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家出少女を泊めたら逮捕?未成年者誘拐罪で逮捕されたら強制送還になる?

2024-04-10

(事例はフィクションです)

Aさんは定住者の在留資格で,両親と一緒に東京都に在留している会社員(30代・男性)です。

ある日,AさんはSNSで「親と喧嘩をして家出したので泊めてください」という投稿を見つけて,そのアカウントと連絡を取り始めました。

SNSのDMをやり取りする中で,その相手は15歳の女子中学生であることが分かり,Aさんはその子と名古屋市内にあるビジネスホテルで会うことにしました。

Aさんはその時,性交等はしていないのですが,相手の両親が捜索願を出したため警察に見つかり,Aさんは愛知県警察中警察署にて,未成年者誘拐罪で逮捕されてしまいました。

Aさんの家族はAさんのことを心配して弁護士に相談することにしました。

未成年者誘拐罪での逮捕・刑罰

未成年者誘拐罪とは,未成年(18歳未満の人)を,監護者(親,保護者,親族等,面倒を見ている人)の下から外部に連れ出すことで成立します。

未成年者誘拐罪と愛知県青少年保護成条例違反とは

これは未成年者本人の同意があっても成立する犯罪で,有罪になった場合には3月以上7年以下の懲役刑が科せられる可能性があります。

未成年者誘拐罪は,未成年者を対象とした犯罪であることや懲役刑の定めがあることから,逮捕・勾留がなされやすい犯罪の類型です。また,前科がない人であっても有罪となれば実刑判決を受ける可能性も十分にあり得る犯罪です。

未成年者誘拐罪で逮捕されてしまった時にすぐに対応すべきなのは取調べに対する対応と,示談交渉です。

未成年者誘拐罪が成立するためには誘拐」にあたる行為が必要となります。「誘拐」とは,未成年者を監護者の支配下から連れ出すような言動で,無理やり連れて行くような行為ではなくとも「泊めてあげるよ/お金を貸してあげるよ/ご飯を奢ってあげるよ」と言ったような文言であっても「誘拐」に当たるとされています。このような言動があったか無かったかで,未成年者誘拐罪が成立するかどうかが変わってきます。

犯罪が成立しないと思われるような事案に対しては,取調べでその点を重点的に否定する対応が必要になります。

また,犯罪が成立することを争わない事案では起訴されないための弁護活動が重要です。
そのためには,被害者との示談交渉が必要になります。未成年者誘拐罪の場合,示談の相手は親権者・監護権者になります。親としては「子供を危ない目に遭わせた」と考え,峻烈な被害感情を持っている場合が多いですから,示談交渉については弁護士等の代理人が行うべきです。

未成年者誘拐罪で逮捕,取調べを受けているという方は刑事事件に強い弁護士に依頼して,適切なアドバイス,対応を求めましょう。

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特に,外国人の方の場合,未成年者誘拐罪で懲役刑を受けてしまうと,強制送還のリスクが飛躍的に高まります。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
入国警備員による調査
入国審査官による審査
(場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。
調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。
強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。
口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

住居侵入罪
公文書/私文書偽造罪
傷害罪,暴行罪
窃盗罪,強盗罪
詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています。

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件や入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例では未成年者誘拐罪という罪名で逮捕されています。
この罪名の場合,「別表1」の在留資格の方の場合は執行猶予がついても強制送還の対象となってしまいます。
一方,「別表2」の在留資格の場合には,1年を超える実刑判決の場合には強制送還の対象になります。

いずれにしても,起訴されないための弁護活動が非常に重要になります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,刑事裁判等を理由とした強制送還の場合,調査での一番の調査事項は,

一定の入管法によって処罰されたかどうか
一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。
なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。
これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。
審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。
元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。
一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
入国警備員による調査
入国審査官による審査
(場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

Aさんの事例では1年を超える実刑判決を受けた場合に,強制送還の対象に該当します。
Aさんは「定住者」の在留資格で,日本に家族もいるという在留状況ですから,この点を適切に主張していくことで,在留特別許可が得られる可能性がある事案です。
退去強制,在留特別許可に関する手続きについても,知識,経験が十分にある弁護士に依頼するのが良いでしょう。

まとめ

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には

・刑事事件の手続きで起訴されない事,なるべく軽い処分を獲得すること

・入管での手続きの中で,強制送還の対象とならないこと,在留特別許可を得る可能性を少しでも高めること

が重要です。

いずれかについて少しでも不安なことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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通訳業の人が薬物所持の疑いで逮捕?その後のビザはどうなるのか

