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外国人による公然わいせつ事案の法律解説

2023-11-15

外国人の方がしてしまった公然わいせつも,日本国内においては日本人と同様に処罰されてしまいます。

特にスポーツの応援などから気分が盛り上がってしまい公共の場で露出をしてしまったという事案や,仕事等のストレスから夜間に路上で露出をしてしまうという事案があります。

日本に在留する外国人の方が公然わいせつをしてしまったという事例を基に,刑事手続やビザへの影響について解説をします。

参考事案 公然わいせつ容疑で男性を逮捕 大分 BS大分放送

公然わいせつ罪についての詳しい解説はこちら

公然わいせつ罪の定義

公然わいせつ罪は、日本の刑法第174条に定められています。この罪は、「公然と」「わいせつな行為」を行うことによって成立します。

「公然」とは、不特定または多数の人が認識しうる状態を指します。この定義には、実際に多数の人に認識されたことは必要なく、認識される可能性がある状況が含まれます。例えば、公園や路上での性器露出などがこれに該当します。周囲に人がいなかったとしても、通行人が通れば認識される可能性があるため、「公然と」に該当します。

「わいせつな行為」とは、性的な行為であり、普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するものを指します。これには、性器の露出や性的な行為が含まれます。行為者自身や他者の性欲を刺激、興奮させる動作がこれに該当します。

公然わいせつ罪は、社会の健全な性風俗を守るための規定と解されており、時代背景や行為の目的など様々な事情を考慮して判断されます。この罪には、6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、または科料が科されることがあります。

外国人による公然わいせつ

公然わいせつ罪の具体的な事例として、外国人による公然わいせつ行為を考えてみましょう。

事例の紹介

(以下の事例はフィクションです)

ある外国籍の男性Aさんが、夜間に酒に酔って全裸で東京都内の路上を走り、警察に逮捕されました。この行為は、公然として周囲の人々に認識され得る状態で行われたため、公然わいせつ罪に該当します。

法的問題点の分析

この事例では、外国人であるがゆえの文化的背景や意図が考慮される可能性があります。

しかし、日本の法律は行為の性質と公共の場での行為の影響を重視します。公然わいせつ罪の判定においては、行為が普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するかどうかが重要な判断基準となります。

この事例においては、文化的な誤解や知識不足により行動した可能性があるため、法的対応においては教育的な側面も考慮されるべきです。また、被告人が再犯を防止するための環境を整えること、例えば専門のカウンセリングを受けることも重要です。

法的な対応と刑罰

このような事例での公然わいせつ罪に対する法的な対応と刑罰について詳しく見ていきましょう。

公然わいせつ罪の法定刑

公然わいせつ罪(刑法第174条)には、以下のような刑罰が定められています。

  • 6ヶ月以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する自由刑)
  • 科料(1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰)

刑事手続とAさんのビザ

逮捕されたAさんはその後,48時間以内に検察庁へ,さらにその後24時間以内に裁判所へ送られ,最大20日間の勾留を受けるかどうかの審判を受けます。

勾留されたとしても,釈放されたとしても,その後の捜査の結果として,罰金刑や懲役刑を受けて,日本での前科がついてしまう可能性があります。

長期間の身体拘束を受けてしまうと,仕事等に行けないだけでなく,出入国管理局での必要な手続きも出来なくなってしまいます。例えばビザの取得,更新,変更等のような窓口での手続きが行えないと,場合によってはオーバーステイとなってしまうことがあります。逮捕や勾留をされている間にオーバーステイとなってしまうと,入管からは強制送還の処分を受けるリスクがあります。

また,罰金や前科がついてしまうことで,その後のビザの更新・変更が不許可となったり,強制送還のリスクが生じてしまいます。

総じて,刑法犯によって逮捕されるということは,外国人の方にとって強制送還リスクを高めるものなのです。

逮捕された直後から弁護士への早急な相談を行いましょう。早期から弁護士が活動することによって

  • 逮捕後の身体解放
  • 勾留期間の短縮
  • 刑事処分の回避

といった,ビザへの影響を最小限にするための弁護活動も行える場合があります。

東京都内で逮捕された外国人の方の面会についてはこちらからもご相談いただけます

強制送還を避けて日本に滞在するためのビザについてはこちらでも解説しています。

外国人の逮捕の問題点

示談と被害者への対応

公然わいせつ罪における示談の重要性と被害者への対応について詳しく見ていきましょう。

示談の重要性

公然わいせつ罪の場合、示談は法的解決に向けて重要なステップとなります。示談は、被害者と加害者双方が合意に達し、被害者が加害者に対する告訴を取り下げることを意味します。示談が成立すると、裁判所はこれを量刑の際に考慮することが一般的です。起訴される前であれば,不起訴の処分を得られる可能性が高まります。

