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【事例】
Aさんは,留学の在留資格で日本に在留している大学生です。
大学の後輩のBと付き合っていたところ,振られたことから,よりを戻したくなり,「また,考え直そう」「もう一度会いたい」とメール何度もを送り,Bさんが帰宅する際も後をつけ,家で待ち構えることを繰り返してしまいました。
このように,家につけていたことから,Bさんに通報され,駆け付けた警察官によって現行犯逮捕されてしまいました。
なお,Aさんに前科はありません。
このような事件を起こした場合に,
①Aさんはどのような刑事処分を受けるのか
②退去強制となるのか
という二点について解説していきます。
(1)ストーカー規制法違反の刑事罰
ストーカー行為等の規制等に関する法律18条によれば,「ストーカー行為をした者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になることが規定されています。
この「ストーカー行為」というのは,ストーカー規制法2条4項に定義があり,「ストーカー行為」には,ストーカー規制法2条1項の「つきまとい等」が含まれており,ストーカー規制法2条1項1号につきまとい,待ち伏せの規制が規定されており,3号に面会要求の規制が規定されています。
また,ストーカー規制法2条4号にこの「ストーカー行為」の定義によれば,この「つきまとい等」などを反復して行ったといえなければならないとされています。
ストーカー規制法違反の刑罰の重さは,①何回同様のことを行ったのか,②被害者に対して危害を加えるような行為であるか,③被害者に対して示談や被害弁償を行っているかによって判断されます。
①については,同様の行為を繰り返していればいるほど,重く見られます。
②については,危害を加えるような言動があれば,重く見られます。
③については,被害弁償を行っていれば,有利な事情となります。
今回のAさんの事例の場合,AさんはBさんの家まであとをつけたり,家で待ち構えているため,ストーカー規制法2条1項1号のつきまといや待ち伏せを行っているといえます。AさんはBさんに「会いたい」等の内容を記載したメールを送っていることから,ストーカー規制法2条1項3号の面会要求を行ったということが言えます。
また,これらの行為について,Aさんは繰り返し行っているので,反復して行ったということも出来ます。しかし,危害を加えるような言動をしていません。
そのため,今回のAさんの行為については,重くとも執行猶予付きの有罪判決となる可能性があり,罰金で終わる可能性もあります。
(2)入管関係でどのような処分がされるのか
退去強制事由に当たるかどうかについては,入管法24条に規定があります。
「留学」での在留資格の関係については,入管法24条4号の2に特別な規定があります。しかし,ストーカー規制法違反については,この入管法24条4号の2に挙げられていませんので,執行猶予でも退去強制になるということはありません。
そのため,入管法24条4号リに基づいて,懲役1年以上の実刑判決を受けた場合に退去強制になります。
今回のAさんの事例の場合,重くとも,執行猶予付きの有罪判決が予定されていますので,退去強制になることは考えられません。
しかし,ストーカー規制法違反の前科が残りますので,在留期間の更新などの際に不利益に考慮されます。
(3)弁護士として出来ること
このような刑罰や退去強制処分が予想されることから,弁護士としては,①示談を行い,被害回復を行うこと,②在留期間更新の際に在留期間更新を認めるよう交渉することが考えられます。
例えば,①については,起訴前に被害者と示談し,検察官と交渉して不起訴にするよう働きかけることが考えられます。
また,②についても,在留期間更新について交渉することで,在留期間更新を認めてもらえる可能性があります。
このように,留学の資格でストーカー規制法違反事件を起こした場合,迅速に弁護士に依頼することをお勧めします。
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