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万引きで検挙されたら,ビザが変更できなくなる?
(解説のための事例はフィクションです)
C国籍のAさんは,「技能」の在留資格で日本に在留する外国人でした。
Aさんは,日本国内で転職活動を行い,貿易業を営んでいる日本の企業での就職が決まりました。Aさんはそれまで「技能」の在留資格でしたが,転職と同時に,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する,変更申請手続きをしており,現在は申請の結果待ちです。
ある日,Aさんは日本のスーパーで買い物をしていた時,出来心からお菓子を万引きしてしまい,店内を巡回していた私服の警備員に発覚してしまいました。その場に駆け付けた警察官は,さんを逮捕しないで取調べをしましたが,「これから何度か警察署に来てもらう」と言われました。
Aさんは,取調べを受けている間に自分のビザが変更されるのか,強制送還されてしまうのではないか等の不安が生じたため,専門家に相談することにしました。
強制送還される可能性について
事例のAさんのような万引きは,日本の窃盗罪にあたります。
窃盗罪に対しては,10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになります。
万引きの事件の場合,1件あたりの被害額はそこまで高くならないでしょうから,Aさんに前科がなければ不起訴,もしくは罰金で終わることが多いでしょう。
一方,強制送還されるのかどうかについてですが,窃盗罪で有罪となった場合,強制送還されてしまう可能性があります。
Aさんのような「技能」や「技術・人文知識・国際業務」のような在留資格は,いわゆる就労ビザと呼ばれるものです。この在留資格で日本に在留している人の場合,有罪判決を受けて
- 1年を超える実刑判決
- 一定の犯罪について懲役刑,禁錮刑の判決(執行猶予だった場合も含まれてしまう)
となると,強制送還されてしまいます。
Aさんも,窃盗罪で懲役刑の判決(執行猶予がついた場合も含む)を受けてしまうと,強制送還されてしまう可能性があります。
一方,不起訴で終わった場合や,罰金刑だけで終わったという場合には,すぐに強制送還されてしまうということはありません。
外国人の方の刑事事件の場合,起訴された/不起訴になった,というだけで,強制送還されるかどうかが大きく変わってしまうケースもあります。在留資格(ビザ)の問題に発展してしまう前に,刑事事件に強い弁護士事務所にご相談ください。
変更・更新の手続きでの不利益
ビザの更新・変更の手続きをしている時に刑事事件を起こしてしまったという場合,すぐに強制送還されなかったとしても手続に影響が出ることはあるのでしょうか。
Aさんの事例の場合,ビザの変更申請に影響が出る可能性は低いでしょう。あくまでまだ,検挙されたという場合,そこから不起訴/罰金/執行猶予,のいずれの処分となるかが未確定な段階になります。刑事事件としての処分が未確定であれば,すぐにはビザの申請には影響しません。通常,在留資格の変更の手続きの場合,どの資格に変更するかによっても変わりますが,就労系の在留資格だと,変更の手続きに係る日数は約30日程度です。この30日の間に強制送還となるような出来事が起きれば別ですが,通常そのようなことはありません。
Aさんも,万引きの事件で取調べを受けることになるでしょうが,在留資格の変更についてはそのまま審査が進められることでしょう。
ただし,その後の更新手続きでは不利益があるかもしれません。日本で万引きをしてしまったことや,それが理由となって罰金刑を受けたことがあるという事情は,日本での素行不良となります。次回の在留期間の更新では,期間が短くなってしまうことがあるでしょう。また,永住申請を考えている方の場合,罰金刑を受けたことは素行不良とみられますから,しばらくの間は永住申請が認められない可能性が高いとも言えます。
罰金刑を受けたなど日本での有罪判決について心配な方や不安なことがある方は,行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
