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永住権が取りにくくなった?永住許可申請の基準変更を解説
永住許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
永住者とは「法務大臣が永住を認める者」をいい、永住許可後日本に本拠を置いて生活する者が想定されていますが、近年では高度人材等、政策的に我が国への入国・在留を促進すべき外国人へのインセンティブとして、永住許可をすることも行われています。(審査要領)
永住者の在留資格は在留活動・在留期間に制限がないことから日本に在留する外国人にとって最も価値のある在留資格となります。
近年、永住許可申請は急速に取得難易度が上昇してきました。その要因として2018年12月18日に入管法が改正され、「特定技能1号」と「特定技能2号」が創設されたことと関連性があることが指摘されています。政府は特定技能による労働者の受入を5年間で34万人と予測しました。
特定技能2号は永住申請に必要な就労期間としてカウントされ、特定技能1号5年と特定技能5年の計10年間で居住歴に係る永住資格取得申請の申請要件を満たすことから、「特定技能」から永住許可申請者が増加するのを懸念して永住申請の要件を厳しくしたという見方が指摘されています。
これを踏まえて,永住許可に関するガイドラインは2019年5月31日に改訂されました。
改訂部分についてですが、
改訂前①「納税義務等公的義務を履行していること」の部分が
⇒改訂後②「公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等)の義務を適正に履行していること」
に変更されました。
具体的な変更点として以下の点が変更されています。
・住民税の課税証明書・納税証明書の提出年数期間
変更前:3年 ⇒ 変更後:5年
・国民年金・国民健康保険の加入状況
審査対象として追加
・年金・健康保険の記録
変更前:不要 ⇒ 変更後:直近2年分が必要
・国税の納税証明書
変更前:不要 ⇒ 変更後:5つの税目について必要
上記の変更点から判断すると、公的義務の履行と独立生計要因が重要視されています。
収入についても独立生計要件として重要な審査要件となります。
それでは実際の許可率を改正前、改正後で比較検討してみます。
2014年度全体の既決総数は50788件、永住申請許可率は東京入管68,6%、名古屋入管68,5%、大阪入管74,3%、全体で72%となっています。
2018年度の既決総数は61,027件、永住許可率は東京入管が51,6%、
名古屋入管が39,8%、大阪入管が63,2%、全体で53,6%となっています。
2021年度の既決総数は62142件、永住許可率は東京入管が60,6%、名古屋入管が49,4%
大阪入管が70,2%、全体で59%となっています。
2014年度は東京、名古屋、大阪入管とも永住申請許可率は70%前後と高い許可率となっていましたが、2018年度は全体で53,6%と4年前と比較すると全体で18ポイントほど低下しました。2021年度の永住許可率は2018年度と比較して多少改善はされていますが、2014年度と比べると依然低い水準となっています。
特に名古屋入管管轄の永住許可率は50%を割っています。
このように現在の永住許可申請は申請書類の内容自体が高度になってきており、10年前と比べて入管の審査も厳しくなってきています。
永住許可申請についてお悩み事、困りごとのある方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。
技能実習生の受け入れ方2パターン 弁護士事務所が解説
在留資格「技能実習生の受入れ方法」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
外国人技能実習生受入れ方法としては「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。
このうち企業単独型とは、原則として日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方法のことをいいます。
一方、団体監理型とは、事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(外国人技能実習機構の認可を受けた「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法のことをいいます。
この団体監理型で技能実習生を受け入れる場合には、技能実習生が入国してから実習を終えて帰国するまでの間、毎月「監理団体」に技能実習生をフォローしてもらうための費用(以下、「監理費」といいます)を支払います。
この「監理費」は、監理団体によって金額が異なりますが、おおよその相場としては月額1人当たり3万円程度となっています。
この点、企業単独型は、日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業がある場合にのみ受け入れられるため、企業単独型での技能実習生の受入れ人数としては圧倒的に少ないのが現状です。
しかし、日本の企業等(実習実施者)が自身で技能実習生のフォローができる体制が整備されている場合には、企業単独型で技能実習生を受け入れると監理団体に支払う「監理費」を支払うことが不要となり、コスト削減ができます。
そこで、日本の企業等(実習実施者)が子会社以外の他の会社等(民事再生法の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等、会社更生法の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社、破産法の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等その他これらに準ずる会社等であって、かつ、当該会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができないと認められる会社等を除く。)の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合は、自身の海外の現地法人、合弁企業がない場合であっても、当該会社等から企業単独型で技能実習生を受け入れることができます。
ですので、日本の企業等(実習実施者)で自身の海外の現地法人、合弁企業がない場合であっても、子会社以外の他の会社等の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合には、当該会社等から企業単独型で技能実習生を受け入れることができます。
現在団体監理型で技能実習生を受け入れており、コスト面でお悩みの方は企業単独型での技能実習生の受入れを検討してみてはいかがでしょうか。
「技能実習」の在留資格は何か,「技能実習」はどんな制度?
