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強制送還の危機!知っておくべき手続きと弁護士への相談方法

2023-10-31

強制送還とは、日本に滞在する外国人が一定の違法行為をした場合、日本から強制的に送り返される手続きです。

この記事は、強制送還の危機に直面している外国人、特に留学生や労働者、その家族や関係者に向けて書かれています。

強制送還は、留学や仕事、家庭生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、手続きの流れを理解し、適切な対応を取ることが非常に重要です。 この記事では、実際の事例を交えながら、強制送還手続きの詳細、弁護士に相談するメリットについて解説します。

事例

(事例はフィクションです)

Aさんは、日本の大学に留学中の20歳の男性です。

東京都内の電車で、Aさんは痴漢行為をしてしまいました。 この行為が目撃され、駅で警察によって現行犯逮捕されました。

Aさんが痴漢行為をした理由は、ストレスと好奇心からでした。逮捕後、警察の取り調べを受け、結果として罰金刑が科されました。

この事件により、Aさんは強制送還の対象となるのではないかと不安になりました。 留学生である彼にとって、この結果は日本での学業と将来に重大な影響を与えるものでした。 

この事例から、どんなに些細な違法行為でも、それが強制送還につながる可能性があることを理解することが重要です。 特に、留学生や労働者といった在留資格を持つ外国人は、一度強制送還の対象となると、その後の日本での生活が非常に困難になります。

強制送還手続きの全体像

強制送還手続きは、正式には「退去強制」と呼ばれ、以下の4つの主要な段階があります。

  1. 理由となる事実の発生: これにはオーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが含まれます。
  2. 入国警備員による調査: 理由となる事実が発生した場合、入国管理局が調査を実施します。
  3. 入国審査官による審査: 調査の結果を基に、強制送還が適法かどうかの審査が行われます。
  4. 法務大臣による裁決: 審査結果に不服がある場合、口頭審理と法務大臣の裁決が行われます。

強制送還の理由になる事実は、一定の入管法違反や刑事事件で有罪判決を受けた場合などがあります。 特に、犯罪で有罪判決を受けた場合、その内容によっては強制送還される可能性が高くなります。

入国警備員による調査では、具体的な違反事実とその証拠が確認されます。 この段階で事実を争う場合、証拠を提出する必要があります。

入国審査官による審査は、調査結果を基に行われ、審査が不服であれば口頭審理が続きます。 最終的には法務大臣の裁決によって、強制送還をするか、在留特別許可をするかが決定されます。

この手続きは複雑であり、専門的な知識が必要です。 そのため、弁護士のアドバイスが非常に重要となります。

弁護士に相談することのメリット

強制送還手続きは非常に複雑で、専門的な知識が必要です。 そのため、弁護士に相談することには以下のようなメリットがあります。

  1. 専門的なアドバイス: 弁護士は入管法や刑法に精通しているため、具体的なケースに最適なアドバイスを提供できます。
  2. 手続きのサポート: 強制送還手続きには多くの書類や手続きが必要です。弁護士はこれらのプロセスをスムーズに進めることができます。
  3. 口頭審理での代理: 弁護士は口頭審理での代理人としても活動でき、より有利な状況を作ることが可能です。
  4. 在留特別許可の申請: 強制送還が確定した場合でも、在留特別許可の申請が可能です。弁護士はこの申請に必要な書類の作成や手続きをサポートします。
  5. 心のサポート: 強制送還手続きは精神的にも大きな負担となります。弁護士はそのような時に心のサポートも提供してくれます。

弁護士に相談することで、強制送還手続きをよりスムーズに、そして確実に進めることができます。 特に、強制送還が確定すると日本での生活が非常に困難になるため、早めの相談が推奨されます。

Aさんの事例の場合,「痴漢行為をしてしまった」ということですので,各都道府県に定められている迷惑行為防止条例違反か,不同意わいせつ罪(刑法176条)として処分を受ける可能性が高くあります。このケースで強制送還となるリスクが生じるのは

  • 1年を超える実刑判決を受けてしまった場合
  • 実刑判決にならなかったとしても,その後のビザの更新や変更が認められず不法滞在(オーバーステイ)となってしまった場合

になります。

Aさんのように痴漢で逮捕されてしまったという場合,まずは1年を超える実刑になってしまうリスクに対応しなければなりません。

罰金刑に処せられた場合,その後のビザの更新,変更の手続きにおいて,申請が許可されないという可能性も十分にあり得ます。そのため,刑事事件においても出来る限り軽微な処分を得ることが非常に重要です。

まとめ

この記事では、強制送還手続きとその法的側面について詳しく解説しました。 特に、留学生のAさんが痴漢で逮捕された事例を通じて、強制送還のリスクとその手続きについて具体的に説明しました。

また、強制送還手続きが進む各段階、入国警備員による調査から法務大臣による最終裁決までのプロセスを解説しました。 このような複雑な手続きを理解し、適切に対応するためには、専門的な知識と経験が必要です。

弁護士は法的問題を解決するための重要なパートナーです。早めの相談と適切な対応が、強制送還という厳しい結果を回避、またはその影響を最小限に抑える鍵となります。

強制送還は、その対象となる外国人にとって、人生に大きな影響を与える可能性があります。ですから、この記事が強制送還手続きについての理解を深める一助となれば幸いです。

