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脅迫で逮捕されたらどうなるのか,強制送還される可能性はあるのか

2024-03-06

(事例はフィクションです)

Aさん(外国籍,日本人の配偶者等・3年)はある時,日本に在留している外国人コミュニティー内でお金の貸し借りからトラブルになってしまいました。
Aさんは知人に,お金を返してもらおうと思ってつい強い口調になってしまい,これに怯えた被害者の方が警察に相談したところ,Aさんは脅迫の犯人として原宿警察署で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は,これからどうなるのか不安に思い刑事事件に強い弁護士事務所に相談することにしました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕された方の下へ弁護士を派遣する初回接見サービスを行っています。
弊所の東京支部から原宿警察署までの初回接見費用は3万5530円(接見日当3万3000円,交通費2530円)です。
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脅迫罪による逮捕

脅迫罪は刑法222条1項に定められている犯罪です。

脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。

人を「脅迫した」場合に成立する犯罪です。Aさんのように「お金を貸した/返済してほしい」という立場であっても,言動があまりに強すぎた場合,脅迫に該当する可能性があります。
上記の事例のように,知人同士での間柄の事件の場合,事件の蒸し返しや不当な働きかけをすることを疑われるため,逮捕されてしまうという事例が多くあります。

また,事件を起こしてしまったことを争わなかった場合,被害者と示談ができなければ起訴されてしまい,有罪の判決を受けてしまいます。
脅迫罪で起訴されてしまった場合,前科がなかったとしても懲役刑が科されてしまう可能性もあります。懲役刑が科されると,外国籍の方の場合,在留資格に大きな影響があります。
在留資格への不利益を一番に避けるためには,起訴されないための弁護活動,すなわち被害者との示談交渉が重要です。
不起訴処分となれば,脅迫罪の場合,直ちに強制送還となる可能性を最小限まで引き下げることができます。

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退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例の場合,日本人の配偶者のビザであり,かつ,脅迫罪による懲役刑ということであれば直ちに強制送還とまでなる可能性は高くありません。
Aさんの立場でいうと,「1年を超える懲役刑」を科された場合に,強制送還となります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「1年を超える懲役刑」となった場合には強制送還になってしまう可能性が高くありますが,Aさんの事情を考慮すると,在留特別許可をもらえる可能性もあります。
また,すぐに強制送還にならないとしても,次回の在留期間の更新の際に不利な事情となってしまいます。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事の手続の中で早急に示談をして不起訴処分を獲得することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

酔っぱらって警察官を殴ってしまった?!公務執行妨害罪をすると技術,人文知識,国際業務のビザはどうなるのか

2024-02-28

(事例はフィクションです)

外国籍のAさん(技術・人文知識・国際業務ビザ)は,会社の飲み会の帰り道で職務質問を受けました。

Aさんは何も違法なことはしていませんでしたが,楽しい飲み会の帰り道で職務質問をされたことで気分が悪くなり,警察官と喧嘩になってしまいました。

そして,つい気が大きくなってしまったAさんは,警察官の胸を手で強く付き,頭を叩いてしまいました。Aさんは公務執行妨害の現行犯として逮捕されてしまいました。

Aさんの逮捕の連絡を受けた同僚のBさんは,Aさんがどうなってしまうのか心配になり弁護士に相談することにしました。

公務執行妨害罪

公務執行妨害罪とは,公務員に対して直接/間接的な有形力を行使したり,脅迫したりすることで成立する犯罪です。

平たく言うと,公務員に対する暴力や脅しが公務執行妨害罪に当たります。Aさんのように,身体を押す,叩くという行為であっても,十分に公務執行妨害罪になります。

過去の判例では,公務員に向かって1回石を投げたけれども命中しなかった,という事案について公務執行妨害罪が成立するとされた事例があります(昭和33年9月30日最高裁判所判決)。

公務執行妨害罪については3年以下または50万円以下の罰金が定められています。

逮捕された後の対応

Aさんのように,公務執行妨害罪で逮捕されてしまった外国人の方には以下のようなリスクが生じるため,早期の対応が必要です。

在留期間がきれてオーバーステイになる:

