Archive for the ‘外国人と刑事事件’ Category
外国籍の少年と闇バイト
事例
Aさんの息子は、家族滞在の資格で日本に滞在し、現在高校2年生です。お子さんは、いわゆる闇バイトに手を出し、高齢者から現金をだまし取る詐欺に加担してしまいました。
何件か同じような詐欺に加わった後、ある被害者の家を尋ねたところ、待ち構えていた警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①息子さんが受ける手続きはどのようなものになるか
②①によって退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴少年事件手続き
日本の刑事手続きにおいては、まずは20歳以上と20歳未満でその手続きが区別されます。
20歳以上は大人の手続きとなり罰を受けるのに対し、20歳未満の場合にはいったん少年手続きに進みます。
20歳未満の人が刑事事件を起こした場合には、全ての事件が家庭裁判所に送られることになっています。
この家庭裁判所の手続きでは、18歳、19歳の「特定少年」と、18歳未満の少年で再び区別されることになっています
特定少年でも、それ以外の少年でも、家庭裁判所で「検察官送致決定」というものを受けると、大人と同じ手続きに戻り、刑事罰を受けることになります。
これに対し、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設送致、不処分等の決定は、いずれも刑事罰ではなく少年特有の保護処分という扱いとなります。
今回の息子さんの場合、高校2年生の年齢であれば、通常通り家庭裁判所に事件が送致されます。また、特定少年ではないと予想されるため、おそらく保護処分となることが予想されますが、
その程度は、これまでの前歴や、家庭環境、補導歴といった、事件以外の要素も考慮して決定されることとなっています。
特に特殊詐欺の場合には、被害額が高額になるケースがほとんどです。多くのケースでは数百万円から数千万円をだまし取ってから捕まっており、最終的に少年院送致となることも多い事例です。
https://shounenjiken-bengosi.com/tag/%E9%97%87%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%88/
⑵退去強制となるか
それでは、家庭裁判所の処分により退去強制となるかについて検討します。
入管法で、少年の退去強制事由を定めているのは、24条4号のトです。同号は「少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)に規定する少年で昭和二十六年十一月一日以後に長期三年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの」
と定められています。
長期3年を超える場合、執行猶予付きの判決とすることができませんので、3年を超える実刑判決を受けた場合ということになります。大人の場合には、1年以上の実刑(同号リ)で退去強制となるとされていることから比べると少年の方が退去強制とする要件が厳しいと言えます。
いずれにしても、保護処分の場合、刑事罰ではありませんから、仮に3年以上少年院送致をされるようなことがあったとしても、これは退去強制事由には当たらないということになります。
ですので、この方の事件の場合には、退去強制となることは通常考えられないと判断してよいように思われます。
しかし、18歳や19歳で同じような事件を起こし、捕まえに来た被害者を突き飛ばしてけがをさせてしまったような場合には、強盗致傷となる可能性もあり、そうなってしまうと原則検察官送致となり、刑事罰を受けることになります。
強盗致傷の法定刑は無期又は6年以上の懲役ですので、極めて重い罪です。
⑶弁護活動
特殊詐欺は、大人であってもかなり重い刑罰が科される犯罪です。また、1件だけではなく複数の事件に関わっていることが大半で、捜査も長期化しやすい傾向にあります。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり、お子さんの更生のためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
ご相談のお問い合わせはこちらからどうぞ。
留学生が公務執行妨害で逮捕されてしまった場合
【事例】
留学生の資格で在留しているAさんが,B市市役所で住民票を移そうとしていました。しかし,Aさんは,市役所職員から,「申請のための資料が足りない」と言われたことから,怒り,市役所職員につかみかかり,「どういうことだ,これでいいだろ」と声を荒げて怒ってしまいました。
そのため,B市職員に警察官を呼ばれ,警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事例の場合に,①Aさんはどのような刑罰を受けるのか,②退去強制処分となるのかという二点について解説していきます。
(1)公務執行妨害罪の刑事罰
刑法95条によれば,「公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行または脅迫を加えた」場合に成立します。
この場合の刑罰として,「3年以下の懲役又は,50万円以下の罰金」が予定されています。
公務執行妨害罪の重さは,①暴行の強度,②公務が妨害された程度,③前科の有無,④被害弁償を済ませたかによって決まります。
