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永住権が取りにくくなった?永住許可申請の基準変更を解説
永住許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
永住者とは「法務大臣が永住を認める者」をいい、永住許可後日本に本拠を置いて生活する者が想定されていますが、近年では高度人材等、政策的に我が国への入国・在留を促進すべき外国人へのインセンティブとして、永住許可をすることも行われています。(審査要領)
永住者の在留資格は在留活動・在留期間に制限がないことから日本に在留する外国人にとって最も価値のある在留資格となります。
近年、永住許可申請は急速に取得難易度が上昇してきました。その要因として2018年12月18日に入管法が改正され、「特定技能1号」と「特定技能2号」が創設されたことと関連性があることが指摘されています。政府は特定技能による労働者の受入を5年間で34万人と予測しました。
特定技能2号は永住申請に必要な就労期間としてカウントされ、特定技能1号5年と特定技能5年の計10年間で居住歴に係る永住資格取得申請の申請要件を満たすことから、「特定技能」から永住許可申請者が増加するのを懸念して永住申請の要件を厳しくしたという見方が指摘されています。
これを踏まえて,永住許可に関するガイドラインは2019年5月31日に改訂されました。
改訂部分についてですが、
改訂前①「納税義務等公的義務を履行していること」の部分が
⇒改訂後②「公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等)の義務を適正に履行していること」
に変更されました。
具体的な変更点として以下の点が変更されています。
・住民税の課税証明書・納税証明書の提出年数期間
変更前:3年 ⇒ 変更後:5年
・国民年金・国民健康保険の加入状況
審査対象として追加
・年金・健康保険の記録
変更前:不要 ⇒ 変更後:直近2年分が必要
・国税の納税証明書
変更前:不要 ⇒ 変更後:5つの税目について必要
上記の変更点から判断すると、公的義務の履行と独立生計要因が重要視されています。
収入についても独立生計要件として重要な審査要件となります。
それでは実際の許可率を改正前、改正後で比較検討してみます。
2014年度全体の既決総数は50788件、永住申請許可率は東京入管68,6%、名古屋入管68,5%、大阪入管74,3%、全体で72%となっています。
2018年度の既決総数は61,027件、永住許可率は東京入管が51,6%、
名古屋入管が39,8%、大阪入管が63,2%、全体で53,6%となっています。
2021年度の既決総数は62142件、永住許可率は東京入管が60,6%、名古屋入管が49,4%
大阪入管が70,2%、全体で59%となっています。
2014年度は東京、名古屋、大阪入管とも永住申請許可率は70%前後と高い許可率となっていましたが、2018年度は全体で53,6%と4年前と比較すると全体で18ポイントほど低下しました。2021年度の永住許可率は2018年度と比較して多少改善はされていますが、2014年度と比べると依然低い水準となっています。
特に名古屋入管管轄の永住許可率は50%を割っています。
このように現在の永住許可申請は申請書類の内容自体が高度になってきており、10年前と比べて入管の審査も厳しくなってきています。
永住許可申請についてお悩み事、困りごとのある方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。
技能実習生の受け入れ方2パターン 弁護士事務所が解説
在留資格「技能実習生の受入れ方法」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
外国人技能実習生受入れ方法としては「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。
このうち企業単独型とは、原則として日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方法のことをいいます。
一方、団体監理型とは、事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(外国人技能実習機構の認可を受けた「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法のことをいいます。
この団体監理型で技能実習生を受け入れる場合には、技能実習生が入国してから実習を終えて帰国するまでの間、毎月「監理団体」に技能実習生をフォローしてもらうための費用(以下、「監理費」といいます)を支払います。
この「監理費」は、監理団体によって金額が異なりますが、おおよその相場としては月額1人当たり3万円程度となっています。
