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【事例】
Aさんは日本で働くために特定技能の在留資格で日本に滞在している外国人です。
在留期限が近くなり,もう少し日本にいたいと思ったことから,永住の在留カードを持てないかと思いました。そこで,在留カードを偽造できる友人に依頼し,永住の在留カードを作ってもらいました。
そのような在留カードを持っていたところ,次の職場で在留カードを見せることとなり,次の職場の雇用主に見せました。しかし,雇用主が在留カードに違和があることに気付き,雇用主が警察に通報しました。
なお,偽造カードであることを見抜かれたのは在留期間内であったため,オーバーステイとはなっていませんでした。
このような場合に,どのような①刑事処分を受けるのか,②退去強制処分を受けることになるのかについて解説します。
参考報道 偽造在留カード行使の疑い 40歳のインドネシア人を逮捕 NHK佐賀NewsWeb
(1)偽造在留カード所持・行使の刑事罰
偽造在留カードを所持していた場合の刑事罰を受ける根拠は,入管法73条の4に根拠があります。
入管法73条の4によれば,「行使の目的で,偽造又は変造の在留カードを所持した」場合に偽造在留カード所持罪が成立することが規定されており,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています。
偽造在留カードを誰かに見せた場合,偽造在留カード行使罪の問題になります。
偽造在留カード行使罪は,入管法73条の3第2項に根拠規定があります。
入管法73条の3第2項によれば,「偽造又は変造の在留カードを行使」した場合に成立するとされています。この「行使」というのは,簡単に言えば,誰かに見せることです。
偽造在留カード行使については,1年以上10年以下の懲役刑が予定されています。
偽造在留カード所持・行使については量刑相場がだいたい決まっており,大体懲役1年程度で執行猶予付きの判決が予定されています。
(2)退去強制事由になるか
偽造在留カードの所持・行使については,退去強制事由になります。
偽造在留カードの所持・行使を行った場合については,入管法24条3号の5イ,ハに規定があります。入管法24条3号の5イによれば,「行使の目的で、在留カード若しくは日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第七条第一項に規定する特別永住者証明書(以下単に「特別永住者証明書」という。)を偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書を提供し、収受し、若しくは所持すること。」,入管法24条3号の5ハによれば,「偽造若しくは変造の在留カード若しくは特別永住者証明書又は他人名義の在留カード若しくは特別永住者証明書を行使すること。」が退去強制事由となることが規定されています。
(3)弁護人として何ができるか
このような処分が考えられることから,弁護士としては,①(知らずに偽造在留カードを持っていたという事情があれば)偽造在留カードと知らずに持っていたため,不起訴や無罪を求めること,②在留特別許可などによって日本に在留できるようにすることが考えられます。
特に①については,偽造在留カードを手に入れてしまった経緯,偽造在留カードであると気づかなかった理由などを主張して,偽造在留カード所持・行使の故意が無いと主張することになります。
このように,偽造在留カードを所持していた場合に犯罪が成立しなかったり,日本に残れる可能性がありますので,在留カードに関して事件を起こした場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
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