在留資格の取り消し処分を争った裁判例―配偶者としての活動をしてないとされた事例

今回は,在留資格が取り消された処分を更に取り消そうと,裁判で争ったものの,認められなかった事例を紹介します。

令和元年11月13日に東京地方裁判所で判決が宣告された事件です。

今回の裁判を起こした外国人の方は,日本人と結婚し,日本人の配偶者としての在留資格を取得していたものの,あるとき入国管理局から,「正当な理由がないのに日本人の配偶者としての活動を6か月以上していない」として在留資格を取り消されてしまいました。しかし,外国人の方としては,「日本人の配偶者としての活動は継続していたのだ」と主張して,入国管理局の下判断は間違っていた,と裁判を起こしました。

裁判所は,外国人の方の主張を認めず,在留資格は取り消すという判断を認めました。

公表されている事案の概要と,裁判所の判断を解説します。

参考:外国人と日本人との結婚

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事案の概要

外国人のXさんは,2001年に初めて日本に入国しましたが,この時は他人名義のパスポートを使用して,不法入国をしました。

2013年にXさんは日本で日本人の女性と結婚し,12年前に不法入国したことを正直に申告しましたが,在留特別許可が認められ,日本人の配偶者としての在留資格が認められることになりました。2015年,2016年のそれぞれの年に,Xさんは在留期間の更新の申請を行い,日本人の配偶者として在留期間の更新が認められてきました。

その後2016年5月に,Xさんは離婚し,離婚した日本人女性は同じ年の11月に別の男性と再婚しました。

そして,2017年4月に入国管理局はXさんに対して,「日本人の配偶者としての活動をしていないのではないか」と聴取を受けました。

Xさんは2019年5月と9月に,在留資格を「日本人の配偶者等」から別の資格へ変更するとの申請を行いましたが,いずれも不許可となってしまいました。

そこで,Xさんは最寄りの家庭裁判所に,「離婚が無効であって,再婚も取り消されるべきだ」という調停と裁判を申し立てたところ,Xさんの主張は認められ,離婚が無効であるという判決が出ました。実は,Xさんは日本人の女性と結婚したものの,結婚してしばらくしたら奥さんとは別居してしまい,これに困った奥さんが,Xさんに無断で離婚届を出してしまったというものだったのです。

Xさんは,離婚届は勝手に提出されたものであって,その後もXさんは奥さんと連絡を取ったりしていたのであるから,配偶者としての活動は続いていたと主張しました。

裁判所の判断

これに対して,裁判所は,客観的なXさんと奥さんとの関係を重要視して,二人の夫婦としての実体は失われており,それが回復する見込みが全くない状態にまでなっていたと判断しました。

特に重視されたのは,同居していた期間が短いこと,別居していたこと,日本人の女性が離婚後に別の男性と結婚したこと,連絡の内容が二人の関係をやり直そうとしているものではないこと,Xさんは勝手に離婚届けを出されていたことを知った後も結婚生活をやり直すための具体的な行動に出ていなかったことでした。

また,Xさんは,勝手に離婚届けを出されたのだから配偶者としての活動をしなかったことにはならないとも主張していましたが,裁判所は,「離婚届けが出ていたかどうかよりも,夫婦として実体のある生活をしていたかどうかが重要視される」と判断し,Xさんの主張は認めませんでした。

コメント

この事案は,日本人の配偶者に無断で離婚届けを出された後,その離婚届が無効だと判断されたにもかかわらず,外国人の方が「日本人の配偶者としての活動をしていない」として在留資格を取り消されたものです。

日本人の配偶者としての活動を続けているかどうかについて,書類の手続きよりも,夫婦としての生活が続いているかどうかという点を重視したことが分かる裁判例です。Xさん側としては,離婚届は勝手に出されていたものだから,婚姻は続いていたという主張をしていますが,裁判所は,「婚姻が続いていたかどうかは,離婚が有効か無効かという点だけでは決まらない」と考えているようです。

実際に,Xさんと日本人女性とが,どのような生活をしてきて,どのようなやり取りをとっていたのかについて,細かく証拠を調べています。また,Xさんが,「勝手に奥さんに離婚届けを出されていた」ことを知った後に,夫婦の生活をやり直そうとしていなかった点も指摘されています。裁判所としては,「本当に夫婦であったのなら,離婚届を出されたら黙っていないだろう」という考えがあったのかもしれません。

「日本人の配偶者等としての活動」というのは,具体的に何をしたらいいのかよくわからないものですが,たとえ離婚をしていなくとも,別居したり生活費を全く別々で管理していたりと,他人の目から見て1つの家族として共同生活をしていると見えなければならないのです。

外国人の方にとっては,日本の「家」文化にはなじみがなく,外国人の方の考える「家」とギャップがあるかもしれません。そのギャップがあまりに激しいと,在留資格を取りされる事態にまで発展する可能性があるので,特に気を付けましょう。

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