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暴力事件を起こしてしまった場合の強制送還手続きを弁護士に相談
退去強制手続きは、外国人が日本で犯罪を犯した場合に発生する可能性がある手続きです。この記事では、具体的な事例を通じて、退去強制手続きの法律的側面を詳しく解説します。法律の細部にわたり、どのような状況で退去強制手続きが発生するのか、どう対処すべきかについて深く探ります。
事例紹介: 定住者ビザのAさんの刑法違反
Aさんは「定住者」ビザで日本に在住していました。ある日、ストレスから酒に酔い、公共の場で暴力を振るってしまいました。被害者が警察に通報し、Aさんは逮捕されました。この事件は、Aさんにとって人生を大きく変える出来事となりました。
裁判で有罪判決を受け、退去強制手続きが始まりました。
退去強制手続きの基礎知識
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。
- 一定の入管法によって処罰された場合: 旅券法違反など。
- 薬物事件で有罪判決を受けた場合: 麻薬取締法、覚醒剤取締法など。
- 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合: 執行猶予がついても対象。
- 1年を超える実刑判決を受けた場合: 任意の法律違反で刑事裁判を受けた場合。
特に、窃盗罪、強盗罪、詐欺罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となります。しかし、在留資格によって強制送還されるかどうかが変わることがあります。例えば、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格では、執行猶予付きの有罪判決を受けても強制送還にはなりません。
退去強制手続きは、入管法に基づいて行われます。手続きは、入国管理局が行い、強制送還の決定が下されると、外国人は日本から退去しなければなりません。強制送還の決定は、裁判所の判決とは別に行われる行政手続きです。
弁護士へ相談
退去強制手続きは非常に複雑で、個人で対応するのは困難です。弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受け、最良の解決を目指すことができます。弁護士は、強制送還の決定に対して異議申し立てを行うことも可能で、適切な権利保護を図ります。
また、強制送還が決定された場合でも、強制送還の執行を一時的に停止する申し立てなど、クライアントの権利と利益を最大限に守るための支援を提供します。
弁護士への相談の重要性
退去強制手続きは、外国人にとって非常に深刻な問題であり、その結果として日本からの強制送還が発生する可能性があります。
このような重大な事態に対処するためには、専門的な知識と経験が必要とされます。
弁護士に相談することで、以下のようなサポートが受けられます。
- 法的権利の確保: 弁護士は、クライアントの法的権利を理解し、保護するための適切な手続きをガイドします。
- 適切な対応策の提案: 事案に応じて、最適な対応策を提案し、実行します。
- 強制送還の回避: 可能であれば、強制送還の回避や猶予の申請など、クライアントの利益を最大限に守るための戦略を立てます。
退去強制手続きの予防
退去強制手続きに至らないためには、以下のような予防策が重要です。
- 法律の遵守: 日本の法律を遵守し、特に入管法や刑法などの重要な法律に対する理解を深めることが基本です。
- 適切なビザの取得と更新: 在留資格に関連する法律を遵守し、ビザの取得や更新を適切に行うことが重要です。
- 弁護士との定期的な相談: 法律の変更や個人の状況の変化に対応するため、弁護士と定期的に相談することが推奨されます。
最終的なまとめ
退去強制手続きは、外国人にとって非常に重要な問題であり、その対応には専門的な知識と経験が求められます。この記事では、具体的な事例を通じて退去強制手続きのプロセスと法的側面を解説しました。
弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受けることができます。また、法律の遵守と適切なビザの管理、弁護士との定期的な相談など、退去強制手続きの予防策も重要です。
この記事が、退去強制手続きに関連する法律の理解と適切な対応の一助となることを願っています。
まとめ
退去強制手続きは、外国人が日本で法律に違反した場合に発生する可能性がある重大な手続きです。この記事では、Aさんの事例を通じて、退去強制手続きの具体的なプロセスと法的側面を詳しく解説しました。
法律の細部は非常に複雑であり、個人での対応は困難です。強制送還が決定された場合、弁護士に相談することで、適切な法的サポートを受けることが可能です。弁護士は、異議申し立てや強制送還の執行停止の申し立てなど、様々な法的手段を用いてクライアントの権利を保護します。
退去強制手続きは、人生に大きな影響を及ぼす可能性があるため、法律に対する理解と適切な対応が求められます。この記事が、退去強制手続きについての理解を深める一助となれば幸いです。
定住者ビザはどんな場合にもらえる?誰でももらえる?
