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うっかりオーバーステイ,どうしたらいい?入管に出頭すべき?逮捕されてしまう可能性は?
事例
(フィクションです)
Aさんは、技能の在留資格(いわゆる就労ビザの中の1つ)で来日し、調理人として日本のお店で働いてきました。
在留期間の終わりが迫る中、Aさんは日々のお店での業務が忙しく、在留資格の更新手続きを後回しにしていたところ、うっかり在留期間を過ぎることになってしまいました。
後で在留期間が過ぎてしまったことに気付いたAさんは、入管に出頭すれば、そのまま拘束されて本国へ退去強制させられてしまうのではないかと怖くなり、誰にも相談できないまま今に至ります。
まだこのことは入管や警察に発覚していませんが、Aさんの不安は日々大きくなっています。
オーバーステイ(不法残留)とは
オーバーステイとは、在留期間を過ぎて在留資格が無くなってしまった外国人の方が、その状態のまま日本に在留し続けることをいいます。
法律用語的には「不法残留」といい、入管法に違反しているということになります。不法残留によって逮捕、起訴されてしまうと法律上、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が課されます。
オーバーステイは、退去強制の対象となります。
オーバーステイ発覚前のお悩みについて
オーバーステイ状態がまだ入管や警察には発覚していないという外国人の方は
- 入管に出頭すべきか
- 発覚したらすぐに逮捕されるのか
- もう日本に残ることはできないのか
- 出国までずっと入管に収容されるのか
- オーバーステイの刑罰はどうなるのか
といったことでお悩みかと思います。
以下、順に見ていきましょう。
入管に出頭すべきか
オーバーステイ状態になってからは、時間が経てば経つほど状況は悪化し、出頭をしないままでオーバーステイが発覚すれば、身体拘束、強制的な送還、重い刑罰といったリスクが高まります。
手遅れの事態にならないよう、早く弁護士等の専門家に相談し、出頭も含め、適切な対応を取れるようにしましょう。
発覚したらすぐに逮捕されるのか
出頭をせずに日々を過ごしていたところ、職務質問や交通違反の時の手続等のきっかけでオーバーステイが警察に発覚した場合は、逮捕されることが多いです。
入管に出頭した場合は、入管が警察へ通報すれば逮捕される可能性がありますが、オーバーステイの期間が短かったり、その他の事情次第では、通報されないまま入管での手続きを進めることになることもあります。
「入管への出頭≠警察での逮捕」ですから,もしも日本での在留を希望する場合には早めに手を打たなければいけません。
もう日本に残ることはできないのか
在留期間の最後の日から2か月以内であれば、在留資格更新の「特別受理」といって、更新を申請できて許可されることがあります。
特別受理が認められるのは、病気や怪我などのやむを得ない事情で在留期間中に更新手続きを行えなかった場合が典型ですが、Aさんのようにうっかり在留期間を過ぎてしまった場合でも、他の事情次第で認めれらる余地があります。
2か月を過ぎてしまっていたり、事情により特別受理が認められないのであれば、オーバーステイの方が日本に残る手段は、在留特別許可を受けることのみになります。
在留特別許可は、基本的に簡単に得られるものではありません。
もっとも、Aさんのように、うっかり在留期間を過ぎただけで他には退去強制にあたることはしていない方の場合は、日本で長期間生活している、日本に家族がいるなどの事情を考慮して在留特別許可を得られる可能性があります。
オーバーステイを放置して時間が経てば経つほど、隠れながらあえて残留し続けていたと見られ、在留特別許可の判断は厳しくなっていきますので、早く弁護士等の専門家に相談し、対応しましょう。
出国までずっと入管に収容されるのか
オーバーステイのような退去強制事由にあたると判断されると、手続き上,全ての事件で入管に収容されることになります。
これを「全件収容主義」といい,入管当局は基本的に「退去強制事由がある事件については全ての事件で収容のための手続きをとる」としているのです。