在留期間更新とその特例,期限を過ぎてしまったらどうなるのか

2023-10-27

在留期間と出国準備のための特定活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

在留カードを所持して日本で暮らしている外国人が、在留カードに記載されている在留期間の満了後も引き続き日本で暮らしていきたい場合は、在留期間の満了前に在留更新・在留変更等の在留申請手続きを行い、入国管理局の許可を得ることが必要です。
(入管法第20条第3項、入管法第20条第2項、入管法施行規則第21条)

では、在留期限の前に在留申請した場合で申請人の在留期限が経過した後に、入管が処分の通知を出した場合はどうなるのでしょうか?
この場合、在留期間がすでに超過しているとして超過滞在(オーバーステイ)となるのでしょうか?

たとえ在留申請を在留期限前に行ったとしても、在留期限ギリギリに更新申請をした場合やお盆や正月後等、入管が込み合っているときに在留申請した場合は、入管の処分(申請結果)が申請人の在留期間経過後に出されることは十分に想定されます。
通常は在留期限が1日でも経過していたら本来超過滞在(オーバーステイ)ですが、上記のような場合に超過滞在を避けるため、入管側の対応として以下のように法で規定されています。
(入管法20条6項)第二項の規定による申請があった場合(三十日以下の在留期間を決定されている者から申請があった場合を除く。)において、その申請の時に当該外国人が有する在留資格に伴う在留期間の満了の日までにその申請に対する処分がなされないときは、当該外国人は、その在留期間の満了後も、当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は、引き続き当該在留資格をもって本邦に在留することができる。

少しわかりにくい条文ですが、在留カードを所持している方が,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請(以下「在留期間更新許可申請等」という。)を行った場合において,当該申請に係る処分が在留期間の満了の日までになされないときは,当該処分がされる時又は在留期間の満了の日から二月が経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間は,引き続き従前の在留資格をもって我が国に在留できます、ということです。

例えば在留期限が4月30日の在留期限の方が、在留更新申請を4月15日に行い、審査結果が5月15日に出た場合は、処分がなされた5月15日までは従前の在留資格で適法に滞在できるので超過滞在にはなりません。仮に処分(結果)がでない場合でも6月30日までは適法に滞在できます。

時系列に直すと次のような形です。

  • 4月15日 在留期間の更新申請
  • 4月30日 本来の在留期限
  • (5月1日)本来はこの日から不法滞在(オーバーステイ)
  • 5月15日 在留期間の更新許可(4月30日から5月15日までの間はオーバーステイにはならない)
  • (6月30日 更新の結果が出ていなくても,この日まではオーバーステイにならない)

ただし、申請してから2月近く経過しても処分(結果)が通知されないのは明らかにおかしいので、速やかに入管に問い合わせをしましょう。
申請から2か月以内に入管から許可通知が届いたが、指定された期限までに入管に出頭せずに、在留期限から2か月が経過した場合はどうなるかについてですが、
この場合は、在留期限を経過したものとして超過滞在(オーバーステイ)となります。
超過滞在にならないよう在留期限にはくれぐれも注意しましょう。

強制送還の危機!家族滞在のAさんの事例から学ぶ、法と対策

2023-10-13

1. 導入文

強制送還とは、日本に滞在する外国人が特定の理由で日本から送り返される手続きです。 この記事は、特に強制送還の危機に瀕している外国人、特に留学生を対象としています。 留学生Aさんの事例を通じて、強制送還の手続きとその回避方法について詳しく解説します。

2. 事例紹介: 家族滞在ビザAさんの住居侵入事件

Aさんは、日本にいる両親に帯同している外国人学生です。 2022年の夏、Aさんは友人と遊びに行く途中、お酒に酔っぱらってしまい,間違えて他人の家に入ってしまいました。

Aさんは友人Bさんの家に遊びに行く予定で、Bさんの家と非常に似た外観の家に誤って入ってしまったのです。被害者がすぐに異変に気付いて警察へ通報し, Aさんはその場で逮捕され、後に「住居侵入」で起訴されました。 裁判の結果、Aさんは有罪とされ、執行猶予判決が言い渡されました。

この事件により、Aさんは強制送還の対象となるのではないかと怖くなってしまいました。 特に、Aさんは「家族滞在」という在留資格で日本に滞在していたため、このような刑事事件によってその在留資格が危うくなる可能性があります。

3. 法律解説: 強制送還の手続き

強制送還、正式には「退去強制」とは、日本から外国人を送り返す手続きのことです。 この手続きは主に以下の4つの段階を踏んで進められます。

  1. 理由となる事実の発生: 例えば、オーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが該当します。
  2. 入国警備官による調査: 理由となる事実が発生した場合、入国管理局がその事実を知ると調査が開始されます。
  3. 入国審査官による審査: 調査の結果は全て、入国審査官へ引き継がれ、「強制送還をすることが適法かどうか」の審査が行われます。
  4. 法務大臣による裁決: 審査の結果に不服がある場合、異議を申し出て口頭審理、そして法務大臣の裁決へと手続きが進む。

