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「興行」の在留資格,タレントビザについて解説
この「興行」の在留資格に該当する活動としては、演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(入管法別表第一の二の表の経営・管理の項に掲げる活動を除く。)などです。
この「興行」の該当例としては、俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等です。
「興行」の在留期間は、3年、1年、6月、3月又は15日です。
1.興行ビザの申請人
申請人は、次のいずれかの経歴要件を満たす必要があります。
①外国の教育機関において当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと。
②2年以上の外国における経験を有すること。
一定の教育を受けているか,実務経験が必要ということです。
2.興行契約者
当該外国人を受け入れる契約者が、次の全てに該当することが必要です。
①外国人の興行に係る業務について通算して3年以上の経験を有する経営者、管理者がいること。
②5名以上の職員を常勤で雇用していること。
③当該機関の経営者又は常勤の職員がいずれにも該当しないこと。
・人身取引を行い、唆し、又はこれを助けた者
・過去5年間に法第24条第3号(外国人に不法就労活動)の4イからハまでに掲げるいずれかの行為を行い、唆し、又はこれを助けた者
・過去5年間に当該機関の事業活動に関し、外国人に不正に法第3章(上陸手続き)第1節若しくは第2節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印若しくは許可、同章第4節の規定による上陸の許可又は法第4章(在留及び出国)第1節若しくは法第5章(退去強制手続き)第3節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくは助けた者
・法第74条から第74条の8までの罪又は売春防止法(昭和31 年法律第118 号)第6条から第13条までの罪により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3 年法律第77 号)第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
・過去3年間に締結した興行契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること。
これまで,タレントビザは不法入国のために悪用されてきたという経緯があります。そのため,タレントビザとして外国人を受け入れる側に基準を設けており,興行の実施者が「不法入国のブローカー」となってしまわないように規制をしています。
3.興行施設
施設が次の全ての要件に該当することが必要です。
①不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設であること。
②風営法第2条第1項第1号又は第2号に規定する営業を営む施設である場合は、次に掲げるいずれの要件にも適合していること。
・専ら、客の接待(風営法第2条第3項に規定する接待を言う。以下同じ。)に従事する従業員が5名以上いること。
・興行に係る活動に従事する興行の在留資格をもって在留する者が客の接待に従事するおそれがないと認められること。
③13平方メートル以上の舞台があること。
④9平方メートル(出演者が5名を超える場合は、9平方メートルに5名を超える人数の1名につき1.6平方メートルを加えた面積)以上の出演者用の控室があること。
当該施設の従業員の数が5 名以上であること。
⑤当該施設を運営する機関(以下「運営機関」という。)の経営者又は当該施設に係る業務に従事する常勤の職員が欠格事由に該当しないこと。
上記のように、「興行」の在留資格が認められるためには、①申請人、②受入れ企業、③受入れ施設につき詳細な要件が決められています。
全ての要件について充足しなければ「興行」の在留資格が認められませんので、「興行」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
「文化活動」の在留資格について解説,何が「文化活動」にあたる?