示談は、被害者の精神的な苦痛を和らげ、加害者にとっても刑事責任を軽減する機会を提供します。

示談のプロセス

示談のプロセスには、被害者への謝罪、弁償の提案、合意書面の作成といった準備進みます。

このようなプロセスは、弁護士が代理人として行うのが望ましいです。

被害者への対応

公然わいせつ罪の被害者への対応は、精神的なケアが重要です。被害者は、性的な羞恥心やトラウマを抱えることがあり、適切なサポートと理解が必要です。加害者による誠実な謝罪や弁償は、被害者の心の傷を癒す一歩となり得ます。

示談は、公然わいせつ罪における法的解決の一環として、被害者の感情的な回復と社会的な和解を促進する重要な役割を果たします。このプロセスを通じて、被害者と加害者双方にとって公正で納得のいく解決が図られることが望まれます。

外国人加害者の再犯防止と社会復帰

公然わいせつ罪において外国人加害者の再犯防止と社会復帰の重要性に焦点を当ててみましょう。

外国人加害者に特化した再犯防止措置

外国人加害者の場合、再犯防止措置は文化的背景と言語の違いを考慮する必要があります。異文化間コミュニケーションや文化的適応に関するカウンセリングも重要となります。これらの措置は、加害者が日本の社会規範を理解し、将来的に同様の過ちを犯さないようにするために不可欠です。

外国人加害者の社会復帰支援

外国人加害者の社会復帰支援には、言語教育や職業訓練が含まれます。これらの支援は、加害者が日本社会での生活に適応し、健全な生活を送るための基盤を築くのに役立ちます。また、文化的適応を支援するプログラムも、外国人加害者にとって重要です。

外国人加害者の社会復帰の重要性

外国人加害者の社会復帰は、彼らが日本社会の一員として再び機能する機会を持つことを意味します。これは、文化的な違いを乗り越え、再犯のリスクを減らすために重要です。外国人加害者に対する社会復帰支援は、彼らだけでなく、日本社会全体の安全と健全性を保つためにも重要な役割を果たします。

外国人加害者に対する再犯防止と社会復帰支援は、文化的な違いを理解し、個人の改善と社会の安全を両立させるための重要なステップです。これらの措置を通じて、外国人加害者が日本社会の有益なメンバーとして機能する道を築くことができます。

まとめ

公然わいせつ罪に関わる事案においては、弁護士への早期相談が非常に重要です。

弁護士は、法的な側面からのアドバイスを提供し、加害者や被害者の権利を保護する役割を果たします。

特に外国人が関与する場合、言語の壁や文化的な違いによる誤解を避けるためにも、専門家の介入が不可欠です。早期の法的介入により、適切な法的対応が可能となり、示談の成立や社会復帰の道がスムーズに進むことが期待されます。

外国人による住居侵入罪と日本の刑事手続き

2023-11-11

外国人が日本で住居侵入罪を犯した場合、日本の刑事手続きに従って処理されます。

この記事では、その手続きの流れと、外国人が直面する可能性のある法的な問題について解説します。

1. 住居侵入罪とは

この罪は、他人の居住する場所や他人が管理している建造物等に無断で立ち入る行為を指し、刑法第130条によって禁止されています。

外国人がこの罪を犯した場合、その法的責任は日本国民と同様に問われます。

しかし、文化的背景や法律に対する理解の違いから、外国人が無意識のうちにこの罪を犯してしまうこともあります。

具体的には、「人の住居、法律上その住居に準ずる場所、または人が一時的に居住する場所に、正当な理由なくして侵入した者」を処罰の対象としています。

外国人がこの罪を犯す場合、意図的であれ計画的であれ、法的責任を免れることはできません。

日本においては、文化的な誤解や言葉の壁が原因で、外国人がこの罪を犯す事例が報告されています。

2. 事例

(次の事例はフィクションです)
ある米国籍の男性が、大阪の住宅街で、門が開いている一軒家に入り、庭を散策しました。住民の方が通報したところ警察官がやってきて,現行犯人逮捕されてしまいました。

この行為は、家主の許可なく私有地に侵入したため、住居侵入罪に該当します。

男性は、文化的な誤解により、開いている門は歓迎の意味だと解釈していましたが、日本の法律では、明確な許可なく私有地に足を踏み入れることは禁止されています。

このようには、文化的な違いから意図せず日本の刑法に触れてしまったという事例もあります。

3. 逮捕から起訴まで

外国人が住居侵入罪で逮捕された場合、日本の刑事訴訟法に従って手続きが始まります。逮捕された瞬間から、被疑者は法的な権利を有し、弁護士との相談を求めることができます。