逮捕されてしまうと,外部との連絡が一切できなくなってしまいます。
そのため,在留期間の更新間際のタイミングだった場合には更新手続きが十分に行えない可能性があります。逮捕されていても,法律上,ビザの手続きをすることは可能ですが,書類の準備等できることは大幅に制限されてしまうでしょう。

在留期間の更新,ビザの変更が不許可になる:

逮捕されてその後の刑罰が科されてしまった場合,前科がついてしまいます。罰金刑だけであっても,また,外国人の方であっても,日本での前科がついてしまいます。
そうなると,仮に在留期間の更新や他のビザへの変更を申請したとしても,「素行が不良である」という理由で許可されない可能性があります。

強制送還される:

Aさんの場合,公務執行妨害罪によって1年を超える実刑判決を受けてしまった場合,強制送還の対象になってしまいます。
また,仮に実刑判決を受けなかったとしても,更新が認められなかったり別の在留資格への変更が認められなかったりして,結局オーバーステイとなってしまったり,帰国を余儀なくされてしまう場合があります。
強制送還手続きについてはこちらでも解説しています

刑事事件における対応は

公務執行妨害罪で外国人の方が逮捕されてしまった場合,早急に必要なのは身柄解放活動処分軽減のための弁護活動です。

公務執行妨害罪によって逮捕されてしまった場合,逮捕から48時間以内に検察庁に送られ,また72時間以内に裁判所に送られます。
これは,逮捕に続く,10日間,最長20日間続く勾留という手続きに関するものです。この「勾留」がついてしまうのか,それとも釈放されるのかによって,その後のビザを守るための活動に大きな違いが出てきます。
逮捕直後に周りの方の協力を得て,釈放のための弁護活動を行うことによって,早期の身体解放が認められる場合があります。

また,処分軽減のための取調べ対応や示談交渉も重要です。
特に,公務執行妨害事件の場合,被害者が警察官や市役所の職員等,公務員になります。国家,地方を問わず,公務員という職業の性質上,示談交渉は通常の事件と比べると難航する場合がほとんどです。場合によっては示談のための連絡を一切断られてしまうこともあります。
示談交渉をうまく進めることができれば,前科が付かず事件を解決できる可能性が上がり,前科が付かなければ在留資格への影響は最小限度にとどめることもできるのです。

日本に在留している外国人の方が刑事事件によって逮捕されてしまった場合,日本人の事件の場合と比べてより対処すべき問題が多く山積しています。

外国人の方が逮捕されてしまった事件でお困りの方は,刑事事件と入管事件の両方に経験のある,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

逮捕された方の下へ弁護士を派遣する,初回接見サービスも行っています。

こちらからもお問い合わせいただけます。

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「経営・管理」ビザの人が傷害事件を起こすと更新ができなくなる?

2024-02-14

「経営・管理」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日お店で飲酒をした後、繁華街で通行人とトラブルとなりました。
お酒を飲んで酔っていたAさんは、つい手が出てしまい、通行人に対して数発殴る暴行を加えてしまい、通行人に全治3週間のけがを負わせて
しまいました。

このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

傷害罪の刑事罰

Aさんは、暴行を加え、人に対してけがをさせてしまいました。
このような場合には刑法第204条の傷害罪が成立します。なお、暴行を加えたものの、被害者がけがをしなかったような場合が暴行罪となります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
ただ、「けが」といってもその程度は様々です。
暴行を加え、結果として人を死亡させてしまったような場合には傷害致死罪というより重い罪が成立しますが、死亡するに至らない場合は傷害罪となります。
そのため、意識が戻らず、植物人間のような状態であったとしても傷害の罪に問われます。
反対にかすり傷くらいの極めて軽微なけがであったとしても、けがはけがですので傷害罪となります。
そのため、傷害事件を起こしてどのような刑事罰を受けるかは、被害者に生じたけがの重さが大きな考慮要素となります。
おおよその目安ですが、被害者が骨折以上のけがをしたような場合には、正式な裁判となり、懲役刑となる可能性が出てきます。
診断書上1ヶ月以内のけがであれば、罰金刑で済むということも十分考えられます。
今回のAさんの場合は、全治3週間のけがということですので、Aさんが初犯であれば罰金刑となるものと思われます。