審査の結果を踏まえて、強制送還が最終的に決定されることになります。 特に、刑事事件を起こしてしまった場合、その後の手続きが非常に厳しくなる可能性があります。

Aさんの事例の場合,有罪の判決が確定することで,入国警備官が調査を開始することになります。

4. 法律解説: 強制送還の理由になる

強制送還の理由となる事実は多岐にわたりますが、以下に主要なものを詳しく解説します。

一定の入管法によって処罰された場合

オーバーステイや不法就労は、入管法によって厳しく規制されています。 例えば、ビザの期限が切れた状態で日本に滞在すると、強制送還の対象となります。

 一定の旅券法に違反して懲役、禁錮刑に処せられた場合

資格外活動であっても、罰金だけでなく懲役や禁錮刑に処せられる場合があります。 このような状況では、強制送還が適用される可能性が高くなります。

 薬物関連の犯罪で有罪判決を受けた場合

麻薬取締法、覚醒剤取締法、大麻取締法など、薬物に関する犯罪は特に厳しく扱われます。 有罪判決が確定すると、仮に初犯であっても多くの事例で強制送還の対象となります。

 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合

住居侵入罪や傷害罪、窃盗罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となります。 特に、執行猶予がついていても、裁判が確定すると強制送還が適用される場合があります。

 1年を超える実刑判決を受けた場合

どのような犯罪であっても、1年以上の実刑判決を受けると、強制送還の対象となります。 この場合、犯罪の種類に関わらず、強制送還が適用される可能性が非常に高くなります。

Aさんの事例の場合,「住居侵入」によって執行猶予付きの判決となってしまった場合,「 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合」に該当するため,入国警備官による調査が始まります

強制送還を回避するためにどうしたらよいか分からない/日本に残る可能性を高めたい,という場合には,早急に弁護士に相談しましょう。

5. 弁護士に相談することのメリット

弁護士に相談することで得られるメリットは多く、特に強制送還のような複雑な法的問題においてはその価値は計り知れません。

 専門的なアドバイス

弁護士は法律の専門家であり、あなたの状況に最も適したアドバイスを提供できます。入管関連の事件を取り扱う弁護士の数も多くなく,また,「日本」という外国の地で法的な課題を乗り越えるのは非常に困難です。専門的な知識を基に,きちんと現状を整理して,適切な対応を心がけましょう。

 法的手続きのサポート

強制送還の手続きは複雑であり、一人で行うにはリスクが高いです。 弁護士がサポートすることで、手続きがスムーズに進む可能性が高くなります。

 精神的な安堵

法的問題はストレスが伴うものですが、専門家がサポートしてくれることで精神的な安堵を感じることができます。

 時間の節約

法的手続きは時間がかかるものですが、弁護士が適切なアドバイスとサポートを提供することで、時間を節約することができます。

 費用対効果

弁護士費用はかかりますが、その費用がもたらす効果は大きい場合が多いです。 特に、強制送還を回避することができれば、その価値は計り知れません。

6. まとめ

本記事では、強制送還手続きについて詳しく解説しました。

強制送還は複雑な手続きであり、一人で対処するには多くのリスクが伴います。

そのため、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが、最も安全かつ確実な方法であると言えます。

 何か疑問点や不明点があれば、専門の弁護士に相談することを強くお勧めします。

退去強制事由についての解説

2023-10-11

「退去強制事由」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。

退去強制手続とは、外国人が日本国内で法的に許可された在留資格や期間を超えて不法滞在する、または他の法律違反を犯した場合に、その外国人を日本から退去させるための手続きのことをいいます。

また退去強制事由とは、外国人が入国や在留に際して日本の法律や規定に違反した場合に、彼らを日本から退去させることができる理由や事情のことをいいます。

「出入国管理及び難民認定法」の第24条に退去強制事由についての記載があります。

条文では、一号から十号までの事由が列挙されていますが、ここでは代表的なものを以下にてご説明いたします。

① 不法入国者

有効なパスポートなどを持たずに日本に入国した人が該当します。

また、外国人が他人のパスポートを使って入国した場合や偽造パスポートによる入国も不法入国に該当します。

② 不法上陸者

手段や方法は問わずに、上陸の許可などを受けることなく日本に上陸した人が該当します。

不法上陸者には、2つのパターンがあり、1つ目は上陸許可の証印や記録を受けないで日本に上陸した者、二つ目は寄港地上陸や通過上陸などの特例上陸許可を受けなければならない状況であるにも関わらず、これを受けないで入国した者となっています。

③ 偽造・変造文書を作成・提供した人

不正に上陸や在留するために、組織的・専門的に偽物のパスポートや書類を作成したり提供した人を指し、外国人ブローカーなどを日本から退去強制することが目的とされています。

なお、偽造文書の作成や提供だけでなく、それを幇助した者も含まれます。

④ 資格外活動者

「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」などを行い、在留資格で定められた活動以外のことを行なっている人をいいます。

外国人留学生が学校に通うことなく本格的に就労している場合や就労のための在留資格を持つ人が許可を得ることなく、他に深夜にアルバイトをしている場合などには資格外活動に該当することがあります。