2024-04-03

日本で通訳の仕事をしているAさん(在留資格は技術・人文知識・国際業務)は、大学時代に知り合った友人から、ある日、「気分が良くなる薬」を勧められました。
確かにその薬を使用すると、気分が落ち着くのですが、不安になったAさんが内容を尋ねると、いわゆる大麻であることが分かりました。
しかしその心地よさが忘れられなくなったAさんは、何度も大麻を使用し、ある日大麻を持って街を歩いているところを警察官に職務質問され、大麻取締法違反の罪で逮捕されてしまいました。

以上のような事案(フィクションです)を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。

大麻所持の刑事罰

Aさんは大麻を単純な自己使用目的で所持していました。
日本では大麻の所持は違法とされていますので、Aさんの行為は大麻取締法違反の大麻所持となります。
大麻所持の罰則は、大麻取締法24条の2に記載があり、

「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」

とされています。
Aさん自身大麻を所持していた認識はありますので、犯罪が成立することに争いはありませんが、そのような場合、Aさんにどのような処分となるのかが問題となります。
大麻所持の場合、初犯であっても裁判となる可能性が高い類型の犯罪です。ただ、いきなり刑務所に行くのではなく、執行猶予付き判決となることが予想されます。
⑵はこれを前提として検討していくことにします。

大麻取締法違反の刑罰,犯罪の成立要件についてはこちらもご覧ください。

大麻で逮捕 大麻取締法違反の刑罰・要件とは?

退去強制となるか

それでは、Aさんの刑事処分により退去強制(強制送還)となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。Aさんの在留資格は技術・人文知識・国際業務ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。
同条4項チには「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」という定めがあります。
要するに、薬物に関連する法律で有罪の判決を受けたものについては退去強制事由とするというものです。
まず、有罪の判決ですので、執行猶予付きであるかどうかは問われません。実刑判決でなくても退去強制事由となります。
また、今回は関係ありませんが、たとえ罰金刑であっても有罪の判決に変わりはありませんので退去強制事由となることと、別表第二の資格であっても退去強制事由となることにも注意が必要です。
ですので、このままではAさんは退去強制となりますので、在留特別許可をもらえない限り、強制送還されてしまうことになります。

退去強制(強制送還)について

強制送還の回避のためには、刑事事件で逮捕されてから入管に事件が移るまで、一貫した対応が可能なあいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
逮捕されてしまった、職務質問で大麻が見つかったという状態であれば0120-631-881までお電話ください。

弁護活動

既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。
①起訴猶予を目指す方向
大麻所持を認め、反省の意を示し、再犯防止の具体的な取り組みを行うなどして、何とか起訴猶予処分を得る方法が考えられます。
覚醒剤事件であればこの方向は相当困難ですが、大麻所持の場合には起訴猶予となることもないわけではないようです。
ですので、可能な限りの方法で検察官に働きかけを行い、何とか処分を回避するということが考えられます。

②故意を否認する方向性
有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が持っているものが何らかの違法薬物である」という認識が
あるかどうかというところになります。
所持に至る経緯や携帯電話の内容などを踏まえて検討されるところですが、故意を否認するためには何よりも黙秘を行うことが大切です。黙秘権を行使しせず何らかの供述をしてしまえば、否認は困難になっていきます。

①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。

①の場合、再犯防止計画の策定には通常時間を要しますから、いち早く家族などの方に連絡を取れるように働きかけを行い、取り組みの準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。

退去強制を回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。

留学生が詐欺罪で逮捕されてしまった,ビザはどうなる?

2024-03-21

日本の大学に留学しているAさんは、大学の友人から「高額な時給のアルバイトがある。電話で指示された家に行き、家の人から封筒を受け取るだけの仕事なので、違法なものではない」と聞かされ、その報酬が高額であったことからこれを引き受けることにしました。
Aさんが指示された家に近付くと、電話で指示役から偽名を名乗ることや、弁護士事務所から来た使いの者であることを相手の人に伝えるよう言われました。
実際にAさんが行ってみると、高齢の男性がAさんに対して封筒を手渡してきました。

封筒を受け取っただけで仕事が終わりだと思っていたAさんでしたが、電話で指示役から中に入っているカードを取り出すこと、ATM機でおろせるだけ現金をおろすよう言われたため、そのままATMから預金約500万円を引き出しました。
引き出したお金とキャッシュカードについては、指定された駅のコインロッカーに入れ、おろしたお金からAさんは報酬として10万円を受け取りました。

