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外国人に対する判決期日での手続

2022-09-05

日本に在留する外国人の方が日本国内で刑事裁判を受ける場合,判決の結果によって在留資格が影響を受けたり,退去強制に関する手続きが開始されたりします。

2021年の統計資料によると,2021年のうちに日本で起訴された外国人は7932人になります(検察統計調査2021年罪名別 起訴又は起訴猶予の処分に付した外国人被疑事件の国籍別人員)。

この人数は,有罪となった人,無罪となった人の両方を含みますが,大半の人が何らかの罪名で有罪の判決を受けたであろうと推測されます。

起訴された方の罪名として,特に数が多いのが,窃盗罪(1716人),出入国管理及び難民認定法違反(2270人)です。

これらの罪名について,判決の言い渡しがあり,有罪判決となった後の手続はどのようになるのでしょう。

一般的な手続きの流れ

外国人の方が刑事事件の被告人となった場合,多くの場合では勾留されたまま裁判を受けることになります。日本に在留している外国人の方の場合,「裁判期間中に母国へ出国してそのまま帰ってこないかもしれない」という疑いをもたれ,逮捕される事案が多いからです。

事実関係について認めている事件であれば,結審すると,次回期日が判決の言い渡しとなります。

判決の言い渡し期日では有罪の判決が言い渡されると,有罪の起訴となった罪名とその人の在留資格に応じて退去強制(強制送還)の手続きが開始されることがあります。

具体的には,判決言渡し期日に入管職員が傍聴に来ており,期日が終結すると,そのまま入管職員が被告人(外国籍の方)を連れて最寄りの入管へ行きます。そこで退去強制手続きに伴う収容状が発布され,今度は入管の収容場に収容されることとなります。

ただし,その後の手続の見通しや日本に身元引受人がいるかどうかといった点を考慮して,収容状が発付されたとしても当日中に仮放免が認められる場合が多くあります。

「有罪判決の言い渡しを受けた後,入管へ行ったけれども,一旦かえって良いと言われた」という方もいますが,その場合のほとんどは当日中に仮放免を受けているということになります。

単純なオーバーステイであるとか,退去強制事由に該当するとしても在留特別許可が認められる可能性があるという事案であれば,当日中に仮放免になるということもあります。

入管の施設に収容された場合であっても,一時仮放免が認められた場合であっても,その後の「違反調査」は進められることになります。

特に,入管に収容されたままで退去強制に関する手続きが進んでしまった場合,判決から60日以内に「口頭審理」という手続きまで進むことになります。仮に,有罪判決後も日本での在留を希望する場合には,この「口頭審理」での手続きが非常に重要になります。

すぐに入管へ行く場合/後日呼び出される場合

判決言い渡し期日に入管職員が控えている場合と,そうでない場合とがあります。

この違いは,判決の言い渡し後すぐに退去強制手続きがスタートするかどうかという点です。

では,退去強制手続きがいつスタートするかというと,それは在留資格や有罪となった罪名によって異なります。

外国人で刑事事件となるケースの中で特に多い,出入国管理及び難民認定法違反(いわゆる,入管法違反)や窃盗罪で有罪となった場合,判決言い渡し後直ちに退去強制手続きがスタートするというわけではありません。有罪の判決によって退去強制の理由となるには,判決が確定する必要があります。この判決が確定するまでは,控訴を申し立てないまま,判決言い渡し日を含めて15日が経過することで確定します。

一定の入管法違反の場合には在留資格を問わず,窃盗罪の場合には就労系の在留資格や留学等の在留資格の場合,判決の確定によって退去強制手続きがスタートすることになります。

「判決の確定」が退去強制の理由となる場合には,後日入管から呼び出されて,退去強制に関する手続きがスタートすることになります。

一方,入管法違反,特に,オーバーステイの場合には,刑事裁判が始まる前から,警察署や拘置所の中で入管職員が外国人の方から事情聴取を行っています。その場合,刑事裁判の確定を待たず,「オーバーステイをしていた」こと自体が退去強制を行う理由となるのです。そのため,判決の言い渡し期日にも入管職員が控えており,刑事裁判が終わったら直ちに入管での手続きが進むことになるため,そのまま入管へ連れていかれる,ということになるのです。

同じ外国人の方であっても,刑事裁判の後すぐに入管へ行くのか,後日呼び出しがあるのか,退去強制に関する手続きがどのように進んでいくのか,というのは,その人が置かれた状況によって異なります。

日本で刑事裁判の判決を控えているという方,特に,判決後も日本での在留を希望するという方は,早めに弁護士などの専門家に相談しておいた方が良いでしょう。

オーバーステイになった後もビザを取得することができるか?