⑤ 不法残留者(オーバーステイ)

在留期間の更新又は変更を受けずに、日本に滞在することを許された期間をすぎて滞在している人が該当します。

親族訪問の目的で「短期滞在」で入国後にそのまま在留期限が経過してしまった場合などが代表的な例です。

⑥ 刑罰法令の違反者

住居を犯す罪、通貨偽造の罪、文書偽造の罪、有価証券の偽造の罪、支払い用カードの電磁的記録に関する罪、印象偽造の罪、賭博及び富くじに関する罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕及び監禁の罪、脅迫の罪、略取、誘拐及び人身売買の罪窃盗及び強盗の罪、詐欺及び恐喝の罪、盗品等に関する罪などにより懲役または禁錮に処せられたものが該当します。

⑦ 売春関係業務の従事者

売春関係の業務に従事したという事実があれば該当し、売春防止法などに違反して刑に処せられたかどうかは要件とされませんので、注意が必要です。

⑧ 退去命令違反者

退去命令を受けたにも関わらず日本から退去しない者であり、出向命令制度などにより既に退去命令が出ているにも関わらずそのまま日本から退去しない場合などが該当します。

上記のように、一言で「退去強制事由」といっても、数多くの「退去強制事由」が存在します。

特に、上記⑥については、どれくらいの刑罰を受けることになるのかによっても、「退去強制事由」に該当するか否かが変わりますので、「退去強制事由」でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

強制送還の危機!? 就労ビザの外国人の権利と正しい対応方法

2023-10-08

日本で生活する外国人にとって、法律の遵守は必須です。

しかし、誤って法律を犯してしまった場合、強制送還のリスクが迫ることも。 この記事では、強制送還の手続きとその対応方法について詳しく解説します。

事例紹介: 報道の在留資格のAさんの万引き事件

(解説のためのフィクションです)

2021年、東京都内で「報道」という在留資格を持つAさんが万引き事件を起こしました。

Aさんは、友人との食事後、飲み物を手に入れるためにコンビニへ向かいました。 しかし、金銭的に困窮していたAさんは、飲み物をポケットに忍ばせ、店を出ようとしました。 しかし、店員に見つかり、警察に通報される事態となりました。 この行為により、Aさんは強制送還の危機に直面しました。

法律解説: 強制送還手続きとは

日本における外国人の強制送還手続きは、「退去強制」と正式に称されます。
この手続きは、いくつかの段階を経て進行します。

  1. 事由の発生: これはオーバーステイ、不法就労、虚偽の申請、犯罪歴などが該当します。
    これらの理由が生じたとき、入国管理局は事実を知り、調査を開始します。

  2. 入国警備員による調査: この調査の主な目的は、「退去強制をするべき事実が存在するか」を確認することです。
    事実の確認は、刑事裁判の結果を基に行われます。

  3. 入国審査官による審査: 調査内容は入国審査官に引き継がれ、審査が行われます。
    強制送還の事由とともに、日本での生活、家族、財産などの事情も審査の対象となることがあります。

  4. 法務大臣による裁決: 入国警備員と入国審査官の手続きを経た後、最終的には法務大臣が裁決を行います。
    この段階では、事実関係の再確認のみならず、在留特別許可の可否も決定されます。

強制送還の理由となる犯罪は、入管法や旅券法、薬物関連の法律、一定の刑法犯などが含まれます。
特に薬物事件や入管法違反は厳しく取り締まられ、強制送還の対象となる可能性が高まります。

Aさんの「報道」の在留資格は,いわゆる「就労ビザ」と呼ばれる在留資格の一種です。就労ビザの場合,配偶者ビザや永住者ビザよりも強制送還となる可能性が高くなります。Aさんの事例のような万引きは,刑法の窃盗罪に該当します。就労ビザの人が窃盗罪によって訴追されてしまった場合,仮に刑務所に行くことがなかったとしても,強制送還の対象となり得ることを知っておかなければなりません。

弁護士への相談

強制送還の手続きは複雑で、外国人にとっては非常に難解な場面も多いです。
そんな時、弁護士に相談することで得られるメリットを紹介します。

  1. 専門的知識: 弁護士は法律の専門家であり、退去強制の手続きや法律に関する深い知識を持っています。
    そのため、具体的なアドバイスや最適な対応策を示してくれます。

  2. 手続きのサポート: 強制送還の手続きは煩雑ですが、弁護士がサポートしてくれることで、スムーズに進行することが期待できます。

  3. 権利の保護: 外国人が日本の法律に疎い場合、自分の権利を十分に守れないことがあります。
    弁護士はクライアントの権利を最優先に考え、適切な対応を指南します。