在留資格「定住者」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
この「定住者」の在留資格に該当するのは、法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者です。
「定住者」の該当例としては、第三国定住難民・日系3世・中国残留邦人等です。
「定住者」の在留期間は、5年・3年・1年・6月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)となっています。
なお、この「定住者」については、成年年齢の引下げ等を内容とする「民法の一部を改正する法律」の成立を受け、定住者告示6号各号に規定する「未成年」については、現行の20歳未満から18歳未満に変更になり、令和4年4月1日から実施されています。
令和4年4月1日以降、18歳以上の方は「未成年・未婚の実子」として新規に在留資格「定住者」で入国することができませんのでご注意ください。
ただし、既に「定住者」の在留資格をお持ちで再入国許可(みなし再入国許可を含む。)により出国している方への影響はありません。
以下の法務省告示に適合している場合は、法務大臣の個別の指定がなくても上陸許可を受けられます。
・日系2世及び3世
・日本人の子として出生し「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者の配偶者
・1年以上の在留期間を指定されている「定住者」の配偶者
・1年以上の在留期間を指定されている「定住者」の扶養を受けて生活する未成年かつ未婚の実子
・日本人等の配偶者で「日本人の配偶者」等の在留資格を有する者の未成年かつ未婚の実子
・日本人等の扶養を受けて生活する6歳(場合により8歳)未満の養子
・中国残留邦人等とその親族
・インドシナ難民のうち一定範囲の者
また、上記の法務省告示に適合していなくても、人道上その他特別な事情があれば、上陸特別許可、在留資格変更許可、在留特別許可に際して、この「定住者」の在留資格が与えられる場合があります。
法務省告示に適合していないパターンの「定住者」の在留資格を認めてもらうためには、申請人が日本で生活していくため人道上の必要性があることを説得することが必要になります。
この「定住者」の在留資格のメリットは、永住者と同様に仕事の種類に関係なく就労することができる点にあります。
しかし、永住者とは異なり、定期的に在留期限の更新手続きは行わなければなりません。
以上のように、法務省告示に適合しているパターンの「定住者」の在留資格の取得は難しくはありませんが、法務省告示に適合していないパターンの「定住者」の在留資格を認めてもらうためには、人道上の必要性があることを説得することが必要になりますので、ご相談されたい方はお気軽にお問い合わせください。
飲酒運転で事故を起こしたら,ビザが取り消される?