警察は最長で48時間の逮捕後、検察官・裁判所の判断により最大23日間の勾留がなされます。

この期間中に、警察と検察官は事件の事実関係を調査し、起訴するかどうかの決定を行います。

勾留の期間中,外部との連絡が禁止される場合もあり,職場や家族への連絡も途絶えてしまう可能性があります。

外国人であることが、起訴の決定に直接的な影響を与えることはありませんが、言語の壁や文化的な誤解が適切な法的支援を受ける上で障壁となることがあります。

4. 裁判手続き

起訴された後、外国人被告人は日本の裁判所で審理を受けます。裁判の過程では、検察官が提出する証拠と、弁護側の反論が交わされます。

また、通訳の手配が必要な場合、国はこれを提供する義務があります。

住居侵入で起訴されてしまった場合,判決の内容は懲役刑も罰金刑もいずれもあり得ます。

ただ間違えて立ち入ってしまった,という程度であれば罰金刑で終わることもありますが,窃盗やわいせつ行為等の別の犯罪にあたる行為を目的としていた場合には執行猶予付きの懲役刑が言い渡されることも考えられます。

5. 在留資格と刑事手続き

住居侵入罪による有罪判決は、外国人の在留資格に深刻な影響を及ぼす可能性があります。日本の入国管理法は、犯罪行為を理由に強制送還処分することができると規定しています。

つまり,合法的なビザを持っていたとしても,有罪判決を受ければ強制送還になってしまうリスクがあるのです。

住居侵入罪の場合,現在の在留資格の内容によっては,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても強制送還の対象になります。

退去強制に関する手続きについて出入国管理局の解説はこちら

そのため,逮捕された直後から起訴されないための弁護活動が非常に重要になるのです。

その他の事件について刑事事件と在留資格について解説したものはこちらになります。

強制送還の法的手続きと対策 就労ビザと窃盗

6. まとめ

逮捕された瞬間から、外国人の被疑者・被告人の在留資格は危機に瀕します。
このような状況では、直ちに法的支援を求めることが、ビザを守る上で極めて重要です。
弁護士へ相談することで、逮捕後の初期段階での適切なアドバイスが受けられるとともに,在留資格の保持に向けた活動に着手することもできます。
日本の法律下では、犯罪行為によって在留資格が取り消される可能性があり、これは強制退去につながることもあります。
しかし、適切な法的対応が速やかに行われれば、在留資格の失効を回避し、最終的には強制退去を避けることが可能になる場合があります。

逮捕された直後から、弁護士との相談を行うことは、在留資格を守る上で不可欠です。
外国人が日本で法的な問題に直面した際には、迅速な法的支援がその人の将来に大きな影響を及ぼすことを理解していただけたと思います。
日本での生活を続けるためには、日本の法律を尊重し、必要な場合には適切な法的手続きを踏むことが重要です。

傷害,器物損壊罪で強制送還になるのか?在留資格への影響はどうなるのか

2023-11-08

報道によると,外国人の男性がタクシー運転手に対する傷害罪で逮捕され,さらに余罪として器物損壊が疑われていると報じられました。

2023年10月25日付 FNNプライムオンライン

この方のように,傷害罪や器物損壊罪について検挙された場合,ビザにはどのような影響があるのでしょうか。

退去強制とは

日本に正規で在留している外国人の方は,どなたも何かしらの在留資格をもって在留しています。

正規の資格をもっていたとしても日本で何かしらの法令の違反や,入管の手続の違反があった場合には,強制送還の対象となってしまう場合があります。

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

報道では,当該外国人の方の在留資格までは分からないのですが,仮に永住者,日本人の配偶者等,定住者といった,いわゆる別表2の在留資格の場合には,直ちに強制送還の対象となるものではありません。

一方,留学や就労系の在留資格,家族滞在のように,別表1の資格の場合,逮捕・起訴されて有罪の判決を受けて執行猶予となってしまうと強制送還の対象となってしまいます。

在留資格の種類によって,強制送還の対象となるかどうかが変わってくるような事案です。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

報道の事例では,在留資格の種類によっては強制送還の対象となり得るものです。また,逮捕されてしまうとそれ自体によって資格の変更や在留期間の更新といった各種手続きが滞ってしまい,オーバーステイとなってしまう可能性もあります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には,刑事事件の中で不起訴を目指すという活動と,その間に在留資格が失われてしまうことがないようにするための活動,刑事事件後に退去強制手続きが掛かってしまうとしても在留特別許可を目指すための活動が重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