以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。

窃盗罪の刑事罰

Aさんが行ったことは、いわゆる特殊詐欺に類するようなものです。罪名としては窃盗罪となりますが、実体的には人(高齢者)を騙してクレジットカードを受け取り、現金を引き出すというものですので、感覚的には詐欺に近いところです。
窃盗罪は刑法235条に定めがある罪で、その法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。10年以下と極めて重い罪になっていますが、これは被害額によって法定刑の区分がないからです。

窃盗罪の具体的な刑罰を決める際には、

  • 被害額がいくらであるか
  • どのような目的で盗んだか
  • 被害回復がなされているか
  • 何回目の検挙であるか

が大きな考慮要素となります。
①まず被害額ですが、これは単純に多ければ多いほど重くなるということになります。ただ、1000円と1万円で比較すると1万円のほうが10倍悪いという単純なものではありません。
②目的ですが、自分で使用する目的などが通常だと思われますが、転売目的や組織的な窃盗だと重く見られます。
窃盗罪は財産に関する犯罪です。ですので、財産的な補填が被害者になされているかどうかも重要です。
④最後に、前科前歴があるかどうかも処分の考慮要素となります。

ところで、同じ「窃盗罪」で処罰されるものに、いわゆる万引きがあります。しかし、1回数千円程度の万引きと、被害が出た場合には数十万円~数百万円と高額な被害が発生する特殊詐欺では、当然刑の重さが異なります。窃盗罪には罰金刑の定めがあり、万引き等では略式処分となることがありますが、特殊詐欺ではこのような処分になることは考えられません。

今回のAさんの行為も、後述の点を争わなければ窃盗罪が成立し、被害額が500万円と極めて大きいものであるため、実刑の判決となることが予想されます。

弊所HPでも特殊詐欺について詳しく解説をしています。

東京目黒 逮捕 特殊詐欺事件(窃盗,詐欺事件の未遂の成否)

退去強制となるか

それでは、Aさんの刑事処分により退去強制(強制送還)となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは留学ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。
同条4の2には

別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」

という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となります。
窃盗罪は刑法第36章の罪です。そのため、仮にAさんが窃盗罪で有罪となってしまった場合には、罰金刑とならない限り退去強制となってしまいます。特に特殊詐欺のような事件の場合には、罰金刑となることが考えにくい部類の事件ですので、有罪になるということはイコール退去強制事由に該当と考えてもよいと思われます。

弁護活動

既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。

①被害弁償を行う方向性

自身が行ったことで被害者の方に被害が生じたことには間違いありませんので、被害者の方へ被害弁償を行い、起訴猶予を目指すという方向性があり得ます。
ただ、既に述べた通り、この手の事件では被害額が高額になることが多いところです。また、法律上は自身が得た報酬(Aさんの場合であれば10万円)に留まらず、被害額全体(Aさんの場合では500万円)を返済しなければならない義務が生じるところですから、示談金の額が高額となってしまう可能性もあります。
また、このような事件の場合、複数回犯行に関与していると繰り返し逮捕されることも多いところです。回数が多ければ示談をしても起訴猶予とならない可能性が高まるほか、示談金の額も高額になりかねない(複数件全部の被害弁償を行うため)ところですので、資力が求められるところです。

②故意を否認する方向性

有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が行っていることが、詐欺のようなお金を盗る行為である」という認識があるかどうかというところになります。
指示役から何の説明も受けず、単なる事務手続きとして一連の行動をしていたような場合には、詐欺に加担していた意識がなかったということで故意を否認することが考えられます。
検察官が故意の証明が困難であると考えた場合には、不起訴(嫌疑不十分)となる可能性があります。

①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。
①の場合、示談交渉には通常時間を要しますから、いち早く被害者の方に連絡を取れるように働きかけを行い、また示談金の準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。

退去強制を回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。

外国人の方が逮捕されてしまった場合や、刑事事件に関わってしまったという場合、刑事事件・入管事件のどちらにも知識と経験のある弁護士に早急に相談しましょう。

刑事事件、入管事件のどちらの段階からでも相談することができます。

お問い合わせは0120-631-881,03-5989-0894のいずれか、HPの方はこちらからお問い合わせください

脅迫で逮捕されたらどうなるのか,強制送還される可能性はあるのか

2024-03-06

(事例はフィクションです)