在留資格「文化活動」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「文化活動」の在留資格に該当する活動としては、収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動(入管法別表第一の四の表の留学、研修の項に掲げる活動を除く。)です。
「文化活動」の該当例としては、日本文化の研究者等です。
「文化活動」の在留期間は、3年・1年・6月又は3月です。
在留資格「文化活動」の具体例は以下のとおりです。
・収入を伴わない日本文化の研究者、もしくはその指導を受けて行う研究活動。
・無報酬で行うインターンシップの活動。
さらに、これらの活動は次の4つに分類できます。
①収入を伴わない学術上の活動
②収入を伴わない芸術上の活動
③日本特有の文化や技芸について専門的な研究を行う活動
④日本特有の文化や技芸について専門家の指導を受けて研究を行う活動
「文化活動」の在留資格の最大のポイントは、「収入や報酬があってはならない」ということです。そのため,「文化活動」のビザは,いわゆる就労ビザではありません。
1.「収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動」とは
①外国の大学の教授、准教授、助教、講師などのほか、外国の研究機関から派遣された者が無報酬で行う調査や研究といった活動
②大学の教授などの指導の下、無報酬で研究を行う研究生の学術上の活動
③専修学校等として認可を受けていない外国大学の日本分校に入学して行う学術上の活動
④無報酬のインターンシップ活動
2.「日本特有の文化若しくは技芸」とは
日本固有の文化や技芸(生花、茶道、柔道、日本建築、日本画、日本舞踊、日本料理、邦楽などのほか、日本固有のものとはいえなくとも、日本がその形成・発展の上で大きな役割を果たしているもの)
たとえば、禅や空手等もこれに含まれます。
3.「専門家の指導を受けてこれを修得する活動」とは
日本特有の文化や技芸に精通した専門家から個人指導を受けてこれを修得する活動
4.「専門家」とは
各分野において免許や肩書を保有しているだけでなく、その分野で指導を反復継続して行う又は行ったことのある者
上記のように、「文化活動」の在留資格が認められるための最大のポイントは、「収入や報酬がない活動を行う」ことが必要になります。
その他の要件についても、文化性、技芸性を証明する必要がありますので、「文化活動」の在留資格のことでお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
永住者として認められる条件,申請手続きを解説
日本で永住権を取得するためのビザ手続きのポイント解説!
外国人の皆さん、日本で永住権を取得したいと思っている方々への情報提供を目的とした本記事では、ビザの手続きについて弁護士が解説します。日本で永住権を取得することは、外国人にとって大きな目標の一つであり、その手続きや要件について正確な情報を得ることは重要です。
在留資格や永住者としての地位を得るためには、日本国益への合致や素行の善良性といった要件を満たす必要があります。具体的には、日本社会においての経済的・社会的な貢献や法令の順守、犯罪の非存在などが求められます。
この記事では、弁護士の専門知識をもとに、ビザの手続きに関する情報を簡潔かつわかりやすく解説します。ビザの種類や申請手続き、必要な書類など、具体的な情報を提供することで、皆さんの永住権取得に向けた道筋を示すことができるでしょう。
用語の解説
在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な資格のことを指します。留学や就労、技術・人文知識・国際業務などの各分野ごとに異なる在留資格が存在します。在留資格を持つことで、外国人は合法的に日本で生活することができます。
永住者とは
永住者とは、外国人が日本に永住するための在留資格です。永住者になるためには、一定期間日本で滞在していることや安定した収入があることが求められます。永住者として認められることで、外国人は日本での生活をより安定させることができます。
日本国益への合致
外国人が永住権を取得するためには、日本国益への合致が求められます。具体的には、経済的・社会的な貢献が期待され、日本社会において有益な存在であることが求められます。日本国益への合致は、永住権の申請において重要な要素となります。
素行の善良性
永住権の申請においては、素行の善良性も重要な要素です。外国人が日本国内で法令を遵守し、社会的なルールを守ることが求められます。犯罪歴や不正行為の有無など、素行の善良性が永住権の申請において評価されます。
以上が、外国人、在留資格、永住者、日本国益への合致、素行の善良性についての事前知識です。これらの要素を理解することで、より具体的な情報を知ることができます。
永住者とは