2022-06-29

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんは留学生として来日し,日本で専門学校を卒業しましたが,留学ビザが切れた後も日本での在留を続け,飲食店でのアルバイトなどをしながら生計を立てていました。

ある時,Xさんは路上て職務質問を受け,警察官に在留カードを確認され,オーバーステイとなっていることが明らかになったため現行犯人逮捕されてしまいました。

Xさんは,改めて日本でビザを取り直して在留を続けたいと思っています。

オーバーステイ後の資格の変更/取得

Xさんのように,ときたま,「元々在留資格をもっていてオーバーステイになってしまったけれども,新しく在留資格を取得することができるか」という相談があります。

これについて結論として,オーバーステイとなった後で在留資格を取得することは原則としてできません

在留資格というのは,日本に上陸しようとする際に,又は,日本国内で外国国籍として生まれた場合に取得するものであり,日本で在留している間に一度ビザが切れてしまうと,日本にいながら再度ビザを取得するという手続きはないのです。

「在留資格認定証明書」を取得するという手続きがありますが,これは,

①まだ日本にいない人が,日本へ上陸する前にビザがあることを証明する

②日本で別の在留資格をもっている人が,在留資格を変更したり転職したりするときにビザがあることを証明する

というために行うものです。

そのため,一度ビザが切れてしまった人は,在留資格認定証明書を取ることもできません。

同様の理由で,在留資格の変更をすることもできません。

「資格の変更」というのは,有効期間内のビザを変更する,というものです。有効期間が切れてしまっているビザでは,それを別のものに変更するということもできないのです。

Xさんのように,一度オーバーステイとなってしまうと,基本的に,在留資格を新しく取得するということはできないのです。

日本での在留が認められる場合

オーバーステイとなってしまった後,日本での適法な在留が認められる場合として,在留特別許可が出た場合があります。

在留特別許可というのは,本来であれば強制送還の対象となる人であっても,法律で定められている場合に該当する人に対しては,特別に在留を認めることがあるというものです。

  • 永住許可を受けているとき。
  • かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
  • 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
  • その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。

以上のような場合には,法務大臣(もしくは各出入国在留管理局長)が在留特別許可をすることができます。

そして在留特別許可が認められた場合の大半は,一番最後の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」として許可がなされています。

どのような場合にこの在留特別許可が認められるのかという点について,はっきりとした基準があるわけではないのですが,日本に家族がいるのかどうか,どのような理由で強制送還の対象になっているのか,といった事情を総合的に考慮して決められることになります。

特に,日本人の配偶者がいる,日本人の子供がいて実際に扶養しなければならない,といった事情は,在留特別許可を認める上で大きなプラスになる事情です。

Xさんの事例のように,単に留学生として在留しており,アルバイトなどで生計を立てていたというだけでは,在留特別許可をもらうことは非常に難しいでしょう。

オーバーステイとなってしまった後も日本での在留を続けたいという場合,どんな理由で日本に残りたいのかという点が非常に重要です。理由次第では在留特別許可が認められやすいという場合もありますし,「およそ無理でしょう」という場合もあります。

オーバーステイ,在留特別許可については弁護士にご相談ください。

オーバーステイだと必ず入管に収容されてしまうのか

2022-05-24

(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と事例は必ずしも関係ありません)。

Xさんはコロナ禍になる2018年に母国の家族に仕送りをするために日本に働きに来ました。

はじめは就労ビザを持っていたのですが,コロナ禍になってしまい会社をクビになり,ビザの更新ができないまま在留期限を過ぎてしまいました。

ビザがなくなっても家族に仕送りをしなければならないため,Xさんは日本でアルバイトを続けていたのですが,そうした中で日本人のYさんと出会い,結婚することにしました。

Xさんは日本でYさんと正式に暮らし続けたいと思い,入管へ連絡しようとしています。

入管への出頭

事例のXさんのように,在留資格をもっていない方(=オーバーステイになってしまった人)が自分から入管へ行くという場合には,大きく二通りのパターンがあります。

  1. 自国へ帰国するために名乗り出るというパターン
  2. 日本で生活する理由があるため新たにビザを求めるというパターン

1のパターンは,出国命令制度を利用したもので,早期に帰国ができたり,日本へ再入国する時の有利な事情となります。

退去強制されないためにはどうしたらよいか

本来であれば,「違反調査」⇒「審理」⇒「送還」と言った手続きを踏むことになりますが,出国命令制度によると,オーバーステイであることを確認した後,ある程度の期間を指定されます。その期間内に日本から出国すればよい,という制度です。

2のパターン,上記の事例のようなパターンですが,これは「出頭申告」とも言われるもので,在留資格を認めてもらうためにあえてオーバーステイであることを入管に出頭して申告する(言う)というものです。オーバーステイも,出入国管理法違反になりますので,例えば警察官の職務質問などでオーバーステイが発覚すると,その場で逮捕されてしまうことになります。

そのように,いつ逮捕されるか分からないという状態を解消するためにも,日本で生活し続けることについて何かしら正当な理由がある場合には,むしろ,こちらから入管へ行って説明し,在留資格を認めてもらうための手続きを進めることが必要になります。