下記のフォームからもお問い合わせいただけます。
難民認定とは何か,どのような手続きを取ればよいか
難民認定のための手続はどのようなものか
概要
日本は1981年に難民条約に加入しました。それに伴い国内で実施するため、1982年に難民認定制度が整備されました。
この制度により難民である外国人は難民申請を行い法務大臣から難民であるという認定を受けることができ、また難民条約に規定する難民としての保護を受けることができるようになりました。
ここでの「難民」とは、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者とされています。
難民認定手続きとは、外国人がこの難民の地位に該当するかどうかを審査し決定する手続です。
申請者、申請場所、申請の方法
難民認定申請は、申請者の住所又は現在地を管轄する地方入国管理局、支局及び出張所で行うことが出来ます。原則として申請者本人が申請します。
ただし、申請者が16歳未満である場合や病気その他の理由のより自ら出頭できない場合は、父母、配偶者、子、又は親族がその者に代わって申請を行うことが出来ます。
難民の認定は、申請者から提出された資料に基づいて行われ、申請者は難民であることを自ら集めた証拠又は関係者の証言をもとに立証する必要があります。
難民認定申請をしてから難民認定申請の結果(一次審査)がでるまで、「特定活動」の在留資格が認められます。申請から一次審査の結果がでるまで令和3年度は約32.2か月かかりました。令和3年度の難民認定処理数は6,150件、そのうち難民認定した者は65件、不認定は4,196件、申請取下げが1,889件でした。
一次審査の結果、難民認定申請が不認定となった又は難民の認定が取り消された外国人は、法務大臣に対して不服申立てをすることが出来ます。
不服申立てができる期間は、難民の認定をしない旨の通知又は難民の認定を取り消した旨の通知を受けた日から7日以内となっています。ただし、天災その他やむを得ない理由があるときは、7日経過後であっても不服申立てをすることができます。
不服申立ては、難民認定申請の場合と同様、不服申立て人の住所又は現在地を管轄する地方入国管理局、支局及び出張所で行うことができます。
令和3年度、不服申立て処理件数は7,411件、その内申立てに理由ありが9件、理由なしが6,732件、申立て取下げが670件となっています。
令和3年度、難民認定申請と不服申立てを合わせた処理件数は13,561件、そのうち難民認定されたのは74件、1年間の処理数から認定者数で割りだした難民認定率は0.5%でした。
難民申請後の在留変更について
現在の日本では、難民申請の認定率がここ10年1%以下で推移しています。
アメリカ、イギリス、フランス、カナダ、ドイツ等と比べて極端に低くなっています。
日本では、200人~300人に1人の例外を除いた難民申請者のほぼ全員が、いずれは本国への帰国を迫られることになります。
しかしながら日本で難民申請する方の多くは、簡単に本国に帰れない事情があり、日本に在留しなくてはならない事情があります。
現在の日本では、難民認定申請手続で在留資格を取得するのはほぼ不可能となっています。
こうした状況の中で日本に残る選択肢として、難民申請中の方でどうしても日本に残らなければならない事情のある方は、難民申請中の「特定活動」から他の在留資格変更申請を考えてみるのはどうでしょうか?手続上、難民申請の「特定活動」の在留期間内であれば、
他の在留資格の変更手続が可能です。この場合、通常の在留資格変更手続よりは厳しい審査になることは予測されますが、それでも日本に在留できる可能性は、難民認定申請の結果よりも高くなるのは間違いありません。
(参考文献:入管HP)
難民認定申請「特定活動」の在留資格についてご心配やお困りごとのあるという方は、
弁護士法人あいち刑事事件総合法律所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。
高度専門職ビザのポイント制度とは?自分は何点?