(以下の事例はフィクションです)
外国籍のAさんは,留学生として来日し,日本の企業に就職して「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して日本に在留しています。
Aさんは日本の会社に勤めており,日本での生活は5年程度です。ある日Aさんは,会社の飲み会へ車で行ってしまい,「少しくらい平気だろう」という気持ちから,飲酒運転をしてしまいました。その結果,Aさんは前を走っていた車に追突して,人身事故を起こしてしまいました。Aさんは警視庁大塚警察署に逮捕され,道路交通法違反,過失運転致傷罪で起訴されてしまいました。
Aさんは,今後も日本に残ることができるのでしょうか。
飲酒運転での逮捕,起訴
飲酒運転は,通常の運転と比べて重大な事故を起こしてしまう危険がある運転です。
統計上,通常の運転による事故で死亡事故となってしまうのは「0.78%」ですが,飲酒運転の場合はその7倍の「5.54%」が死亡事故になってしまうのです。
参考:警視庁HP
そのため,飲酒運転で事故を起こしてしまった場合には,逮捕されるケースが多く,死亡事故にはならなかったとしても,起訴される可能性が高い事件になります。
Aさんのように,「少しくらい平気だろう」というという甘い認識が,重大な事故につながってしまうのです。
在留資格・ビザは取り消されるのか
Aさんのように,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にて日本に在留している方が,飲酒による人身事故を起こして,起訴されてしまった場合,ビザが取り消されたり強制送還されたりすることはないのでしょうか。
まず,Aさんの「技術・人文知識・国際業務」のビザのように就労系のビザの場合,強制送還される可能性があるのは次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
Aさんの事件は,道路交通法違反,自動車運転過失致傷ですから,4つめの「一定の刑法犯」には該当しません。そのため,1年以上の実刑判決を受けることがなければ,強制送還にはならずに済むかもしれません。
しかし,「在留資格の取消し」に注意しなければなりません。
在留資格の取消しとは,一度ビザが認められた後の事情によって,ビザが取り消されてしまうことです。
ビザが取り消されてしまうのは,次のような場合です。
- ビザの手続きで嘘の記載をしたり,不正な手段を用いた場合
- ビザの手続きにおいて虚偽の書類を提示した場合
- 正当な理由なく在留資格に応じた活動を3か月以上行っていない場合(配偶者ビザの場合には6か月)
- 住所地に関する届け出をきちんとしなかった場合
細かく言うとさらに別れるのですが,概ね上記のような場合にビザが取り消されることがあります。
Aさんの場合,「3」が問題になってしまいます。Aさんは飲酒運転,人身事故によって,会社を解雇されてしまう可能性があるのです。解雇された後,転職先が見つからなければ「在留資格に応じた活動を行っていない」として,ビザの取消の対象となってしまうことがあります。
日本の企業において,「逮捕された」ことや「飲酒運転をしていた」というのは,とても責任が重いことで,懲戒解雇となる可能性も高い違反です。
日本で逮捕されてしまった,起訴されてしまった,という外国人の方は,ビザのことを含めて専門家に相談した方が良いでしょう。
2023年入管法改正の概要,「改悪」と言われる点はどこか
2023年6月9日に参議院本会議で入管法改正案が可決し、改正入管法が成立しました。
今回の改正入管法について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回の入管法改正の背景として、改正の目的として大きく分けて以下3つの課題が示されました。
現状の入管法が抱えていた「課題」
当局が考えていた課題としては,大きく3つのものがありました。
①送還忌避問題,②収容を巡る諸問題,③紛争避難民などを確実に保護する制度が不十分であること,の3つです。
課題①(送還忌避問題)は,退去すべきことが確定されたにもかかわらず退去を拒む外国人の存在に対しての課題です。
令和3年12月末現在で,特別な事情も理由がなく送還忌避(:帰りたくない,と言って拒むこと)をしている外国人は3224人いました。そのうち日本での前科がある人が1133人,さらに前科の内容として「実刑判決」を受けていた人が515人いました。
この515人を刑期別にみると,懲役1年以上3年未満の実刑が185人,懲役3年以上5年未満の実刑が141人,懲役5年以上7年未満が91人,懲役7年以上が98人いました。
これまでの入管法では,難民認定中の人は申請の回数や理由を問わず,また重大な罪を犯した者やテロリスト等であっても退去させることはできませんでした(送還停止効)。