①については,暴行の程度が強度であれば,重く見られます。公務員を殴ったり,蹴ったりすると重く見られます。
②については,どのくらい妨害されたかによって決まります。長時間仕事を離れなければならないような場合,重く見られます。
③については,前科があれば重く見られます。
④については,被害弁償を行って居れば,有利に見てもらえます。
今回のAさんについては,掴みかかるという暴行を行っている点が重く見られます。公務を妨害した時間は分かりませんが,前科が無いことは有利な事情になり,被害弁償も行えば有利な事情として見てもらえます。
このような場合,Aさんは重くとも,執行猶予付きの有罪判決となり,場合によっては,罰金刑で終わる可能性があります。
(2)入管関係でどのような処分が下されるか
入管法24条4号の2に掲げる罪名として,公務執行妨害罪は規定されていないことから,公務執行妨害罪で執行猶予付きの有罪判決となったとしても退去強制処分を受けることはありません。
しかし,懲役1年以上の実刑判決となった場合には,入管法4号リに基づいて,退去強制処分の対象となります。
今回のAさんの場合,前科が無く,重くとも執行猶予付きの有罪判決になることが予想されていることから,退去強制になることは予想されません。
ただし,たとえ退去強制されないとしても,次の更新の際には不利な事情として扱われることになります。長期間,日本での滞在を希望する場合には刑事事件についても不起訴処分となっている方が,ビザの更新の点では不利益が少ないものとなります。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰が予想されることから,弁護士としては,①早期の身柄解放を求めること,②不起訴になるよう求めることが考えられます。
①については,今回の事件の場合,Aさんは逮捕されていることから,勾留をしないよう求めたり,勾留に対して準抗告を行うことによって,早期の身柄解放を求めることになります。
②については,このような事件の場合,示談を成立させることで,不起訴となる可能性があります。
このように,留学生が,公務執行妨害罪に当たる行為を行ってしまった場合には,迅速に弁護士に相談して,対応してもらうことが適切です。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
留学生が窃盗を犯してしまった場合
【事例】
留学の資格で在留しているAさんは,大学の友人から「いい仕事がある」と誘われて,駐車場に止めてある自動車の自動ロックを解除し,自動車販売会社に運搬し販売する活動をしていました。
しかし,ある日駐車場に止めてある自動車のドアロックを解除し,エンジンをかけ,自動車(中古車販売価格100万円)を運転しようとしていたところ,自動車の持ち主に発見され,警察を呼ばれ,逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事件の場合に,
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制処分となるのか
という以上の二点について解説していきます。
(1)窃盗罪の刑事罰
刑法235条によれば,「他人の財物を窃取」した場合,「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されることが予定されています。
なお,自動車窃盗の場合には,窃盗未遂ではないかということが争われるのですが,自動車に乗り込み,エンジンをかけるなどの容易に持ち出せるような状態にした場合に,窃盗未遂ではなく,窃盗既遂になります。
今回の事例の場合,Aさんは,エンジンをかけ,自動車を運転しようとしている状態にしているため,窃盗未遂にはならず,窃盗既遂罪が成立します。
窃盗罪の刑罰の重さは,①被害金額,②被害点数,③私的空間に立ち入るような態様のものか,④被害弁償は済んでいるかによって判断されます。
①については,被害金額が高ければ高いほど,重く見られます。
②については,被害点数が多ければ多いほど,重く見られます。
③については,カバンの中や車の中に侵入するなどの事情があれば,重く見られます。
④については,被害弁償が行われれば,事件について軽く見られます。
今回のAさんについては,被害金額100万円,被害点数1点,自動車に立ち入る形態の犯行であることが,Aさんの事件を重く見る事情になります。一方,Aさんが被害弁償を行った場合には,Aさんに有利な事情になります。
しかし,被害金額が100万円を超え,自動車内に入っての犯行であることから,Aさんに前科が無くても,執行猶予付きの有罪判決になる可能性があります。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
退去強制事由に当たるかどうかは,入管法24条に規定されています。
「留学」での在留資格の関係については,入管法24条4号の2に特別な規定があります。入管法24条4号の2によれば,別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者で,刑法第36章の罪により懲役又は禁錮に処せられた場合に退去強制事由に該当するとされています。
そのため,たとえ,執行猶予付きの有罪判決になったとしても,退去強制事由に該当します。
