このページでは,資格外活動として規制される「報酬」や「収入」をともうなう活動と,単なるお小遣いとの違いについて弁護士が解説します。
不法就労活動は,出入国管理法の違反となりますが,単なるお小遣いをもらうことは違法なのでしょうか。
お金をもらうのは違法?
今回のコラムまでに,日本での資格外活動について解説してきました。
>過去のコラムはこちら
そして,資格外活動として規制されるのは,第19条第1項の規定に違反して「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」と解説してきました。しかし,「収入を伴う活動」や「報酬を受ける活動」とは一体どういうことを指すのでしょうか。
例えば,在留資格で認められていないのにタクシー会社で働いて毎月30万円のお給料をもらうことは収入を伴う活動と言えそうです。ですが,友達に頼まれて代わりに車を運転して2000円だけ受け取る場合はどうでしょうか。人の代わりに車を運転してお金を受け取っている点では同じですが,これも「資格外活動」や「不法就労」にあたるのでしょうか。
今回は,お金をもらう行為であっても資格外活動になる場合とならない場合について,違いを考えてみます。
「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」とは何か
・収入を伴う事業を運営する活動とは,収入を得るために一定の活動を継続して行うことをいいます。
臨時で一回的に行う活動については含まれませんし,仮に複数回行われたとしても継続的なものでなければ該当しません。
・報酬を受ける活動とは,雇用契約に限らず,請負,委任等,一定の作業や成果に対価が支払われる活動のことを言います。
とすると,例えば,友達に頼まれて運転をする行為は,たまたま頼まれただけであれば「収入を伴う事業を運営する活動」には当たらないと思われますが,「報酬を受ける活動」に該当してしまうようにも思えます。
しかし,出入国管理法では,「報酬を受ける活動」に当たらない例外があります。
法律では,「業として行うものではない講演に対する謝金,日常生活に伴う臨時の報酬その他法務省令で定めるもの」は,報酬を受ける活動に例外的に当たらないとされています。
そして,出入国管理法施行規則19条によると,次の場合については報酬を受ける活動には当たらないとされています。
- 業として行うものではない一定の活動に対する報酬
- 親族,友人又は友人の依頼を受けてその者の日常の家事に従事することに対する報酬
- 留学の在留資格をもつて在留する人で所属している大学又は高等専門学校との契約に基づいて行う教育又は研究を補助する活動に対する報酬
1については更に詳しく,講演,討論,助言,鑑定,小説や論文の作成,映画やテレビ番組への出演等,創作的または学術的な活動が定められています。
2については,単純なお手伝いの場合等があります。
3については,いわゆるチューターtutorのことを言います。
これらの活動については,「報酬を受ける活動」に当たらないことになりますので,資格外活動にもなりません。
再度上の例について考えてみますが,友達に頼まれて車を運転して2000円を貰うというのは,事情にもよりますが「報酬を受ける活動」に当たらない可能性もあります。
例えば「買い物に行くからちょっと車を出してよ」と頼まれたような場合であれば「日常の家事」のための行為に含まれるとも言えそうです。
しかし,「週3日通勤のために車を運転してもらう,その報酬として2000円を払う」というような場合では,「日常の家事」の範囲外であるとも思われます。
もちろん,資格外活動に当たってしまうかどうかの判断は,非常に難しい部分があります。
不安なことや分からない部分があるという方は事前に専門家に相談しておいた方が良いでしょう。