在留資格「技能実習」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
①外国人技能実習制度の概要
外国人技能実習制度は、1960年代から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が元となっており、この研修制度が評価されたためこれを原型として1993年に制度として整備されたものです。
技能実習制度の目的・趣旨は、日本で培われた技能、技術又は知識(以下、「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際貢献の制度です。
技能実習制度の目的・趣旨は1993年に制度が創設されてからずっと一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(技能実習法第3条第2項)とされています。
技能実習制度の内容は、外国人技能実習生が、日本において企業等の実習実施者と雇用関係を締結して、母国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。
実習期間は最長5年とされ、技能等の修得は、外国人技能実習機構に認可された技能実習計画に基づいて行われることになります。
②技能実習生受入れ方法
受け入れるには、「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。
このうち企業単独型での受入れをしている会社はほぼ無く、約99%の企業が団体監理型での受入れとなっています。
企業単独型とは、日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方法のことをいいます。
一方、団体監理型とは、事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(外国人技能実習機構の認可を受けた「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法のことをいいます。
上記2つの方法の最大の差異は、受け入れた技能実習生を企業等が直接、業務や生活のサポート、在留資格の手続き等をするか否かという点にあります。
企業単独型で受け入れた場合は、企業等が直接、技能実習生の業務や生活のサポート、在留資格の手続き等をすることになります。
一方、団体監理型で受け入れた場合は、前述の「監理団体」が技能実習生の業務や生活のサポート、在留資格の手続き等をすることになり、企業等としては監理団体にフォローをしてもらうことができます。
技能実習生は入国後に、入国後日本語講習や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けた後、日本の企業等(実習実施者)との雇用関係の下で、実践的な技能等の修得をしていきます。
この中で、法的保護に必要な知識等についての講習(8時間)については、企業単独型であっても団体監理型であっても、必ず実習開始前に受講する必要があります。
なお、企業単独型の場合であれば入国後日本語講習の実施は入国直後でなくても構いません。
離婚後も日本に居続けられるのか?定住者ビザについて解説
離婚・死別定住について弁護士法人あいち刑事事件総合法律所が解説します。
「日本人の配偶者」でなくなっても在留を続けられるのか
日本人の配偶者、永住者・特別永住者の配偶者の在留資格で日本に在留している場合、配偶者としての活動をすることが在留資格の要件となっています、離婚、死別等で配偶者としての活動ができなくなった場合は、これまでの在留資格が認められないことになり、他の在留資格に変更しなければ本国に帰国することになります。
しかしながらこれまで配偶者としての活動を長年継続してきた方の中には、生活基盤が既に本国ではなく日本にあり、簡単には帰国を選択できない方が少なからずいるでしょう。
又、経営・管理、技術・人文・国際業務等の就労系の在留資格変更申請には、学歴、業務経験、資産等の面で複雑で高度な要件が求められ、変更要件を満たす人は限られてきます。
こうした場合に、これまでの生活基盤を大きく変更することなく、引き続き日本で生活することを希望する方の救済措置的な在留資格として、離婚定住・死別定住と呼ばれる在留資格があります。
「告示外定住」という定住者ビザの一種であり,要件が事前に定められていない在留資格です。離婚・死別定住の対象となる者は、日本人、永住者又は特別永住者である配偶者等と離婚又は死別後引き続き日本に在留を希望する者で、同じ身分系の在留資格でも定住者の配偶者等と離婚又は死別後引き続き在留を希望する者は含まれません。
離婚・死別定住の許可要件はおよそ以下の4つです。
① おおむね3年以上の「正常な婚姻関係・家庭生活」を営んでいる
② 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
③ 日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難となるものでないこと
