入管法改正法案が廃案に,何か困ることは?

先日,入管法改正案が国会で審理されず,廃案となる見通しである報道がありました。

このホームページでも入管法改正の動きについては解説していたところですが,これらの改正がなくなることになります。

過去の解説ページ

もしも入管法の改正があると手続きが一部変わる可能性がありました。改正案が廃案になったということで,今後の手続きで何か困る部分はあるのでしょうか。

自費出国について

改正案では,退去強制の対象となっても,自費出国を認められれば再上陸の拒否期間を「5年」から「1年」に短縮するとされていました。

この改正がないとなると,退去強制された人は,5年間日本に入国できないという制度が続くことになります。

一見すると,日本への再入国が難しくなるようにも見えますが,改正案は,「1年後の再入国を保証したものではな」かったのです。改正されなかったからといって,不都合が大きいわけではないようです。

監理措置,補完的保護対象制度について

監理措置とは,退去強制の対象となる外国人の方について,入管に収容される前から「仮放免」を認めるという制度でした。

しかし,監理措置というものが新しくできなくても,今でも,仮放免が見込まれるような事件の場合には外国人の方に対して事前に予告したり,外国人の方を収容した即日に仮放免許可をしてその日のうちに帰宅ができていました。

監理措置ができなくても,今の制度の運用で何とかなっている部分なのです。

また,補完的保護対象制度については,難民に準じる立場の外国人の方の地位を認めようというものでした。

これについても,現時点で日本で難民認定されている件数が非常に少ないことに照らして考えると,補完的保護対象制度で保護される外国人の方もあまりいないのではないかと予想されます。

監理措置,補完的保護対象制度についても導入されないこととなりましたが,これについても現状では特段の不都合はないように思われます。

むしろ,強制送還の対象となる外国人を「原則収容」としている入管の対応そのものの問題点が大きいように思われます。

在留特別許可の申請制について

改正入管法では在留特別許可を「申請制」にするとされていました。現在の入管法だと,在留特別許可については,違反調査の最後に法務大臣の裁決という形で判断がなされます。

法務大臣の裁決に至るまでには,違反調査の中で「口頭審理の請求」と「異議の申し立て」という2回の手続きを踏まなければ判断までたどり着きませんでした。

この点については,在留特別許可までの手続きを簡略化,一本化することを目指すものでした。現行の制度では,手続までに時間がかかるという面でやや不都合はあります。

しかし,在留特別許可の基準そのものが変わるわけではない上,入管への出頭の必要は変わらないものです。

例えば,オーバーステイとなってしまった外国人の方が在留特別許可を求めようと思うと,現在の制度でも申請制でも,どちらの場合であっても入管に出頭して「オーバーステイになってしまいました」と申告しなければなりません。強制送還されるかもしれないという事情について自分から申告しなければならない,という負担には変わりがありません。

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