「経営・管理」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
まず、「経営・管理」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
「経営・管理」の在留資格についてはこちらでも解説をしています。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね事業所が存在することや資本金等の額についての定めが記載されています。ですので、仮に傷害罪によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。

今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。
そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。

それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。この4号リで問題とされるのは、仮に禁錮であっても実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。傷害罪で実刑の判決となるのは余程被害が大きい(被害者が植物人間となるなど)場合がほとんどですので、今回はこれには該当しません。

次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。
24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。Aさんが問われる「傷害罪」は、刑法の第27章「傷害の罪」の中に含まれています。
そのため、Aさんが傷害罪で懲役刑を受けた場合、たとえ執行猶予がついた判決であったとしても退去強制事由となってしまいます。
この点、初犯であり、全治3週間程度であれば懲役刑が選択されることは多くないと思われますので、ひとまずこの点もクリアできると思われます。

最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、窓外は明示的に挙げられていません。ただ、交通事故のような過失により人にけがをさせた事案と比べて、傷害罪は故意にけがをさせる罪ですから、より慎重な判断がなされると思われます。

そのため、傷害罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高まる一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。だからといってこの事件のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

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示談交渉

さて、先述の通り、傷害罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、傷害保険などの保険に加入していたとしても、被害者からお許しを得るような示談交渉は通常行われません。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。傷害事件の場合には、警察も
被害者の名前や連絡先を開示してくれないことがほとんどですし、仮に知ることができたとしても、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で傷害事件を起こしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。

交通事故を起こした後の在留期間の延長は認められるのか,「技術・人文知識・国際業務」ビザについて解説

2024-01-31

(事例はフィクションです)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により事故の対応が行われました。

このとき

  • Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
  • 刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

過失運転致傷の刑事罰

Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合には、より重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度②事故を起こした側の過失の程度③被害者の側の過失の程度④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。
①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。
Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。
反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用、労働条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。

ですので、仮に過失運転致傷によって処罰されたからといって上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。

別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。

この4号リで問題とされるのは、仮に禁錮であっても実刑となった者、つまり執行猶予付きの判決を受けた場合は除かれています。過失運転致傷罪で実刑の判決となるのは余程被害が大きい(被害者が亡くなる)とか、過失の程度が大きい場合だけですので、典型的な交通事故ではこれに該当しない可能性の方が高いと思われます。

次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている過失運転致傷は、この列挙された犯罪に含まれていませんから、これには該当しません。

最後に、次に、Aさんの処分が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで評価されることがあるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。

そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性が高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。
だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

技術・人文知識・国際業務の在留申請について必要な書類はこちらのページにまとめられています。

交通事故に関しては「日本人の配偶者等」の在留資格の場合についても解説をしています。

「日本人の配偶者等」の人が交通事故をした場合,在留資格はどうなる?在留期間の更新は大丈夫?

示談交渉について

先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは話をしないことが通常です。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新のためいち早く弁護士にご相談ください。

名誉毀損をしたら永住者になれなくなるのか,刑事事件がビザに与える影響,強制送還の可能性を解説

2024-01-24

(事例はフィクションです)
Aさんは日本で通訳として「技術,人文知識・国際業務」のビザをもって働いていました。
ある日,Aさんは仕事や家庭の問題がうまくいかず,インターネットで有名人のSNSにたくさん誹謗中書・悪口を書き込んでしまいました。
このことでAさんは警視庁丸の内警察署で取調べを受けることになってしまいました。
Aさんは将来,永住資格を取ろうとしていたのですが,警察から取調べを受けたことがどのように影響するのか不安になりました。

就労ビザで在留している方で,警察から呼び出しを受けたという場合や,急に自宅にやってきたという場合には,すぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件の段階ですぐに対応することは,ビザを守ることにもつながります。