強制送還の法的手続きと対策 就労ビザと窃盗

2023-11-01

強制送還という言葉を聞いて、不安を感じる方は少なくないでしょう。
特に、日本で生活している外国人にとって、この手続きは命運を左右する可能性があります。
本記事では、強制送還手続きがどのようなものなのか、その法的背景と具体的な事例を通じて解説します。
「介護」の在留資格を持つAさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合、どのような法的手続きが待ち受けているのか、その詳細についても触れます。
この記事を通じて、強制送還手続きについての理解を深め、必要な対策を考える一助としていただければ幸いです。

事例紹介: 介護の在留資格を持つAさんが窃盗を犯した場合

Aさんは、日本で介護の在留資格を持っています。
しかし、ある日、スーパーマーケットで食料品を盗んでしまいました。
スーパーマーケットの防犯カメラによって、Aさんの行動は記録されており、その後、警察に逮捕されました。
この事件によって、Aさんは窃盗罪で起訴され、裁判で執行猶予付きの有罪判決を受けてしまいました。
結果として、Aさんは強制送還の対象となり、その在留資格も危うくなってしまいます。

法律解説

強制送還手続きは、正式には「退去強制」と呼ばれます。
この手続きは、主に4つの段階で進められます。

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴など)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

Aさんの場合、窃盗罪で執行猶予付きの有罪判決を受けたため、強制送還の対象となりました。

Aさんの「介護」のように、就労系の在留資格の場合、執行猶予付きの判決であっても有罪となってしまうと強制送還のリスクが生じてしまうのです。

入国管理局がこの事実を知ると、調査が始まります。
調査の結果は、入国審査官に引き継がれ、「強制送還をすることが適法かどうか」の審査が行われます。
審査の結果に不服がある場合、異議を申し出て口頭審理、法務大臣の裁決へと進む手続きがあります。

Aさんが今後も日本に在留し続けたいと望む場合には,在留特別許可を得なければならないのです。

弁護士に相談することのメリット

強制送還の手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。
そのため、弁護士に相談することで、適切なアドバイスや対策が得られます。
異議申し立てや口頭審理などの法的手続きにおいて、弁護士のサポートは非常に有用です。
弁護士は入管法だけでなく、刑事事件にも精通している場合が多く、Aさんのような犯罪歴がある場合でも、最良の対策を提案してくれます。
さらに、弁護士に相談することで、精神的な安堵感も得られるでしょう。

特に、今回のAさんのように「裁判を受けた場合に強制送還になるリスクが高い人」の場合、逮捕された直後からビザについても専門性のある弁護士に相談しておく必要性が高いのです。

今回の事例の場合

Aさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合、強制送還の手続きが始まってしまいます。
まず、入国管理局がこの事実を知り、入国警備員による調査が行われます。
その後、入国審査官による審査があり、強制送還が決定される可能性があります。
このような状況で重要なのは、早期に弁護士に相談することです。
弁護士は、Aさんがどのような法的手続きを進め、どう対策を取るべきか具体的なアドバイスを提供できます。
特に、異議申し立てや口頭審理の手続きは、弁護士のサポートが不可欠です。

ポイントとなるのは

  • 逮捕された直後から専門の弁護士に相談すること
  • 裁判になる前に事件を終結させること
  • 入管の手続きの経験のある弁護士に相談すること

です。

まとめ

この記事では、強制送還手続きとその法的背景について解説しました。
特に、介護の在留資格を持つAさんが窃盗罪で有罪判決を受けた場合の事例を通じて、手続きの具体的な流れと対策について説明しました。
強制送還の手続きは複雑であり、専門的な知識と対策が必要です。
そのため、早期の弁護士相談が非常に重要であることを強調しました。
法的な問題に直面した場合、適切なアドバイスとサポートが得られるよう、専門家の協力を得ることが肝心です。

強制送還の危機!知っておくべき手続きと弁護士への相談方法

2023-10-31

強制送還とは、日本に滞在する外国人が一定の違法行為をした場合、日本から強制的に送り返される手続きです。

この記事は、強制送還の危機に直面している外国人、特に留学生や労働者、その家族や関係者に向けて書かれています。

強制送還は、留学や仕事、家庭生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、手続きの流れを理解し、適切な対応を取ることが非常に重要です。 この記事では、実際の事例を交えながら、強制送還手続きの詳細、弁護士に相談するメリットについて解説します。

事例

(事例はフィクションです)

Aさんは、日本の大学に留学中の20歳の男性です。

東京都内の電車で、Aさんは痴漢行為をしてしまいました。 この行為が目撃され、駅で警察によって現行犯逮捕されました。

Aさんが痴漢行為をした理由は、ストレスと好奇心からでした。逮捕後、警察の取り調べを受け、結果として罰金刑が科されました。

この事件により、Aさんは強制送還の対象となるのではないかと不安になりました。 留学生である彼にとって、この結果は日本での学業と将来に重大な影響を与えるものでした。 