今回のAさんの事件は,自動車窃盗で,執行猶予付きの有罪判決になる可能性が高いことから,退去強制処分を受けることが予想されます。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な事情があることから,不起訴処分を求めること,②退去強制処分を避けるよう主張することが考えられます。
例えば,①については,起訴前に被害者と示談し,被害届の取下げなどを認めてもらい,検察官と交渉し不起訴処分を求めることが考えられます。
②の主張はなかなか難しいのですが,自動車を盗むよう脅されていたなどの事情があれば,退去強制処分を免れる主張につながる可能性があります。
このように,留学の在留資格で窃盗事件を起こしてしまった場合,迅速に弁護士に依頼することが適切です。
永住者が威力業務妨害罪で検挙されてしまった場合
【事例】(フィクションです)
Aさんは永住者の資格で日本に在留している外国人で,プロ野球の球団Vのファンです。
これまでは,業務妨害と言われるような行為をしたことはありませんでした。
ある日,Aが試合に負けてしまったことから,ふがいなさに腹が立ち,VのスポンサーであるB新聞に「Vにアメリカからスラッガーを入れて大型補強しろ,でなければVの球場に爆弾を仕掛けるぞ」と書いたはがきを100通送りつけました。
このような脅しがあったことから,B新聞からVに連絡を送り,Vの球場に警備員を多数配置させざるを得なくなりました。
このように,混乱を起こしたことから,Aさんは警察に呼ばれ,事件について検察庁に送検されました。
この場合に
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となる可能性はあるのか
について解説していきます。
(1)威力業務妨害罪の刑事処分について
Aさんは,VやB社の社員や関係者を怯えさせる文言のあるはがきを100通送り,VやB社の業務に混乱をもたらしていることから,威力業務妨害罪が成立します。
参考:威力業務妨害罪の解説
刑事罰の重さですが,刑法234条の威力業務妨害罪が成立する場合,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されています。
威力業務妨害罪の罪の重さは,①どのような行為をしたのか,②その結果どのような混乱が発生したのか,③どのくらいの財産的被害が発生したのか,④被害回復は行っているのか,⑤何回同様の行為を行っているのかによって判断されます。
①については,何度も繰り返すような形で行う悪質な態様であれば,重く見られます。
②については,混乱を収めるのに時間がかかるようなものや広範囲に混乱が発生するような事件であれば重く見られます。
③については,会社などに経済的な損害が発生した場合に,その金額が高くなれば高くなるほど重く見られます。
④については,経済的な損害を埋め合わせるだけの被害回復を行った場合,有利な事情として見られます。
⑤については,同様の業務妨害行為を繰り返し行っている場合に,重く見られます。
今回のAさんの件ですが,100通ものはがきを送っていること,Vの球場における混乱を発生させていること,Vの球場において警備員を多数配置しなければならなくなったことや,B新聞社による無用な連絡をさせたことなどによる損害が考えられますので,これらの事情については重く見られます。
一方,被害回復を行っているかどうかは分かりませんが,V及びBに対して被害弁償がなされれば,有利な事情として見られます。また,Aさんはこれまでに業務妨害と言われる行為をしていないので,その点についても有利に見られます。
こういった事情があることから,Aさんのしたような事件については,執行猶予付きの有罪判決となる例が多く見られます。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
入管法24条4号リによれば,懲役1年を超える実刑判決となった場合に退去強制処分となることが規定されています。
今回のAさんの場合,執行猶予付きの有罪判決が予想されるので,入管法24条4号リの事由に当たることは考えられませんが,前科がある,非常に悪質であり,実刑が相当といえるような事件である場合,実刑判決を受ける可能性がありますので,事前に刑事事件・入管事件に強い専門家・弁護士に相談しておくこと重要です。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や,退去強制処分に関する処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な事情があることから,執行猶予判決を求めること,②示談をするなどして不起訴を求めることが考えられます。
例えば,①の方法としても,Aさんに前科が無いなどの有利な事情を集めて,裁判所に提出することで,執行猶予判決になるよう進めることができます。
②の方法としては,起訴される前に,示談を行い事件については解決したとして,不起訴を求めることが考えられます。
このように,威力業務妨害罪当たる行為をして警察から事情聴取を受けたり,逮捕された場合には,弁護士に迅速に依頼して,対応してもらうことが適切です。
威力業務妨害罪など,刑事事件でお困りのことがある方やご家族の方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
外国人の方の在留資格・ビザ問題までまとめてご相談いただけます。
永住者の不同意わいせつ事件と退去強制の可能性
(事例)
両親が外国籍であるものの、日本で生まれ育ったAさんは、永住権を保有した状態で日本国内で生活していました。