Aさん(外国籍,日本人の配偶者等・3年)はある時,日本に在留している外国人コミュニティー内でお金の貸し借りからトラブルになってしまいました。
Aさんは知人に,お金を返してもらおうと思ってつい強い口調になってしまい,これに怯えた被害者の方が警察に相談したところ,Aさんは脅迫の犯人として原宿警察署で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は,これからどうなるのか不安に思い刑事事件に強い弁護士事務所に相談することにしました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕された方の下へ弁護士を派遣する初回接見サービスを行っています。
弊所の東京支部から原宿警察署までの初回接見費用は3万5530円(接見日当3万3000円,交通費2530円)です。
原宿警察署で逮捕されてしまったという外国人の方,そのご家族やご友人の方は「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。

脅迫罪による逮捕

脅迫罪は刑法222条1項に定められている犯罪です。

脅迫罪
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。

人を「脅迫した」場合に成立する犯罪です。Aさんのように「お金を貸した/返済してほしい」という立場であっても,言動があまりに強すぎた場合,脅迫に該当する可能性があります。
上記の事例のように,知人同士での間柄の事件の場合,事件の蒸し返しや不当な働きかけをすることを疑われるため,逮捕されてしまうという事例が多くあります。

また,事件を起こしてしまったことを争わなかった場合,被害者と示談ができなければ起訴されてしまい,有罪の判決を受けてしまいます。
脅迫罪で起訴されてしまった場合,前科がなかったとしても懲役刑が科されてしまう可能性もあります。懲役刑が科されると,外国籍の方の場合,在留資格に大きな影響があります。
在留資格への不利益を一番に避けるためには,起訴されないための弁護活動,すなわち被害者との示談交渉が重要です。
不起訴処分となれば,脅迫罪の場合,直ちに強制送還となる可能性を最小限まで引き下げることができます。

脅迫罪の示談交渉についてお困りの方は,「無料相談・出張相談」までお問い合わせください。

無料相談・出張相談

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例の場合,日本人の配偶者のビザであり,かつ,脅迫罪による懲役刑ということであれば直ちに強制送還とまでなる可能性は高くありません。
Aさんの立場でいうと,「1年を超える懲役刑」を科された場合に,強制送還となります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「1年を超える懲役刑」となった場合には強制送還になってしまう可能性が高くありますが,Aさんの事情を考慮すると,在留特別許可をもらえる可能性もあります。
また,すぐに強制送還にならないとしても,次回の在留期間の更新の際に不利な事情となってしまいます。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事の手続の中で早急に示談をして不起訴処分を獲得することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

技能実習生のオーバーステイ事案,逮捕されてしまうのか?入国管理局へ出頭した方が良い?

2024-01-10

【事例(フィクション)】

Aさんは、技能実習の在留資格で来日し、技能実習生として日本の工場で働き始めました。
当初は慣れない日本で、日本語を勉強しながら技能実習生として頑張って働いていました。
ところが、長時間労働にもかかわらず、残業代は払われず、元々の賃金も低く、渡航費用のためにした借金も全然減っていかないAさんは、精神的に追い詰められて、技能実習先から逃げ出してしまいました。
その後、技能実習の在留期間が切れてしまったAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されるのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。
まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

【オーバーステイ(不法残留)とは】

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。
法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。
オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイとなってしまう理由は人それぞれ様々でしょう。

更新の期限を忘れていた場合や,更新手続きが認められなかったという場合,何らかの理由で出入国管理局に手続きに行くことができなかったなどなどの理由が考えられます。期限内に手続きをしていたのにオーバーステイになってしまったという方もいるかもしれません。その場合,在留期間の特例があります。特例についてはこちらでも解説をしています。

在留期間更新とその特例,期限を過ぎてしまったらどうなるのか

【オーバーステイ発覚前のお悩みについて】

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は
①入管に出頭すべきか
②発覚したらすぐに逮捕されるのか
③もう日本に残ることはできないのか
④出国までずっと入管に収容されるのか
⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①入管に出頭すべきか

②~⑤で説明しますが、オーバーステイ状態になってから時間が経てば経つほど状況は悪化しかねず、出頭をしないままオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰のリスクが高まります。
手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

②発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

③もう日本に残ることはできないのか

オーバーステイは退去強制の対象となります。退去強制の手続きにかかった外国人の方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
もっとも、日本人の配偶者や日本での養育が必要な子がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られることもあります。
オーバーステイ状態を放置していても、日本での不安定な地位が続くだけなので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応を考えましょう。

④出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、入管に収容されることがあります。
もっとも、Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。
出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

⑤オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。
逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。
刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していたら状況は悪化していくかもしれないので、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