  4. 信頼性: 弁護士は守秘義務を持っており、相談内容が外部に漏れることはありません。
    そのため、安心して悩みや問題を相談することができます。

  5. 強制送還を回避する可能性: 弁護士の適切なアドバイスや対応により、強制送還を回避する道が見えることもあります。

強制送還の危機に直面した際は、1人で悩むのではなく、専門家である弁護士に相談することを強くおすすめします。

弁護士への相談の仕方

弁護士に相談する際の適切なアプローチ方法やポイントを紹介します。正確で迅速な対応を受けるための手順を理解することは非常に重要です。

  1. 弁護士の選び方: 外国人の問題に精通した弁護士や、入管法を得意とする弁護士を選ぶことが望ましいです。
    Aさんの事例のように,刑事事件も関係しているという場合には,外国人問題と刑事事件とどちらも扱える事務所がベターです。刑事事件の処理次第では,強制送還のリスクを最小限まで抑えられる場合があります。

  2. 事前の情報整理: 相談する前に、自分の状況や問題点を明確にしておくことが大切です。
    必要な書類や証拠も整え、弁護士に提示することで、具体的なアドバイスを受けやすくなります。

  3. 具体的な質問: 相談の際は、具体的な質問を持ってアプローチすると効果的です。
    例えば、「この状況での強制送還のリスクは?」や「どのような対応が最適か?」といった質問を準備しておくと良いでしょう。

  4. 費用の確認: 弁護士に相談する際の費用や、今後の手続きにかかる費用を明確に確認しておきましょう。

  5. 信頼関係の構築: 弁護士との信頼関係は非常に大切です。
    隠さず正直に事実を伝え、アドバイスや指示に従うことで、最善の結果を迎えることができるでしょう。

弁護士に相談することで、自身の問題に対する理解を深め、適切なアクションを取るための助けとなります。そのため、相談の際のアプローチや準備は非常に重要です。

まとめ

強制送還手続きは、多くの外国人にとって非常に重要かつ深刻な問題となる可能性があります。この記事では、その手続きの概要から弁護士に相談するメリット、さらに具体的な相談の仕方までを詳しく解説しました。

  1. 退去強制の手続き: 日本の「退去強制」は、外国人が日本から強制送還される正式な手続きです。
    事由の発生から法務大臣の裁決まで、いくつかの段階を経て進行します。

  2. 弁護士の重要性: 強制送還の手続きにおいて、専門家である弁護士の助けは計り知れない価値があります。
    事実の確認、権利の保護、適切な手続きのサポートなど、多岐にわたるメリットが存在します。

  3. 弁護士への相談方法: 適切な弁護士の選び方から、事前の情報整理、具体的な質問の準備、費用の確認、信頼関係の構築まで、相談を成功させるためのポイントを紹介しました。

強制送還の危機に直面することは誰にでも起こりうる事態です。そんな時、正確な知識と専門家のサポートを得ることで、適切な対応を取ることが可能となります。この記事が、その一助となれば幸いです。

薬物所持の疑いで検挙されてしまった!?ビザへの影響を解説

2023-10-02

事例紹介(法律解説のためのフィクションです)

Aさんは,日本で「定住者」として生活していました。 ある時,Aさんは友人のBさんと一緒に東京の渋谷区で過ごしていました。

その夜,警察による一般的なパトロールが行われ,AさんとBさんが職務質問を受けてしまいます。警察はBさんに対して身体検査を行い,その際にポケットから小さな袋が見つかりました。

袋の中身は白い粉で警察はそれを薬物と疑い, Bさんは薬物所持の疑いで警察署に連行されました。

Aさんはその場に居合わせたことを強く主張しましたが,Bさんと一緒に警察署へ連行され,共同所持の疑いで逮捕されてしまいました。Aさんの家族は,すぐに弁護士に相談し,今後の対応を依頼することにしました。

弁護士のアドバイスにより,Aさんは適切な手続きを踏み,最終的には在留資格に影響を受けることなく問題を解決しました。

Aさんの事例では,どのような点から在留資格にリスクが生じていたのでしょうか。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例の場合,「Bさんと一緒に薬物を持っていたという疑い」がかけられています。このような疑いだけであればビザには影響はありませんが,「Bさんと一緒に薬物を持っていた」あるいは「Aさんの薬物をBさんが代わりに持っていた」という疑いのままで正式な裁判で起訴されてしまうと,事態は急転します。

裁判の間は,在留資格の変更が認められにくくなったり,更新の期間が短くなったりするリスクがあります。

また,万が一,有罪の判決を受けてしまうと,薬物事件の場合には強制送還に該当する可能性がとても高くあります。

薬物の共同所持の場合には,起訴されるまでの弁護活動が非常に重要です。薬物の共同所持を疑われてしまったという場合には速やかに弁護士に相談した方が良いでしょう。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「薬物事件で有罪判決を受けてしまった場合」には強制送還の手続きが開始されてしまう可能性があり,その内容に照らすと,在留特別許可がもらえない可能性もあります。日本に残って生活を続けたいと希望する場合には刑事事件の手続の中で不起訴・無罪を勝ち取ること,有罪の判決を受けた場合には在留特別許可の獲得に向けた活動が必須です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

建造物侵入罪で強制送還される可能性は?弁護士が解説

2023-09-23

9月22日の報道の中に,大阪府市内の建設現場に無断で立ち入ったとされる米国籍の男性が逮捕された,という事案がありました。

毎日新聞

NHKWEB

報道では具体的な事実までは分かりませんが,このような事案において,当該外国人の方の在留資格はどのように処理されるのでしょうか。

また,退去強制(強制送還)される可能性はあるのでしょうか。日本の入管法における強制送還の手続きから解説をします。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。また,刑法犯の一部,特に,他人の法益を直接侵害したという犯罪や,公共の秩序そのものを害した犯罪については,執行猶予付きの判決が出たとしても強制送還の対象としています。