この点、企業単独型は、日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業がある場合にのみ受け入れられるため、企業単独型での技能実習生の受入れ人数としては圧倒的に少ないのが現状です。
しかし、日本の企業等(実習実施者)が自身で技能実習生のフォローができる体制が整備されている場合には、企業単独型で技能実習生を受け入れると監理団体に支払う「監理費」を支払うことが不要となり、コスト削減ができます。
そこで、日本の企業等(実習実施者)が子会社以外の他の会社等(民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等、会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社、破産法の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等その他これらに準ずる会社等であって、かつ、当該会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められる会社等を除く。)の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合は、自身の海外の現地法人、合弁企業がない場合であっても、当該会社等から企業単独型で技能実習生を受け入れることができます。
ですので、日本の企業等(実習実施者)で自身の海外の現地法人、合弁企業がない場合であっても、子会社以外の他の会社等の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合には、当該会社等から企業単独型で技能実習生を受け入れることができます。
現在団体監理型で技能実習生を受け入れており、コスト面でお悩みの方は企業単独型での技能実習生の受入れを検討してみてはいかがでしょうか。
離婚後も日本に居続けられるのか?定住者ビザについて解説
離婚・死別定住について弁護士法人あいち刑事事件総合法律所が解説します。
「日本人の配偶者」でなくなっても在留を続けられるのか
日本人の配偶者、永住者・特別永住者の配偶者の在留資格で日本に在留している場合、配偶者としての活動をすることが在留資格の要件となっています、離婚、死別等で配偶者としての活動ができなくなった場合は、これまでの在留資格が認められないことになり、他の在留資格に変更しなければ本国に帰国することになります。
しかしながらこれまで配偶者としての活動を長年継続してきた方の中には、生活基盤が既に本国ではなく日本にあり、簡単には帰国を選択できない方が少なからずいるでしょう。
又、経営・管理、技術・人文・国際業務等の就労系の在留資格変更申請には、学歴、業務経験、資産等の面で複雑で高度な要件が求められ、変更要件を満たす人は限られてきます。
こうした場合に、これまでの生活基盤を大きく変更することなく、引き続き日本で生活することを希望する方の救済措置的な在留資格として、離婚定住・死別定住と呼ばれる在留資格があります。
「告示外定住」という定住者ビザの一種であり,要件が事前に定められていない在留資格です。離婚・死別定住の対象となる者は、日本人、永住者又は特別永住者である配偶者等と離婚又は死別後引き続き日本に在留を希望する者で、同じ身分系の在留資格でも定住者の配偶者等と離婚又は死別後引き続き在留を希望する者は含まれません。
離婚・死別定住の許可要件はおよそ以下の4つです。
① おおむね3年以上の「正常な婚姻関係・家庭生活」を営んでいる
② 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
③ 日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難となるものでないこと
④ 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
審査のポイント
①「正常な婚姻関係・家庭生活」は、通常の夫婦としての家庭生活を営んでいたことをいいます。
したがって、別居していた期間であっても夫婦としての相互扶助、交流が継続して認められればこれに該当します。
②「生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは、独立して生計を営むだけの収入のことです。
正社員、派遣社員、アルバイト等、就労形態による区別はありませんが、およそ月収18万以上が目安となります。
③「日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており通常の社会生活を営むことが困難となるものでない」とは、言語能力などの点で,日本での生活に支障がないことです。