このため過去に重大犯罪をおかし退去強制を受けている人が,退去を回避することを狙って難民申請を繰り返していることが指摘されていました。
課題②(収容を巡る諸問題)をどう解決していくかという課題です。
現行法では,退去すべきことが確定した外国人については,原則として,退去までの間,収容施設に収容することになっています。
しかしながらこれでは外国人が退去を拒み続けると収容が長期化しかねません。
収容の長期化を防止するためには現行法では「仮放免」制度を活用するしかありませんが,この制度はもともと,健康の理由等がある場合に一時的に収容を解除する制度で,逃亡等を防止する手段が十分ではありませんでした。
課題③(紛争避難民などを確実にする制度が不十分)
難民条約上の難民には必ずしも該当しないが、難民に準じて保護すべき紛争避難民などを確実に保護する制度がありませんでした。
改正法によって変わったところ
課題①の解決に向けて、今回の改正法では、以下の1~3の場合に送還停止効の例外を設けました。
- 難民申請は原則2回まで、3回目以降の難民申請は「相当の理由」がなければ申請を認めない。
- 3年以上の実刑に処せられた者はたとえ難民申請中であっても送還を可能とする。
- テロリスト等はたとえ難民申請中であっても送還を可能とする。
この改正部分が今回の入管改正法の審議の中で最も大きな争点となりました
法律の改正を訴えてきた入管は「この改正がなければ,理由なく難民申請を繰り返すことによって外国人が日本に居座ることができてしまう」と主張してきました。
そこには我が国の出入国在留管理行政を担う立場から、社会秩序の維持、公共の安全、適正で円滑な入国管理行政が根底にあるように思います。
この改正に反対する側の意見として,「日本の難民認定率は極端に低く,3回以上の難民申請を認めなければ本当の難民を見落とす危険性がある。本当の難民を強制送還して帰国させ,もし逮捕されて殺されたら取り返しがつかない」という点が挙げられていました。
この主張の根底には、少数者の人権保障が考え方あるように思います。
結果的に今回の入管法改正では入管側が求めるような法改正がなされた,ということになります。このため,今回の法改正が「改悪」と言われることもあります。
課題②に対応するため「監理措置」という制度が設けられました。
親族や知人など,退去強制対象者の監督等を承諾している者を「監理人」として選び,その監督の下で逃走を防止しつつ,収容しないで退去強制手続きを進めるというものです。さらに被収容者の収容を3か月毎に見直し,収容の必要のない者は監理措置に以降する仕組みを導入しました。
課題③に対応するものとして、今回の改正で「補完的保護」という認定制度を設けました。
紛争から逃れた人を難民に準じて保護するため「定住者」として在留資格を認めます。
また在留特別手続きの明確化が図られました。
以上がおおまかな入管法改正の目的です。
参考:出入国在留管理庁HP
喧嘩で被害届が出たら強制送還されるのか?
2023年1月2日の夜,神奈川県内でベトナム国籍の男性ら2人が刃物で刺されるという事件が起きたことが報じられています。
飲食店でベトナム人ら2人刺され大けが 男が逃走 神奈川 相模原
2023年1月5日時点では,犯人はまだ逮捕されていないようですが,仮に外国人同士の喧嘩だった場合,加害者として検挙される人は暴行,傷害罪の罪に問われる可能性があります。
暴行罪:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
事実関係はまだ明らかではないですが,もしも仮に,この事件について被害届が出されて,犯人が検挙され,その犯人が外国籍だった場合には強制送還されることがあるのでしょうか。
刑事事件で検挙された場合
刑事事件の犯人として検挙された場合であっても,直ちに強制送還されるというわけではありません。
刑事事件の手続の中で,強制送還される場合というのは次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
報道にあるような暴行,傷害事件の場合には,4つ目,もしくは5つ目の場合に該当することがあります。
暴行,傷害罪は,刑法のうち第27章に規定されている罪であり,これは入管法で言う「一定の刑法犯」に該当します。そのため,暴行,傷害罪で起訴され,執行猶予付きの判決を受けた場合には強制送還の対象となる可能性があることになります。また,裁判の結果,1年を超える実刑判決となれば,強制送還となる可能性が相当高くなります。
具体的な事実関係は不明ですが,暴行,傷害事件について被害届が出されると,警察としては犯人を特定するための捜査活動を行うことになります。加害者と被害者との人間関係や,被害者の怪我の程度によっては逮捕されてしまう可能性がありますし,怪我が重ければ刑事裁判になる可能性があります。
