通訳業の人が薬物所持の疑いで逮捕?その後のビザはどうなるのか

日本で通訳の仕事をしているAさん(在留資格は技術・人文知識・国際業務)は、大学時代に知り合った友人から、ある日、「気分が良くなる薬」を勧められました。
確かにその薬を使用すると、気分が落ち着くのですが、不安になったAさんが内容を尋ねると、いわゆる大麻であることが分かりました。
しかしその心地よさが忘れられなくなったAさんは、何度も大麻を使用し、ある日大麻を持って街を歩いているところを警察官に職務質問され、大麻取締法違反の罪で逮捕されてしまいました。

以上のような事案(フィクションです)を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。

大麻所持の刑事罰

Aさんは大麻を単純な自己使用目的で所持していました。
日本では大麻の所持は違法とされていますので、Aさんの行為は大麻取締法違反の大麻所持となります。
大麻所持の罰則は、大麻取締法24条の2に記載があり、

「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」

とされています。
Aさん自身大麻を所持していた認識はありますので、犯罪が成立することに争いはありませんが、そのような場合、Aさんにどのような処分となるのかが問題となります。
大麻所持の場合、初犯であっても裁判となる可能性が高い類型の犯罪です。ただ、いきなり刑務所に行くのではなく、執行猶予付き判決となることが予想されます。
⑵はこれを前提として検討していくことにします。

大麻取締法違反の刑罰,犯罪の成立要件についてはこちらもご覧ください。

大麻で逮捕 大麻取締法違反の刑罰・要件とは?

退去強制となるか

それでは、Aさんの刑事処分により退去強制(強制送還)となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。Aさんの在留資格は技術・人文知識・国際業務ですので、在留資格としては別表第1の資格となります。
同条4項チには「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」という定めがあります。
要するに、薬物に関連する法律で有罪の判決を受けたものについては退去強制事由とするというものです。
まず、有罪の判決ですので、執行猶予付きであるかどうかは問われません。実刑判決でなくても退去強制事由となります。
また、今回は関係ありませんが、たとえ罰金刑であっても有罪の判決に変わりはありませんので退去強制事由となることと、別表第二の資格であっても退去強制事由となることにも注意が必要です。
ですので、このままではAさんは退去強制となりますので、在留特別許可をもらえない限り、強制送還されてしまうことになります。

退去強制(強制送還)について

強制送還の回避のためには、刑事事件で逮捕されてから入管に事件が移るまで、一貫した対応が可能なあいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
逮捕されてしまった、職務質問で大麻が見つかったという状態であれば0120-631-881までお電話ください。

弁護活動

既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。
①起訴猶予を目指す方向
大麻所持を認め、反省の意を示し、再犯防止の具体的な取り組みを行うなどして、何とか起訴猶予処分を得る方法が考えられます。
覚醒剤事件であればこの方向は相当困難ですが、大麻所持の場合には起訴猶予となることもないわけではないようです。
ですので、可能な限りの方法で検察官に働きかけを行い、何とか処分を回避するということが考えられます。

②故意を否認する方向性
有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が持っているものが何らかの違法薬物である」という認識が
あるかどうかというところになります。
所持に至る経緯や携帯電話の内容などを踏まえて検討されるところですが、故意を否認するためには何よりも黙秘を行うことが大切です。黙秘権を行使しせず何らかの供述をしてしまえば、否認は困難になっていきます。

①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。

①の場合、再犯防止計画の策定には通常時間を要しますから、いち早く家族などの方に連絡を取れるように働きかけを行い、取り組みの準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。

退去強制を回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。

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