待っていても,在留資格はもらえないということです。

オーバーステイだと収容されるのか

Xさんの事例のように,すでにオーバーステイになった状態で入管へ出頭する時,その場で入管に収容されてしまうのではないかと恐れる人も多くいるでしょう。

ですが,自分から出頭しているという事情は,収容を回避したり,仮放免を認めてもらうためにも重要な事情になります。

確かに,オーバーステイの状態になっているということは,入管法上,「収容」(逮捕のようなもの)が出来る状態です。ですが入管当局の運用として,

収容と同時に仮放免をする

ということがたまにあります。

どういうことかというと,「本来であれば入管に収容する事案なのだけれども,いろいろな事情を考慮して,その日のうちにすぐ釈放してあげます。ただし,最終的なビザについての処分が決まるまでの間,1か月~2か月に1回,入管にちゃんと来てください」というものです。

このような「収容と同時に仮放免」がなされるような事案だと,事前に入管から,身元保証人と一緒に来てくださいとか,保証金として10万円を持ってきてください等と言われることがあります。そのような事前の指示があった場合には,仮放免が認められる可能性が相当高く,その日のうちに収容される可能性は低いということですから,指示に従って準備をしましょう。

さて,Xさんの事例のように,オーバーステイとなった後に日本人Yさんと結婚したという場合だとどうでしょうか。

個別の事情によって異なりますが,日本人Yさんとの結婚がビザ目的のものではなくて,Yさんも仕事をしていて収入がきちんとあるという場合や,一緒に生活をしていてXさんが逃げてしまわないようにYさんがきちんと様子を見ることができそうだ,と判断してもらえれば,オーバーステイの中で入管へ出頭したとしても直ちに収容されることなく,拘束されないままで在留特別許可について審理を受けられる場合があります。

特にXさんのような事例の場合,真摯な結婚で,ビザを目的として偽装結婚等ではないと判断してもらえれば,在留特別許可が認められやすい事案です。

オーバーステイというのは,確かに逮捕されてしまったり入管施設に収容されてしまったりする可能性がありますが,状況によっては収容そのものを回避したり,なるべく早い段階で仮放免認めてもらえたりするという場合もあります。

今現在でもオーバーステイの状態で悩んでいる方や,恋人・婚約者がオーバーステイになってしまっているという方は,一度弁護士までご相談ください。

【法改正】入管に収容されなくなる?在特が出にくくなる?

2021-02-20

令和3年2月19日,政府は出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法案を閣議決定したとの報道がありました。

⇒時事ドットコムニュース 難民申請3回目から送還可能 入管法改正案を閣議決定―外国人長期収容問題に対応

報道などによると,今回の改正は,外国人の長期収容の問題を解決することを目的としているようですが,法律案などをみると,改正される部分は,それだけではないようです。

今回は,国会に提出された法律案を見つつ,独自の観点から「これは!」と思われる改正部分について解説したいと思います。

なお,国会に提出された法案は,こちらのページから誰でも見ることが出来ます。

⇒ 出入国在留管理庁 国会提出法案

主に,こちらのページにある「法律案要綱」を参照しつつ解説します。

※令和3年5月27日補記

令和3年の国会では入管法の改正案については廃案となるため,令和3年中の法改正はなし,になりました。

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収容されずに出国することはできるのか

2020-12-04

日本に滞在する外国人については,出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)において在留を管理する制度が設けられています。そして日本に在留する方については,在留の目的に応じて在留資格が付与され,在留の期限が設定されます。

この在留資格にない活動をしてしまった場合や,在留の期限を過ぎて日本に在留し続けた場合,退去強制(強制送還)されてしまうことがあります。退去強制の手続が始まってしまうと,入管の施設に収容されてしまう可能性があります。というのも,現在の出入国管理庁は「全件収容」を原則としており,退去強制に該当すると思われる人については,全員収容するとの手続をとっているからです。

入管の施設に収容される場合については,こちらのページでも解説しています。 ⇒入管に収容されたらどうすればいいか

退去強制される可能性がある方には,「もう日本にいる必要はないから早く母国に帰りたい」という方や「日本からの出国は仕方ないと思っているが入管に収容されたくない」という方もいます。そのような場合,出国命令制度を通じて日本から出国することで,入管への収容を回避することが出来ます。

このページでは,出国命令制度の概要について解説します。

(さらに…)

薬物事件と強制送還

2020-10-09

このページでは,日本で薬物事件を犯してしまったことにより強制送還となる場合について解説します。

外国人の薬物事件は多いのか?

平成31年に日本国内で検挙された外国人の方の事件は,約2万3千件で,そのうち起訴されたのは約8800件でした。その内細かい統計を見てみると,薬物事件(大麻取締法違反,麻薬取締法違反,覚せい剤取締法違反)で検挙されたのは約1600件,起訴されたのは約1000件でした。

統計を確認すると,外国人の方の事件として薬物事件が特別多いというわけではないことが分かります。

しかし,文化などの違いや偏見,密輸事件については外国人被疑者であることも多いため,いまだに外国人と薬物とのかかわりが疑われることがあります。

出入国管理法も,薬物事件に対しては厳しい態度で臨んでおり,薬物事件について有罪となり刑が確定すると強制送還の対象になってしまいます。

(さらに…)

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