強制送還となる具体的な場合
実際に暴行,傷害事件で強制送還となる具体的な場合について解説をします。
まず,「一定の刑法犯にあたるとして懲役,禁錮刑に処せられた場合」に該当する場合です。これを理由として強制送還されるのは,入管法の「別表1の在留資格」に該当する場合のことを言います。
「別表1」と言われてもよく分からないかもしれませんが,入管法に定められている在留資格には,大きく分けて二種類があり,別表1と,別表2があります。別表1は,日本での活動内容に応じて認められる在留資格を,別表2は外国人と日本との結びつきそのものに応じて認められる在留資格のことです。別表2には「永住者,永住者の配偶者等,日本人の配偶者等,定住者」をさします。
別表1は「別表2以外の在留資格の全部」をさすものと考えてよいでしょう。というのも,別表1には30種類以上の在留資格があります。その多くはいわゆる就労ビザと呼ばれるものですが,「留学生」や「短期滞在」も,この別表1の在留資格に含まれます。
そのため,「別表1の在留資格」(別表2以外の在留資格)で,暴行,傷害罪で執行猶予付きの判決を受けた場合には,強制送還となる可能性があります。
逆に,別表2の在留資格(永住や日本人の配偶者等)である場合や,罰金刑のみで終わった場合には,強制送還の対象とならないで済むことになります。
ただ注意しなければならないのは,罰金刑で終わったとしても,永住の在留資格でない限りは,次のビザの更新の時の不利益な事情となる場合があります。更新した時の在留期間が短くなったり,最悪の場合だと更新が認められないということがあります。
外国人の方の刑事事件は,罰金/執行猶予/実刑という,処分そのものだけでなく,在留資格への影響まで考えて弁護をしなければなりません。
日本で在留している間に刑事事件を起こしてしまったという方や,刑事事件に関わってしまった,強制送還されたくはない,という方は,是非ご相談ください。
刑事事件から在留資格までワンストップでご相談いただけます。
技術,人文知識,国際業務の在留資格について
在留資格「技術・人文・国際業務」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.就労ビザとしての「技術・人文知識・国際業務」について
外国人が日本で活動して収入を得るには、身分による在留資格を除き活動に応じた在留資格が必要です。就労ビザとか就労資格とか言われるものです。
就労が認められる在留資格には以下のものがあります。
外交 公用 教育 芸術 宗教 報道 高度専門職 経営・管理 法律・会計業務
医療 研究 教育 技術・人文・国際 企業内転勤 介護 興行 技能 特定技能
技能実習
今回は就労資格の中で最もメジャーな「技術・人文・国際」についてご紹介いたします。
在留資格「技術・人文・国際業務」は、日本の大学や専門学校に留学している留学生が日本企業に就職するために必要となります。
活動内容に高い専門性が求められ、単純労働が認められないのが大きな特徴です。
2.「技術・人文・国際業務」の活動内容について
まずは,「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が認められる根拠法文を確認します。
出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)(抄)別表第一の二
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務
又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで、企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
やや難しく見えますが,ここで認められている活動内容は,大まかにいうと2つに分けられます。
①理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務
②外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務
①の理学、工学は例示でありこれに限定されるものではありません。②の法律学、経済学、社会学も例示でありこれに限定されるわけではありません。
「外国人が当該企業において従事する業務を全体としてみた場合に、当該技術又は知識がなければ、少なくともその業務の主要な部分を遂行することが出来ないときに、その外国人の従事する業務は、当該技術又は知識を要する業務であるということができる」ということです。『入管関係法大全〔第2版〕第2巻104頁)』
3.技術・人文・国際業務の活動基準について
具体的に在留資格が認められる活動かどうかを判断する基準は,次のようなものになります。