永住者とは、外国人が日本において永続的に居住することが許された在留資格を持つ者を指します。永住者となるためには、一定期間(通常は10年以上)日本に在留し、かつ日本国益への合致や素行の善良性を満たす必要があります。
永住者となることにより、外国人は日本での生活においてさまざまな権利や利益を享受することができます。永住者は、就労の自由や社会保険の利用、国民と同等の社会的地位を得ることができるなど、日本での生活の安定を図ることができます。日本で住宅を購入する際の住宅ローンについても,外国人の場合には永住者でなければローンの審査を通過しないことが多いです。
永住許可が認められる要件
外国人が永住者となるためには、日本国益への合致や素行の善良性を証明する必要があります。日本国益への合致とは、外国人が日本での生活や社会に貢献できる能力や意欲を持っていることを示すものです。具体的には、就労や起業などを通じて日本の経済や社会の発展に寄与することが求められます。
また、外国人の素行の善良性も永住者としての資格を得るために重要な要素です。素行の善良性とは、法令を遵守し、日本の社会規範や倫理に基づいた行動を取ることを指します。具体的には、犯罪行為のないことや納税義務の遵守などが求められます。
これらの要件を満たすことが、外国人が永住者となるための重要な条件となります。永住者となることにより、日本での安定した生活や社会的な地位を築くことができるでしょう。
日本国益への合致
永住権を取得するためには、日本国益への合致が求められます。これは、外国人が日本社会や経済に貢献することによって日本国全体の利益になることを意味します。具体的には、外国人が技術や知識を持っていて、これを日本国内で活かすことができる場合や、外国人がビジネスを起こして雇用を生み出す場合などが該当します。
素行の善良性
また、永住権を取得するためには、素行の善良性も重要な要素です。外国人が日本の法律や規則を遵守し、社会的にも問題を起こさないことが求められます。具体的な要件としては、犯罪歴のないことや、日本の社会的なルールや習慣に適応し、他の人々との共存を図ることが挙げられます。これによって、外国人が永住権を取得することによって日本社会にプラスの影響を与えることが期待されます。
外国人が日本で永住権を取得するためには、在留資格を適切に持ち、日本国益への合致と素行の善良性を示す必要があります。これらの要件を満たすことによって、外国人は安定した生活を送ることができ、日本社会において貢献することができるでしょう。
永住許可が認められることによるメリット
在留資格を持つ外国人は、就労に関しても制約を受けます。就労ビザを持っている外国人であっても、好きな業種で自由に働けるわけではありません。特定の在留資格を持っている場合には、その在留資格に応じた業務に従事する必要があります。また、労働時間や給与についても規定があり、厳密に守らなければなりません。
永住許可を得られた場合には,これらの制約がなくなることになります。
永住権を取得するためのプロセス
永住権を取得するためには、以下の手続きを行う必要があります。
1. 在留資格の取得
永住権を取得するためには、まずは適切な在留資格を取得する必要があります。適切な在留資格を取得した後、特定の期間を経過することで、永住権の申請が可能となります。
2. 永住申請
永住権を取得するためには、在留資格を持つ外国人が所轄の出入国管理局に永住の申請を行う必要があります。
日本では永住権を申請するのではなく,「永住者」という在留資格への変更の手続きになります。
申請には、申請書類や必要な書類の提出、場合によっては入国管理局の担当者との面接といった手続きがあります。
3. 審査と結果通知
永住者への在留資格変更申請は、出入国管理局による審査が行われます。審査には、日本国益への合致や素行の善良性などが考慮されます。審査結果は、通常数ヶ月後に通知されます。
4. 永住権の取得
審査が通過した場合、外国人は永住権を取得することができます。永住権を取得すると、日本において永続的に居住し、自由に就労することができるようになります。
まとめ
以上が、外国人が日本で永住権を取得するための手続きと要件についての解説です。永住権を取得するためには、日本国益への合致や素行の善良性といった要件を満たす必要がありますが、一度取得すると自由な活動が可能となります。永住権を目指す外国人の皆さんにとって、この情報が役立つことを願っています。
外国人の方が日本で永住権を取得するためには、ビザの手続きについて正確な情報を知ることが重要です。この記事では、弁護士がビザの手続きについて解説しました。
永住者になるためには、日本国益への合致や素行の善良性などの条件があります。これらの条件を満たすためには、正確な情報を得るだけでなく、法律や規制に適切に従うことも大切です。
この記事を通じて、日本で永住権を取得したい外国人の皆さんが、ビザの手続きについてより理解を深めることができれば幸いです。是非、正確な情報を元に、自身の永住権取得のための道を歩んでください。
入管に収容されたらどうなる?仮放免とは何か?