この事例から、どんなに些細な違法行為でも、それが強制送還につながる可能性があることを理解することが重要です。 特に、留学生や労働者といった在留資格を持つ外国人は、一度強制送還の対象となると、その後の日本での生活が非常に困難になります。

強制送還手続きの全体像

強制送還手続きは、正式には「退去強制」と呼ばれ、以下の4つの主要な段階があります。

  1. 理由となる事実の発生: これにはオーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが含まれます。
  2. 入国警備員による調査: 理由となる事実が発生した場合、入国管理局が調査を実施します。
  3. 入国審査官による審査: 調査の結果を基に、強制送還が適法かどうかの審査が行われます。
  4. 法務大臣による裁決: 審査結果に不服がある場合、口頭審理と法務大臣の裁決が行われます。

強制送還の理由になる事実は、一定の入管法違反や刑事事件で有罪判決を受けた場合などがあります。 特に、犯罪で有罪判決を受けた場合、その内容によっては強制送還される可能性が高くなります。

入国警備員による調査では、具体的な違反事実とその証拠が確認されます。 この段階で事実を争う場合、証拠を提出する必要があります。

入国審査官による審査は、調査結果を基に行われ、審査が不服であれば口頭審理が続きます。 最終的には法務大臣の裁決によって、強制送還をするか、在留特別許可をするかが決定されます。

この手続きは複雑であり、専門的な知識が必要です。 そのため、弁護士のアドバイスが非常に重要となります。

弁護士に相談することのメリット

強制送還手続きは非常に複雑で、専門的な知識が必要です。 そのため、弁護士に相談することには以下のようなメリットがあります。

  1. 専門的なアドバイス: 弁護士は入管法や刑法に精通しているため、具体的なケースに最適なアドバイスを提供できます。
  2. 手続きのサポート: 強制送還手続きには多くの書類や手続きが必要です。弁護士はこれらのプロセスをスムーズに進めることができます。
  3. 口頭審理での代理: 弁護士は口頭審理での代理人としても活動でき、より有利な状況を作ることが可能です。
  4. 在留特別許可の申請: 強制送還が確定した場合でも、在留特別許可の申請が可能です。弁護士はこの申請に必要な書類の作成や手続きをサポートします。
  5. 心のサポート: 強制送還手続きは精神的にも大きな負担となります。弁護士はそのような時に心のサポートも提供してくれます。

弁護士に相談することで、強制送還手続きをよりスムーズに、そして確実に進めることができます。 特に、強制送還が確定すると日本での生活が非常に困難になるため、早めの相談が推奨されます。

Aさんの事例の場合,「痴漢行為をしてしまった」ということですので,各都道府県に定められている迷惑行為防止条例違反か,不同意わいせつ罪(刑法176条)として処分を受ける可能性が高くあります。このケースで強制送還となるリスクが生じるのは

  • 1年を超える実刑判決を受けてしまった場合
  • 実刑判決にならなかったとしても,その後のビザの更新や変更が認められず不法滞在(オーバーステイ)となってしまった場合

になります。

Aさんのように痴漢で逮捕されてしまったという場合,まずは1年を超える実刑になってしまうリスクに対応しなければなりません。

罰金刑に処せられた場合,その後のビザの更新,変更の手続きにおいて,申請が許可されないという可能性も十分にあり得ます。そのため,刑事事件においても出来る限り軽微な処分を得ることが非常に重要です。

まとめ

この記事では、強制送還手続きとその法的側面について詳しく解説しました。 特に、留学生のAさんが痴漢で逮捕された事例を通じて、強制送還のリスクとその手続きについて具体的に説明しました。

また、強制送還手続きが進む各段階、入国警備員による調査から法務大臣による最終裁決までのプロセスを解説しました。 このような複雑な手続きを理解し、適切に対応するためには、専門的な知識と経験が必要です。

弁護士は法的問題を解決するための重要なパートナーです。早めの相談と適切な対応が、強制送還という厳しい結果を回避、またはその影響を最小限に抑える鍵となります。

強制送還は、その対象となる外国人にとって、人生に大きな影響を与える可能性があります。ですから、この記事が強制送還手続きについての理解を深める一助となれば幸いです。

在留期間更新とその特例,期限を過ぎてしまったらどうなるのか

2023-10-27

在留期間と出国準備のための特定活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

在留カードを所持して日本で暮らしている外国人が、在留カードに記載されている在留期間の満了後も引き続き日本で暮らしていきたい場合は、在留期間の満了前に在留更新・在留変更等の在留申請手続きを行い、入国管理局の許可を得ることが必要です。
(入管法第20条第3項、入管法第20条第2項、入管法施行規則第21条)

では、在留期限の前に在留申請した場合で申請人の在留期限が経過した後に、入管が処分の通知を出した場合はどうなるのでしょうか?
この場合、在留期間がすでに超過しているとして超過滞在(オーバーステイ)となるのでしょうか?