④ 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
審査のポイント
①「正常な婚姻関係・家庭生活」は、通常の夫婦としての家庭生活を営んでいたことをいいます。
したがって、別居していた期間であっても夫婦としての相互扶助、交流が継続して認められればこれに該当します。
②「生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは、独立して生計を営むだけの収入のことです。
正社員、派遣社員、アルバイト等、就労形態による区別はありませんが、およそ月収18万以上が目安となります。
③「日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており通常の社会生活を営むことが困難となるものでない」とは、言語能力などの点で,日本での生活に支障がないことです。
例えば、申請書の記載や面接において、申請人との意思疎通が可能であればよく、特定の日本語試験に合格していることまでは問われません。
④「納税義務」は文字通り,きちんと払っているかどうかが問題となります。税金の滞納や交通違反等の法律違反があれば審査において不利になります。
定住者の在留資格に変更が出来れば、就労に制限はなく、これまでの生活基盤を大きく崩すことなく引き続き日本での生活が可能となります。
日本人、永住者・特別永住者の方と離婚・死別され、在留資格についてご心配事・困りごとのある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。
高度専門職の在留資格が変わる?特別高度人材制度について解説
在留資格「特別高度人材制度」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
日本政府は、高度な知識や技能を持つ外国人材を日本で働いてもらうために、新たに「特別高度人材制度」を創設します。
「特別高度人材制度」について具体的にご説明すると、「高度専門職」の在留資格について、年収2,000万円以上の研究者の方々に資格を付与する新ルートを設けるというものです。
2023年2月17日の関係閣僚会議で導入が了承され、2023年4月中の運用開始を予定しています。
現在の高度専門職の在留資格は、学歴や職歴、年収、年齢などを項目ごとにポイント化し、ポイントの合計が70点以上となった場合、「高度外国人材」として在留期間が5年の「1号」を認める仕組みになっています。
この高度外国人材1号は3年を経過すれば、在留期間が無期限の「2号」に移行できます。
出入国在留管理庁によれば、このポイント制が始まった2012年5月から22年6月までに研究者や技術者、経営者の中で約3万5,000人が高度外国人材として在留資格が付与されているとのことです。
今回の新制度は、国際間の人材獲得競争が激化していることから、ポイント制という制度は保持しつつ、新たなルートを加えるというものになっています。
この新たなルートでは、研究者や技術ら者は、「修士号以上を取得」、「職歴が10年以上」のいずれか一方の条件を満たし、年収が2,000万円以上であれば高度外国人材1号を与えるというものです。
また、経営者は職歴が5年以上で年収4,000万円以上が条件となります。
いずれもポイント制より短い1年で2号に移行できるようになります。
さらに、若い海外人材を呼び込むため、世界大学ランキングで100位以内に入っている大学の卒業生の方々を「未来創造人材」として「特定活動」の在留資格を与える予定です。
就職活動や起業に備え、日本に2年間滞在できるようにし、その間の就労も認められる予定です。
このように、日本では様々な外国人の方を日本で働いていただけるように日々検討し、新たな在留資格を追加しています。
例えば、ご存知の方も多いかと思いますが、2019年4月に導入された「特定技能」という在留資格についても、日本が新たに認めた在留資格の一つです。
最後に、新たな在留資格についてはまだルールが定まっていないことが多く、自身で在留資格を取得又は変更させる際に手間がかかることも多く、現在はオンラインでの申請が認められておりますので、在留資格に強い専門家に依頼することをお勧めします。
外国の親を呼び寄せるにはどうしたらよいか
日本で暮らす外国籍の方が,自分の親を日本に呼び寄せるための手段としては「老親扶養」のビザを取得する,というものがあります。
親を介護するために,日本に呼び寄せるというものです。この「老親扶養」は,「特定活動」という在留資格で認められる活動の一種です。
老親扶養のための「特定活動」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
近年,本国にいる年老いた親を日本に呼び寄せ面倒をみたいという問い合わせが多いです。
相談される方の男女の割合はほぼ同数で、国籍では中国籍の方が圧倒的に多いです。
なぜ中国籍の方から「老親扶養」のご相談が多いのかというと、中国で1979年から2015年まで実施された「人口抑制政策」いわゆる「一人っ子政策」が実施されていたことと深く関係していると思われます。