名誉毀損の罪

名誉毀損は刑法230条に該当する犯罪で,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
現在,誰でもSNSやインターネット掲示板を通じて情報発信ができるようになったことで,「他人の悪口」も簡単に発信できるようになりました。
ちょっとした悪口/いたずらのつもりであったとしても,その内容によっては名誉毀損に該当し,犯罪が成立してしまいます。
Aさんのように警察から呼び出しを受けて取調べに行く場合もあれば,いきなり警察官が自宅にやってきて逮捕されたり,自宅の中の捜索を受けたりすることもあります。

名誉毀損の罪で強制送還になるか

日本の出入国管理法では,名誉毀損の罪によってすぐに強制送還の対象になるという規定はありません。
名誉毀損の罪は刑法の「34章」にありますが,出入国管理法には刑法の34章に関する規定を置いていないからです。
ただし,名誉毀損の罪によって将来強制送還となってしまう場合はあります。
一つ目は逮捕されてしまった場合です。
逮捕されてしまうことで,仕事をクビになったり,そうでなくとも退職せざるを得なくなってしまう場合があります。
Aさんのような就労ビザworking-visaで日本に在留している人の場合,仕事がなくなってしまうことで,その後の在留資格がなくなってしまったり,更新ができなくなってしまうということがあります。
また,逮捕されている間にビザの有効期間が過ぎでしまうとオーバーステイとなってしまいます。オーバーステイになると,そのまま出入国管理局での強制送還手続きが始まってしまうことになります。強制送還の手続きが始まると,新しくビザの申請をしたり,別のビザに変更したり,ビザの更新をしたりすることができなくなります。
二つ目は起訴されてしまった場合です。
逮捕されなかったとしても,起訴されて有罪の判決を受けてしまった場合には前科がついてしまいます。
前科の内容が1年を超える懲役刑だった場合には,名誉毀損の罪であったとしても強制送還の対象になります。
また,前科がついてしまうことで,ビザの変更や更新が認められにくくなってしまうというデメリットがあります。
名誉毀損の罪によってすぐに強制送還になってしまう可能性は低いですが,ビザには多大な影響が発生します。
名誉毀損の罪によって取調べを受けたり,警察から呼び出されたりした,いきなり警察官が自宅にやってきたという方は,すぐに弁護士に相談した方が良いでしょう。

永住資格はどうなるか

永住者として認められるためには,いくつかの条件があります。
永住者の条件についてはこちらのページでも詳しく解説をしています。

永住者ビザ(永住許可)

また,出入国管理局も永住者の申請についてガイドライン(こちらのリンクから開けます)を提供しています。
名誉毀損をしてしまった場合,永住者の条件のうち,「素行の善良性」という条件が問題になります。
素行の善良性とは,日本で在留している間の生活に法的な問題がないかどうかという点に関する条件です。
素行の善良性は,有罪判決を受けたことがあるかどうかという点でまず審査されます。
そのため,名誉毀損の罪によって有罪判決を受けたことがあるとなると,素行の善良性を満たさず,永住者の在留資格が認められない可能性があります。
一方,逮捕されたり取調べを受けたりしたとしても,有罪の判決を受けていなければ,前科はつかないことになるため,その他条件を満たしていれば永住申請が認められる可能性も十分にあります。
永住資格を目指すのであれば,前科が付かないようにすること,が一番大切です。

名誉毀損の罪への対応

それでは,Aさんのような立場の方はどのような対応が必要になるでしょうか。
何よりも,被害者との示談交渉が必要不可欠です。
名誉毀損罪の罪について,起訴されるかどうかは示談ができているかどうかによって大きく左右されます。
被害者との間できちんと示談ができており,相手に対して誠意のある対応をしていること,被害者からも許しを貰っていることが証明できれば,起訴されず前科が付かないで解決できる可能性もあります。一方,示談ができていない場合,被害者の処罰感情が強かったケースなどでは起訴されて裁判になってしまうこともあります。
名誉毀損の事案で被害者と示談交渉をするには,弁護士などの専門家のサポートが不可欠です。
そもそも,弁護士でないと被害者の連絡先を聞けないこともあります。
Aさんのように,将来永住者としての申請を考えている方の事案では,警察から呼び出しを受けた時点ですぐに弁護士と相談して,示談交渉を進めた方が良いでしょう。
示談は速やかに行わなければなりません。裁判で罰金を払った後の示談では遅すぎるのです。裁判の後に示談をしたとしても,既に払った罰金は返ってきませんし,前科も付いたままです。
就労ビザで在留している方で,警察から呼び出しを受けたという場合や,急に自宅にやってきたという場合には,すぐに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件の段階ですぐに対応することは,ビザを守ることにもつながります。