たとえ在留申請を在留期限前に行ったとしても、在留期限ギリギリに更新申請をした場合やお盆や正月後等、入管が込み合っているときに在留申請した場合は、入管の処分(申請結果)が申請人の在留期間経過後に出されることは十分に想定されます。
通常は在留期限が1日でも経過していたら本来超過滞在(オーバーステイ)ですが、上記のような場合に超過滞在を避けるため、入管側の対応として以下のように法で規定されています。
(入管法20条6項)第二項の規定による申請があった場合(三十日以下の在留期間を決定されている者から申請があった場合を除く。)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がなされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き当該在留資格をもって本邦に在留することができる。

少しわかりにくい条文ですが、在留カードを所持している方が,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請(以下「在留期間更新許可申請等」という。)を行った場合において,当該申請に係る処分が在留期間の満了の日までになされないときは,当該処分がされる時又は在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は,引き続き従前の在留資格をもって我が国に在留できます、ということです。

例えば在留期限が4月30日の在留期限の方が、在留更新申請を4月15日に行い、審査結果が5月15日に出た場合は、処分がなされた5月15日までは従前の在留資格で適法に滞在できるので超過滞在にはなりません。仮に処分(結果)がでない場合でも6月30日までは適法に滞在できます。

時系列に直すと次のような形です。

  • 4月15日 在留期間の更新申請
  • 4月30日 本来の在留期限
  • (5月1日)本来はこの日から不法滞在(オーバーステイ)
  • 5月15日 在留期間の更新許可(4月30日から5月15日までの間はオーバーステイにはならない)
  • (6月30日 更新の結果が出ていなくても,この日まではオーバーステイにならない)

ただし、申請してから2月近く経過しても処分(結果)が通知されないのは明らかにおかしいので、速やかに入管に問い合わせをしましょう。
申請から2か月以内に入管から許可通知が届いたが、指定された期限までに入管に出頭せずに、在留期限から2か月が経過した場合はどうなるかについてですが、
この場合は、在留期限を経過したものとして超過滞在(オーバーステイ)となります。
超過滞在にならないよう在留期限にはくれぐれも注意しましょう。

2023年永住者ガイドラインの解説

2023-10-24

在留資格「永住者」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

永住許可は、在留資格を有する外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合、法務大臣が与える許可であり、在留資格変更許可の一種です。

永住許可を受けた外国人は、「永住者」の在留資格により我が国に在留することになります。

「永住者」の在留資格は、在留活動、在留期間のいずれにおいても制限されないという点で、他の在留資格と比べて大幅に在留管理が緩和されることになります。

そのため、永住許可については、通常の在留資格の変更よりも慎重に審査する必要があるので、一般の在留資格の変更許可手続とは独立した規定が特に設けられています。

永住許可に関するガイドライン(令和5年4月21日改定)には、以下の要件が記載されています。

・法律上の要件
(1)素行が善良であること

法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。

(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。

(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。

ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、(1)及び(2)に適合することを要しない。また、難民の認定を受けている者の場合には、(2)に適合することを要しない。

上記のように、いずれの要件も抽象的な概念が用いられていることから、永住許可については個別具体的に判断されることになります。

そのため、永住許可申請をする外国人にとって、どのようなことがあれば要件を満たすのかが分かりにくいことが多いと思いますので、「永住者」の在留資格を取得したい方はお気軽にお問い合わせください。

「外交」在留資格の全て:活動範囲から注意点まで

2023-10-22

在留資格「外交」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

「外交」の在留資格とは

この「外交」の在留資格で本邦において行うことができる活動としては、日本国政府が接受する外国政府の外交使節団若しくは領事機関の構成員,条約若しくは国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動などです。