「仮放免」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
「仮放免」とは、収容されている外国人について、請求により又は職権で一時的に収容を停止して、一定の条件を付して身柄の拘束を仮に解く制度のことです。
収容令書による収容期間は「30日(やむを得ない事由がある場合は、30日を限り延長可能)」、退去強制令書による収容は「送還可能のときまで」と定められていますが、被収容者の健康上の理由や出国準備等のために身柄を解放する必要が生じることもあるため、そのような場合に対応するために設けられたものが「仮放免」です。
(1)仮放免の請求について
・仮放免の請求人
被収容者本人又はその代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹と定められています。
・仮放免の請求先
被収容者が入国者収容所に収容されている場合は当該入国者収容所長に、また地方出入国在留管理局の収容場に収容されている場合は当該収容場を所管する地方出入国在留管理局の主任審査官に対して請求することになります。
仮放免の請求に際しては、仮放免が許可された場合に仮放免中の身元引き受け及び法令の遵守等の指導を確実に行う身元保証人を決めていただく必要があります。
・提出書類
①仮放免許可申請書
②身元保証書
③誓約書(誓約書は、収容されている外国人と身元保証人になろうとする方の2通が必要となります。)
なお、仮放免の申請について、手数料はかかりません(ただし、仮放免の許可に際しては、保証金の納付が必要となります。)。
(2)放免の許可について
請求人から仮放免の請求があった場合、被収容者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠等を総合的に考慮して、300万円以下の保証金を納付させて、かつ住居及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができると定められています。
なお、この保証金については、入国者収容所長又は主任審査官が適当と認めたときに限り、被収容者以外の者が差し出した保証書をもって保証金に代えることができますが、保証書には保証金額及びいつでもその保証金を納付する旨を記載しなければなりません。
(3)仮放免の取消しについて
仮放免許可を受けた外国人が、(1)逃亡した場合や、(2)逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合、(3)正当な理由がないのに呼出しに応しない場合、(4)その他仮放免に付された条件に違反した場合は、仮放免を取り消すことができると定められています。
(4)保証金の没取について
仮放免が取り消されたときは、保証金が没取されます。
この没取には全部没取と一部没取があり、取消しの理由が、前記取消事由の(1)及び(3)の場合は保証金の全額、その他の理由による取消しの場合は保証金の一部が没取され、一部没取の場合における金額は、事情に応じて決定されることになります。
なお、退去強制令書により収容されていた者が仮放免中に自費出国する場合又は仮放免の許可に期限が付されている場合であって、期間満了により再度収容されたときは、仮放免の取消しではないので保証金は全額還付されます。
収容されている外国人の配偶者や直系の親族、兄弟姉妹の方で、「仮放免」についてお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
定住者ビザはどんな場合にもらえる?誰でももらえる?
在留資格「定住者」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「定住者」の在留資格に該当するのは、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者です。
「定住者」の該当例としては、第三国定住難民・日系3世・中国残留邦人等です。
「定住者」の在留期間は、5年・3年・1年・6月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)となっています。
なお、この「定住者」については、成年年齢の引下げ等を内容とする「民法の一部を改正する法律」の成立を受け、定住者告示6号各号に規定する「未成年」については、現行の20歳未満から18歳未満に変更になり、令和4年4月1日から実施されています。
令和4年4月1日以降、18歳以上の方は「未成年・未婚の実子」として新規に在留資格「定住者」で入国することができませんのでご注意ください。
ただし、既に「定住者」の在留資格をお持ちで再入国許可(みなし再入国許可を含む。)により出国している方への影響はありません。
以下の法務省告示に適合している場合は、法務大臣の個別の指定がなくても上陸許可を受けられます。
・日系2世及び3世
・日本人の子として出生し「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者の配偶者
・1年以上の在留期間を指定されている「定住者」の配偶者
・1年以上の在留期間を指定されている「定住者」の扶養を受けて生活する未成年かつ未婚の実子
・日本人等の配偶者で「日本人の配偶者」等の在留資格を有する者の未成年かつ未婚の実子
・日本人等の扶養を受けて生活する6歳(場合により8歳)未満の養子
・中国残留邦人等とその親族
・インドシナ難民のうち一定範囲の者
また、上記の法務省告示に適合していなくても、人道上その他特別な事情があれば、上陸特別許可、在留資格変更許可、在留特別許可に際して、この「定住者」の在留資格が与えられる場合があります。
法務省告示に適合していないパターンの「定住者」の在留資格を認めてもらうためには、申請人が日本で生活していくため人道上の必要性があることを説得することが必要になります。
この「定住者」の在留資格のメリットは、永住者と同様に仕事の種類に関係なく就労することができる点にあります。
しかし、永住者とは異なり、定期的に在留期限の更新手続きは行わなければなりません。
以上のように、法務省告示に適合しているパターンの「定住者」の在留資格の取得は難しくはありませんが、法務省告示に適合していないパターンの「定住者」の在留資格を認めてもらうためには、人道上の必要性があることを説得することが必要になりますので、ご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。
「日本人の配偶者」の在留資格はどんな場合に認められる?結婚すれば必ずもらえるのか?
