のことです。暴行や傷害,窃盗,住居侵入,といったものがあります。強制わいせつも一般刑法犯にあたります。

一方,特別法事件というのは刑法以外の法律の違反で刑罰の規定がある事件のことです。ニュースなどで「○○法違反で逮捕」という報道がされることがありますが,このように「○○法違反」と表現されるのはいずれも特別法に違反した刑事事件です。覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反,関税法違反,売春防止法違反,といったものがあります。

Aさんのように就労系の在留資格ではなく,「日本人の配偶者等」の在留資格の方で,一般刑法事件で有罪判決となった場合,1年以上の実刑判決でなければ,すぐに強制送還されるということはありません。Aさんの事例では,「執行猶予付きの判決」になっており実刑判決ではないため,強制送還を免れる可能性があります。

有罪判決が出た場合の在留資格への影響

それでは,実刑判決でなければ在留資格やビザへの影響がないと言えるのでしょうか。

その答えはNOです。

Aさんのように「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している方の多くは「永住者」の在留資格へ変更することを考えているかと思います。

永住許可がもらえれば,在留期間を更新する必要がなくなり,また,日本でも住宅ローンを組みやすくなるなど,生活が大きく変わるからです。

日本で有罪判決を受けてしまうと,永住許可がもらいにくくなります。永住許可が認められるための条件の一つに,日本での素行の善良性というものがあります。「日本のルールを守って正しく生活している」ということです。有罪となって執行猶予付きの判決を受けてしまうと,この「素行の善良性」が悪いと判断されてしまい,永住許可が認められないケースがあります。

もちろん,外国人の方も日本人と同様に「前科」があることによって様々な社会生活上の制限を受ける可能性があります。具体的には仕事を解雇されてしまったり,自営であれば取引が停止してしまったり,職務上の専門資格を失ってしまう可能性もあります。

すぐに強制送還されることがないからと言って安心しきってしまうのではなく,刑事裁判の判決が自分の在留資格へどのように影響するのか,事前に専門家によく相談しておく必要があるでしょう。

もっともメジャーなビザ,「日本人の配偶者」ビザについて解説

2023-06-21

在留資格「日本人の配偶者等」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

この「日本人の配偶者等」の在留資格に該当する方としては、日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者です。
「日本人の配偶者等」の該当例としては、日本人の方の夫又は妻・実子・特別養子などです。単なる養子の場合には,ビザを取得することはできません。
「日本人の配偶者等」在留期間は、5年・3年・1年又は6月です。

この「日本人の配偶者等」の在留資格を取得するメリットとしては、就労制限がないため、自由に仕事をしたり、パート、アルバイトをすることができ、他業種への転職もできます。

この「日本人の配偶者等」の在留資格には、在留活動に制限がないので大学や専門学校に通うこともできます。

また、永住者の申請をする場合に、日本人と婚姻していることにより永住者の在留要件が3年に短縮されます。

さらに、帰化申請をする場合にも、日本人と婚姻していることにより簡易帰化による在留期間の短縮特例があり帰化しやすいということもあります。

「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する場合には、次の点に注意が必要です。

1.配偶者の場合

相手方の配偶者が死亡した場合や離婚した場合は含まれないということです。また、内縁の配偶者も含まれません。

実際に日本の法令に従って婚姻をしていることが必要であり、日本で入籍していない場合は、所定の方法により入籍してから申請することになります。

ここが審査の最大のポイントと言っても過言ではありませんが、婚姻の実体を伴っていることが必要となります。当然のことですが、偽装による結婚は認められません。
ここについては、単なる法律上の婚姻関係だけではなく、婚姻が実体を伴うものであることについて、写真や夫婦生活についての資料を提出し、個別具体的に審査がなされます。

2.日本人の実子・特別養子の場合

本人の出生後父又は母が日本国籍を離脱した場合であっても、日本人の子として出生した者に該当します。

逆に、本人の出生後にその父又は母が日本国籍を取得しても、日本人の子として出生した者には該当しませんのでご注意ください。

「日本人の配偶者等」という名前通り、日本人と婚姻することにより在留資格が認められるというイメージがあるかと思いますが、偽装結婚の例が少なからず存在することから、「婚姻の実体が伴っているか否か」というポイントについては、慎重に判断されることになります。

本当に結婚している場合であっても,申請内容によっては「不許可」となるケースもありますので、「日本人の配偶者等」についてご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。

同性婚裁判,ビザへの影響は?