中国において「一人っ子政策」が実施された1979年頃に生まれた方々は,現在43歳~44歳です。その頃に生まれた方々の親の年齢が,現在,おそらく70代中盤から80代に差し掛かっていると推定されます。
この政策の実施中に生まれた子供達が、
・縁あって日本に移り住んだ
・日本人と結婚して日本に移住した
・日本の会社に就職した
と言った理由で,本国を離れて生活している方がいます。そのような方々も,日本での滞在も10年~20年ほど経って社会的にも経済的にもある程度余裕が出来てきているでしょうし,本国にいる親を呼び寄せる準備が整ってきた,長男長女として本国にいる親の面倒をみるのは自分しかいない,しかしながら日本での生活を投げ捨てて帰国するわけにはいかない,といった状況の中で,本国にいる老齢の親をなんとか日本に呼び寄せたいという思いがあるのではないかと思いわれます。
残念ながら日本の在留資格には,「親の面倒を見る」というための在留資格が存在しないため,単に親を呼び寄せたいというだけでは長期的な在留資格を得ることはできず,「短期滞在」で親を呼び寄せるしかありません。
では「年老いた親」の面倒をみることは、親のいる本国に自分が帰国する以外に選択肢はないのでしょうか。
この場合に人道的な措置として「特定活動」という在留資格で親の呼び寄せが出来る場合があります。これはあくまで個別的判断による人道的な措置であり予め上陸審査基準が類型化されていないため、在留資格認定証明書では呼び寄せが出来ません。
そこで短期滞在ビザで来日して、在留期間中に老親扶養の「特定活動」に在留資格変更申請をすることになります。
老親扶養の「特定活動」について事前に定められた審査基準はありませんが、大まかな目安となる基準はあります。
①親の年齢が概ね70歳以上
②親が本国で身寄りがいないこと
③親が単身であること
④扶養側に親を扶養する経済力があること
⑤親に持病がある。
上記①~⑤の全てあるいは複数該当する場合、老親扶養のための「特定活動」に資格変更が出来る場合があります。
老親扶養「特定活動」の在留資格についてご心配な事やお困り事があるという方は、
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談下さい。
口座が凍結されたら,強制送還されるのか?
(解説のための事例はフィクションです)
B国籍のCさんは,技術・人文知識・国際業務の在留資格で日本に在留する外国人でした。
ある日,Cさんは日本での生活費に困ってしまい,インターネットで見つけた怪しげなサイトの表記に従って,「銀行のキャッシュカードを預ける代わりに無利子でお金の融資を受けられる」という業者からお金を借りてしまいます。
結局,Cさんが預けた銀行口座は犯罪に利用されてしまい,口座は凍結され,Cさんも警察と検察からの取調べを受け,犯罪収益移転防止法違反として罰金を受けてしまいました。
Cさんは強制送還されてしまうのでしょうか。
強制送還される可能性について
事例のCさんのような行為は,犯罪収益移転防止法,いわゆる,マネーロンダリング防止法の違反となります。日本では,キャッシュカードや支払い用カードを他人に使わせる行為は,マネーロンダリングを助長する行為でもあり,処罰の対象となっているのです。
キャッシュカードの譲り渡し行為については,罰金刑や執行猶予付き懲役刑が言い渡されることが多くあります。Cさんについても,有罪判決として罰金刑が言い渡されると,前科がつくことになります。
Cさんのように就労ビザで日本に在留している場合,前科がつくと強制送還の対象となることがあります。犯罪収益移転防止法違反の場合,前科であっても1年を超える実刑判決でなければ,強制送還の対象とはなりません。そのため,今回の事例の場合には,すぐに強制送還となる可能性は低いでしょう。
更新の手続きでの不利益
すぐに強制送還される可能性は低いと言っても,罰金刑を受けた場合には,その後の日本での在留資格に大きな影響が残ります。
「永住者」以外の在留資格の場合には,必ず在留期間の更新の手続きが必要になりますが,この時に,犯罪収益移転防止法違反による罰金前科があるということは非常に不利な事情になります。犯罪収益移転防止法というのは,いわゆるマネーロンダリング防止法ですが,これはFATFからの勧奨等の影響を受けて制定された法律でもあり,国際的な犯罪(特にテロなど)のための資金が移転されることを防止するものであるため,国際的な目で見ると特に強く非難されることになります。
たとえ罰金刑であったとしても,次回の在留期間の更新手続きの時に,不利な事情になってしまいます。
日本で罰金刑などの有罪判決を受けた方の中には,「隠していればバレないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし,入管の手続きの中では「自分に不利なことを隠している」というのが最も悪いものだとされています。隠すくらいなら,最初から入管に対しては正直に申告し,それでも資格の変更や更新のために真摯に申告するという姿勢の方が重要です。