「日本人の配偶者等」の在留資格について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
いわゆる「配偶者ビザ」は,日本に住んでいる外国人の方にとって,最も手堅く安全な在留資格と言えます。
ビザによる就労の制限はなく,在留期間についても更新が容易であり,何よりも永住者の在留資格を取得しやすいという点が魅力的です。
在留資格「日本人の配偶者」としてどのような要件が必要かについて、まず第一に「日本人の配偶者としての身分を有する者」であることが必要です。
「日本人の配偶者」における「配偶者」とは、現に婚姻中の者をいい、相手方の配偶者が死亡した者又は離婚した者は含まれないとされています(審査要領)。
では、ここでの「婚姻」は、法律上の結婚で足りるのか?あるいは他に何らかの要件が必要なのでしょうか?
この「日本人の配偶者等」における「婚姻」の判断について、最高裁まで争われた事件がありました。
争いとなった事件の概要は、およそ以下のようなものでした。
出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)別表第一の三の表所定の「短期滞在」の在留資格で本邦(日本)に在留していたタイ王国の国籍を有する被上告人が、上告人(国・出入国在留管理局)に対し、法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格への変更申請(以下「本件申請」という。)をしたところ、上告人がこれを不許可とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたため、被上告人が本件処分の取消しを求めたもので、日本人と婚姻関係にある外国人(タイ王国の国籍者)が、日本上陸後約1年3か月の同居生活の後、約4年8か月間別居生活を続け、その間、婚姻関係修復に向けた実質的、実効的な交渉等はなく、独立して生計を営んでいたなどの事情の下において、当該外国人の日本における活動は、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するといえるか、「日本人の配偶者等」の在留資格該当性が争点となりました。
最高裁(平成14年10月17日)は、「日本人の配偶者等」の「配偶者」としての在留資格該当性について、およそ以下のような判断を下しました。
1.「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留するためには、単にその日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係があるだけでは足りない。
2.日本人配偶者との間に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真しな意思をもって共同生活を営むことを本質とする婚姻という
特別な身分関係を有する者として日本活動しようとすることに基づくものと解される。
3.婚姻関係が法律上存続している場合であっても、夫婦の一方又は双方が既に婚姻継続の意思を確定的に喪失しているとともに、夫婦としての共同生活
の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至ったときは、当該婚姻はもはや社会生活上の実質的基礎を失っている者というべきである。
本判決は、「配偶者としての活動を行う者」とする者の在留資格が付与されるべき者について、日本人との婚姻が法律上有効なものであれば足りるものとする(平成6年5月26日東京地方裁判所判決)の考えを否定して、在留資格「日本人の配偶者等」での「婚姻」といえるためには「単なる法律上の婚姻だけでは足りない。」とする国側(出入国在留管理局)の主張を採用しました。
今となっては当たり前のように見える判断ですが、下級審で判決のあった平成8年当時は、決して当たり前の判断基準ではなかったということです。
この最高裁判決が、在留資格「日本人の配偶者等」の在留資格該当性における現在の判断基準となっています。
参考:最高裁判所判例,出入国在留管理局審査要領
技能実習制度が廃止される可能性?新たな受け入れ制度ができるのか?