日本の入管法には,「高度専門職」という在留資格があります。
これは,特定の分野について秀でた能力や技術を持っている外国人の方について,日本での在留を優遇することにより,日本の技術力や生産力の向上を目指して作られた制度です。
年収,学歴や職務経験,研究実績等によって,「ポイント制」が設けられており,一定ポイント以上がある方であれば,「高度外国人材」として認められ,高度専門職の在留資格を取得することができます。
このポイント制について,法務省の資料を元に解説します。
ビザの申請,更新,変更,不安なら弁護士に頼みましょう
日本で生活する上で必ず必要なのがパスポートと在留カード。パスポートに関する手続きは,入国の前に自分の国で済んでいると思いますが,在留カードに関する手続きは,日本に来た後は日本国内で,自分でやらなければなりません。
日本に来てから始めて在留カードの手続きをするという方や,在留資格(ビザ)を変更したいと考えている方の中には,どこでどんな手続きをすればいいのか分からない,という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 (さらに…)
離婚後に定住者への在留資格の変更が認められた裁判例
日本人と離婚した外国人の方が,「日本人の配偶者等」から「定住者」への在留資格の変更を求めて裁判を起こした結果,裁判所が,在留資格の変更を認める方向の判決を出した事案について紹介します。
「在留資格の変更を認める方向」という,少し遠回しな言い方になっているのは,裁判所が直接「在留資格の変更と認めた」というわけではないからです。
この事案では,外国人の方が一度,在留資格の変更の申請(「日本人の配偶者等」→「定住者」)をしたところ,当時の入管が不許可の処分をしました。外国人の方は,この不許可処分の取り消しを求めて裁判を起こしたのです。
裁判例は,平成14年4月26日東京地方裁判所で判決が言い渡された事件です。それでは詳しく解説します。
帰国したいのに帰国できない方へ
日本のみならず,世界の情勢として人の移動,物の移動を制限する状況が長く続いています。
新型の感染症の影響によって,各国も国境を閉鎖したり,出国・入国の禁止や制限を設けていたりします。
日本に在留する外国人の方の中でも,「帰国したいのにできない」という方や,「在留期限が過ぎて帰国したいのに母国へ帰る飛行機がない」という方もいるかもしれません。
現在,日本政府は,「本国等へ帰国が困難な外国人に係る取り扱い」を発表しています。
これは,母国等に帰りたくても帰れない状況が続いている方への救済の措置になります。
内容としては次の2点です。この救済の措置は,入国制限や出国制限などによって母国等に帰れない期間が続いている間,継続することとされています。
短期滞在の在留期間の延長
短期滞在で日本に在留している方は,90日在留期間を延長できます。
もともと,短期滞在の在留資格については特別な事情がない限り在留期間の延長は認められていませんでしたが,帰国が困難な状況が続いている間オーバーステイとしないために,在留期間の延長が認められます。
但し,自動で延長されるものではありませんので,90日おきに手続きが必要です。手続を忘れてしまうとオーバーステイになってしまい,これから先5年間,もしくは10年間,日本に再入国できなくなってしまう可能性があるため注意しなければなりません。
「特定活動」への在留資格の変更
元々帰国する予定だったため,日本での仕事を辞めてしまった方や学校を辞めてしまった方については,在留資格を「特定活動」へ変更することが出来ます。
特定活動というのは,法律で定められている活動以外に個別の活動を指定して在留を認めるというものです。
そして,特定活動の在留資格の場合には,通常働くことは認められていませんが,
・「留学」の在留資格の方(元々留学生で出国準備中だった方も含む)
・「技能実習」,もともとが「特定活動(9号,12号,32号,35号,42号)」だった方
については,週28時間までのアルバイトも認められるようになりました。
これにより,元々の在留資格が取り消されたり資格外活動として検挙されたりするリスクを下げることが出来ます。なお,それ以外の在留資格の方であっても特定活動の在留資格へ変更することはできますが,その期間働くことはできません。生活費を得るためにアルバイトの必要がある場合には,資格外活動許可を得る必要があります。
特定活動に変更した場合の在留期間は6か月,ないし3ヶ月です。
ご自身として在留資格を変更する必要があるのかどうか分からない方や不安な方は一度弁護士にご相談ください。
留学生は卒業後,日本に残れるのか
今回は,留学の在留資格で在留する外国人の方が,学校を卒業した場合について解説します。
仕事を休んだら/退職したら,帰国しないといけない?
このページは,就労ビザ(在留資格)で日本に在留する方が,退職する場合や休職する場合に,在留を続けられるのかどうかを解説します。
就労ビザ(在留資格)について
就労ビザとは,日本で働くことを目的とした在留に認められる在留資格です。
就労ビザと呼ばれる在留資格には,経営・管理(以前の投資・経営の在留資格),法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,特定技能,技能実習,高度専門職が挙げらます。これらの在留資格は,それぞれに対応した職種で働くことを前提として認められている在留資格です。
そのため,「経営・管理」の在留資格で日本にいる方が本来の業務以外で教育の職に就いていたり,通訳業務等についていたりすると,資格外活動として刑罰や在留資格の取消処分が科される可能性があります。在留資格外の活動を行うことについては,出入国管理法において禁止され,刑事罰や行政処分の対象になっているのです。
では,「在留資格に沿った活動をしなかった」という場合には,どうなるのでしょうか。
具体的には退職するという場合,休職するという場合を考えてみます。
退職したら在留資格はどうなる?