上記の「接受」とは受け入れるという意味ですが、外交使節団の長の場合は事前の同意が与えらます。

外交使節団の長とは大使、公使及び代理公使を意味し、外交使節団の構成員とは外交使節団の長及び外交使節団の職員を意味します。

上記の「外交使節団の構成員」とは、外交使節団の長及び外交官の身分を有する者、外交職員、その他事務及び技術職員並びに役務職員を意味します。

また、「領事機関の構成員」とは、領事機関の長及び職員、領事官、その他事務及び技術職員並びに役務職員を意味します。

この「外交」の在留資格の該当例は、外国政府の大使,公使,総領事,代表団構成員等及びその家族などです。

「外交」の在留期間は、外交活動の期間です。

「外交」ビザのポイント

「外交」の在留資格のポイントを以下にてご紹介します。

①「外交」の在留資格を保有する外国人は、その外国人の家族も「外交」の在留資格を保有することになります。

そのため、外国人の家族が仕事をしたいという場合は、別途、「資格外活動許可」の申請をする必要があります。

この資格外活動許可の申請をしないで就労してしまうと、「外交」の在留資格が取り消される可能性もありますのでご注意ください。

②外交としての活動が終了した後に、引き続き日本に在住したいという場合、他の在留資格へ変更しなければ、そのまま滞在することはできませんのでご注意ください。

③仮に、「外交」の在留資格を保有する外国人が扶養者である場合、当該扶養者が日本国外に転勤となり、家族は引き続き日本に在住したいという場合、「外交」の在留資格のままでは日本での滞在は認められません。

この場合、扶養者と帯同するか、日本で他の在留資格への変更申請が必要となります。

④「外交」の在留資格の対象となる子どもについては、実子ではなくても長期間共に生活していた内縁の子や甥や姪であっても認められることがあります。

ただし、子どもの年齢は22歳以下が対象となり、それ以上の年齢の子は原則として許可されませんのでご注意ください。

⑤この「外交」の在留資格は他の在留資格のように申請者が入国管理局で手続きを行うのではなく、法務省を通じて入国管理局へ申請することになりますのでご注意ください。

「外交」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

「公用」在留資格の全解説:誰が該当するのか

2023-10-20

在留資格「公用」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

この「公用」の在留資格に該当する活動としては、日本国政府の承認した外国政府若しくは国際機関の公務に従事する者又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動をいい、具体的には以下のような場合が該当します。

①日本国政府が承認した外国政府の外交使節団の事務及び技術職員並びに役務職員

この「事務及び技術職員」とは、使節団の事務的業務又は技術的業務のために雇用されているもので、電信・通訳・会計・文書・庶務などの業務に従事する者を意味します。

また「役務職員」とは、使節団の役務のために雇用されているもので、守衛・運転手・調理・清掃などの業務に従事する者を意味します。

さらに、本国政府から派遣された者ではない外交使節団の構成員も該当します。

②日本国政府が承認した領事機関の事務及び技術職員並びに役務職員

③日本に本部の置かれている国際機関の職員

この「国際機関」とは、国連及その専門機関並びに日本の加盟している国際条約に基づく機構の執行機関を意味します。

④日本国政府が承認した外国政府又は国際機関の日本にある出先機関に公の用務のため駐在する当該外国政府又は当該国際機関の職員(上記①~③までに該当する者を除く。)

たとえば、外国の大使館等に付属する文化センターに派遣される職員や学校に派遣される教職員などの外国政府又は国際機関の公務のために駐在する者を意味します。

⑤本国政府との公の用務のため日本国政府が承認した外国政府又は国際機関から派遣される者(上記①~④までに該当する者を除く。)

たとえば、外国政府の公務員や国際機関の職員の出張者などを意味します。

⑥日本国政府又は日本国政府が承認した国際機関が主催する会議等に参加する者
(外交の在留資格に該当する者及び上記①~⑤までに該当する者を除く。)

⑦上記①~⑥に該当する者と同一の世帯に属する家族の構成員

「公用」の在留期間は、5年、3年、1年、3月、30日又は15日です。

1.「日本国政府の承認した外国政府」について

この要件については、外交政府であっても日本国が承認したものに限定する趣旨です。

したがって、未承認国や未承認の政府の用務で入国する外国人は、この「公用」の在留資格に該当しません。

2.「公務」について

この要件については、外国政府又は国際機関にとっての用務のことを意味するのであり、日本政府にとっての用務である必要はありません。

どのようなものが公務に該当するか否かについては、外国政府の発給する旅券の種類や当該外国政府の職員の一方的な意思によって決定されるものではなく、社会通念上「公の職務」に属するものと認められるものでなければなりません。

「公用」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

強制送還の危機!家族滞在のAさんの事例から学ぶ、法と対策

2023-10-13

1. 導入文

強制送還とは、日本に滞在する外国人が特定の理由で日本から送り返される手続きです。 この記事は、特に強制送還の危機に瀕している外国人、特に留学生を対象としています。 留学生Aさんの事例を通じて、強制送還の手続きとその回避方法について詳しく解説します。

2. 事例紹介: 家族滞在ビザAさんの住居侵入事件

Aさんは、日本にいる両親に帯同している外国人学生です。 2022年の夏、Aさんは友人と遊びに行く途中、お酒に酔っぱらってしまい,間違えて他人の家に入ってしまいました。