密航で日本に来たことが発覚するとどうなる?不法入国での逮捕,強制送還はどうなるのか

2023-12-13

事例

以下の事例はフィクションです。
外国人のAさんは、密航によって日本に来ました。
日本で生活していく中でAさんは、日本人と恋をして結婚し、2人の間には子どもが生まれました。
日本でできた家族と一緒に暮らしてきたAさんでしたが、ある日、Aさんと同じように日本に密航をしてきた同郷の知人が、不法滞在で逮捕されたらしいと、風の噂で聞きました。
Aさんは、自分も不法滞在が発覚して逮捕・収容され、本国へ強制送還されるのではと不安で、眠れない日々が続いています。

不法入国・不法上陸と退去強制

不法滞在という言葉がありますが、この言葉には、適法に日本に入国・上陸した後、在留資格の期限が過ぎても日本に滞在し続ける不法残留(オーバーステイ)と、密航等、日本への入国・上陸自体が違法である不法入国・不法上陸の外国人の滞在が含まれます。
オーバーステイ、不法入国・不法上陸といった事情で不法滞在中の外国人の方は、退去強制の対象となります。

不法入国・不法上陸発覚前のお悩みについて

Aさんのように、不法入国・不法上陸がまだ入管や警察に発覚していない外国人の方は
①発覚したら逮捕されるのか
②もう日本に残ることはできないのか
③出国までずっと入管に収容されるのか
④不法入国・不法上陸の刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。

①発覚したら逮捕されるのか

逮捕、収容、退去強制といったことが怖くて出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や、同じく不法滞在をしている知人の逮捕等のきっかけで不法滞在が警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。

不法入国,不法滞在についてはこちらでも解説をしています。

うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?

②もう日本に残ることはできないのか

不法入国・不法上陸は退去強制事由にあたりますので、それでも日本に残るための手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
また、一般的に、来日の入口が適法であるオーバーステイに比べて、来日の入口から違法である不法入国・不法上陸の方が、在留特別許可の判断にあたってマイナスにはたらくことが多いです。
もっとも、Aさんのような、日本人の配偶者がいて、子どももいるという事情は、在留特別許可の判断にあたってプラスになります。
他にも、違反の悪質性、日本での在留期間、婚姻期間、子どもの年齢や日本での養育を必要とする事情、退去強制歴はないか、日本での行状等、様々な要素が絡むので一概には言えませんが、不法入国・不法上陸の場合でも、在留特別許可が得られるケースはあります。

在留特別許可の判断についてはガイドラインが策定されており,判断の参考になります。

不法入国・不法上陸により日本に滞在している方は、いつまで経っても不安定な地位は解消されないままなので、入管に出頭し、真摯な態度を示した上で在留特別許可を得るための努力をするということも検討されてはいかがでしょうか。
在留特別許可が得られる見込みについては、前述のとおり様々な事情が絡む問題なので、おひとりで悩まずに、まずは専門家である弁護士等に相談することをおすすめします。

③出国までずっと入管に収容されるのか

不法入国・不法上陸のような退去強制事由にあたると判断されると、多くの場合は、入管に収容されることになります。
もっとも、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

④不法入国・不法上陸の刑罰はどうなるのか

これも事情によるので一概には言えませんが、懲役刑については、執行猶予が付いて刑務所には入らずにすむケースが多いです。
刑罰についてもご不安であれば、弁護士に相談しましょう。

おわりに

不法入国・不法上陸により日本に滞在している外国人の方は、いつまで経っても終わらないお悩みをそのままにしておくより、出頭して在留特別許可を得るという対応等について、まずは弁護士等の専門家にご相談ください。

うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?

2023-11-22

事例

(フィクションです)

Aさんは、技能の在留資格(いわゆる就労ビザの中の1つ)で来日し、調理人として日本のお店で働いてきました。

在留期間の終わりが迫る中、Aさんは日々のお店での業務が忙しく、在留資格の更新手続きを後回しにしていたところ、うっかり在留期間を過ぎることになってしまいました。

後で在留期間が過ぎてしまったことに気付いたAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されて本国へ退去強制させられてしまうのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。

まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。

オーバーステイ(不法残留)とは

オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。

法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。不法残留によって逮捕、起訴されてしまうと法律上、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課されます。

オーバーステイは、退去強制の対象となります。

オーバーステイ発覚前のお悩みについて

オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は

  • 入管に出頭すべきか
  • 発覚したらすぐに逮捕されるのか
  • もう日本に残ることはできないのか
  • 出国までずっと入管に収容されるのか
  • オーバーステイの刑罰はどうなるのか

といったことでお悩みかと思います。

以下、順に見ていきましょう。

関連記事はこちら

オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?