ある日おAさんは、通行中の女性の背後から忍び寄り、押し倒して胸を触るなどのわいせつ行為をしました。この件で、後日Aさんが逮捕されてしまいました。
このとき,
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により、Aさんは退去強制処分となるか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴不同意わいせつの刑事罰
Aさんは、通行中の女性に対してわいせつな行為をしています。
このような場合には怪我などが無ければ不同意わいせつ罪が成立します。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の懲役と極めて重い罪となっています。
これほど重い罪の不同意わいせつ罪ですが、具体的な刑期は、行為態様、被害の程度や被害者の処罰感情などを元に決定します。
Aさんの場合、一般的な不同意わいせつではありますが、そもそもが重い罪ですから、少なくとも公判請求をされ、何らかの刑罰を受けることが予想されます。
⑵退去強制となるか
永住者の資格は、入管法の別表第2に記載されている資格です。そのため、入管法24条4号の2の適用はありませんから、執行猶予でも直ちに退去強制となるわけではありません。
しかし、別表第2に記載された資格であっても、入管法24条4号リの適用はありますから、無期又は1年以上の懲役(実刑判決)に処せられた場合には退去強制となります。
先程述べた通り、不同意わいせつは極めて重い罪ですから、1年以上の懲役の判決を受ける可能性はあります。
ですので、このままいけばAさんは退去強制となる可能性もあります。
⑶弁護活動
さて、先述の通り、不同意わいせつ罪で刑事罰を受けてしまうと、退去強制となり、日本国内に留まれない可能性高いことを指摘しました。
このような場合、何とか日本国内に留まりたいというようなときは、被害者の方と示談を行うことが考えられます。
検察庁は、全ての刑事事件について起訴をし、刑事処分を求めるのではなく、被害者の意向等の事情を踏まえ、一定の事件を起訴猶予(不起訴)としています。
最終的な処分を決定する際、被害者の方がどの程度処罰意向を持っておられるか、被害回復がなされたかどうかは大きな考慮要素となります。
出来る限り刑事処分を軽減するためにも、被害者の方との示談交渉は不可欠です。
いずれにしても、不同意わいせつ事件が発生した場合、警察はほぼ確実に犯人を逮捕します。
逮捕されると、引き続いて勾留となりますが、逮捕・勾留期間を併せても最大23日間しか捜査期間はありません。
そして、勾留期限の最終日に検察官は起訴不起訴を決定しますから、どのような弁護活動を行うとしてもそれほど時間はありません。
在留資格をお持ちの方が強盗致傷で逮捕された場合には、速やかに弁護士に依頼をし、適切な弁護活動を受ける必要があります。
日本人の配偶者が傷害事件を起こしてしまったらどうなる
日本人の配偶者という在留資格で日本に滞在しているAさんは、ある日通行人とトラブルになり、ついカッとなって手を出してしまいました。
これにより被害者は全治2週間程度のけがをしてしまい、Aさんは駆け付けた警察官に逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴ 傷害罪の刑事罰
傷害罪は刑法204条に定めがある罪で、その法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
15年以下と極めて重い罪になっていますが、これはけがの程度によって法定刑の区分がないからです。全治2週間のけがであれば、懲役15年というような判決を受けることは
通常考えられません。
傷害罪の具体的な刑罰を決める際には、①けがの程度はどのくらいであるか②けがをさせるに至った経緯はどのようなものか③被害回復がなされているか④何回目の検挙であるかが大きな考慮要素となります。
①まずけがの程度ですが、これは単純に重いけがをさせればさせるほど刑が重くなるということになります。ただ、全治1週間とと4週間で比較すると4週間のほうが4倍悪いという単純なものではありません。
②事件を起こした経緯ですが、通常は何らかのトラブルがあったことが原因だと思われますが、被害者側に落ち度があった場合には、刑を軽くする事情となります。
③傷害罪は、人にけがをさせた罪ですので、治療費が発生します。この治療費の支払いや、慰謝料が支払われているかなどは重要です。
④最後に、傷害のような事件の場合これが大きな問題となってくるのですが、何回目の検挙であるかも重要です。いくらけがの程度が軽く、被害回復がなされていたとしても、何度も何度も
検挙されているような状況では、処分を軽減することにも限度が生じます。一般的な感覚の通りですが、通常は1回目より2回目が、2回目より3回目が、3回目より4回目が重い処分となります。
また、前回と今回の間隔(何年程度空いているか)も重要です。これがあまりに近いということになると、常習性が疑われて、より重い処分となります。
そこでAさんの刑事罰ですが、1回目の検挙であれば被害回復を行っていれば起訴猶予となる可能性も十分あります。ただ、2回目であれば罰金、3回目であれば執行猶予付きの判決という形でどんどん重くなってきます。また、たとえ全治3日のような借る怪我であっても、執行猶予付き判決中や猶予期間満了後すぐにやってしまうと、刑務所に行く実刑判決となる可能性が相当高いと言えます。
⑵ 退去強制となるか
それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。ただ、Aさんは日本人の配偶者資格ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4の2には「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処せられたもの」という定めがあり、この条文に該当する場合には仮に執行猶予判決であったとしても退去強制となるように思われます。
しかし、先ほど述べた通り、Aさんは別表第2の資格ですから、この条文には該当しません。ですので、執行猶予判決の場合にまで退去強制となるというものではありません。
ただ、4号リにある「リ ニからチまでに掲げる者のほか、昭和二十六年十一月一日以後に無期又は一年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者。ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」については適用がありますから、1年以上の実刑判決を受けた場合には退去強制事由に該当します。
先ほども述べたところですが、傷害だからといって実刑判決とならないというものではありません。何度も繰り返していた場合にはいずれ実刑判決となってしまいます。このようになれば退去強制事由に該当してしまっていますし、何度も繰り返し刑事罰を受けていますから在留特別許可を得ることもできないと思われます。
⑶ 弁護活動
傷害だからと言って軽い犯罪だと考えてはいけません。実刑判決を受けることもある重大な犯罪です。
また、一瞬の苛立ちからついでやっていたとしても、何度検挙されても繰り返すという方も多数おられます。
ですから、傷害で検挙されたり、ご家族が傷害で検挙されたような場合には速やかに弁護士にご相談ください。
被害者への被害弁償はもちろん必要ですが、それだけではなく将来の在留資格更新を行ったり退去強制とならないようにするためにも、専門の弁護士にご依頼ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
永住者が不法就労助長をしてしまったらどうなる?
【事例】
Aさんは永住権をもって日本に在留している外国人です。日本では,飲食店を経営しています。
飲食店では,外国人のBさんを雇っているのですが,Bさんを雇う際,B さんの在留資格や,在留期間について確認せず採用し,飲食店で働かせていました。
そうやって働かせていたところ,警察がBさんを入管法違反で逮捕しました。その際に,実は,Bさんは留学の資格で在留しており,採用した時点ですでにオーバーステイとなっていることも発覚しました。そのため,Aさんも警察に逮捕されてしまいました。
このような場合に,①どのような刑事罰を受けるのか,②退去強制になるのかについて解説していきます。
(1)不法就労助長罪の刑事罰
不法就労助長については,入管法の73条の2に規定があります。
入管法73条の2第1号は,「事業活動に関し,外国人に不法就労をさせた者」,2号は,「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者」,3号は「業として,外国人に不法就労活動をさせる行為又は全豪の行為に関しあっせんした者」に,不法就労助長罪が成立すると規定しています。
この,「不法就労」には,在留資格で認められた活動以外の就労活動をした場合のほかに,オーバーステイ中に就労活動をしたことも含まれます。
不法就労助長罪についての刑の重さですが,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は,これらの併科が予定されています。
この不法就労助長罪については,①不法就労させた人数は何人か,②どのくらいの期間不法就労させたのか等の事情が考慮されます。
①については,不法就労させた人数が多ければ多いほど,重く見られます。
②については,不法就労させた期間が長ければ長いほど,重く見られます。
また,量刑傾向については,初犯であれば,執行猶予付きの懲役刑と,罰金が併科されている事例が多いようです。
なお,入管法は「不法就労であったことを過失により知らなかったとしても,刑罰を免れない」という規定を置いています。
いわゆる,過失犯処罰規定と呼ばれるものです。
日本における犯罪は「故意」つまり,「ある程度わかってやった/だめだろう(だめかもしれない)と思いつつわざとやった」時にのみ犯罪としているため,「うっかり」や「不注意」で犯罪に該当する行為をした場合には,原則として処罰されてないのです。
しかし,外国人を雇う時には「就労可能な在留資格かどうか」の確認が義務付けられているため,確認義務を怠って不法就労をさせた場合も故意があった場合と同様に処罰の対象にするとされているのです。
政府の注意喚起HP 厚生労働省:不法就労にあたる外国人を雇い入れないようにお願いします
そのため,「知らなかった」だけでは弁解になっておらず,「十分な注意で在留資格を確認したけれども不法就労であることを見抜けなかった」という場合でなければ,罪に問われてしまうのです。
(2)退去強制になるのか
不法就労助長を行った場合に退去強制になるかについては,入管法24条3号の4に規定があります。
入管法24条3号の4イによれば,「事業に関し,外国人に不法就労活動をさせること」,同号ロによれば,「外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置くこと」,同号ハによれば,「業として,外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあっせんすること」が不法就労助長に当たると規定されています。