例えば、申請書の記載や面接において、申請人との意思疎通が可能であればよく、特定の日本語試験に合格していることまでは問われません。
④「納税義務」は文字通り,きちんと払っているかどうかが問題となります。税金の滞納や交通違反等の法律違反があれば審査において不利になります。
定住者の在留資格に変更が出来れば、就労に制限はなく、これまでの生活基盤を大きく崩すことなく引き続き日本での生活が可能となります。
日本人、永住者・特別永住者の方と離婚・死別され、在留資格についてご心配事・困りごとのある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。
外国の親を呼び寄せるにはどうしたらよいか
日本で暮らす外国籍の方が,自分の親を日本に呼び寄せるための手段としては「老親扶養」のビザを取得する,というものがあります。
親を介護するために,日本に呼び寄せるというものです。この「老親扶養」は,「特定活動」という在留資格で認められる活動の一種です。
老親扶養のための「特定活動」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
近年,本国にいる年老いた親を日本に呼び寄せ面倒をみたいという問い合わせが多いです。
相談される方の男女の割合はほぼ同数で、国籍では中国籍の方が圧倒的に多いです。
なぜ中国籍の方から「老親扶養」のご相談が多いのかというと、中国で1979年から2015年まで実施された「人口抑制政策」いわゆる「一人っ子政策」が実施されていたことと深く関係していると思われます。
中国において「一人っ子政策」が実施された1979年頃に生まれた方々は,現在43歳~44歳です。その頃に生まれた方々の親の年齢が,現在,おそらく70代中盤から80代に差し掛かっていると推定されます。
この政策の実施中に生まれた子供達が、
・縁あって日本に移り住んだ
・日本人と結婚して日本に移住した
・日本の会社に就職した
と言った理由で,本国を離れて生活している方がいます。そのような方々も,日本での滞在も10年~20年ほど経って社会的にも経済的にもある程度余裕が出来てきているでしょうし,本国にいる親を呼び寄せる準備が整ってきた,長男長女として本国にいる親の面倒をみるのは自分しかいない,しかしながら日本での生活を投げ捨てて帰国するわけにはいかない,といった状況の中で,本国にいる老齢の親をなんとか日本に呼び寄せたいという思いがあるのではないかと思いわれます。
残念ながら日本の在留資格には,「親の面倒を見る」というための在留資格が存在しないため,単に親を呼び寄せたいというだけでは長期的な在留資格を得ることはできず,「短期滞在」で親を呼び寄せるしかありません。
では「年老いた親」の面倒をみることは、親のいる本国に自分が帰国する以外に選択肢はないのでしょうか。
この場合に人道的な措置として「特定活動」という在留資格で親の呼び寄せが出来る場合があります。これはあくまで個別的判断による人道的な措置であり予め上陸審査基準が類型化されていないため、在留資格認定証明書では呼び寄せが出来ません。
そこで短期滞在ビザで来日して、在留期間中に老親扶養の「特定活動」に在留資格変更申請をすることになります。
老親扶養の「特定活動」について事前に定められた審査基準はありませんが、大まかな目安となる基準はあります。
①親の年齢が概ね70歳以上
②親が本国で身寄りがいないこと
③親が単身であること
④扶養側に親を扶養する経済力があること
⑤親に持病がある。
上記①~⑤の全てあるいは複数該当する場合、老親扶養のための「特定活動」に資格変更が出来る場合があります。
老親扶養「特定活動」の在留資格についてご心配な事やお困り事があるという方は、
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。
大麻取締法違反で強制送還,再入国できるのか
(解説のための架空の事例です)
X国籍で東京都に住んでいたAさんは,自己使用目的で大麻数グラムを所持していたところ,路上で職務質問を受けて大麻の所持が発覚していしまい,現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは裁判によって,執行猶予付き判決を受けましたが,その後,東京出入国管理局から呼び出されてインタビューを受け,退去強制(強制送還)されてしまいました。
Aさんには婚約関係にあった,日本国籍のBさんという方がいました。Bさんは,Aさんと結婚して日本で生活をしていきたいと思っていますが,Aさんの再入国手続きについて弁護士に相談することにしました。
薬物事件で強制送還された場合
Aさんのように,薬物事件(具体的には,覚醒剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,大麻取締法違反,麻薬特例法違反)によって有罪の判決を受け,その判決が確定してしまうと退去強制の理由(入管法24条4号チ)が生じます。判決が確定した後に強制送還の手続きとなります。