ただ,入管に収容する手続きが取られてしまっても,例外的に釈放する手続きが設けられています。
Aさんのようにオーバーステイ以外には退去強制にあたることをしていない方が、出国の意思を持って入管に出頭した場合、オーバーステイが初めてであること、日本で一定の犯罪により刑を課されていないこと、パスポート、航空券の用意があることなどの条件をみたしていれば、出国命令制度によって、収容されずに簡単な手続きで出国することができます。
出国命令制度を使えれば、再度来日できるようになるまでの上陸拒否の期間は1年間となり、退去強制手続きの場合よりも早く再来日できるので、在留特別許可を得ることが厳しい場合は、出頭して出国命令制度を利用することも選択肢として考えましょう。
また、収容中に、仮放免の許可を得られれば、収容を解かれた状態で手続きが進むことになります。
仮放免の許可を得るためには、仮放免を必要としており、かつ手続きの進行上認めても差支えがないという事情をしっかりと伝えなければいけないので、弁護士に相談することをおすすめします。
オーバーステイの刑罰はどうなるのか
オーパーステイの期間が短く、そうなった理由や行状が悪くなければ、不起訴となることもあります。
逆に、オーバーステイの期間が長かったり、そうなった理由や行状が悪ければ悪いほど、罰金、執行猶予と、刑罰は重くなっていきます。
【まとめ】
以上のとおり、オーバーステイがまだ発覚していない外国人の方は、そのまま放置していても状況は悪化していくだけです。
- 日本に残り続けたい
- 入管での収容を避けたい
という方は,速やかに弁護士等の専門家に相談し、出頭を含めた適切な対応をとっていくことをおすすめします。
解決事例 在留特別許可(留学)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
事案・ご依頼の経緯
弁護活動
事件を振り返って
上陸特別許可について
「上陸特別許可」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がご説明します。
日本で暮らす外国人の中で、例えば
- オーバーステイで強制送還された
- 事件を起こして逮捕され1年以上の実刑に処せられた
- 執行猶予を含む1年以上の刑に処せられた
- 薬物犯罪で刑に処せられた
などの場合、一定の事情に該当する方は,一度日本を離れてしまうと,再び日本に入国することを拒否される場合があります。
これは「上陸の拒否」とよばれ、出入国管理及び難民認定法第5条1項で「上陸の拒否」に該当する事情と「上陸拒否期間」が定められています。
①の場合、初回のオーバーステイで5年、2回目以降は10年間上陸が拒否されます。
「上陸の拒否」とは日本への入国が認められないという意味です。
②や③,④のように,犯罪歴がついてしまった場合,一度日本から出国すると「無期限上陸拒否」となり、永久に日本に入国することはできず、該当者にとって大変厳しい規定となっています。
しかし入管法5条1項の「上陸の拒否」に該当すると判断された場合でも、人道上の理由等法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときは、法務大臣の裁量により上陸の許可を与える場合があります。
この法務大臣による上陸許可を「上陸特別許可」と言います。
「上陸拒否」に該当する日本国外にいる外国人が改めて日本に入国したい場合は、法務大臣に対して「上陸特別許可」を求める「在留資格認定証明書」の申請をします。
理由書・嘆願書・SNS・写真等の証拠書類を添付した「在留資格認定証明書」を通して、法務大臣に「上陸を認めるべき特別の事情」を説明して在留許可のお願いをします。
オーバーステイ等で強制送還され上陸拒否に該当する場合でも、上陸拒否期間内に日本に戻れる場合があります。上陸拒否にあたる家族や友人を日本に呼び戻したい方はお一人で悩まずに、まずは入管業務を扱う弁護士・行政書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
喧嘩で被害届が出たら強制送還されるのか?