出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)(抄)
法別表 第一の二の表の 技術・ 人文 知識・ 国際業務の項 下欄に 掲げる活動
申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和六十一年法律第六十六号)第五十八条の二に規定する国際仲裁事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又 は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
4 審査におけるポイント
イの「当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業」とは、企業で従事する業務に必要な科目を専攻して大学を卒業したことで、従事する業務と大学での専攻科目が関連していることが必要ですが、大学を卒業した者は、学術研究を目的とする大学で学んだ知識を社会に還元するという立場であることから、大学における専攻科目と従事しようとする業務との関連性について、専修学校等、他の資格要件者よりも比較的緩やかに判断されることとなります。
口頭審理で忘れてはいけないこと,日本で在留を続けるため
(以下は解説のための架空の事例です)
事例―MDMAの裁判の後・・・・
Bさんは「定住者」の在留資格で18年間,日本で生活をしていました。日本人の交際相手もおり,日本の企業にも就職していて,出来ればずっと日本で生活し続けたいと願っていました。
しかし,Bさんはある時,仕事がうまく行っていなかったことや友達から勧められたこともあり,MDMAを使ってしまい,警察に逮捕されました。
Bさんには懲役1年6月,執行猶予3年の判決が言い渡さた後,今度は入管からの呼出がありました。
Bさんは,インタビューの中でも日本に残りたいことを伝えましたが,口頭審理では「あなたは強制送還になります」と言われました。
Bさんとその交際相手のかたは,弁護士に相談することにしました。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
強制送還になるまでには,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この「3」の次にある手続ということになります。
口頭審理期日は,入管の審判部門でのインタビューとなります。
東京入管の場合には,6階のエレベーターを降りて,ちょうどその裏にある部屋になります。名古屋入管の場合には3階です。
口頭審理の場では,,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。
口頭審理で忘れてはいけないこと
もしも日本での在留を続けたい方で,これから口頭審理を受ける方がいれば,覚えておいてほしいことがあります。
それは,口頭審理を受けただけでは在留特別許可は出ないということです。
どんな事案であっても,口頭審理の結果として在留特別許可をするということはできません。これは,法律上,できないからです。
口頭審理の結果というのは,
- 入国審査官の判断は間違っていた
- 入国審査官の判断は間違っていない
この二つしかありえません。ですから,口頭審理の場で在留特別許可がされなかったことで,パニックになってはいけません。
在留特別許可を望むのであれば,口頭審理の結果出てから3日以内に,法務大臣に異議の申出をしなければいけません。異議の申出があってから初めて,在留特別許可をするかどうかという判断が始まるのです。口頭審理の結果を受けて諦めてしまい,異議の申出をしないでいると,在留特別許可を受けるチャンスをつぶしてしまうことになりかねません。
口頭審理が終わったら必ず異議の申出をする,ということは,忘れてはいけません。
在留特別許可までの流れが複雑すぎる?
現在の法律によると,在留特別許可がされるかどうかの判断には,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- 特別審査官による口頭審理
- 法務大臣(もしくは各地方入管局長)の裁決
という手続きを踏まなければならず,事実を認めて争っていない場合であっても,何度もインタビューを受ける必要がありました。一度廃案になってしまいましたが,入管法の改正案の中には,「在留特別許可についても窓口で申請ができるようにする」というものもありました。これまでは,入管側のアクションを待たなければならなかったものが,自分たちでも申請ができるようになる,という改正案です。
将来的には,在留特別許可についても手続きが大きく変わってくるかもしれません。
在留特別許可に関する手続きや,口頭審理に向けた手続きについてご不安がある方は,弁護士,行政書士といった専門家に早めにご相談ください。