薬物事件で有罪判決を受けたことによって強制送還となると,日本に再上陸できなくなってしまいます。
日本国内で大麻取締法違反による前科(犯罪歴)がある方の場合,刑の内容や刑期に関わらず無期限で再入国できなくなってしまいます。
再入国を求める場合
Aさんのように薬物事件で有罪の判決を受けて国籍国に送還された後,日本への再入国を求める場合には,上陸特別許可を求めることになります。
上陸特別許可とは,本来は再入国できない人(上陸拒否事由がある人)についても,特別に上陸を許可する事情がある場合に,その外国人の上陸を認めるというものです。
強制送還(退去強制)される手続の中における,在留特別許可のようなものです。上陸特別許可を求めて日本へ入国しようとする場合には,大きく分けて二通りの手続きがあります。
- 国籍国のパスポートを取得して,出国して,日本の空港や港の入管で上陸審査を受ける。
- 出国する前に,在留資格認定証明書の交付を請求する。
1の方法は,言ってみれば「ぶっつけ本番」という形で,ひとまず日本へやってきて,そこから上陸特別許可を得られるかどうかの審査をしてもらうという方法です。この場合,形式的には一度「入国拒否」の処分を受けることになり,そこから改めて上陸審査を受けることになりますから,手続には数日かかることがあります。その間,空港や港から出ることはできません。
ほとんどの方は,2の方法で再上陸できるかどうかについての審査を受けることになるでしょう。
本来,「在留資格認定証明書」というのは,日本での在留資格が認められるかどうかについての事前審査として行われるものです。Aさんの場合,おそらく「日本人の配偶者等」のビザを申請することになりますが,本来であれば「日本人の配偶者等」に該当するかどうかが審査の対象になります。
しかし,上陸拒否事由がある人が在留資格認定証明書の請求をした場合,上陸特別許可をするかどうかについても併せて審査をすることになります。
つまり,AさんやAさんの家族のように,既に強制送還された後の人を呼び寄せたいと思った場合には,先に,上陸特別許可がもらえるのかどうか(在留資格認定証明書がもらえるか)についての審査を受けておいた方が良いでしょう。
1のように,ぶっつけ本番で上陸特別許可を求めても,仮に不許可となった場合には,そのまま国籍国へ帰らなければなりません。費用的にも,時間的にも,身体的にも多大な負担となってしまうでしょう。
一方,2の方法の在留資格認定証明書の請求については,弁護士や行政書士に委任すれば,オンラインでの手続きも可能です。
一度強制送還されてしまった方の再入国については,弁護士等の専門家にご相談ください。
上陸特別許可について
「上陸特別許可」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がご説明します。
日本で暮らす外国人の中で、例えば
- オーバーステイで強制送還された
- 事件を起こして逮捕され1年以上の実刑に処せられた
- 執行猶予を含む1年以上の刑に処せられた
- 薬物犯罪で刑に処せられた
などの場合、一定の事情に該当する方は,一度日本を離れてしまうと,再び日本に入国することを拒否される場合があります。
これは「上陸の拒否」とよばれ、出入国管理及び難民認定法第5条1項で「上陸の拒否」に該当する事情と「上陸拒否期間」が定められています。
①の場合、初回のオーバーステイで5年、2回目以降は10年間上陸が拒否されます。
「上陸の拒否」とは日本への入国が認められないという意味です。
②や③,④のように,犯罪歴がついてしまった場合,一度日本から出国すると「無期限上陸拒否」となり、永久に日本に入国することはできず、該当者にとって大変厳しい規定となっています。
しかし入管法5条1項の「上陸の拒否」に該当すると判断された場合でも、人道上の理由等法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときは、法務大臣の裁量により上陸の許可を与える場合があります。
この法務大臣による上陸許可を「上陸特別許可」と言います。
「上陸拒否」に該当する日本国外にいる外国人が改めて日本に入国したい場合は、法務大臣に対して「上陸特別許可」を求める「在留資格認定証明書」の申請をします。
理由書・嘆願書・SNS・写真等の証拠書類を添付した「在留資格認定証明書」を通して、法務大臣に「上陸を認めるべき特別の事情」を説明して在留許可のお願いをします。
オーバーステイ等で強制送還され上陸拒否に該当する場合でも、上陸拒否期間内に日本に戻れる場合があります。上陸拒否にあたる家族や友人を日本に呼び戻したい方はお一人で悩まずに、まずは入管業務を扱う弁護士・行政書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
「留学」の在留資格について解説,ビザがもらえる学校はどこまで?