「日本人の配偶者等」の人が交通事故をした場合,在留資格はどうなる?在留期間の更新は大丈夫?

2024-01-17

(事例はフィクションです)

日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周囲の景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により捜査が行われました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんが在留期間の更新をする際にどのように影響するのか
以上の点について解説していきたいと思います。

過失運転致傷の刑事罰

Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には、危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度、②事故を起こした側の過失の程度、③被害者の側の過失の程度、④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。

  • ①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
  • ②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
  • ③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
  • ④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。

Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。
反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。

日本人の配偶者の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用、動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
今回Aさんは、過失運転致傷罪という罪を犯しています。処分がどのような者になるかについては⑴の通りです。
そこで、まずこの刑事処分がAさんにとって「退去強制事由」になるかどうかを見てみます。

Aさんは「日本人の配偶者」ですので、入管表別表第2に記載されている在留資格を有しています。この在留資格の場合には、「無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者」(入管法24条4号リ)に該当する場合には、罪名関係なく退去強制を受ける事由となります。
今回のAさんの場合には、起訴猶予処分や罰金の処分となった場合にはこれに該当しません。また、この4号リで問題とされるのは、実刑、つまり刑務所に行かなければならないような判決だけですから、執行猶予付きの禁錮刑であればAさんにとっては退去強制事由には該当しないということになります。

次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。

この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんについても同じように考えることになりますが、かっこ書きで除外されているのは「道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑」となっており、過失運転致傷は明示的に挙げられていません。
そのため、過失運転致傷罪で素行善良要件を満たすかどうかについては明確に決まりません。起訴猶予処分であれば問題にならない可能性高い一方、罰金や禁錮刑となった場合には素行善良要件を満たさないと判断されるケースもあります。だからといってこの事故のことを秘して在留期間更新申請を行うことはできませんので、入管当局に正直に説明し、二度と運転しないこと等の誓約を行い在留許可の更新を求める方がよいと思われます。

「日本人の配偶者等」の在留資格における各種申請のための書類についてはこちらのページにまとめられていますのでご確認ください。

また,在留期間の延長についてはこちらのページでも解説していますので,併せてご覧下さい。

在留期間を延長する手続き

示談交渉は必要か

さて、先述の通り、過失運転致傷罪で刑事罰を受けてしまうと、在留期間の更新ができなくなる可能性を指摘しました。
しかし、この罪の場合、怪我の程度がそれほど大きいものでなければ、検察官が最終的な刑事処分を決定してしまうより前に被害者の方と示談を行い、被害者の方からお許しいただければ
起訴猶予処分となる可能性があります。
ただ、任意保険や自賠責保険では、ここまでの示談交渉は行ってくれない可能性が極めて高いです。保険会社が行うのはあくまでも損害の賠償のみであり、被害者の方から許してもらうような示談交渉までは
話をしないことが通常です。
そのため、在留期間の更新を許可してもらう可能性を少しでも高めるためには、弁護士に依頼し、交通事故の被害者との間で示談交渉を行ってもらう必要があります。もちろん交通事故の場合には相手方の連絡先などを警察官から
知らされる場合が多いですが、当事者同士で話し合うとトラブルになることが多いため、お勧めはできません。
また、検察官が刑事処分を決めてから示談をしても、処分自体が無くなるわけではありませんから、示談は検察官が処分を決めるまでに行う必要があります。
在留資格を持っている状態で交通事故を起こしてしまった場合には、期間の更新を安全なものとするためにも、いち早く弁護士にご相談ください。

技能実習生のオーバーステイ事案,逮捕されてしまうのか?入国管理局へ出頭した方が良い?