2023-06-12

2023年6月8日,福岡地方裁判所にて,同性婚を認めていない現行法が憲法に違反する状態であるとの判決が出されました。

この裁判は,同性カップルが「異性婚と同性婚で法律上の取り扱いが異なるのは,平等ではない」と憲法違反を主張して国に損害賠償を求めた裁判です。

同様の裁判は2019年から全国各地で提訴されており,札幌地方裁判所,名古屋地方裁判所では既に「憲法に違反する」と判決,東京地方裁判所は「憲法に反する状態」と判決,大阪地方裁判所は「憲法に違反しない」と判決をしており,これで5件目の判決となりました。

「憲法違反」か「憲法違反の状態」かの違いについてはここでは深く言及しません。

在留資格,ビザの申請においても,今回の判決は影響がありうるため,現在の入管法が「同性婚」についてどのように扱っているか,今後どうなりうるかについて解説をします。

今の法律では,同性婚≠配偶者

現在の入管法では,同性婚として「パートナーシップ宣言」等をしていたとしても,原則として「配偶者」とは認められていません。

そのため,日本人と同性婚状態になった外国人の方は「日本人の配偶者等」とは認められていません。

今回,同性婚と異性婚を別に扱うことが憲法違反とされたことで,民法が変われば,同性婚についても「配偶者ビザ」が認められる余地が出て来るでしょう。

現在の「同性婚」の扱い

現在の入管法では,同性婚の場合,「特定活動」のビザを認めるようになっています。

元々,外国人同士の同性婚の場合,外国人のどちらかが日本でビザを取得していれば,その同性婚のパートナーについては「特定活動」の在留資格が認められてきました。

これは,平成25年に法務省が各地方の入管に対して通知しており,全国共通の取り扱いとなっています。

一方,日本人と外国人の同性カップルの場合,外国人の方に「特定活動」の在留資格が認められない,という状況がありました。

これは上記の,東京地方裁判所の判決があった事例で,裁判では「特定活動の在留資格を認めないのは憲法に違反する」と判断されているのです。

このような,全体的な裁判例の流れを見ると,同性婚であっても異性婚であっても,原則的には同じように取り扱うべきという流れがあり,このことは在留資格,ビザの場でも同じようです。

民法や入管法の改正状況次第では,日本人と外国人との同性カップルに対して「日本人の配偶者等」の在留資格や「定住者」といった在留資格が認められるようになるかもしれません。

その場合,「特定活動」の在留資格と比べても日本での活動に制約が減り,また,日本での経済活動(車や家をローンで購入する,事業や会社を立ち上げるなど)と言ったことがより一層やりやすくなることが予想されます。

入管実務上も,今後の同種裁判の帰趨には注目したいと思います。

「日本人の配偶者等」の在留期間が短くなったらどうする

2022-07-21

現在,「日本人の配偶者等」の在留資格をもって日本に在留している外国人の方が多くいます。

「短期滞在」(旅行者など)の在留資格で入国する方を除くと,「定住者」についで数の多い在留資格です。

この「日本人の配偶者等」の在留資格も,「永住者」と違って在留期間が設定されており,永続的な日本での在留を希望する場合には都度,更新をしなければなりません。

「日本に滞在できる期間」という点で,在留期間の定めには意味があるものですが,実際にはさらに重要になる場面があります。

また,「思っていたよりも短い期間しか更新が認められなかった」という場合もあります。

在留期間の長さが重要になる場合

在留期間の長さが重要になる場合,それは永住許可申請をしようとする場合です。

永住許可を受ける場合に必要な条件の中に,次のようなものがあります。

・入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること

在留期間について,「最長の期間が認められている場合でなければ永住許可をしないよ」ということです。

そして,当面の期間はこの「最長の在留期間」とは「3年」とされています。

「日本人の配偶者等」の在留資格の場合,在留期間については

5年,3年,1年,6か月

のいずれかが付与されることになっています。

そのため,3年の在留期間となるのか,1年の在留期間となるのかという点は,永住許可申請をすることができるかどうかについて非常に大きな差となるのです。

どのようにして在留期間が決まるのか

「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することを証明できたとして,実際の資格付与の際には具体的な在留期間が決定されます。

この「在留期間」の決め方は,個別の在留資格によって異なります。

「日本人の配偶者等」の場合についてみると,在留資格を取得した最初のタイミングだと1年,その後の更新の際に3年,5年と延長が認められる場合が多くあります。

特に,実態を伴った婚姻生活が継続していることが,長期間の在留期間が認められるためには重要になります。「日本人の配偶者等」の在留資格を最初に取得した際の在留期間が1年とされるのも,「これから先きちんと実態のある婚姻生活が継続するかどうか」という点がまだ分からない(結婚してその後の生活が安定するかどうか分からない)という点から,「1年」の在留期間とされるのです。

その後,更新を重ねていく中で「日本での婚姻生活が継続している」と認められれば,3年,5年の在留期間が認められることになります。

逆に,全く別居していて夫婦間での交流がなく経済的にも完全に独立している,といった夫婦の場合だと,「実態を伴った婚姻生活が継続していない」として長期の在留期間が認められない場合もあります。