在留資格「留学」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律所が解説します。
1.「留学」の在留資格に該当する活動
本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動。
該当例としては、大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒。
2.基準 一部抜粋
(前略)四の二 申請人が中学校若しくは特別支援学校の中学部又は小学校若しくは特別支援学校の小学部において教育を受けようとする場合は、次のいずれにも該当していること。ただし、我が国の国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益社団法人又は公益財団法人の策定した学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当することを要しない。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であること。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であること。
ハ 本邦において申請人を監護する者がいること。
ニ 申請人が教育を受けようとする教育機関に外国人生徒又は児童の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていること。
ホ 常駐の職員が置かれている寄宿舎その他の申請人が日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていること。 (後略)
3.基準についてのポイント
基準省令四の二は、申請人が中学校若しくは特別支援学級の中学部又は小学校若しくは特別支援学級の小学部において教育を受けようとする場合の基準です。
イからホまでありますが、学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当しなくともかまいません。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であることが必要です。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であることが必要です。
二 申請人を受け入れる小学校、中学校、特別支援学校等に常勤の生活指導員が必要です。
ホ 申請人が日常生活を支障なく営むための「寄宿舎」「宿泊施設」が必要です。
この「寄宿舎」「宿泊施設」は申請人の監護者の自宅で構いません。
4.「留学」と「資格外活動」について
「留学」としてイメージしやすいのは「大学」ですが、在留資格【留学】は小学校から大学院までを対象としています。
「留学」には日本語学校も含まれます。
在留資格「留学」で日本語学校等に入学された方は本来働くことは認められていませんが、「資格外活動許可」を受けた場合には、週28時間以内(長期休業(夏休み等については1日8時間以内)のアルバイトがみとめられます(風俗営業店舗等を除く。)。
資格外活動許可を超えてアルバイトをした場合、退去強制されたり、在留更新が認められない場合があり、近年、ブローカーの甘言を安易に信じ、入国当初から多額の借金を背負うことになった結果、借金返済のために制限を超えたアルバイトをすることで本来の日本語学校での勉強がおろそかになり、ほとんど日本語が習得できないまま、帰国を余儀なくされたり、より稼ぎをえるために失踪する者が増加していることが問題となっています(出入国在留管理局HPより)。
在留特別許可を争った裁判事例 東京地方裁判所その13
このページでは,在留特別許可を求めて争った裁判事例について,判決文を解説します。
今回の事例は,令和4年4月14日に東京地方裁判所で判決が言い渡された事例です。
この事例では,外国籍の男性Aさんが,日本国内で外国籍のBさんと婚姻し,その後,永住許可を受けて日本で生活していましたが,Aさんは風俗営業法違反や売春防止法の違反によって執行猶予付き懲役刑を受け,強制送還の手続きに付されました。その後,出入国管理局は,Aさんに対して退去強制令書を発付して,正式にAさんを強制送還するとの決定をしました。
Aさんは,日本での婚姻関係やその家族と日本に引き続き在留することを求めて,退去強制(強制送還)令書の取消を求めて裁判を起こしました。
事案の概要
Aさんは「留学」の在留資格で来日した後,Bさんと出会って結婚し,日本の大学を卒業しました。
Bさんには前婚からの連れ子がいましたが,Aさんとの間にも実子をもうけました。Aさんは「留学」の在留資格から「定住者」へと変更し,その後に永住者に変更しました。
Aさんは輸入関係の会社を経営していましたが,それとは別でマッサージ店を経営するようになり,このマッサージ店において無許可で性的なサービスが提供されたことから,風俗営業法の違反によって罰金刑を受け,更にその後もマッサージ店で売春行為が行われていたことから売春防止法違反によって執行猶予付き懲役刑の判決を受けることになりました。
売春防止法違反に当たった行為は,入管法における売春関連業務に従事していることにもなったため,Aさんは退去強制(強制送還)の対象となってしまいました。
①原告であるAさんは,
・Aさんが永住許可を受けていること
・Aさんが日本に定着していること
・Bさんとの婚姻関係や子供との親子関係があること
から,在留特別許可が認められるべき事案であると主張しました。