2024-01-10

【事例(フィクション)】

Aさんは、技能実習の在留資格で来日し、技能実習生として日本の工場で働き始めました。
当初は慣れない日本で、日本語を勉強しながら技能実習生として頑張って働いていました。
ところが、長時間労働にもかかわらず、残業代は払われず、元々の賃金も低く、渡航費用のためにした借金も全然減っていかないAさんは、精神的に追い詰められて、技能実習先から逃げ出してしまいました。
その後、技能実習の在留期間が切れてしまったAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されるのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。
まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

【オーバーステイ(不法残留)とは】

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。
法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。
オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイとなってしまう理由は人それぞれ様々でしょう。

更新の期限を忘れていた場合や,更新手続きが認められなかったという場合,何らかの理由で出入国管理局に手続きに行くことができなかったなどなどの理由が考えられます。期限内に手続きをしていたのにオーバーステイになってしまったという方もいるかもしれません。その場合,在留期間の特例があります。特例についてはこちらでも解説をしています。

在留期間更新とその特例,期限を過ぎてしまったらどうなるのか

【オーバーステイ発覚前のお悩みについて】

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は
①入管に出頭すべきか
②発覚したらすぐに逮捕されるのか
③もう日本に残ることはできないのか
④出国までずっと入管に収容されるのか
⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①入管に出頭すべきか

②~⑤で説明しますが、オーバーステイ状態になってから時間が経てば経つほど状況は悪化しかねず、出頭をしないままオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰のリスクが高まります。
手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

②発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

③もう日本に残ることはできないのか

オーバーステイは退去強制の対象となります。退去強制の手続きにかかった外国人の方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
もっとも、日本人の配偶者や日本での養育が必要な子がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られることもあります。
オーバーステイ状態を放置していても、日本での不安定な地位が続くだけなので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応を考えましょう。

④出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、入管に収容されることがあります。
もっとも、Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。
出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。
逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。
刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していたら状況は悪化していくかもしれないので、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

飲酒運転をしてしまうと「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に影響が出るのか・延長申請ができない?強制送還になる?

2024-01-03

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で日本に滞在しているAさんは、適法な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、友人宅で飲酒をした後、そのまま自家用車で帰宅したところ、帰宅途中の道路で警察官に呼び止められ、そのまま呼気アルコール濃度の検査を受けることになりました。
検査の結果、Aさんの呼気からは1リットル当たり0.2mgのアルコールが検知され、Aさんは酒気帯び運転で検挙されてしまいました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰は、Aさんの在留期間の更新時に影響があるか、若しくは退去強制処分となるか

以上の点について解説していきたいと思います。

酒気帯び運転の刑事罰

道路交通法第65条1項により、何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならないこととされています。この「酒気を帯びた」かどうかの判断は、呼気アルコール濃度によって行われ、呼気1リットル当たり0.15mg以上のアルコールが含まれていた場合には、酒気帯び運転として刑事罰の対象とされます。
酒気帯び運転の罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています(道路交通法117条の2の2第3号)。
酒気帯び運転の罪の場合、初めて刑事罰を受けるような場合であれば、略式起訴という簡単な手続きにより罰金刑となることが多いです。
ここから先は、Aさんが罰金30万円の刑となったことを前提として解説していきます。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について