退職することによって直ちに出国を命じられたり,在留資格が取り消されるということはありません。
出入国管理法には,就労ビザで在留している外国人が日本で退職した場合には,在留資格が取り消される可能性があることを定めています。
それが,在留資格の取消について定めた,出入国管理法22条の4という条文です。
出入国管理法22条の4
第6号 別表第1の上欄の在留資格をもつて在留する者が,当該在留資格に応じた同表の下欄に掲げる活動を継続して3月(カッコ内省略)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)。
元々認められた在留資格に関する活動を継続して3ヶ月以上,正当な理由なく,行わなかった場合には,在留資格を取り消すことがあると定めています。
そのため,退職して3か月以上働かないで何もしないで日本で生活していた場合には,在留資格が取り消されることがあるのです。
ここで重要なのは,「継続して3か月以上」活動をしていないこと,「正当な理由」がなければ在留資格は取り消されないということです。
ですので,退職してから3か月以内に別の同じ職に就いていれば(もちろん,在留資格で認められる範囲の職に限ります)在留を続けられますし,働いていない期間の累計が3か月を超えてしまっても継続していなければ問題はありません。なお,あまりに休みがちだと会社を解雇されてしまったり,在留期間の更新申請が不許可となってしまう可能性もありますので,注意しましょう。
また,正当な理由がある場合であれば在留資格は取り消されません。例えば,自主退職した後も転職活動を続けている場合や,会社が倒産してしまったため止むを得ず解雇されてしまい新しい仕事を探しているような場合,本人や家族が病気などのため一時的に仕事を辞める場合等,本人が仕事を続けたくても続けられないようなやむを得ない事情がある場合であれば,正当な理由があると見られます。
退職したり転職したりしても,在留資格が直ちに変わるわけではありません。ですので,在留資格で認められている範囲外の仕事は資格外活動になりますし,転職するまでの間の繋ぎとして短期間のアルバイトをした場合であっても資格外活動になる可能性があります。
☆退職後に他業種に転職する場合には在留資格の変更申請を忘れずに行いましょう。
休職したらどうなる?
休職している場合にも「継続して3か月以上」,「正当な理由なく」働いていないという場合かどうかによって,在留資格が取り消されるかどうか変わります。
例えば,旅行のために1ヶ月休みをとったという場合であれば「継続して3か月」になっていませんし,病気等の療養のために一時的に仕事を休んでいるという場合には正当な理由があるといえます。本人や家族が入院する必要がある場合等についてはそもそも在留資格を取り消さないという運用がなされています。
今,問題となっているのは,感染症等によって,会社の都合により出社できなくなった場合についでです。
会社の都合で出社できない場合,例えばリモートワーク(在宅勤務)となっている場合等も,きちんと働いているものと考えられますので,在留資格の取消とはなりません。在宅勤務をしていたことの証拠をとっておくためにも,会社でのメールや通話の履歴,Web会議などの履歴はある程度保存しておくと安全です。
更に,リモートワークのみならず,会社都合での休職となっている場合も,「正当な理由」があると言えるでしょう。会社都合での休職の場合には,労働基準法の基準に従って(平均賃金の6割以上),休業手当が支払われなければなりません。但し,会社都合の休職であっても,その間に副業等をする時には,資格外活動にならないように注意しなければなりません。本来の在留資格の目的外の活動を許可なく行ってしまうと,資格外活動として在留資格が取り消されたり,刑罰を受けたりする可能性があります。
まとめ
上記の内容をまとめると,次のようになります。
☆退職する場合には次の職が決まっているかどうか,どんな業種の仕事かによって,在留資格に必要な手続きが異なります。
☆休職する場合にはどんな事情によるのか,どれくらいの期間休むのかによって,在留資格の取消の可能性が変わってきます。
退職/休職の際の手続きに不安がある方は,在留資格を取り消されないためにも,また,今後の在留に関する手続きに禍根を残さないためにも,早めに弁護士などの専門家に相談されると良いでしょう。