「技能実習制度の廃止」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
昨年から政府にて議論がなされていた「技能実習制度と特定技能の一本化」について、2023年4月に政府の有識者会議にて、技能実習制度を廃止する方向性であることが発表されました。
政府は、外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習制度を廃止すべきだとした上で、人材確保などを目的に中長期的な滞在を円滑にし、転職についても一定程度認めるように緩和するといった技能実習制度に代替する新たな制度への移行を求める中間報告のたたき台を示しました。
外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、発展途上国の人材を育成する「人づくり」を通じた国際貢献を目的とする一方、実際は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっており、失踪などのトラブルが相次ぐなど、目的と実態に乖離がありとの指摘が少なくありません。
技能実習制度は、2017年11月に出入国管理及び難民認定法から独立して制定された「技能実習法」により従来の技能実習制度をアップデートして、技能実習を推奨していましたが、技能実習生は人材難が深刻な地方や中小企業でニーズが高いですが、違法な低賃金で長時間労働を強制されたり、実習先で暴力を受けたりするケースがあとを絶ちません。
また、実習生の約50%以上が母国の送出し機関や仲介者に手数料などを払うため、来日前に何かしらの借金を負って来日します。
転職や「転籍」をして,働く企業を変えることも,原則としてはできないことなどから、実習先から逃げ出した実習生はおよそ7,000名にも及ぶといわれています。
こうした実態を見直すため、2022年11月に政府の有識者会議が設置され、2022年12月から計4回にわたって議論が行われてきました。
技能実習制度に代替する新たな制度では、人材育成だけではなく「働く人材の確保」を主な目的に掲げ、これまで原則できなかった働く企業の変更も、従来の技能実習制度に比べて緩和し、一定程度認める方針です。
また、技能実習生として3年以上の実習を修了した場合に、試験を免除される「特定技能」への移行が円滑にできるようにして、中長期的に活躍する外国人材の確保につなげるとしています。
さらに、技能実習生を団体監理型で受入れをする場合に、送出し機関と受入れ会社の仲介してきた「監理団体」について、受入れ会社への適切な監査を怠り、行政処分を受ける例が相次いでいるため、技能実習制度に代替する新たな制度では会社からの独立性の確保など、「監理団体」としての要件を厳格化するとしています。
いずれにしても、今秋をめどに有識者会議にて最終報告書を提出する予定になっています。
以上のように、技能実習制度が廃止され、技能実習制度に代替する新たな在留資格の創設が検討されておりますので、現在技能実習生を受け入れている企業などは、今後どのように議論がなされていくのかに注目しておいた方が良いかと思います。
在留期間を超えて日本に残れることがある?在留特例期間を解説
国内に滞在する外国人が3か月以上継続して日本に滞在する場合は、在留の活動に伴う在留資格が与えられ、在留活動の内容を表示するものとして在留カードが発行されます。
在留カードには在留資格に伴う活動の有効期限として在留期間の満了日が記載されており、在留期間の満了日が経過すると当該在留カードは無効となり、カードの所持者は日本に在留する資格がなくなります。
在留期間の満了日後も日本に滞在したい場合は、在留期間の満了日前に在留資格の変更・更新の申請手続きを行います。在留変更・更新申請が出入国在留管理局(以後入管)で許可されれば新しい在留カードが発行され、引き続き日本で在留資格に基づく在留活動が可能となります。通常、在留期間の満了日の3か月前から在留申請手続きが可能です。
申請の結果がいつ自分のもとに通知されるのかについては、申請した側にとってみれば大変気がかりなことですが、今のところ明確なルールは定められていません。しかしながら一応の基準は設けられており、在留審査の標準処理期間が出入国在留管理庁から毎年四半期毎に公表されていて、自分が申請した在留許可の判断がおよそいつくらいまでに出されるのかを知ることができます。
逆に自分が行った在留申請の結果通知の最終期限がいつまでかについては、「在留期間の特例」という制度によって事前に知ることができます。