不法就労助長を行った場合,たとえ刑事罰に問われていなくても,その事実が認められれば退去強制の対象になります。
(3)弁護士として何ができるか
このような処分が考えられることから,弁護士としては,①有利な事情があるから,不起訴や軽い刑事処分を求めること,②不法就労助長を行ったとしても退去強制にすべきではないことを主張することが考えられます。
例えば,雇い入れる際にナイフを使って脅されたため,雇い入れざるを得なかったなどの事情がある場合,刑事処分を与えるのは不適切であるため,不起訴にすべきであるなどと主張することが考えられます。
退去強制についても,Aさんは永住者であること,不注意で在留資格外の活動をさせてしまったことなどを主張して,Aさんに対する退去強制処分は違法であることなどを主張することになります。
このように,不法就労助長を理由とする退去強制であっても,特殊事情を理由に刑事処分や退去強制処分が認められない場合がありますので,弁護士に依頼して刑事処分や退去強制処分を回避するようにすることが重要です。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
定住者が交通事故で退去強制となるか,ビザへの影響は
【事例】
日本に定住者として在留しているAさんは、日本で有効な運転免許証を所持し、自家用車を保有していました。
ある日、Aさんは、自動車で帰宅中、周りの景色に気を取られてしまったことが原因で、信号待ちをしている前の車にぶつかってしまいました。
前方の車には運転手が1名乗車しており、運転手が怪我をしてしまいました。Aさんはすぐに110番と119番をし、駆け付けた警察官により捜査が行われました。
このとき
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰により退去強制になることはあるのか
③Aさんとしてできることはあるのか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴過失運転致傷の刑事罰
Aさんは、わき見をしてしまったことにより前方不注視となり、交通事故を起こしてしまいました。
車で交通事故を起こしたことにより、乗員(これはぶつかられた車の乗員だけではなく、ぶつかった、つまり自分が運転している車の乗員も含みます)や歩行者等に怪我をさせてしまったような場合には、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条の過失運転致傷罪が成立します。
なお、今回のAさんはすぐに110番等をしていますので問題ありませんが、事故を起こしてしまったのに現場から逃走したような場合にはより重いひき逃げの罪が成立しますし、お酒を飲んで事故を起こしたような場合には危険運転致傷罪というより重い罪が成立する場合もあります。
Aさんの話に戻すと、不注意という過失により交通事故を起こし、怪我をさせてしまったAさんにはどのような刑罰が与えられるのでしょうか。
法律上定められている法定刑は「七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する(以下略)」とされています。
一般的に交通事故の場合には①相手の方の怪我の程度②事故を起こした側の過失の程度③被害者の側の過失の程度④運転者の属性などを考慮して処分が決められています。
①については、怪我の程度が重ければ重いほど、後遺症が残ればその影響が大きいほど罪が重くなります。
②については、飲酒や赤信号無視、スピード違反等、それ自体が犯罪になるようなで行為がきっかけで事故を起こしたような場合には罪が重くなります
③については、被害者が赤信号を無視している場合や、道路上で寝ている場合、横断禁止道路を横断している場合などに、運転者の罪が軽くなります。
④については、タクシーやバスの運転手、トラックドライバーなど職業として運転をしている方は、罪が重くなる傾向にあります。
Aさんの事故について考えると、Aさんは特に仕事などで運転していませんし、わき見というそれ自体が犯罪になるようなものではないことが原因で事故を起こしていますから、特に刑を重くすべき事情はありません。反対に、被害者の方も、信号待ちをしていただけですから、被害者には過失がなく、Aさんの罪を軽くする理由もありません。
そのため、Aさんの処分は①の怪我の程度によっておおよその処分が決まってくると考えられます。
これについて明確に決まりがあるわけではありませんが、全治3日や1週間程度の怪我であれば起訴猶予処分(刑事罰を受けない)、全治3週間~1ヶ月以内程度であれば罰金、1ヶ月を越えるような重い怪我等であれば裁判を受け禁錮刑(ただし執行猶予付き)となることが予想されます。
⑵退去強制事由となるか
刑事事件と退去強制が関わる条項は、いくつかありますが、代表的なものは入管法24条の
4号チ 薬物事件で有罪判決を受けた者
4号リ 1年以上の実刑判決を受けた者
4号の2 窃盗などの事件で有罪判決を受けた者(別表第1の資格に限る)
となっています。
今回の事件であれば、交通事故は薬物事件でもありませんし、怪我の程度が軽ければ執行猶予付き判決になりますので4号リにも該当しません。
また、4号の2に該当するようなこともありません。