外国人の子供のビザ,外国人の親のビザ
日本で生活している外国人の方の中には,
・母国で生活している親を日本に呼びたい
・離れて暮らしている子供と日本で生活したい
という方が多くいるでしょう。
日本にいる外国人の方が,自分の親や子供を日本に呼び寄せる時に活用できる在留資格について解説をします。
外国人の子供のビザ
外国人の方の子供を呼び寄せようとする場合,
- 日本にいる外国人親の在留資格(ビザ)が何なのか
- 呼び寄せようと思う子供の年齢がいくつなのか
によって,ビザの種類やビザの取りやすさが変わってきます。
日本にいる外国人親の在留資格が,就労系の在留資格または,文化活動だった場合,家族滞在の在留資格で,その子供も日本での滞在が認められます。
就労系の在留資格とは,教授,芸術,宗教,報道,経営管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転勤,介護,興行,技能,特定技能2号の場合を言います。
技能実習生と特定技能1号の人は,家族滞在ビザで子供を呼び寄せることができません。
外国人親の在留資格が「日本人の配偶者等」,「永住者」,「定住者」である場合には,その子供と日本との関係が重要になります。
呼び寄せようと思う子供が日本人,永住者の実子なのであれば,子供も同様に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格が認められます。
もっとも複雑なのが,子供が,外国人の実子ではあるけれども日本人の実子ではない(連れ子),というパターンです。
この場合,子供と日本人との関係によっては,「定住者」の在留資格が認められます。この場合,子供が18歳未満で,結婚しておらず,外国人の実子であるという点が重要です。
いずれの在留資格であっても,子供を日本に呼び寄せようと思う場合,その子供が「扶養を受ける」,つまり,日本にいる人に養ってもらって生活をするという事情がなければ子供としての在留資格は認められません。
自分で生計を立てられる(養われなくても生活ができる)というのであれば日本に呼び寄せる必要はないし,仕事に応じた就労系の在留資格を取得すればよい,ということです。
外国人の親のビザ
外国人の親を呼び寄せる場合,法文上は,ビザは「特定活動」の在留資格しかありません。
明確に認められるのは,「高度専門職1号,2号の外国人」の親です。それも,日本にいる外国人に7歳未満の子供(妊娠中の場合を含む)がいて,小さい子供の世話をする間,親(おじいちゃん,おばあちゃんの立場)に日本に来てもらって家事のお手伝いをしてもらうという場合です。
その他の在留資格の方が外国から親を呼び寄せようと思う場合には,「告示外特定活動」のビザを取得するしかありません。「老親介護」とも言われることがあります。
日本に滞在している外国人又は日本人の実の親で,本国で生活しており身寄りのいない場合に,人道上の理由から「特定活動」としての在留資格が認められる場合があります。
「老親介護」のための特定活動の在留資格を申請しようと思う場合,日本にいる外国人以外に適切な扶養者がいないこと,日本で親を扶養する資力が十分にあること等が審査の項目になります。
老親介護のための特定活動ビザの申請は,本人に一度,短期滞在等のビザで来日してもらった後で,在留資格変更許可申請(短期滞在→特定活動)をすることになります。
親のビザ,子供のビザについては弁護士等の専門家にご相談ください。
強制送還されても再入国?弁護士ができる対策
様々な理由があっても,一度日本から強制送還の命令を受けて出国してしまうと,その後しばらくの間,もしくは無期限に日本に再入国できなくなってしまいます。
一番確実なのは,この再上陸拒否期間がすぎるのをまつことですが,
- 再上陸拒否期間が過ぎるよりも前に日本に入国しなければならない
- 無期限の再上陸拒否なのでどれだけ時間が経っていても入国できない
という場合があります。
今回は,再上陸拒否期間に日本に再度入国するための,「特別上陸許可」について解説します。
在留特別許可のために重要な「口頭審理」の手続き
何かしらの理由によって,日本から強制送還される対象になってしまっても,様々な理由から日本に残りたい/残らなければならない,という外国人の方が多くいらっしゃると思います。
例えば,日本で裁判を受けた方についてはこちらにまとめた方が対象になります。
そのような外国人の方に対して認められる可能性があるのが,在留特別許可です。
この在留特別許可を認める手続きについては,
①違反調査,審査
②口頭審理
③法務大臣の裁決
という手続きを進めることになります。
この,②口頭審理という手続きとは,そもそもどのようなものなのでしょうか。
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