2023年1月2日の夜,神奈川県内でベトナム国籍の男性ら2人が刃物で刺されるという事件が起きたことが報じられています。
飲食店でベトナム人ら2人刺され大けが 男が逃走 神奈川 相模原
2023年1月5日時点では,犯人はまだ逮捕されていないようですが,仮に外国人同士の喧嘩だった場合,加害者として検挙される人は暴行,傷害罪の罪に問われる可能性があります。
暴行罪:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
事実関係はまだ明らかではないですが,もしも仮に,この事件について被害届が出されて,犯人が検挙され,その犯人が外国籍だった場合には強制送還されることがあるのでしょうか。
刑事事件で検挙された場合
刑事事件の犯人として検挙された場合であっても,直ちに強制送還されるというわけではありません。
刑事事件の手続の中で,強制送還される場合というのは次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
報道にあるような暴行,傷害事件の場合には,4つ目,もしくは5つ目の場合に該当することがあります。
暴行,傷害罪は,刑法のうち第27章に規定されている罪であり,これは入管法で言う「一定の刑法犯」に該当します。そのため,暴行,傷害罪で起訴され,執行猶予付きの判決を受けた場合には強制送還の対象となる可能性があることになります。また,裁判の結果,1年を超える実刑判決となれば,強制送還となる可能性が相当高くなります。
具体的な事実関係は不明ですが,暴行,傷害事件について被害届が出されると,警察としては犯人を特定するための捜査活動を行うことになります。加害者と被害者との人間関係や,被害者の怪我の程度によっては逮捕されてしまう可能性がありますし,怪我が重ければ刑事裁判になる可能性があります。
強制送還となる具体的な場合
実際に暴行,傷害事件で強制送還となる具体的な場合について解説をします。
まず,「一定の刑法犯にあたるとして懲役,禁錮刑に処せられた場合」に該当する場合です。これを理由として強制送還されるのは,入管法の「別表1の在留資格」に該当する場合のことを言います。
「別表1」と言われてもよく分からないかもしれませんが,入管法に定められている在留資格には,大きく分けて二種類があり,別表1と,別表2があります。別表1は,日本での活動内容に応じて認められる在留資格を,別表2は外国人と日本との結びつきそのものに応じて認められる在留資格のことです。別表2には「永住者,永住者の配偶者等,日本人の配偶者等,定住者」をさします。
別表1は「別表2以外の在留資格の全部」をさすものと考えてよいでしょう。というのも,別表1には30種類以上の在留資格があります。その多くはいわゆる就労ビザと呼ばれるものですが,「留学生」や「短期滞在」も,この別表1の在留資格に含まれます。
そのため,「別表1の在留資格」(別表2以外の在留資格)で,暴行,傷害罪で執行猶予付きの判決を受けた場合には,強制送還となる可能性があります。
逆に,別表2の在留資格(永住や日本人の配偶者等)である場合や,罰金刑のみで終わった場合には,強制送還の対象とならないで済むことになります。
ただ注意しなければならないのは,罰金刑で終わったとしても,永住の在留資格でない限りは,次のビザの更新の時の不利益な事情となる場合があります。更新した時の在留期間が短くなったり,最悪の場合だと更新が認められないということがあります。
外国人の方の刑事事件は,罰金/執行猶予/実刑という,処分そのものだけでなく,在留資格への影響まで考えて弁護をしなければなりません。
日本で在留している間に刑事事件を起こしてしまったという方や,刑事事件に関わってしまった,強制送還されたくはない,という方は,是非ご相談ください。
刑事事件から在留資格までワンストップでご相談いただけます。
オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?日本人と結婚していた場合を弁護士事務所が解説
(次の事例は解説のための架空の事例です)
Aさん(東京都在住,独身)はSNSを通じて知り合ったX国出身のBさんと仲良くなり,将来結婚することを考えるようになりました。
AさんとBさんは結婚して,日本で生活をしようと思ったため,Bさんは「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しようと考えました。
しかし,実はBさんは留学生ビザで来日したものの,オーバーステイとなり,Aさんと出会った時から不法残留の状態になってしまっていました。
Aさんも,Bさんから不法残留,オーバーステイの事実を聞きましたが,それでも結婚して日本で夫婦生活を継続したいと思い,インターネットサイト等を見たところ,「入管に出頭した方が良い」との記事を見つけます。Aさんは,Bさんに「配偶者ビザをもらうために,一度入管に出頭しよう」と相談しましたが,Bさんは「入管ですぐ逮捕されるのではないか」と不安です。
そこでAさんとBさんは,法律事務所に相談することにしました。
不法残留に対する対応
日本の入管は,基本的に不法残留に対しては退去強制(強制送還)の手続きをとります。
Aさん,Bさんのように「配偶者ビザをもらうために出頭した」という場合であったとしても,まずは退去強制手続きを行います。
この退去強制手続きを行う中で,日本人の配偶者等として在留特別許可をするかどうかについての審査が行われます。
注意しなければならないのは「在留資格の変更」や「新たな取得」を申請することはできない,ということです。