Aさんは友人Bさんの家に遊びに行く予定で、Bさんの家と非常に似た外観の家に誤って入ってしまったのです。被害者がすぐに異変に気付いて警察へ通報し, Aさんはその場で逮捕され、後に「住居侵入」で起訴されました。 裁判の結果、Aさんは有罪とされ、執行猶予判決が言い渡されました。

この事件により、Aさんは強制送還の対象となるのではないかと怖くなってしまいました。 特に、Aさんは「家族滞在」という在留資格で日本に滞在していたため、このような刑事事件によってその在留資格が危うくなる可能性があります。

3. 法律解説: 強制送還の手続き

強制送還、正式には「退去強制」とは、日本から外国人を送り返す手続きのことです。 この手続きは主に以下の4つの段階を踏んで進められます。

  1. 理由となる事実の発生: 例えば、オーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが該当します。
  2. 入国警備官による調査: 理由となる事実が発生した場合、入国管理局がその事実を知ると調査が開始されます。
  3. 入国審査官による審査: 調査の結果は全て、入国審査官へ引き継がれ、「強制送還をすることが適法かどうか」の審査が行われます。
  4. 法務大臣による裁決: 審査の結果に不服がある場合、異議を申し出て口頭審理、そして法務大臣の裁決へと手続きが進む。

審査の結果を踏まえて、強制送還が最終的に決定されることになります。 特に、刑事事件を起こしてしまった場合、その後の手続きが非常に厳しくなる可能性があります。

Aさんの事例の場合,有罪の判決が確定することで,入国警備官が調査を開始することになります。

4. 法律解説: 強制送還の理由になる

強制送還の理由となる事実は多岐にわたりますが、以下に主要なものを詳しく解説します。

一定の入管法によって処罰された場合

オーバーステイや不法就労は、入管法によって厳しく規制されています。 例えば、ビザの期限が切れた状態で日本に滞在すると、強制送還の対象となります。

 一定の旅券法に違反して懲役、禁錮刑に処せられた場合

資格外活動であっても、罰金だけでなく懲役や禁錮刑に処せられる場合があります。 このような状況では、強制送還が適用される可能性が高くなります。

 薬物関連の犯罪で有罪判決を受けた場合

麻薬取締法、覚醒剤取締法、大麻取締法など、薬物に関する犯罪は特に厳しく扱われます。 有罪判決が確定すると、仮に初犯であっても多くの事例で強制送還の対象となります。

 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合

住居侵入罪や傷害罪、窃盗罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となります。 特に、執行猶予がついていても、裁判が確定すると強制送還が適用される場合があります。

 1年を超える実刑判決を受けた場合

どのような犯罪であっても、1年以上の実刑判決を受けると、強制送還の対象となります。 この場合、犯罪の種類に関わらず、強制送還が適用される可能性が非常に高くなります。

Aさんの事例の場合,「住居侵入」によって執行猶予付きの判決となってしまった場合,「 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合」に該当するため,入国警備官による調査が始まります

強制送還を回避するためにどうしたらよいか分からない/日本に残る可能性を高めたい,という場合には,早急に弁護士に相談しましょう。

5. 弁護士に相談することのメリット

弁護士に相談することで得られるメリットは多く、特に強制送還のような複雑な法的問題においてはその価値は計り知れません。

 専門的なアドバイス

弁護士は法律の専門家であり、あなたの状況に最も適したアドバイスを提供できます。入管関連の事件を取り扱う弁護士の数も多くなく,また,「日本」という外国の地で法的な課題を乗り越えるのは非常に困難です。専門的な知識を基に,きちんと現状を整理して,適切な対応を心がけましょう。

 法的手続きのサポート

強制送還の手続きは複雑であり、一人で行うにはリスクが高いです。 弁護士がサポートすることで、手続きがスムーズに進む可能性が高くなります。

 精神的な安堵

法的問題はストレスが伴うものですが、専門家がサポートしてくれることで精神的な安堵を感じることができます。

 時間の節約

法的手続きは時間がかかるものですが、弁護士が適切なアドバイスとサポートを提供することで、時間を節約することができます。

 費用対効果

弁護士費用はかかりますが、その費用がもたらす効果は大きい場合が多いです。 特に、強制送還を回避することができれば、その価値は計り知れません。

6. まとめ

本記事では、強制送還手続きについて詳しく解説しました。

強制送還は複雑な手続きであり、一人で対処するには多くのリスクが伴います。

そのため、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが、最も安全かつ確実な方法であると言えます。

 何か疑問点や不明点があれば、専門の弁護士に相談することを強くお勧めします。

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