罰金刑を受けたなど日本での有罪判決について心配な方や不安なことがある方は,行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
下記のフォームからもお問い合わせいただけます。
大麻取締法違反で強制送還,再入国できるのか
(解説のための架空の事例です)
X国籍で東京都に住んでいたAさんは,自己使用目的で大麻数グラムを所持していたところ,路上で職務質問を受けて大麻の所持が発覚していしまい,現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは裁判によって,執行猶予付き判決を受けましたが,その後,東京出入国管理局から呼び出されてインタビューを受け,退去強制(強制送還)されてしまいました。
Aさんには婚約関係にあった,日本国籍のBさんという方がいました。Bさんは,Aさんと結婚して日本で生活をしていきたいと思っていますが,Aさんの再入国手続きについて弁護士に相談することにしました。
薬物事件で強制送還された場合
Aさんのように,薬物事件(具体的には,覚醒剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,大麻取締法違反,麻薬特例法違反)によって有罪の判決を受け,その判決が確定してしまうと退去強制の理由(入管法24条4号チ)が生じます。判決が確定した後に強制送還の手続きとなります。
薬物事件で有罪判決を受けたことによって強制送還となると,日本に再上陸できなくなってしまいます。
日本国内で大麻取締法違反による前科(犯罪歴)がある方の場合,刑の内容や刑期に関わらず無期限で再入国できなくなってしまいます。
再入国を求める場合
Aさんのように薬物事件で有罪の判決を受けて国籍国に送還された後,日本への再入国を求める場合には,上陸特別許可を求めることになります。
上陸特別許可とは,本来は再入国できない人(上陸拒否事由がある人)についても,特別に上陸を許可する事情がある場合に,その外国人の上陸を認めるというものです。
強制送還(退去強制)される手続の中における,在留特別許可のようなものです。上陸特別許可を求めて日本へ入国しようとする場合には,大きく分けて二通りの手続きがあります。
- 国籍国のパスポートを取得して,出国して,日本の空港や港の入管で上陸審査を受ける。
- 出国する前に,在留資格認定証明書の交付を請求する。
1の方法は,言ってみれば「ぶっつけ本番」という形で,ひとまず日本へやってきて,そこから上陸特別許可を得られるかどうかの審査をしてもらうという方法です。この場合,形式的には一度「入国拒否」の処分を受けることになり,そこから改めて上陸審査を受けることになりますから,手続には数日かかることがあります。その間,空港や港から出ることはできません。
ほとんどの方は,2の方法で再上陸できるかどうかについての審査を受けることになるでしょう。
本来,「在留資格認定証明書」というのは,日本での在留資格が認められるかどうかについての事前審査として行われるものです。Aさんの場合,おそらく「日本人の配偶者等」のビザを申請することになりますが,本来であれば「日本人の配偶者等」に該当するかどうかが審査の対象になります。
しかし,上陸拒否事由がある人が在留資格認定証明書の請求をした場合,上陸特別許可をするかどうかについても併せて審査をすることになります。
つまり,AさんやAさんの家族のように,既に強制送還された後の人を呼び寄せたいと思った場合には,先に,上陸特別許可がもらえるのかどうか(在留資格認定証明書がもらえるか)についての審査を受けておいた方が良いでしょう。
1のように,ぶっつけ本番で上陸特別許可を求めても,仮に不許可となった場合には,そのまま国籍国へ帰らなければなりません。費用的にも,時間的にも,身体的にも多大な負担となってしまうでしょう。
一方,2の方法の在留資格認定証明書の請求については,弁護士や行政書士に委任すれば,オンラインでの手続きも可能です。
一度強制送還されてしまった方の再入国については,弁護士等の専門家にご相談ください。
上陸特別許可について
「上陸特別許可」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がご説明します。
日本で暮らす外国人の中で、例えば
- オーバーステイで強制送還された
- 事件を起こして逮捕され1年以上の実刑に処せられた
- 執行猶予を含む1年以上の刑に処せられた
- 薬物犯罪で刑に処せられた
などの場合、一定の事情に該当する方は,一度日本を離れてしまうと,再び日本に入国することを拒否される場合があります。
これは「上陸の拒否」とよばれ、出入国管理及び難民認定法第5条1項で「上陸の拒否」に該当する事情と「上陸拒否期間」が定められています。
①の場合、初回のオーバーステイで5年、2回目以降は10年間上陸が拒否されます。
「上陸の拒否」とは日本への入国が認められないという意味です。
②や③,④のように,犯罪歴がついてしまった場合,一度日本から出国すると「無期限上陸拒否」となり、永久に日本に入国することはできず、該当者にとって大変厳しい規定となっています。