一度日本国内においてオーバーステイとなってしまうと,元々持っていた在留資格が失効(効果がなくなる)しますので,「延長」であるとか,「変更」の手続きをすることはできません。
延長や変更は,「元々,適法に持っていた在留資格を別のものに変更したり,在留期間を延長したりする」という手続きですから,適法な在留資格がないオーバーステイ状態では取れない手続きということになります。
Aさんのように,親しい方や婚約者である外国籍の人がオーバーステイ(不法残留)であることが分かった時の対応の仕方として,入管へ出頭する,というのは一つの選択肢であります。
というのも,Bさんのように不法残留の状態だと,放っておいても在留資格が認められることはないため,仮にきちんとした在留資格を取得しようと思うのであれば,入管へ出頭する以外には現実的な手段がないのです。
入管に出頭したら逮捕されるのか
それではBさんのように,不法残留の状態で入管に出頭した場合,その場で逮捕されてしまうのでしょうか。
結論としては,逮捕されない場合もあるというものになります。
というのも,確かに入管は不法残留や不法就労について摘発を行うことがありますが,実際に不法残留について逮捕したり捜査を行ったりするのは,警察官がほとんどです。
また,不法残留の人が入管に出頭したという場合であっても,すぐに入管が警察へ連絡するというわけでもありません。
実際には,不法残留になった期間や日本での生活の状況,出頭した経緯や在留特別許可となる見込みがどれだけあるか等といった事情を加味して,入管としての対応が決まることになります。
たとえば,不法残留になってからの期間が短かった,不法残留以外には日本での法律違反がない,出頭した事情から見て在留特別許可がされる可能性が高い,というものであれば,入管としても警察へ通報しないということがあるでしょう。
逆に,在留カードを偽造していた場合や,長い期間にわたって不法就労をしていたというような場合,不法残留以外に日本での法律違反がある等という場合には,入管から警察への通報がなされるということがあります。
在留特別許可については法務省が許可した事例と不許可にした事例を公表しています。
Bさんの事例のように,「日本人の配偶者等」としての在留資格を求めて出頭したという場合ですと,他に法律違反がなければ,逮捕されないままで手続きが進むということも考えられるでしょう。
ただ,Bさんのように「入管に出頭したら逮捕されてしまうのではないか」と不安に思うのも無理ありません。実際にオーバーステイの状態になってしまっているのであれば,なおさらです。
不法残留(オーバーステイ)の状態になっているけれども日本でのビザが欲しい,きちんとビザをもらうために入管に出頭したい,と考えている方も,あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士が,入管の手続きについても対応します。刑事事件については多数の経験がありますから,逮捕される可能性がある事案についても,ご依頼者様の利益を最大化できるような選択肢を一緒に考えていきましょう。
強制送還されても再入国?弁護士ができる対策
様々な理由があっても,一度日本から強制送還の命令を受けて出国してしまうと,その後しばらくの間,もしくは無期限に日本に再入国できなくなってしまいます。
一番確実なのは,この再上陸拒否期間がすぎるのをまつことですが,
- 再上陸拒否期間が過ぎるよりも前に日本に入国しなければならない
- 無期限の再上陸拒否なのでどれだけ時間が経っていても入国できない
という場合があります。
今回は,再上陸拒否期間に日本に再度入国するための,「特別上陸許可」について解説します。
不法就労助長の会社の責任と個人の責任,どう違う?
不法就労助長罪には,雇っていた法人や事業主に対する責任と,雇い入れをした個人に対する責任の両方が定められています。
このような規定を「両罰規定」と言って,「法人」や「会社」に対しても刑罰を科すという規定です(入管法76条の2)。
もちろん,会社に対して「懲役刑」を科すことはできません(会社は目に見えないものですし,実際の肉体もありません)。法人に対する両罰規定としては,罰金が科されることになります。
不法残留(オーバーステイ)で不起訴になると,日本に残れる?
今回は,不法残留(オーバーステイ)について解説をしていきます。
これまでも本HPではオーバーステイに関して解説記事を更新していましたので,併せてごらんください。
同居人が不法滞在?逮捕されるのか?
不法滞在の外国人を日本で住まわせていたとして,会社役員の外国人の方が逮捕されるという報道がありました。
2020年11月20日の報道
このケースでは,逮捕された方のシェアハウスに住まわせていたとされていますが,もしも同居する外国人の方が不法残留であった場合,同居している方はどうなるのでしょうか。
この報道の事例を参考に指定解説します。
不法滞在とは?
そもそも,不法滞在とは一般的に使われている用語で,法律上は「不法残留」と言われているものです。「オーバーステイ」と言われていることもあります。
不法残留とは,一旦は適法に日本に上陸して在留していたものの,在留資格を取り消された方,在留期間を更新しないまま在留期間を満了した方が,その他法律上日本に在留するための手続きをとらないで在留している状態のことをいいます。
不法残留に対しては,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されることとされています(出入国管理法70条1項柱書)。
不法残留であることが通報や出入国管理局などを通じて警察に発覚すると,多くの場合に当該外国人の方は逮捕されることがあります。
同居していた人も罪に問われる?