在留期間の特例とは、「在留カードを所持している方が、在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請(以下「在留期間更新許可申請等」という。)を行った場合において、当該申請に係わる処分が在留期間の満了日までになされないときは、当該処分がされる時又は在留期間の満了の時から二月が経過する日が終了するときのいずれか早いときまでの間は、引き続き従前の在留資格をもって我が国に在留できます」とする制度です。:出典 出入国在留管理庁HP
例えば、6月30日が在留期間の満了日の方の場合、どんなにおそくとも8月30日までには入管から結果通知が来ます。
入管側で在留許可の判断が出ている場合、在留期限から2か月を経過しても申請人が在留カードの交付申請手続きをしなければ申請人は在留資格を失い、オーバーステイとなります。
なお、在留申請時に渡される受付票には、「在留期間の満了日から2か月を経過する日の10日前までに「通知書」が届かない場合は、お手数ですが当局(所)までお問い合わせください。と記載されています。
在留期間の満了日から50日経過してもいまだに入管から通知が来ないときは明らかにイレギュラーな状況なので、すぐに申請をした入管に連絡しましょう。
入管側は個別具体的に「在留期限の特例」について申請者に教えてくれません。
「在留期限の特例」については、申請者本人が受け取る受付票にも通知書にもきちんと書かれているので、申請側が知ってて当たり前と判断されます。
「在留期間の特例」を知らないことで生じた不利益(オーバーステイ等)は、申請人側が受けることになります。
ご自分の在留期間の満了日には常に意識をして、在留手続きを忘れ在留資格が失効しないよう普段から注意しましょう。
この「在留期限の特例」は,在留期間のギリギリに申請をした方が,特に対象になる制度です。在留期間ギリギリに更新の申請をした/変更の申請をした,という方で,ご不安なことがある方は是非一度専門家にご相談ください。
「永住者の配偶者等」のビザを解説
在留資格「永住者の配偶者等」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「永住者の配偶者等」の在留資格に該当する方としては、永住者等の配偶者又は永住者等の子として日本で出生しその後引き続き日本に在留している者です。
「永住者の配偶者等」の該当例としては、永住者・特別永住者の配偶者及び日本で出生し引き続き在留している子などです。
「永住者の配偶者等」の在留期間は、5年・3年・1年又は6月です。
「永住者の配偶者等」の在留資格は、就労制限がないため、自由に仕事をすることができ、仕事のジャンルを問わず転職もできます。
また、「永住者の配偶者等」の在留資格には在留活動に制限がないので、大学や専門学校に通うこともできます。
日本において「永住者」の在留資格の申請する場合に、「永住者」と婚姻することにより、「永住者」の在留要件が短縮されます。
「永住者の配偶者等」の要件についての留意点を以下にてご説明いたします。
まず、永住者等の配偶者(夫または妻)の場合、永住者等の配偶者の身分を有する者であるといえることが必要です。
ここでいう「配偶者」とは、現に婚姻関係中の者を意味し、永住者等の方が既に死亡している場合や永住者の方と離婚した場合は含まれません。
また、婚姻は法的に有効なものである必要があるので、内縁関係や同性婚の場合には法的に有効な婚姻であるとは認められません。
さらに、この場合は、日本において夫婦で共同生活をすることを前提にしていますので、配偶者である永住者等の方と原則として同居する必要があります。
次に、永住者等の子である場合、永住者等の子として日本で出生し、出生後引き続き日本に在留する者であるといえることが必要です。
①出生時に父または母が永住者のビザをもって日本で生活をしていたこと又は②出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡したときに永住者ビザをもっていたことのいずれか一方に該当することが必要です。
また、ここでいう子とは「実子」を意味するので、嫡出子・認知された非嫡出子は子として認められますが、養子は含まれません。
そして、子は「日本で出生した」ことが必要です。
したがって、例えば母が海外で子を出産したために、日本国外で出生したという場合には、この要件が認められないことになります。
最後に、「永住者の配偶者等」の審査のポイントについてご説明いたします。
申請者が永住者・特別永住者と婚姻していることを前提に当該婚姻関係が偽装ではないことを証明することが最大のポイントといえます。