しかし入管法5条1項の「上陸の拒否」に該当すると判断された場合でも、人道上の理由等法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときは、法務大臣の裁量により上陸の許可を与える場合があります。
この法務大臣による上陸許可を「上陸特別許可」と言います。
「上陸拒否」に該当する日本国外にいる外国人が改めて日本に入国したい場合は、法務大臣に対して「上陸特別許可」を求める「在留資格認定証明書」の申請をします。
理由書・嘆願書・SNS・写真等の証拠書類を添付した「在留資格認定証明書」を通して、法務大臣に「上陸を認めるべき特別の事情」を説明して在留許可のお願いをします。
オーバーステイ等で強制送還され上陸拒否に該当する場合でも、上陸拒否期間内に日本に戻れる場合があります。上陸拒否にあたる家族や友人を日本に呼び戻したい方はお一人で悩まずに、まずは入管業務を扱う弁護士・行政書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
「留学」の在留資格について解説,ビザがもらえる学校はどこまで?
在留資格「留学」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律所が解説します。
1.「留学」の在留資格に該当する活動
本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動。
該当例としては、大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒。
2.基準 一部抜粋
(前略)四の二 申請人が中学校若しくは特別支援学校の中学部又は小学校若しくは特別支援学校の小学部において教育を受けようとする場合は、次のいずれにも該当していること。ただし、我が国の国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益社団法人又は公益財団法人の策定した学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当することを要しない。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であること。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であること。
ハ 本邦において申請人を監護する者がいること。
ニ 申請人が教育を受けようとする教育機関に外国人生徒又は児童の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていること。
ホ 常駐の職員が置かれている寄宿舎その他の申請人が日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていること。 (後略)
3.基準についてのポイント
基準省令四の二は、申請人が中学校若しくは特別支援学級の中学部又は小学校若しくは特別支援学級の小学部において教育を受けようとする場合の基準です。
イからホまでありますが、学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当しなくともかまいません。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であることが必要です。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であることが必要です。
二 申請人を受け入れる小学校、中学校、特別支援学校等に常勤の生活指導員が必要です。
ホ 申請人が日常生活を支障なく営むための「寄宿舎」「宿泊施設」が必要です。
この「寄宿舎」「宿泊施設」は申請人の監護者の自宅で構いません。
4.「留学」と「資格外活動」について
「留学」としてイメージしやすいのは「大学」ですが、在留資格【留学】は小学校から大学院までを対象としています。
「留学」には日本語学校も含まれます。
在留資格「留学」で日本語学校等に入学された方は本来働くことは認められていませんが、「資格外活動許可」を受けた場合には、週28時間以内(長期休業(夏休み等については1日8時間以内)のアルバイトがみとめられます(風俗営業店舗等を除く。)。
資格外活動許可を超えてアルバイトをした場合、退去強制されたり、在留更新が認められない場合があり、近年、ブローカーの甘言を安易に信じ、入国当初から多額の借金を背負うことになった結果、借金返済のために制限を超えたアルバイトをすることで本来の日本語学校での勉強がおろそかになり、ほとんど日本語が習得できないまま、帰国を余儀なくされたり、より稼ぎをえるために失踪する者が増加していることが問題となっています(出入国在留管理局HPより)。
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