在留期間の更新は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」(出入国管理及び難民認定法21条2項)に認められますが、この認定にあたっては、出入国在留管理庁によるガイドラインがあります。
 このガイドラインによると、在留期間の更新が許可されるのは
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること(別表第1の2の表又は第4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者)
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
4 素行が不良でないこと
5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
6 雇用。動労条件が適正であること
7 納税義務を履行していること
8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
とされています。
 このうち4の部分には「素行については,善良であることが前提となり,良好でない場合には消極的な要素として評価され,具体的には,退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為,不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は,素行が不良であると判断されることとなります。」との記載がなされています。
 今回Aさんは、道路交通法違反により刑事処分を受けています。
まず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、入管法上別表第1の2の表に記載がある在留資格です。
そのため、法務省令に定める上陸許可基準等に適合する必要があります。
この上陸許可基準は公表されていますが、概ね業務に関する事項や報酬についての定めが記載されています。ですので、道路交通法違反の罰金前科があるからと言って上陸許可基準に該当しないというものではありません。
今回の場合、ガイドラインに記載されている「素行が不良でないこと」が問題となります。そして、「退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた」場合には素行不良であると判断されることになるため、退去強制事由に準ずるような刑事処分であるかどうかを検討していくことになります。
それでは刑罰法令違反が退去強制事由となるかどうかを考えていきます。別表第1の在留資格の場合、入管法等在留関係の法律以外の刑罰法令が問題となる退去強制事由には、入管法24条4号リと同法24条4号の2があります。
まず、入管法24条4号リは、「無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」とするものです。Aさんは罰金刑を受けており、これは懲役や禁錮よりも軽い刑ですから、この条文には該当しません。
次に、24条4号の2ですが、こちらは一定の犯罪で懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由となるものです。24条4号リとの違いは、罪名の違いがあるものの、執行猶予付きの判決であっても退去強制事由となる点にあります。ただ、Aさんが問題視されている道路交通法違反は、この列挙された犯罪に含まれていませんし、罰金刑は執行猶予付き判決よりも軽いものですから、これには該当しません。
最後に、次に、Aさんの罰金が退去強制事由に「準ずる」刑事処分とまで言えるかどうかが問題となります。この点について、定住者告示3号等に該当する者の素行要件についての審査要領では「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮若しくは罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金又はこれに相当する刑を除く。以下同じ。)に処せられたことがある者(以下略)」とされています。
この審査要領は一般の在留期間の更新にも該当すると考えられます。そのため、Aさんの場合には、道路交通法違反による罰金刑を受けているだけですから、かっこ書きの中にある「道路交通法違反による罰金」に該当しますので、素行不良要件には該当しないと考えられます。
以上のような事情からすれば、Aさんの在留期間の更新は認められる可能性が高いと思われます。ただし,永住申請する際には別途検討が必要です。永住に関するガイドラインについては出入国管理局がHPじょうでも公開しており,こちらから確認ができます。

他の在留資格に関してはこちらのページでも解説しています。

酒気帯び運転で前科が付くと在留資格が更新できなくなる?刑事事件に強い弁護士事務所が解説

偽装結婚が発覚するとどうなるのか?強制送還の可能性や対処について刑事事件に強い弁護士が解説

2023-12-27

【事例】

以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、日本で働いて本国の家族に送金をするため、日本人と偽装結婚をし、日本人の配偶者等の在留資格で来日しました。
その後日本で暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように偽装結婚をしていた外国人の知人が逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も偽装結婚が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。

【偽装結婚と退去強制】

偽装結婚をして日本人の配偶者等の在留資格で来日したAさんは、虚偽の申請をして上陸許可を受けたということで、在留資格が取消され退去強制事由となります。

「偽装結婚とは何か」についてはこちらの記事もご覧ください。

偽装結婚で有罪となった,その後はどうしたらいいか?

また、適法に上陸した後に偽装結婚をした場合であっても、後述するとおり公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立し、その刑事裁判で懲役刑の有罪判決を受ければ、執行猶予の有無にかかわらず退去強制事由となります。

【偽装結婚発覚前のお悩みについて】

Aさんのように、偽装結婚がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
 ①発覚したら逮捕されるのか
 ②もう日本に残ることはできないのか
 ③出国までずっと入管に収容されるのか
 ④偽装結婚の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①発覚したら逮捕されるのか

偽装結婚が警察に発覚したり、入管に察知され警察に通報された場合、個別事情によるので一概には言えませんが、逮捕されることは多いです。

警察も入管と協働して取り締まり・摘発に積極的な部分です。

参考:警察庁HP

②もう日本に残ることはできないのか

偽装結婚は、前述のとおり、退去強制事由に該当するという結論になる可能性が極めて高く、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
その上、一般的に、偽装結婚で在留特別許可を得ることは非常に困難です。
もっとも、真正な配偶者になる予定の人と相当長期間内縁関係にある、日本での養育が必要な子どもがいるなど、在留特別許可にプラスの事情があれば、100%在留特別許可は無理とも限りません。
在留特別許可が得られる見込みについては、他にも様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。