不法残留してしまったご本人は,出入国管理法違反(不法残留)に問われることになります。
では,その周りの方や報道にあるように部屋を提供して住まわせていた方も,共犯として扱われるのでしょうか。
ここで一旦,刑法の基本的な考え方を解説します。
刑法では,他人が実行した犯罪であっても一緒に企てて犯罪を遂行した場合や,他人に犯罪の方法を教えたり道具を提供して容易にしたりすると,共同正犯や教唆犯,幇助犯として刑罰が科される可能性があります。報道からは詳細が分かりませんが,今回逮捕されてしまった会社役員の方は,不法残留の共同正犯,もしくは幇助犯として逮捕されてしまったようです。また,逮捕されてしまった方は「不法滞在とは知らなかった」とお話しされているようです。共同正犯も幇助犯も,故意がなければ犯罪は成立しません。ここでいう「故意」とは,「不法残留であることを知っていたこと」を指します。
それでは,不法残留の共同正犯や幇助犯として扱われる場合や過去の事例を見てみます。
他人の不法残留について一緒に責任を負う場合というのは,共同正犯や幇助犯として罪に問える程度の役割をはたしていなければなりません。具体的に他人の不法残留を容易にしたり,その手助けがなければ日本での不法残留ができなかったと言えるような状況が必要です。例えば,偽造したパスポートや在留カード等の身分証をもたせたり,毎月生活費を渡して扶養していた場合等があります。
知人の外国人が不法残留であることを知っていたが出入国管理庁に通報しなかった場合や,不法残留の外国人と一緒に暮らしているだけという場合には,共同正犯や幇助犯とはならない可能性もあります。
同居人の不法残留を幇助したとして起訴されたものの,東京高等裁判所で無罪判決が言い渡されたという事例があります(東京高等裁判所令和元年7月12日判決)。この事例では,起訴された方は,同居人が不法残留であったことは知っていたとしても,一方的に養っていたわけではないし,同居人が不法残留していることを周りや出入国管理庁に対して隠していたものでもないため,不法残留を「容易にした」とまではいえないとして,無罪とされました。
また,共同正犯や幇助犯というのは,上記の様な「故意」がなければ成立しません。他人を雇い入れる場合とは異なり,単なる同居人であれば他人の在留カードを確認する義務まではありません。日常会話などの中で「○○まで有効な在留資格で日本にいる」と聞いていたとすると,それ以上に「不法残留かもしれないな」と疑うような事情がなければ,「知らなかった」という主張が通る可能性もあります。一方で,持っていた在留カードと名前が違う場合や,在留カードやパスポートを持っていないで再発行もしない場合等には,不法残留であることを疑うべき事情となるかもしれません。
☆賃借人として気を付けた方が良いか?
このような報道が出て来ると,不動産賃貸をしているオーナーの方や客付けをされている方は,「外国人には不動産を貸すとリスクがあるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,結論から申し上げますと不法残留の共同正犯や幇助犯となる可能性については,過度に心配する必要はないように思われます。
大切なのは,通常採るべき確認をしたのかどうかです。
賃貸借契約の時点で在留カードを確認する,契約書とは別途誓約書の提出を求める等,各社対応が異なるところではありますが,「これだけやっておけば安心」というものもありません。
ご不安な点のある方は一度お問い合わせください。
まとめ
不法残留の共犯を疑われて逮捕された事例を通して,不法残留の共同正犯や幇助犯について解説してきました。
ご不明点や心配な点がある方は,お気兼ねなくご相談ください。
資格外活動として検挙される場合
このページでは,どのような場合に資格外活動として摘発されるかを解説します。
資格外活動に当たる場合
日本に在留する外国人の方は,在留中の活動に応じた在留資格が付与されています。それぞれの在留資格に応じて,日本でできること/できないことが変わります。
在留資格で認められる範囲外の活動を行う場合には資格外活動許可が必要になります。資格外活動許可の申請については,前回のページ「資格外活動許可の申請手続き」でも解説していますので併せてご覧下さい。
資格外活動とは,出入国管理法19条1項に反する行為を指します。