②これに対して被告の国は,
・Aさんの売春関連業務への従事の違法性が大きいこと,犯罪性が大きいこと
・永住許可は特に考慮する事情ではないこと
・本国への帰国期間が長いこと
・家族関係も含めて,Aさんを強制送還したとして支障は少ない
から,在留特別許可が認められるべき事案ではないと主張しました。
裁判で重要になったポイント,裁判所の判断
裁判所は,Aさんの訴えを認めず,請求を棄却しました。
まず,Aさんが強制送還されるに至った事情である風営法違反や売春防止法違反の事実は,日本で法律を守って生活しようとする意識の低さを表していると指摘しました。
また,永住許可を受けているという事情についても,永住者だから直ちに在留特別許可がなされるというわけではなく,あくまで一事情にとどまり,上記のような法令の違反があることも考慮すると,在留特別許可を認める大きな事情とまでは言うことができないとしました。
そして,Aさんの日本への定着性や家族関係についても,①日本との定着性については,2度の法令違反があったのだから善良な生活状況だったとは言えない,②家族関係については,Aさんの妻と実子はAさんと同じ国籍なのだから本国で一緒に暮らすこともできること,連れ子については成人していて仕事もしているし,Aさんの本国での生活も可能である事を理由に,在留特別許可をするほどの事情ではないとしました。
コメント
在留特別許可を求める事案において,外国人同士の結婚(永住者の外国人同士)の場合には,やはり日本人同士の結婚とは異なり,法律上保護される程度が低くなっています。
また,売春に関わっていたとされると,入管法上は非常に厳しい対応をされてしまいます。売春関連については,刑事裁判で有罪の判決を受けていない段階でも,強制送還が可能とされていますし,仮に不起訴処分になったとしても,入管は退去強制事由があるとして強制送還できます。それだけ,外国人による売春に対して厳しい対応をしているということになります。
この事案のように,日本国内で,比較的安定した家族生活を営んでいるというケースであっても,売春関連業務に関わっているというように,違法性が高いと認められると,在留特別許可の見込みも低くなってしまいます。
在留特別許可に関する対応は,入管が関わる前の段階から,刑事事件での対応の段階で,ある程度の決着がついてしまいます。ご不安なことがある方は,一度弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。
在留期間の延長が認められなくなる!? 特別措置の終了について
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する 在留資格上の特例措置の終了」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
コロナ禍の拡大により、在留期限が経過した後も帰国できない等の事情に鑑みて、新型コロナウイルス感染症による帰国困難者に対する特例措置が取られてきました。
出国者が増加している状況等を踏まえ、特例的な在留を認めている外国人の方について、現に有する在留資格の在留期限に応じ、以下のとおり帰国に向けた措置がなされてきましたが、令和4年11月1日を持って、コロナウイルス感染症の影響によるすべての特例措置が全て終了しましたので、ここで在留期限ごとに特例措置終了について解説いたします。
① 在留期限が令和4年6月29日までの方
以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)次回更新時には「特定活動(4か月)」又は「短期滞在(90日)」を「今回限り」として許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
② 在留期限が令和6月30日以降の方
「今回限り」として、以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)帰国困難を理由とする在留許可は今回限りとなります。今回許可された期間内に帰国準備を進めてください。 注3)上記の許可に係る在留期間を満了した場合には、在留期間の更新は認められません。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
③ 新たに帰国困難を理由として在留を希望する方
令和4年11月1日までに現に有する在留資格の在留期限が満了する場合に限り、上記②の「今回限り」の措置 を認めます。 注)「特定活動(雇用維持支援)」については最大1年(※「今回限り」)を許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例措置による在留更新に該当する方はいません。
④ 在留期限が令和4年11月2日以降の方
コロナ帰国困難を理由とした「特定活動」又は「短期滞在」への変更は認められません。
(令和4年11月2日以降に在留期限を迎える方はコロナ特例措置の対象外です)
①~④に該当するすべての在留期限において、新型コロナによる特例措置が終了したことで、
これらの期限以後の新型コロナウイルスの影響による在留期限の延長は認められません。
在留期間更新の際は、オーバーステイにならないよう注意しましょう。
参考;「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する在留資格上の特例措置の終了について」 (出入国在留管理局HP)
「技能」の在留資格について
在留資格「技能」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