報道の事案では,「建造物侵入罪」で逮捕ということですが,建造物侵入罪は住居侵入罪と同じ刑法130条に該当する犯罪です。そのため,今後,建造物侵入罪によって起訴されて有罪の判決になってしまうと,強制送還の対象となる可能性があります。

建造物侵入罪に対する刑は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金とされています。罰金処分となる可能性も0ではありませんが,そもそも罰金の上限が10万円と低いため,建造物侵入の事案の場合,よほど軽微なものでなければ罰金で終わるというよりも,正式な裁判で起訴されてしまう可能性が高いでしょう。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

報道の事例の場合,今後,建造物侵入罪によって起訴され,執行猶予付きの有罪判決となってしまった場合,元々の在留資格の種類によっては退去強制の対象となります。

仮に日本での在留の継続を希望するのであれば,在留特別許可を受ける必要があります。

まとめ

報道の事例では「建造物侵入罪」で今後起訴され,有罪の判決を受けた場合には①判決の重さ,②その時の在留資格の種類によっては,退去強制(強制送還)の手続きが開始されることになります。

本記事では報道を基に,建造物侵入罪によって逮捕された外国籍の人の手続きについて解説をしました。

強制わいせつで逮捕!強制送還のリスクと対策

2023-09-09

日本での生活は多くの外国人にとって魅力的ですが,日本の法律に違反した場合,その夢は一瞬で崩れ去る可能性があります。特に強制わいせつなどの犯罪行為は強制送還の対象となる可能性が高くあります。この記事では,強制わいせつで逮捕された架空のAさんの事例を通じて,強制送還手続きとその対策について詳しく解説します。

事例紹介

Aさんは,30歳のX国籍で,日本でエンジニアとして働いていました。2023年の夏,東京の夜の街で酒に酔ってしまい,見知らぬ女性に対して強制わいせつ行為をしてしまいます。この行為が目撃され,警察に逮捕されました。Aさんはその後,起訴され,懲役2年の有罪判決を受けました。この事件により,Aさんの在留資格が危うくなり,強制送還の手続きが始まりました。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

また,刑法犯の中でも傷害罪のような粗暴犯と呼ばれるような犯罪,窃盗罪や横領罪・詐欺罪のような財産犯と呼ばれるような犯罪については「他人の利益を直接侵害する犯罪」についても重く捉えられており,強制送還の可能性があります。

Aさんの事例における「強制わいせつ罪」は,直ちに強制送還の対象となるものではありませんが,「懲役2年」の判決となると強制送還の対象となります。

強制わいせつ罪の場合,執行猶予付きの判決になった場合と1年を超える懲役刑の判決となった場合とで,在留資格の手続きが大きく変わることになります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では「懲役2年の判決」という点が強制送還の理由となり,事例にあるAさんの事情だけでは,在留特別許可をもらえる可能性は低いでしょう。

それまでAさんが適法な在留資格をもっていたのであれば仮放免が認められる可能性もありますが,懲役刑を受けている間にオーバーステイとなってしまう可能性もあります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には

①刑事事件の手続の中で強制送還の理由になってしまわないように対応する

②入管手続の中で在留特別許可が得られる可能性を模索することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

偽ブランドの販売で強制送還になる?!強制送還手続きについて解説

2023-09-05

日本への滞在にはさまざまな在留資格が存在し、外国人にとって法律遵守は非常に重要です。

今回は、商標法違反により逮捕され、罰金刑を受けた外国人Aさんの事例を通じて、ビザに関する法的な側面を探求しましょう。

Aさんのケースを通じて、外国人が日本で法的トラブルに巻き込まれた場合、在留資格にどのような影響が及ぶのか、そしてどのように対処すべきかを考察します。

事例紹介

 Aさんは、日本への技術・人文知識・国際業務のビザを持つ外国人です。Aさんは日本国内で偽ブランド品の売買という商標法に違反する行為を行い、その結果、逮捕されてしまいました。

商標法は、知的財産権に関する重要な法律であり、知識が不足していたためにAさんは法に触れる行為を行ってしまったのです。

逮捕後、Aさんは裁判にかけられ、罰金刑を受けることになりました。しかし、彼の心配事は罰金刑だけではありませんでした。Aさんは、この法的トラブルが彼の在留資格にどのような影響を及ぼすのか、そして今後のビザがどうなるのか,強制送還されてしまうのかについても不安でいっぱいでした。

退去強制とは

日本から外国人の方を強制送還する手続きのことを,正式には「退去強制」と言います。

退去強制手続きは主に

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という4つの段階を踏まえて進められていくことになります。

退去強制の理由となる理由が発生した場合,そのことを入国管理局が知ることで調査が実施されます。調査の結果は全て,入国審査官へ引き継がれて「強制送還をすることが適法かどうか」の審査がなされます。審査の結果を踏まえて,強制送還が最終的に決定されることになります。