入管に出頭すべきか

オーバーステイ状態になってからは、時間が経てば経つほど状況は悪化し、出頭をしないままでオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰といったリスクが高まります。

手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。

発覚したらすぐに逮捕されるのか

出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や交通違反の時の手続等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。

「入管への出頭≠警察での逮捕」ですから,もしも日本での在留を希望する場合には早めに手を打たなければいけません。

もう日本に残ることはできないのか

在留期間の最後の日から2か月以内であれば、在留資格更新の「特別受理」といって、更新を申請できて許可されることがあります。

特別受理が認められるのは、病気や怪我などのやむを得ない事情で在留期間中に更新手続きを行えなかった場合が典型ですが、Aさんのようにうっかり在留期間を過ぎてしまった場合でも、他の事情次第で認めれらる余地があります。

2か月を過ぎてしまっていたり、事情により特別受理が認められないのであれば、オーバーステイの方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。

在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。

もっとも、Aさんのように、うっかり在留期間を過ぎただけで他には退去強制にあたることはしていない方の場合は、日本で長期間生活している、日本に家族がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られる可能性があります。

オーバーステイを放置して時間が経てば経つほど、隠れながらあえて残留し続けていたと見られ、在留特別許可の判断は厳しくなっていきますので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応しましょう。

出国までずっと入管に収容されるのか

オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、手続き上,全ての事件で入管に収容されることになります。

これを「全件収容主義」といい,入管当局は基本的に「退去強制事由がある事件については全ての事件で収容のための手続きをとる」としているのです。

ただ,入管に収容する手続きが取られてしまっても,例外的に釈放する手続きが設けられています。

Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。

出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。

出国命令制度についてはこちらに法務省の説明があります

また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。

仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。

オーバーステイの刑罰はどうなるのか

オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。

逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。

【まとめ】

以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していても状況は悪化していくだけです。

  • 日本に残り続けたい
  • 入管での収容を避けたい

という方は,速やかに弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。

外国人による公然わいせつ事案の法律解説

2023-11-15

外国人の方がしてしまった公然わいせつも,日本国内においては日本人と同様に処罰されてしまいます。

特にスポーツの応援などから気分が盛り上がってしまい公共の場で露出をしてしまったという事案や,仕事等のストレスから夜間に路上で露出をしてしまうという事案があります。

日本に在留する外国人の方が公然わいせつをしてしまったという事例を基に,刑事手続やビザへの影響について解説をします。

参考事案 公然わいせつ容疑で男性を逮捕 大分 BS大分放送

公然わいせつ罪についての詳しい解説はこちら

公然わいせつ罪の定義

公然わいせつ罪は、日本の刑法第174条に定められています。この罪は、「公然と」「わいせつな行為」を行うことによって成立します。

「公然」とは、不特定または多数の人が認識しうる状態を指します。この定義には、実際に多数の人に認識されたことは必要なく、認識される可能性がある状況が含まれます。例えば、公園や路上での性器露出などがこれに該当します。周囲に人がいなかったとしても、通行人が通れば認識される可能性があるため、「公然と」に該当します。

「わいせつな行為」とは、性的な行為であり、普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するものを指します。これには、性器の露出や性的な行為が含まれます。行為者自身や他者の性欲を刺激、興奮させる動作がこれに該当します。

公然わいせつ罪は、社会の健全な性風俗を守るための規定と解されており、時代背景や行為の目的など様々な事情を考慮して判断されます。この罪には、6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、または科料が科されることがあります。

外国人による公然わいせつ

公然わいせつ罪の具体的な事例として、外国人による公然わいせつ行為を考えてみましょう。

事例の紹介

(以下の事例はフィクションです)

ある外国籍の男性Aさんが、夜間に酒に酔って全裸で東京都内の路上を走り、警察に逮捕されました。この行為は、公然として周囲の人々に認識され得る状態で行われたため、公然わいせつ罪に該当します。

法的問題点の分析

この事例では、外国人であるがゆえの文化的背景や意図が考慮される可能性があります。

しかし、日本の法律は行為の性質と公共の場での行為の影響を重視します。公然わいせつ罪の判定においては、行為が普通人の正常な性的羞恥心を著しく害し、善良な性的道義観念に反するかどうかが重要な判断基準となります。