在留資格「技能」とは,
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う「産業上の特殊な分野」に属する熟練した技能
を要する業務に従事する活動
とされています。具体的に,どのような活動に対して認められる在留資格なのかという点を解説していきます。
1.「産業上の特殊な分野」とは
外国に特有又はわが国よりも高い水準にある産業分野のほか、その技能を有する者が日本に数人しかいない産業分野等も含まれます。
この結果、「技能」の在留資格による入国・在留には、いわゆる日本人との非代替性又は代替困難性が求められることとなり、「技能」の在留資格の対象となる者の範囲は狭く限定されていました。
しかしながら近時人手不足の観点から、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れの要望が強く、2018年に「出入国在留管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が可決・成立され、「特定技能1号」と「特定技能2号」が新設されました。
現在14の特定産業分野において、「特定技能」による就労が認められています。
このうち「特定技能2号」については、従事する業務が「法務省令で定める熟練した技能を要する業務」であることが要件として定められており、業務の熟練性が求められていますが、
「特定技能1号」については、従事する業務が「法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」とされています。
在留資格「技能」において、分野だけではなく、技能水準についても、外国人技能就労者の受入範囲が拡大されました。(『入管関係法大全第2巻〔第2版〕』P154)
2.「技能」の基準について(一部抜粋)
一~三、八(略)
四 宝石,貴金属又は毛皮の加工に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
五 動物の調教に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に 係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
六 石油探査のための海底掘削,地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査 に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削, 地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含 む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
七 航空機の操縦に係る技能について二百五十時間以上の飛行経歴を有する者で,航空法(昭和二 十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの
九 ぶどう酒の品質の鑑定,評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能 について五年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含 む。)を有する次のいずれかに該当する者で,当該技能を要する業務に従事するもの イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」とい う。)において優秀な成績を収めたことがある者 ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているものに限る。)に出場したことがある 者 ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含 む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者
3.在留資格認定のポイント
(第4号)は、宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能を有し、そのような技能を要する
業務に従事する者です。10年以上の実務経験を有することが必要です。
(第5号)は、動物の調教など、動物の調教に係る技能を有する者で、そのような技能を要する技能を要する業務に従事するものです。
本号の場合も10年以上の実務経験が必要です。
(第6号)は、石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査のいずれかに係る技能を有している者で、そのような技能を必要とする業務に従事するものです。こちらの場合も10年以上の実務経験が必要です。この実務経験の期間には、外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間が含まれます。
(第7号)は、航空機の操縦士です。航空機の操縦に係る技能について250時間以上の飛行経歴を有すること及びこのような航空運送事業の用に供する航空機に乗り込んで操縦者としての業務に従事することが要件として定められています。
(第8号)は、スポーツの指導を行うものが対象です。
参考:『入管関係法大全第2巻〔第2版〕』P160~162
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