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【事例】
Aさんは「留学」の資格で日本に在留している人です。
Aさんは,自宅でのパソコンの組み立てに必要があったことから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを購入し,所持していました。ある日,友人にパソコンの組み立てを手伝ってほしいといわれたことから,工具セットをカバンに入れ,友人宅に向かっていました。しかし,友人宅に向かう最中に警察官に呼び止められ,所持品検査をされ,マイナスドライバーを含んだ工具セットがカバンから出てきたことから,工具セットを警察に取り上げられ,今後警察の取り調べに応じるよう言われてしまいました。
このような事例の場合に,①どのような刑事処分を受けるのか,②退去強制になってしまうのかについて解説していきます。
(1)マイナスドライバーなどの所持の刑事罰
特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律(以下,「ピッキング防止法」といいます)4条の「指定侵入工具」については,2条3号に定義規定があり,政令に定められたドライバーが対象となることが規定されています。そのため,ピッキング防止法の施行令2条1号を参照すると,①先端が平らで,その幅が0.5センチメートル以上であること,②長さ(柄を取り付けた時の長さ)が15センチメートル以上であることの両方を充たすドライバーが規制対象になっています。
このようなドライバーを隠匿して所持していた場合,ピッキング防止法4条,16条違反として,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金になることが予定されています。
このようなドライバー所持を理由とするピッキング防止法違反の量刑傾向については,前科がない人であれば,おおむね罰金で終わります。しかし,侵入盗を行っていることが疑われる場合など,重く見られるような事情がある場合,前科が無くとも執行猶予付きの有罪判決になる可能性もあります。
今回のAさんの事例の場合,マイナスドライバーの形状がどのようなものなのか明らかではありませんが,ピッキング防止法の規制対象となる形状であるとは考えられます。
ただし,Aさんとしては,友人に頼まれたから,マイナスドライバーを含んだ工具セットを持っていることを正当な理由として主張することが考えられます。この主張について所持する正当な理由と考えられた場合,ピッキング防止法違反の罪は成立しないと考えられます。(ただし,この主張を信用してもらえないなどで犯罪が認められる場合もあります。)
(2)退去強制処分になるか
入管法24条4号の2によれば,別表第一の在留資格(留学など)で在留する人が,ピッキング防止法15条,16条違反により,懲役刑以上の判決(執行猶予付きの有罪判決を含む)を受けてしまった場合,退去強制処分の対象となることが規定されています。
そのため,Aさんの事件の場合,ピッキング防止法違反の事実が認められ,かつ,執行猶予付きの懲役刑以上の重い刑罰を受けることになった場合,退去強制処分となる可能性があります。
このように,退去強制処分となる可能性があるといえます。
(3)弁護士として出来ること
そのため,今回のAさんの事件については,①友人のパソコンの組み立てという「正当な理由」があったこと,②ピッキング防止法違反の罪になるとしても,罰金刑であるべきことを弁護人をつけて主張し,ピッキング防止法違反の罪の成立を否定したり,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,罰金で終わらせるよう交渉することが考えられます。
このように,ピッキング防止法違反の罪に当たって前科をつけられないようにするため,ピッキング防止法違反の罪に当たるとしても,退去強制処分を受けないために早期に弁護士をつけて,弁護活動を行うことが考えられますので,速やかに弁護士をつけて,弁護活動を受けることをお勧めします。
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