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在留資格の取り消し処分を争った裁判例―配偶者としての活動をしてないとされた事例
今回は,在留資格が取り消された処分を更に取り消そうと,裁判で争ったものの,認められなかった事例を紹介します。
令和元年11月13日に東京地方裁判所で判決が宣告された事件です。
今回の裁判を起こした外国人の方は,日本人と結婚し,日本人の配偶者としての在留資格を取得していたものの,あるとき入国管理局から,「正当な理由がないのに日本人の配偶者としての活動を6か月以上していない」として在留資格を取り消されてしまいました。しかし,外国人の方としては,「日本人の配偶者としての活動は継続していたのだ」と主張して,入国管理局の下判断は間違っていた,と裁判を起こしました。
裁判所は,外国人の方の主張を認めず,在留資格は取り消すという判断を認めました。
公表されている事案の概要と,裁判所の判断を解説します。
参考:外国人と日本人との結婚
仮放免を争った裁判 その1
今回は,仮放免を求めて裁判で争った結果,仮放免をしなかった決定が取り消された事例を紹介します。
平成30年8月28日に東京地方裁判所で判決が宣告された事件です。
仮放免は通常,本人や代理人弁護士が,収容している施設長か,主任審査官に対して申請書を提出して判断がなされます。今回紹介する裁判例は,仮放免の申請に対して外国人を収容する施設の施設長が「仮放免をしない」,という決定をした事が違法だとして,その決定の取り消しを裁判所に求めたのです。
裁判所は,結論としては,仮放免をしなかった判断はおかしいとして施設長の決定を取り消しました。その主な理由は,収容されている外国人の方の健康面をみると,収容し続けるべきではないと判断したからです。
公表されている事案の概要と,裁判所の判断を解説します。
参考:仮放免についての解説
東京五輪・パラ,外国人観客の受け入れを断念?
2021年3月21日,東京オリンピックの大会委員会や東京都は,来年開催予定の東京オリンピックの観戦について,外国人の受け入れをしない方向であると報じられました。
⇒NHKの報道 東京五輪・パラ 海外観客を断念 コロナ禍で自由な入国保証困難
オリンピックの観戦のためのビザについては当サイトでも一度ご紹介していましたが,その件の続報となります。
3021年3月21日の報道によって,どのような事態が考えられるのでしょうか。弁護士の視点から今後起きうる対応を予想してみます。
オリンピック観戦のための入国のみ禁止?
報道を見て一番シンプルに思える対応は,「オリンピック観戦のための入国を禁止する」という方法です。
ですが,結論から言って,入国の段階で「オリンピック観戦の入国のみを禁止する」というのは非常に困難であると思われます。そもそも,オリンピックの観戦のための専用のビザというものはなく,多くの人は「短期滞在」というビザ(在留資格)で日本に入国し,各々が好きな競技を観戦することになります。
この短期滞在のビザ(在留資格)は,最大90日の滞在しか認められませんが,滞在期間中の目的には拘束されません。つまり,「なんとなく日本に来たかったので,来ました」という方でも短期滞在の在留資格は認められ得るのです。
そのため,空港や港の上陸審査で短期滞在の外国人の方に対して「オリンピックの観戦ですか?」と訊ねた上で「はい」と答えた人の入国のみを拒絶するというのではあまり意味がありません。「はい」と答えた人の入国だけ禁止する法律上の根拠が乏しいことと,仮に「いいえ違います」と言われた場合にそれ以上の審査のしようがないからです。「オリンピックの観戦ですか」と聞かれても,「いいえ,東京の観光に来ました」と言われれば,その他に上陸を拒否する事情がない限り,在留資格を認めなければならないのです。
短期滞在の在留資格についてはこちらにも解説があります。
一律の入国禁止?
次に,オリンピック開催期間中,日本の出入国を制限するという方法もあります。
法律に従って,一定期間中の出入国を禁止することは可能ですから,先ほどの方法に比べると,実施のハードルは低いようにも思われます。
しかし,実行性という意味では少し疑問が残ります。
まず,いつからいつまでの出入国を禁止するのかという点です。短期滞在は最大90日まで認められますから,仮に4月末に長めの短期滞在ビザで入国が出来れば,外国人の方であっても,オリンピックの開会式ぐらいは観戦できることになります。
また,短期滞在の外国人の方のうちには,オリンピック観戦のみならず,全く関係のない日本の旅行に訪れる人もいます。一律に入国を制限した場合には,旅行業や宿泊業への打撃は避けられないでしょう。
更に,出入国の制限に,本当に意味があるのかどうかについても疑問は残ります。短期滞在ではなく,就労ビザや家族ビザの方の入国までは禁止しないとなると,オリンピックの観戦も兼ねた入国は制限できないことになります。
オリンピック観戦のための外国人の流入を止めるのであれば,時期を見誤らず早期に一律の入国制限をかける必要があるのではないかと思われます。
実際にはどうするのか?
現時点において,大会組織員会は,海外在住者の方が購入した観戦チケットに対して払い戻しをするという方針の様です。そのため,「外国人の日本への流入を止めよう」というよりは,「オリンピック会場に海外在住者が来るのを止めよう」という対策をとっているようです。
このような対応であるため,出入国管理庁としては,オリンピック期間であるからと言って日本への新規入国,上陸を制限しようとしているわけではないように思われます。
もちろん,その時々の国際状況に応じた入国制限,渡航制限などは十分にありうるでしょうから,今年の7月前後に日本からの出国,日本への入国を考えている方は,常に最新の情報に気を配っている方が良いでしょう。
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元カレ,元カノを日本から追い出せる?