この事例においては、文化的な誤解や知識不足により行動した可能性があるため、法的対応においては教育的な側面も考慮されるべきです。また、被告人が再犯を防止するための環境を整えること、例えば専門のカウンセリングを受けることも重要です。

法的な対応と刑罰

このような事例での公然わいせつ罪に対する法的な対応と刑罰について詳しく見ていきましょう。

公然わいせつ罪の法定刑

公然わいせつ罪(刑法第174条)には、以下のような刑罰が定められています。

  • 6ヶ月以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する自由刑)
  • 科料(1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰)

刑事手続とAさんのビザ

逮捕されたAさんはその後,48時間以内に検察庁へ,さらにその後24時間以内に裁判所へ送られ,最大20日間の勾留を受けるかどうかの審判を受けます。

勾留されたとしても,釈放されたとしても,その後の捜査の結果として,罰金刑や懲役刑を受けて,日本での前科がついてしまう可能性があります。

長期間の身体拘束を受けてしまうと,仕事等に行けないだけでなく,出入国管理局での必要な手続きも出来なくなってしまいます。例えばビザの取得,更新,変更等のような窓口での手続きが行えないと,場合によってはオーバーステイとなってしまうことがあります。逮捕や勾留をされている間にオーバーステイとなってしまうと,入管からは強制送還の処分を受けるリスクがあります。

また,罰金や前科がついてしまうことで,その後のビザの更新・変更が不許可となったり,強制送還のリスクが生じてしまいます。

総じて,刑法犯によって逮捕されるということは,外国人の方にとって強制送還リスクを高めるものなのです。

逮捕された直後から弁護士への早急な相談を行いましょう。早期から弁護士が活動することによって

  • 逮捕後の身体解放
  • 勾留期間の短縮
  • 刑事処分の回避

といった,ビザへの影響を最小限にするための弁護活動も行える場合があります。

東京都内で逮捕された外国人の方の面会についてはこちらからもご相談いただけます

強制送還を避けて日本に滞在するためのビザについてはこちらでも解説しています。

外国人の逮捕の問題点

示談と被害者への対応

公然わいせつ罪における示談の重要性と被害者への対応について詳しく見ていきましょう。

示談の重要性

公然わいせつ罪の場合、示談は法的解決に向けて重要なステップとなります。示談は、被害者と加害者双方が合意に達し、被害者が加害者に対する告訴を取り下げることを意味します。示談が成立すると、裁判所はこれを量刑の際に考慮することが一般的です。起訴される前であれば,不起訴の処分を得られる可能性が高まります。

示談は、被害者の精神的な苦痛を和らげ、加害者にとっても刑事責任を軽減する機会を提供します。

示談のプロセス

示談のプロセスには、被害者への謝罪、弁償の提案、合意書面の作成といった準備進みます。

このようなプロセスは、弁護士が代理人として行うのが望ましいです。

被害者への対応

公然わいせつ罪の被害者への対応は、精神的なケアが重要です。被害者は、性的な羞恥心やトラウマを抱えることがあり、適切なサポートと理解が必要です。加害者による誠実な謝罪や弁償は、被害者の心の傷を癒す一歩となり得ます。

示談は、公然わいせつ罪における法的解決の一環として、被害者の感情的な回復と社会的な和解を促進する重要な役割を果たします。このプロセスを通じて、被害者と加害者双方にとって公正で納得のいく解決が図られることが望まれます。

外国人加害者の再犯防止と社会復帰

公然わいせつ罪において外国人加害者の再犯防止と社会復帰の重要性に焦点を当ててみましょう。

外国人加害者に特化した再犯防止措置

外国人加害者の場合、再犯防止措置は文化的背景と言語の違いを考慮する必要があります。異文化間コミュニケーションや文化的適応に関するカウンセリングも重要となります。これらの措置は、加害者が日本の社会規範を理解し、将来的に同様の過ちを犯さないようにするために不可欠です。

外国人加害者の社会復帰支援

外国人加害者の社会復帰支援には、言語教育や職業訓練が含まれます。これらの支援は、加害者が日本社会での生活に適応し、健全な生活を送るための基盤を築くのに役立ちます。また、文化的適応を支援するプログラムも、外国人加害者にとって重要です。

外国人加害者の社会復帰の重要性

外国人加害者の社会復帰は、彼らが日本社会の一員として再び機能する機会を持つことを意味します。これは、文化的な違いを乗り越え、再犯のリスクを減らすために重要です。外国人加害者に対する社会復帰支援は、彼らだけでなく、日本社会全体の安全と健全性を保つためにも重要な役割を果たします。