そのため、交通事故で有罪判決を受けたとしても、直ちに退去強制となることはなさそうです。
しかし、仮に退去強制とならなくても、在留資格の更新を受けられるかどうかは別問題です。
在留資格の更新時には素行が善良であることが求められていますが、有罪判決を受けた場合には素行善良の要件に問題が生じ、在留資格の更新がされない場合があります。
このような場合、在留資格が更新できず、期限が到来してしまうと、オーバーステイ状態となり、退去強制事由に該当してしまいます。
このことは、たとえ定住者であったとしても変わりません。ただし、日本との結びつきが強かったり、過失犯という誰にでも生じるような事件であることを理由に、在留資格の更新が
出来ないということはそれほど多くなさそうです。
同様に,日本で交通事故を起こしてしまった方のビザに関してはこちらの解説もご覧ください。
⑶Aさんはどうすればよいか
自分が交通事故を起こしてしまった場合、逮捕されたような場合には最初は家族や友人と面会することができません。
逮捕されてから2日程度は、弁護士以外が面会できない状況になりますので、家族としても状況の把握などが困難です。
また、仮に釈放されたとしても、捜査が継続して、場合によっては刑事罰を受けてしまうことは上述の通りです。
逮捕された場合には警察からの連絡を受けてすぐに、在宅事件の場合でもできる限り早く、弁護士に相談し、被害者の方への謝罪や入管への対応などを検討する必要があります。
在留資格の不更新の決定が出てしまってからとなると、在留特別許可を得る方法以外が困難となり、取りうる手段が減ってしまいます。
まだ処分が出る前、色々な対策を講じることができる時期に、弁護士にご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
「留学」ビザで不法就労をしてしまった場合,どのような処罰を受けるのか
【事例】
留学の資格で日本に在留しているAさんは,1年ほど前から,とあるキャバクラ店で勤務していました。
ところがある時,このキャバクラ店に対して警察署の摘発があり,Aさんの不法就労の事実が発覚し,その場で警察官から逮捕されてしまいました。
このような事件の場合に
①Aさんは,どのような刑事処分を受けるのか,
②退去強制を受けるのか,
以上の点について解説していきたいと思います。
(1)不法就労に対する刑事罰
Aさんは,「留学」の在留資格で日本に在留しているにもかかわらず,在留資格で許されている活動ではないキャバクラでの勤務を行っていることから,入管法70条1項4号か,入管法73条のいずれかに該当する可能性があります。
入管法70条1項4号は,「在留資格外で収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる場合」に成立するものです。
一方,入管法73条は,在留資格外の就労を行っているものの,不法就労活動を「専ら行っていると明らかに認められる」とまでは言えない場合を指します。
刑事罰の重さですが,入管法70条1項4号の罪が成立すると,「3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金」又はその併科が予定されています。
73条の罪が成立すると,「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200万円以下の罰金」又はその併科が予定されています。
不法就労罪の罪の重さは,①勤務形態,②勤務していた期間などを考慮して処分が決められます。
①については,フルタイムで働いているなど,元々の在留資格の活動から大きく外れていたり,就労活動を専ら行っている様子が見られる場合に重く見られます。
②については,就労していた期間が長いほど,不法就労の悪質性が強いと見られ,重く見られます。
今回のAさんについて考えると,Aさんの勤務形態にもよりますが,1年間不法就労を続けているという関係から,執行猶予付きの有罪判決となることが予想されます。
(2)出入国管理上はでどのような処分がされるのか
退去強制になるかどうかについては,入管法24条に規定があります。
入管法24条4号イによれば,「第19条1項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専らおこなっていると明らかに認められる者」について退去強制処分を受けることが規定されています。また,入管法24条4号へによれば,「第73条の罪(不法就労罪)により禁錮以上の刑に処せられた者」については退去強制処分を受けることが規定されています。
そのため,不法就労を行ってしまったAさんの場合,①起訴されて禁固刑,懲役刑(執行猶予が付いた場合も含む)を受けた場合,②①の場合でなかったとしても資格外活動を「専ら」行っていたと見られた場合には退去強制処分を受ける可能性が高まるでしょう。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や,退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①有利な情状があることから,不起訴処分を求めること,②退去強制処分を避けるよう主張することが考えられます。
①については,Aさんの就労期間が短かったり,Aさんの勤務時間が短いなどの事情があり,起訴するのが相当ではないと主張して不起訴を求めることが考えられます。
②の場合,退去強制処分の理由そのものを争う他,不法就労をしていたことを認めつつ在留特別許可を求めるという方針も考えられます。