強制送還をする,という審査がなされた後,決定に不服がある場合には異議を申し出て口頭審理,法務大臣の裁決へと手続きが進みます。

口頭審理,法務大臣の裁決を踏まえて,最終的に強制送還をするか,在留特別許可をするか,それとも強制送還をしないか,といった決定が下されることになるのです。

刑事事件を起こしてしまった外国人の方が強制送還されるかどうかという点や,審査手続きの流れについて細かく解説します。

退去強制の理由になる事実

入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。

  • 一定の入管法によって処罰された場合
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合

執行猶予が付いたとしても強制送還になってしまう刑法犯は,代表的には次のようなものです。

    • 住居侵入罪
    • 公文書/私文書偽造罪
    • 傷害罪,暴行罪
    • 窃盗罪,強盗罪
    • 詐欺罪,恐喝罪

これらの罪の場合,たとえ執行猶予付きの判決であったとしても,裁判が確定すると強制送還の対象となります。一定の刑法犯で懲役刑,禁錮刑に処せられたとして強制送還されるのは,入管法の別表1に該当する在留資格をもって日本に滞在している外国人の方です。入管法の別表1に該当する在留資格とは,こちらのページで列挙されています

在留資格の一覧についてはこちらです。

在留資格の種類

何かしらの犯罪で逮捕されてしまった,というだけでは強制送還の対象とはなっていません。ですが,逮捕,勾留に引き続いて「公判請求」,つまり,「起訴」がなされてしまうと有罪の判決が言い渡される可能性が極めて高く,有罪の判決を受けると内容によっては強制送還されてしまう可能性があるということです。

特に,薬物事件入管法違反については,「悪質な事案」として入管法でも厳しく扱われており,強制送還されやすくなっています。逆に,一般刑法の違反の場合には,「その罪名や言い渡された刑の内容によっては強制送還される」という定め方になっています。

Aさんの事例では裁判で罰金刑を受けただけということですから,直ちに強制送還の対象とはなりません。

ただし,Aさんが逮捕されている間に在留期限を過ぎてしまった場合にはオーバーステイとなります。また,次回の在留期間の更新で「罰金刑を受けたこと」が不利な事情となって更新が認められなくなってしまう可能性があります。在留期間の更新が認められないままで日本に残り続けた場合にも,同じようにオーバーステイとなってしまいます。オーバーステイは強制送還の理由として最たるものとなります。

入国警備官による調査

刑事事件を起こしてしまったことが強制送還の理由となってしまった場合,刑事手続きが終了した後,近くの各地方出入国在留管理局に呼び出された上で,入国警備官による調査を受けることになります。

この時の調査の内容は,「退去強制をするべき事実が発生したかどうか」ということに限られます。そのため,調査での一番の調査事項は,

  • 一定の入管法によって処罰されたかどうか
  • 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決が確定したかどうか
  • 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられたかどうか
  • どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けたかどうか

という点になります。そして,これらの事実のほとんどは,刑事裁判の結果を基に認定がなされます。

裁判で事実を争っていない場合にはそのまま「強制送還の理由あり」という認定になってしまうでしょう。

裁判で争っていた場合,または入管の手続きになってから初めて事実を争うという場合,改めて証拠を提出したり詳細な主張を行ったりする必要があります。

入国審査官による審査

入国警備官が調査した内容は,そのまま入国審査官へと引き継がれていきます。そして入国審査官が対象となる外国人の方と面談(interview)を行い,審査を実施します。

審査の対象となるのも上に書かれた調査事項と同様です。

なお,強制送還の理由となる事実に加えて,日本での生活や仕事のこと,家族のこと,財産のこと等も一緒に質問されることがあります。

これは,強制送還の理由になる事実があったとしても,在留特別許可をするかどうか,という判断で考慮される事情になります。

審査が終わると強制送還の理由になる事実があったか/なかったか,という点についての判断がなされ,「事実があった」と認定されると一時的に入管の施設に収容されてしまいます。

元々オーバーステイだった場合には,そのまま収容が続いてしまうことが多くあります。

一方で,審査が終わるまでは一応在留資格をもって日本に在留していたという方の場合,一時的に収容の手続きがなされたとしても,すぐに「仮放免」といって,保証金を払うことで釈放される場合もあります。仮放免の解説はこちらです。

入管に収容されたらどうすればいいか

入国審査官による審査が不服であった場合,強制送還の理由になる事実があったとしても,さらに日本での在留を希望する場合には,その後の口頭審理という手続きを行うことになります。

口頭審理とは何か?