在留期間の更新の際にも,夫婦関係が継続していることをきちんと疎明しておく必要があるでしょう。

不倫と在留資格

2020-11-11

このページでは,日本で不倫をした外国人の方や,配偶者の外国人の方が不倫したという方に向けて,不倫が在留資格に影響するのかどうか?と解説します。

なお,このページにおいて「不倫」とは,法律上結婚している人が配偶者以外の人と交際したり情交を結ぶ(性交等をする)ことを指すとします。

 

配偶者の在留資格について

日本人の方と結婚した外国人の方は,「日本人の配偶者等」という在留資格を取得することが出来ます。

「日本人の配偶者等」の在留資格は,在留中の活動に制限がなく(違法行為でない限り日本でどんな仕事もできます),結婚が継続している限りは在留期間の更新も認められやすく,とても安定した在留資格です。日本人と結婚した方で,ある程度の期間日本に在留することを希望する場合には,「日本人の配偶者等」へ在留資格を変更することが良いでしょう。

この在留資格は,「日本人と結婚していること」を前提として認める在留資格です。そのため,離婚した場合等,すでに結婚生活を行っていない場合には在留資格を認める前提がなくなってしまいます。結婚生活が行われていない状態が6か月以上継続し,在留資格を変更していないままでいると,在留資格が取り消されてしまうことになります。在留資格が取り消されると,30日間の出国準備期間が設けられ,その間に本邦から出国しなければならなくなります。

 

配偶者の在留資格と不倫 ~外国人の方が不倫してしまった場合~

※この項は外国人の方の方向けの解説です。

不倫をしてしまった場合,在留資格を取り消されてしまうのでしょうか。結論から言うと,すぐに取り消されるわけではありません。

在留資格が取り消されるかどうかは,日本人の方との結婚生活が続いているかどうかによって決まります。

不倫関係が数年に及んでいる場合や,夫婦で別居して家計が別々になっているような場合お互いに離婚に向けた話し合いや調停が進んでいるような場合であれば,結婚生活は既に破綻して修復する可能性もないとして,在留資格が取り消されたり,更新が不許可となる可能性もあります。また,不倫相手との関係を日本で続けるために離婚しないだけ,というような場合も,日本人との蹴痕生活が続いていないと判断される可能性があります。

一方,そうではない場合,例えば,夫婦として同居を続けている場合不倫があったとしても結婚関係を修復していく姿勢である場合には,引き続き在留資格を認められる可能性もあります。

不倫自体は在留資格を取り消す理由にはなりませんが,結婚生活の実態次第では在留資格が取り消される可能性があるということになります。

宗教間や文化によって「結婚」に対する考え方が異なるのは当然ですが,日本で不倫をするということは,それだけのリスクがある行為ということになります。

 

配偶者の在留資格と不倫 ~配偶者である外国人の方が不倫してしまった場合~

※この項は,不倫をしてしまった外国人の方の配偶者の方向けの解説です。

男女問わず,外国人である配偶者の方が不倫してしまった場合,当該外国人の方の在留資格がどうなるのかというのは上記のとおりです。

そして,不倫をされた日本人の方としては,このまま結婚生活を続けるのか,離婚を考えていくのか,が大きな問題になります。これは日本人同士の結婚でも同じかもしれませんが,外国人の方と結婚している場合には,

①相手の在留資格

②慰謝料の請求方法

③子供がいる場合には子供の親権や国籍

の問題があります。

結婚を続ける方向であれば,相手の在留資格の保持や更新申請の許可に向けた準備が必要になります。上記のとおり,不倫があったことのみで在留資格が取り消されたり強制退去になることはありませんが,資格の更新が不許可となったり,更新の期間が短くなったりする可能性があります。

一方,離婚する方向なのであれば,相手が日本から大挙してしまう可能性があるので,②,③についても考えなければなりません。

このページでは①に限って解説をしていますが,②,③についても簡単に触れると,いずれも相手が日本にとどまっているうちに請求や手続をしておく方が良いでしょう。相手が帰国してしまった場合,日本の裁判所で手続きができなくなってしまったり,適法される法律が変わってしまうことがあるためです。

 

まとめ

今回は,不倫の在留資格に対する影響について解説してきました。

既にふれた通り,「結婚」や「不倫」に対する考え方については,個々人の思想や信条によって異なることは確かです。しかし,日本の法律の仕組みというのも,ここでお話しした通りです。

昔日本には,「不倫は文化」という言葉もあったようですが,外国人の方の在留資格の関係で言うと,「不倫はリスク」です。

「日本人の配偶者等」の在留資格はとても安定しており,日本での在留を希望されるのであれば保持しておきたいものです。「日本人の配偶者等」の在留資格についてご不安のある外国人の方,日本人の方は一度ご相談下さい。

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