令和6年(2024年)からは出入国管理法が改正されて,在留特別許可に関する手続きも大きく変化しました。
不法就労に関する入管法の規定は,非常に複雑になっています。
警察に検挙されてしまったという場合であっても,どのような方針・手続を目指すのか,弁護士とよく相談して進めていくのが重要です。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
定住者が大麻所持で逮捕された場合,強制送還されるのか
両親が日本に来日し、日本で生まれたAさんは、国籍こそ外国籍であるものの、その国には一度も住んだことはなく、日本の学校を卒業し、日本で会社員
として勤務しています。在留資格は定住者となっています。
そんなAさんは、大学生のころから友人と大麻を使用しており、なかなかやめることができませんでした。
ある日車に乗っていたAさんは、不審な動きをしているということで職務質問を受け、持っていたカバンの中から大麻草1gが発見され、鑑定の後逮捕されてしまいました。
以上を前提として
①Aさんが受ける刑事罰はどのようなものになるか
②①の刑事罰によってAさんは退去強制となることがあるか
以上の点について解説していきたいと思います。
⑴大麻所持の刑事罰
Aさんは大麻を所持していました。日本では大麻所持は違法とされていますので、Aさんの行為は大麻取締法違反の大麻所持となります。
大麻所持の罰則は、大麻取締法24条の2に記載があり、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」
とされています。
Aさん自身,大麻を所持していた認識はありますので、犯罪が成立することに争いはありませんが、そのような場合、Aさんにどのような処分となるのかが問題となります。
大麻所持の場合、初犯であっても裁判となる可能性が高い類型の犯罪です。ただ、いきなり刑務所に行くのではなく、執行猶予付き判決となることが予想されます。
⑵はこれを前提として検討していくことにします。
⑵退去強制となるか
それでは、Aさんの刑事処分により退去強制となるかについて検討します。
退去強制事由については入管法24条に定めがあります。Aさんのビザは定住者ですので、在留資格としては別表第2の資格となります。
同条4項チには「昭和二十六年十一月一日以後に麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」という定めがあります。
要するに、薬物に関連する法律で有罪の判決を受けたものについては退去強制事由とするというものです。
強制送還手続きについては法務省HP解説や,弊所でも解説をしています。
まず、有罪の判決ですので、執行猶予付きであるかどうかは問われません。実刑判決でなくても退去強制事由となります。
また、今回は関係ありませんが、たとえ罰金刑であっても有罪の判決に変わりはありませんので退去強制事由となること、「定住者」であっても退去強制事由となることにも注意が必要です。ですので、このままではAさんは退去強制となりますので、在留特別許可を求める申請を行う必要性があります。
定住者であり日本との結びつきが強いことや、初犯であるなどの理由から、在留特別許可が得られる可能性もある事案だと考えられます。
仮に強制送還されてしまった場合はこちらも参照ください。
⑶弁護活動
既に述べた通り、本件では有罪の判決を受けてしまうと退去強制となってしまう可能性が極めて高いという事案です。
何とか退去強制を回避するためには2通りの方向性での弁護活動が考えられます。
①起訴猶予を目指す方向
大麻所持を認め、反省の意を示し、再犯防止の具体的な取り組みを行うなどして、何とか起訴猶予処分を得る方法が考えられます。
覚醒剤事件であればこの方向は相当困難ですが、大麻所持の場合には起訴猶予となることもないわけではないようです。ですので、検察官に働きかけを行い、何とか処分を回避するということが考えられます。
②故意を否認する方向性
有罪となるためには、犯罪が成立しなければならないところですが、犯罪の成立のためには客観的に犯罪が成立しているだけではなく、犯人に「故意」が必要となります。
故意の内容については様々な見解があるところですが、今回のようなケースでいえば「自分が持っているものが何らかの違法薬物である」という認識があるかどうかというところになります。
所持に至る経緯や携帯電話の内容などを踏まえて検討されるところですが、故意を否認するためには何よりも黙秘を行うことが大切です。黙秘権を行使しせず何らかの供述をしてしまえば、
否認は困難になっていきます。
①②のいずれの活動を行うにも、初動が大切です。
①の場合、再犯防止計画の策定には通常時間を要しますから、いち早く家族などの方に連絡を取れるように働きかけを行い、取り組みの準備をしていくことが必要となります。
②の場合、一番最初に作成される弁解録取書の内容がどのようなものになるかが大切です。最初に罪を認めてしまった場合、後からこれを覆すためには相当大変です。ですので、最初からきっちりと取調べへ対応し、不用意に供述したり調書を作成することの内容にする必要があります。
退去強制手続きを回避するためには、少なくとも不起訴になることが最低条件です(なお、不起訴になったとしても在留資格の更新に影響が生じる場合があります)。ですので、ご家族や知人が逮捕されてしまった場合には、
速やかに経験のある弁護士に依頼をすることが必要です。
« Older Entries Newer Entries »