口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。

退去強制になるまでには,

  1. 理由となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
  2. 入国警備員による調査
  3. 入国審査官による審査
  4. (場合によっては)法務大臣による裁決

という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この3と4のちょうど間にある手続です。

口頭審理では,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。

そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。ですが,口頭審理でのインタビューは,法務大臣の裁決という手続きに進む前の,最後のインタビュー手続きです。

そのため,口頭審理の場では,違反審査に関する事だけでなく,在留特別許可を認めるかどうかの判断で重要となる部分の『聞き取り』も行われることになっています。

ただ,あくまで「聞き取り」を行うだけですので,事実に間違いがない限りは,口頭審理の結果については,「元の審査に誤りはなかった」と判断されることになります。

口頭審理の後も,引き続き日本での在留を希望するという場合には,異議の申立てをして,法務大臣の裁決を求めることになります。

口頭審理のポイントとなるのは,『法務大臣による裁決前の最後のインタビューである』という点です。

法務大臣の裁決

入国警備官による調査から始まって,強制送還に関する最後の手続きが法務大臣の裁決という手続きです。

この手続では面談などはなく,口頭審理の結果を踏まえて在留特別許可をするかどうかについて,書面による審査が実施されます。

法務大臣の裁決では,それまでの手続きにおける間違いがないかどうかという点の審査に加えて,在留特別許可をするかどうかという最も重要な点についての審査が行われます。

在留特別許可をするかどうかについては,入管における判断の透明性を確保するという観点から,ガイドラインが公開されています。

そのガイドラインの大枠は,次のようなものになります。

参考URL ガイドラインの全文

  • 積極要素

日本人の子か特別永住者の子である

日本人か特別永住者との間に生まれた未成年の子を育てていて親権を持っていること等

日本人化特別永住者との間に法律上有効な婚姻が成立している

⇒日本と外国人とが,家族関係を持つレベルで接着していること

  • 消極要素

重大犯罪によって刑に処せられた

出入国管理行政の根幹を犯す違反をした

反社会性の高い違反をした

⇒日本に在留させることが日本にとって不利益が特に大きい場合

最終的には様々な事情を総合して判断することにはなりますが,これらの積極要素/消極要素を中心にして,過去の事例なども参考にしながら,在留特別許可をするかどうかの判断がなされます。

まとめ

Aさんの事例では商標法違反で逮捕されたこと,罰金刑を受けたこと自体は強制送還の理由にはなりません。

しかし,その後の手続によっては,強制送還の手続きが始まってしまう可能性があります。

Aさんの事情を考慮すると,きちんと日本での生活が安定していれば在留特別許可をもらえる可能性はありますが,偽ブランドの販売を長期間行っていた場合や多額の利益を得ていたという場合には,「日本で違法は商売を営んでいた」として在留特別許可がなされないということもありえます。

オーバーステイが強制送還の理由となっていた場合には,そのまま入管に収容されてしまう可能性も高くなります。

日本に残って生活を続けたいと希望する場合には違反調査から口頭審理までの手続の中で日本と良く定着していること,これから先の日本での生活が法律に適して安定したものになること主張することが重要です。

強制送還に関する手続きについて,弁護士等に一度ご相談された方が良いでしょう。

強制送還手続きと商標法違反の事例解説

2023-08-25

日本に滞在する外国人が一定の法律違反を犯した場合、強制送還手続きが発生することがあります。この記事では、商標法に違反したAさんの事例を基に、強制送還手続きの法律的側面とその対応策について詳しく解説します。

事例紹介:
Aさんは、40歳の中国国籍で、定住者ビザで日本に在住していました。彼は、長年、東京都内の企業で働いていましたが、コロナ禍でのリストラにより職を失いました。あるとき、経済的な困窮から商標法違反に手を染めることになります。Aさんは、フリマサイトで偽ブランド品を出品したことで、商標法違反によって逮捕されました。

Aさんは数日勾留された後,略式罰金命令を受けて釈放されることになりました。定住者のビザが取り消されるのではないかと心配になったAさんは,弁護士に相談するかどうかを迷っています。

解説:
退去強制手続きは、以下のような場合に発生します。

  • 一定の入管法によって処罰された場合: 旅券法違反など。
  • 薬物事件で有罪判決を受けた場合: 麻薬取締法、覚醒剤取締法など。
  • 一定の刑法犯で懲役、禁錮刑に処せられた場合: 執行猶予がついても対象。
  • 1年を超える実刑判決を受けた場合: 任意の法律違反で刑事裁判を受けた場合。
  • 窃盗罪、強盗罪、詐欺罪など、一定の刑法犯でも強制送還の対象となることがあります。

しかし、在留資格によって強制送還されるかどうかが変わることがあります。例えば、「日本人の配偶者等」や「定住者」の在留資格では、執行猶予付きの有罪判決を受けても強制送還にはなりません。

退去強制手続きは、入管法に基づいて行われます。手続きは、入国管理局が行い、強制送還の決定が下されると、外国人は日本から退去しなければなりません。強制送還の決定は、裁判所の判決とは別に行われる行政手続きです。

弁護士に相談することのメリット:
退去強制手続きは複雑であり、個々のケースに応じた専門的な対応が必要です。弁護士への早期相談が、在留資格の保持や強制送還の回避につながることが多いです。

弁護士への相談の仕方:
強制送還の対象となった場合、早急に専門の弁護士に相談することをおすすめします。具体的な事例や状況を詳しく伝え、最適な対応策を一緒に考えることが重要です。

まとめ:
強制送還手続きは、外国人の在留資格に直接関わる重要な問題です。Aさんの事例を通じて、法律的な側面と対応策を解説しました。このような状況に直面した場合、専門家への相談が重要であることを強調します。

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