③出国までずっと入管に収容されるのか

偽装結婚が理由で在留資格を取消される、懲役刑の有罪判決を受けるなどの退去強制事由に該当すると、入管に収容される可能性があります。
もっとも、収容された場合でも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

④偽装結婚の刑罰はどうなるのか

真正な婚姻をする意思がないのに婚姻の届出をすると、戸籍等に不実の記載(電子化された戸籍等の場合は不実の記録)をさせ、そのような状態の戸籍等を役所に備え付けさせることになり、公正証書原本不実記載又は電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪が成立します。
有罪判決の場合の刑の重さは、懲役刑、ただし執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。最も事件に応じて、個別の事情によるので一概には言えませんが刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【おわりに】

偽装結婚により得た身分で日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても不安定な地位は変わらないので、前述のとおりの発覚した場合の様々なリスクを軽減するために出頭をし、真摯な対応をするということも選択肢としてはあります。
いずれにせよ、今後のリスクについて、まずは弁護士等の専門家に相談した方がよいかと思います。

うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?

2023-11-22

事例

(フィクションです)

Aさんは、技能の在留資格(いわゆる就労ビザの中の1つ)で来日し、調理人として日本のお店で働いてきました。

在留期間の終わりが迫る中、Aさんは日々のお店での業務が忙しく、在留資格の更新手続きを後回しにしていたところ、うっかり在留期間を過ぎることになってしまいました。

後で在留期間が過ぎてしまったことに気付いたAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されて本国へ退去強制させられてしまうのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。

まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

オーバーステイ(不法残留)とは

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。

法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。不法残留によって逮捕、起訴されてしまうと法律上、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課されます。

オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイ発覚前のお悩みについて

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は

  • 入管に出頭すべきか
  • 発覚したらすぐに逮捕されるのか
  • もう日本に残ることはできないのか
  • 出国までずっと入管に収容されるのか
  • オーバーステイの刑罰はどうなるのか

といったことでお悩みかと思います。

以下、順に見ていきましょう。

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オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?

入管に出頭すべきか

オーバーステイ状態になってからは、時間が経てば経つほど状況は悪化し、出頭をしないままでオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰といったリスクが高まります。

手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や交通違反の時の手続等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

「入管への出頭≠警察での逮捕」ですから,もしも日本での在留を希望する場合には早めに手を打たなければいけません。

もう日本に残ることはできないのか

在留期間の最後の日から2か月以内であれば、在留資格更新の「特別受理」といって、更新を申請できて許可されることがあります。

特別受理が認められるのは、病気や怪我などのやむを得ない事情で在留期間中に更新手続きを行えなかった場合が典型ですが、Aさんのようにうっかり在留期間を過ぎてしまった場合でも、他の事情次第で認めれらる余地があります。

2か月を過ぎてしまっていたり、事情により特別受理が認められないのであれば、オーバーステイの方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。

在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。

もっとも、Aさんのように、うっかり在留期間を過ぎただけで他には退去強制にあたることはしていない方の場合は、日本で長期間生活している、日本に家族がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られる可能性があります。

オーバーステイを放置して時間が経てば経つほど、隠れながらあえて残留し続けていたと見られ、在留特別許可の判断は厳しくなっていきますので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応しましょう。

出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、手続き上,全ての事件で入管に収容されることになります。

これを「全件収容主義」といい,入管当局は基本的に「退去強制事由がある事件については全ての事件で収容のための手続きをとる」としているのです。

ただ,入管に収容する手続きが取られてしまっても,例外的に釈放する手続きが設けられています。

Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。

出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。

仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。

逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していても状況は悪化していくだけです。

  • 日本に残り続けたい
  • 入管での収容を避けたい

という方は,速やかに弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

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