外国人加害者に対する再犯防止と社会復帰支援は、文化的な違いを理解し、個人の改善と社会の安全を両立させるための重要なステップです。これらの措置を通じて、外国人加害者が日本社会の有益なメンバーとして機能する道を築くことができます。

まとめ

公然わいせつ罪に関わる事案においては、弁護士への早期相談が非常に重要です。

弁護士は、法的な側面からのアドバイスを提供し、加害者や被害者の権利を保護する役割を果たします。

特に外国人が関与する場合、言語の壁や文化的な違いによる誤解を避けるためにも、専門家の介入が不可欠です。早期の法的介入により、適切な法的対応が可能となり、示談の成立や社会復帰の道がスムーズに進むことが期待されます。

傷害,器物損壊罪で強制送還になるのか?在留資格への影響はどうなるのか

2023-11-08

報道によると,外国人の男性がタクシー運転手に対する傷害罪で逮捕され,さらに余罪として器物損壊が疑われていると報じられました。

2023年10月25日付 FNNプライムオンライン

この方のように,傷害罪や器物損壊罪について検挙された場合,ビザにはどのような影響があるのでしょうか。

退去強制とは

日本に正規で在留している外国人の方は,どなたも何かしらの在留資格をもって在留しています。

正規の資格をもっていたとしても日本で何かしらの法令の違反や,入管の手続の違反があった場合には,強制送還の対象となってしまう場合があります。

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

報道では,当該外国人の方の在留資格までは分からないのですが,仮に永住者,日本人の配偶者等,定住者といった,いわゆる別表2の在留資格の場合には,直ちに強制送還の対象となるものではありません。

一方,留学や就労系の在留資格,家族滞在のように,別表1の資格の場合,逮捕・起訴されて有罪の判決を受けて執行猶予となってしまうと強制送還の対象となってしまいます。

在留資格の種類によって,強制送還の対象となるかどうかが変わってくるような事案です。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

報道の事例では,在留資格の種類によっては強制送還の対象となり得るものです。また,逮捕されてしまうとそれ自体によって資格の変更や在留期間の更新といった各種手続きが滞ってしまい,オーバーステイとなってしまう可能性もあります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には,刑事事件の中で不起訴を目指すという活動と,その間に在留資格が失われてしまうことがないようにするための活動,刑事事件後に退去強制手続きが掛かってしまうとしても在留特別許可を目指すための活動が重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

強制送還されたことがあっても再入国はできる?上陸特別許可の解説

2023-11-06

「上陸特別許可」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

「上陸特別許可」とは、一般的には入国拒否期間中であるにもかかわらず、日本への入国が認められる許可のことをいいます。

「上陸特別許可」は、いわゆる入管法第12条に定められています。

上陸拒否期間中は原則として日本に入国することはできませんが、当該期間が経過したことにより必ず日本に入国できるというわけではありません。

上陸拒否期間経過後は「上陸拒否期間中のため」という理由により日本への入国が拒否されることはありませんが、他の別の理由で拒否される可能性はあります。

つまり、上陸拒否期間が経過することと、「日本人の配偶者等」などの在留資格が与えられることは全くの別の問題となります。

退去強制された外国人が過去に日本で法律違反を繰り返している場合などには、日本に正式な配偶者と実子がいても全くビザが許可されない事もあります。

あくまでも、過去の滞在状況と今回の呼び寄せる理由とを比べて総合的に判断されることになりますので、形式的に上陸拒否期間が経過したことだけをもって在留資格が認められるというわけではないことに注意が必要です。

また、一度退去強制されてからどれくらいの期間が経過すれば上陸特別許可が認められるかについては一概に何年という基準はありません。

退去強制事由によっても異なりますが、一般的には退去強制されてから3~4年程度経過した場合に許可されるケースが多いようです。

ただし、「上陸特別許可」は「在留特別許可」と同様に正式に認められた申請ではなく、日本への入国に際しても相当の理由が必要となるため、誰に対しても許可がおりるわけではなく、何度申請しても不許可となる可能性もあります。

「上陸特別許可」を申請する外国人を取り巻く環境などにより異なるので、一概に退去強制から何年経過すれば入国ができるということは出来ません。

そこで、事前に在留資格認定証明書交付申請を行い、あらかじめ上陸拒否者であることを前提とした審査を経る必要があります。

上記のように、「上陸特別許可」は正式に認められた申請ではないことから、どのような条件であれば認められるかが非常に難しいものになります。

「上陸特別許可」についてお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

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