日本に住む外国人の方も増えており,在留資格を持って日本に滞在する外国人の数は,統計上,約300万人弱ほどになります。これは日本の人口の,約2%に該当します。単純計算で考えても,50人に1人は外国人,小中学校の2クラスのうち1人は外国籍であってもおかしくないと言えます。
したがって,比率だけで考えても結婚する25組に1人は国際結婚ということになります。もちろん,人口比や地域差などは考慮しない,あくまで数字の上での話です。
結婚があれば結婚前の恋愛関係(デーティング期間も含む)や,離婚もあるわけです。交際していたものの,結婚せずにお別れしてしまったり,浮気や不倫だってありうるでしょう。
参考までに外国人の不倫の問題点について解説した記事もあります。
中には,別れ際の恨み辛みから「あの外国人を日本から追い出してやりたい!」とまで思う人がいるかもしれません。しかし,そのようなことは可能なのでしょうか?
今回は,素朴な,カジュアル(?)な話題に解説してみたいと思います。
資格外活動許可申請の審査基準
日本で生活されている方,特に,留学生や家族滞在の在留資格で日本に在留している方の中には,資格外活動の申請をしている方が多いのではないでしょうか。就労ビザを持っている人であれば良いですが,留学生や家族滞在の在留資格の方が日本でアルバイトやパートで働くときには,資格外活動許可を受けなければ不法就労になってしまいます。
以前,不法就労になってしまうのかどうかについての解説記事もアップしています。
今回は,資格外活動申請をしたとして,その後はどんな審査がなされるのかについて出入国管理庁の審査基準などについて解説します。申請を出すときに,どんなポイントに気を付けないといけないのか,どんなことを書いたら不許可になるのかについても解説しますので,気になる方は最後までよく読んで申請を出しましょう。
それ,資格外活動申請が必要?
日本で滞在している間に,「これってやっていいんだろうか?」と思うことはありませんか?
既にこのサイトでも解説しているように,永住者,日本人または永住者の配偶者等,定住者以外の方の場合には,在留資格と日本での活動の内容によっては,資格外活動となってしまう場合があります。
☆資格外活動に関する解説記事☆
資格外活動をしてしまった場合に待っているのは強制送還 刑事罰についてもあります
今回は,そもそも,資格外活動申請が必要になるのはどんなときなのか?という根本的な部分を解説します。資格外活動で摘発されたくない,日本から追い出されたくない,という方は,是非よく読んでおいてください!
入管からの呼び出し,何に注意する?
日本で生活する外国人の方にとって,「最も怖い!!」と感じるのは,突然の入管からの呼び出し,ではないでしょうか。
入管からの呼び出しは,多くの場合は,自宅へのお手紙で「お尋ねしたいことがあるので,○月×日に△△の入管に出頭してください」と書かれており,内容を書かれていないことが多いです。
いったいなぜ呼び出しを受けてしまうのか,どんなことを聞かれるのかについて,よくある場面を解説します。
在留資格認定証明書の活用を!
日本へ入国する時に一番大切なものは何でしょうか?
パスポート,旅券,確かに大切ですが,日本に滞在する間に必ず必要なもの,それは,「在留資格」です。
トランジットなどで立ち寄る場合を除いて,日本に入国して上陸審査を通過するためには,在留資格が認められなければなりません。
今回は,日本に入国するために最も大事な「在留資格」を取得するための,在留資格認定証明書について解説します。
団体向けの在留資格認定書証明書
団体用の在留資格認定証明書があることをご存知でしょうか。
「在留資格認定証明書」とは,短期滞在(ツーリストtourist)以外の在留資格で日本に上陸しようとする方が,事前に「日本で在留資格(ビザ)が認められるかどうか」の審査を受け,その審査を通過していることを証明するものです。
本来の手続きだと,日本の空港や港の入国審査場で上陸審査を受け,査証(パスポートが本物であることの証明)の審査と,在留資格が認められるかどうかの審査を受けます。
特に在留資格が認められるかどうかについては,提出書類がたくさん必要になったり審査に時間がかかったりと,その場で審査を受けるのはとても大変です。
そのため,通常は,日本に向けて出国する前に,在留資格が認められるのかどうか審査を受けておくのです。それが,在留資格認定証明書というものです。
在留資格は,一人一人の外国人の方の活動内容に応じて認められているものです。ですが,団体として日本に入国するという場合,一人一人が別々に審査を受けていては,手続きに時間がかかってしまう場合があります。
その際には,「団体用の在留資格認定証明書」が発行されることがあります。
今回は団体用の在留資格認定証明書をご紹介します。
ビザをもらうにはお金がかかる?入管で必要になる手数料
在留資格(ビザ)の手続の中には「手数料」が必要になるものがあることをご存知でしょうか。
この「手数料」とは,弁護士や行政書士を頼む費用のことではなく,申請者が直接入管の窓口で払うことになるものです。
在留資格(ビザ)のうち,どの手続には手数料がかかるのか,いくらなのか,手数料が返してもらえることがあるのかについて解説します。
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