在留特別許可を争った裁判事例 東京地裁判決その6

このページでは,在留特別許可を求めて争った裁判事例について,判決文を解説します。

今回の事例は,令和2年9月25日に東京地方裁判所で判決が言い渡された事例です。

この事例は,

短期滞在の在留資格で来日した外国人夫婦が,日本で子供二人を設けて生活していたものの,家族4人とも在留資格がなく,または在留期限を超えて不法残留を続けていたという事案です。入国管理局がこの家族を摘発し,家族4人全員について退去強制令書(強制送還)の手続きがなされたため,この家族は退去強制令書(強制送還)の取消しと,在留特別許可を求めて,大阪地方裁判所で裁判を起こしました。

外国人の方が有罪判決を受けた後に在留特別許可を求めて裁判を起こしたという事例については,前回も紹介したものがありますので,併せてご覧下さい。

在留特別許可が認められなかった例1

在留特別許可が認められなかった例2

事案の概要

外国籍であるXさんは,平成10年に「短期滞在」の在留資格で初めて来日し,当初の在留期間内に日本人の女性と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格へ変更しました。Xさんは一度日本で離婚して,別の日本人女性と再婚し,2人の子供をもうけました。

Xさんには日本国内で数件の犯罪歴がありました。

平成15年に窃盗罪で懲役1年6月執行猶予3年の有罪判決をうけ,

この執行猶予期間中にである平成19年に盗品譲受け罪で懲役2年6月,罰金80万円の実刑判決を受けました。

この判決を受けたため,Xさんは日本の刑務所で服役することになりました。服役している期間中に,Xさんの在留期間の満期となり,在留期間更新申請は一度不許可になりましたが,刑務所内で在留特別許可がなされました。Xさんは平成21に仮釈放が認められ,再び日本国内で生活し始めました。

しかしXさんは出所後,再び2つの罪で有罪の判決を受け,平成26から令和元年まで刑務所で服役しました。この服役の間にXさんの在留資格は「短期滞在」へ変更され,別の在留資格への変更も認められず,Xさんはオーバーステイとなってしまいました。

二度目の服役期間中,懲役刑の終了が近づいてきたところで,Xさんに退去強制令書が出されたため,Xさんは刑務所から出て来ると同時に入管の施設へ収容されました。

Xさんは,日本人と結婚していたことや実子がいること等から在留特別許可を求めて裁判を起こしました。

裁判所で重要になったポイント,裁判所の判断

裁判所は,Xさんが日本で生活していた状況,結婚の状況,子供たちと離れて生活することになる事情を中心に判断して,Xさんの訴えを認めることはできないと判断しました。

・日本での生活の状況

一番不利に働いたのは,日本で有罪判決を受けて服役したことがあるということでした。

Xさんが有罪判決を受けた事件は,被害額が数千万円にも及ぶ詐欺事件で,かつ,Xさんが日本で起こした事件は窃盗,詐欺,盗品譲受など,同じような犯罪でした。

裁判所としても,Xさんの日本での在留状況は悪質で,Xさんが日本のルールを軽視していると判断して,在留特別許可をするかどうかについては重大な消極事情であるとしました。

・日本人との結婚の状況

Xさんは日本に来てから約21年在留し続けていたことから,ある程度日本に定着していると評価されました。

また,日本人と結婚してから約17年たっており,これもある程度評価できるとされました。

・子供たちがいること

裁判所は,Xさんが家族と別居して生活することになるとしても,それはXさんが有罪判決を受けたことが原因であって,Xさん自身が不利益を引き受けるべきであるとしてあまり考慮しませんでした。なお,判決の時点では,子供は13歳,17歳になっていました。

・その他の事情

Xさんは,同じような事例でも在留特別許可が出ていることも主張していましたが,裁判ではそれぞれの事件によって異なる事情とみていることから,「同じ様な事件でも許可されているから今回の件も同じにすべき」という事件ではないと判断しました。

コメント

外国人の方が日本で有罪判決を受けて在留特別許可を求めていたものの,認められなかったという裁判例について解説しました。

この事例では,実刑判決を受けた外国人の方に対して,過去に一度は在留特別許可がされていた点が特徴です。この部分については,在留特別許可が認められなかった例1と共通している部分があります。

しかし,一度在留特別許可を受けていた人が,再度実刑判決を受けた場合には在留特別許可が認められないという点も共通していました。

今回の裁判例では,日本に残って生活する必要性については,日本人の配偶者がいることと,日本人の家族がいるという2つの点を主張していたようですが,裁判所は,それだけでは二度目の在留特別許可まで認めるには足りない,と考えているように思われます。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5989-0843電話番号リンク 問い合わせバナー