日本においては、偽装結婚については厳格に判断することになっており、上記の「永住者の配偶者等」の在留資格のような配偶者の在留資格を取得されたいと考えられている方は、婚姻関係が偽装ではないことを証明することが必要になりますので、「永住者の配偶者等」の在留資格についてご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。
2023年入管法改正の概要,「改悪」と言われる点はどこか
2023年6月9日に参議院本会議で入管法改正案が可決し、改正入管法が成立しました。
今回の改正入管法について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回の入管法改正の背景として、改正の目的として大きく分けて以下3つの課題が示されました。
現状の入管法が抱えていた「課題」
当局が考えていた課題としては,大きく3つのものがありました。
①送還忌避問題,②収容を巡る諸問題,③紛争避難民などを確実に保護する制度が不十分であること,の3つです。
課題①(送還忌避問題)は,退去すべきことが確定されたにもかかわらず退去を拒む外国人の存在に対しての課題です。
令和3年12月末現在で,特別な事情も理由がなく送還忌避(:帰りたくない,と言って拒むこと)をしている外国人は3224人いました。そのうち日本での前科がある人が1133人,さらに前科の内容として「実刑判決」を受けていた人が515人いました。
この515人を刑期別にみると,懲役1年以上3年未満の実刑が185人,懲役3年以上5年未満の実刑が141人,懲役5年以上7年未満が91人,懲役7年以上が98人いました。
これまでの入管法では,難民認定中の人は申請の回数や理由を問わず,また重大な罪を犯した者やテロリスト等であっても退去させることはできませんでした(送還停止効)。
このため過去に重大犯罪をおかし退去強制を受けている人が,退去を回避することを狙って難民申請を繰り返していることが指摘されていました。
課題②(収容を巡る諸問題)をどう解決していくかという課題です。
現行法では,退去すべきことが確定した外国人については,原則として,退去までの間,収容施設に収容することになっています。
しかしながらこれでは外国人が退去を拒み続けると収容が長期化しかねません。
収容の長期化を防止するためには現行法では「仮放免」制度を活用するしかありませんが,この制度はもともと,健康の理由等がある場合に一時的に収容を解除する制度で,逃亡等を防止する手段が十分ではありませんでした。
課題③(紛争避難民などを確実にする制度が不十分)
難民条約上の難民には必ずしも該当しないが、難民に準じて保護すべき紛争避難民などを確実に保護する制度がありませんでした。
改正法によって変わったところ
課題①の解決に向けて、今回の改正法では、以下の1~3の場合に送還停止効の例外を設けました。
- 難民申請は原則2回まで、3回目以降の難民申請は「相当の理由」がなければ申請を認めない。
- 3年以上の実刑に処せられた者はたとえ難民申請中であっても送還を可能とする。
- テロリスト等はたとえ難民申請中であっても送還を可能とする。
この改正部分が今回の入管改正法の審議の中で最も大きな争点となりました
法律の改正を訴えてきた入管は「この改正がなければ,理由なく難民申請を繰り返すことによって外国人が日本に居座ることができてしまう」と主張してきました。
そこには我が国の出入国在留管理行政を担う立場から、社会秩序の維持、公共の安全、適正で円滑な入国管理行政が根底にあるように思います。
この改正に反対する側の意見として,「日本の難民認定率は極端に低く,3回以上の難民申請を認めなければ本当の難民を見落とす危険性がある。本当の難民を強制送還して帰国させ,もし逮捕されて殺されたら取り返しがつかない」という点が挙げられていました。
この主張の根底には、少数者の人権保障が考え方あるように思います。
結果的に今回の入管法改正では入管側が求めるような法改正がなされた,ということになります。このため,今回の法改正が「改悪」と言われることもあります。
課題②に対応するため「監理措置」という制度が設けられました。
親族や知人など,退去強制対象者の監督等を承諾している者を「監理人」として選び,その監督の下で逃走を防止しつつ,収容しないで退去強制手続きを進めるというものです。さらに被収容者の収容を3か月毎に見直し,収容の必要のない者は監理措置に以降する仕組みを導入しました。
課題③に対応するものとして、今回の改正で「補完的保護」という認定制度を設けました。
紛争から逃れた人を難民に準じて保護するため「定住者」として在留資格を認めます。
また在留特別手続きの明確化が図られました。
以上がおおまかな入管法改正の目的です。
参考:出入国在留管理庁HP
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