偽装結婚とは何か

1 偽装結婚は何罪?

ドラマやフィクションなどで「偽装結婚」という言葉が登場することがありますが,入管の実務でも「偽装結婚」というものが問題になります。

ここでいう偽装結婚とは,本当は婚姻する意思がないのに結婚したようにふるまい婚姻届けを出して配偶者であることを装う,として考えます。そして,婚姻する意思がないのに婚姻届けを出して戸籍を変更させる行為は,「公正証書原本不実記録罪」(刑法157条1項)という犯罪になり,5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。最近では,戸籍の情報は電子化して保存されているため,「電子的公正証書原本不実記録」と言われることもあります。法律上の刑の重さは同じです。

外国人の方の偽装結婚として多い事例が,日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得する,というものです。偽装結婚をした当事者の方については,日本人,外国人を問わず,前科などがない方であれば執行猶予付きの判決となることが多くあります。一方,多数の外国人と日本人を結婚させて仲介手数料などを得ている,いわゆるブローカーのような人の場合には実刑判決を受けてしまうことがあります。

この犯罪が成立するかどうかは,婚姻届けを出すときに結婚して夫婦となる意思があったかどうかに拠ります。その際の判断要素としては,交際のきっかけや交際の期間,経済的な状況,お互いの家族に結婚相手として紹介しているか,結婚ブローカーが関与していないか等の状況から,真意に基づいた婚姻届けの提出なのかどうかを判断します。

  • 犯罪となるリスクを冒しながら偽装結婚をしてしまう外国人の方がいるのは,それだけ「日本人の配偶者等」という在留資格が安定しているためと考えられます。婚姻が継続している限りは在留資格の延長にあたって心配することは少ないですし,何より,就労に制限がなく,どんな仕事でもできます。

偽装結婚をして日本で働き,そのお金を本国に送金するという外国人の方が後を絶たず,入管当局も偽装結婚に対しては厳しく取り締まっています。

 

2 偽装結婚の問題点は?

偽装結婚は,上記のとおり刑法に抵触する犯罪行為です。初犯であっても起訴され,有罪判決を受ければ前科がつく可能性が非常に高いです。外国人の方に限らず,偽装結婚の相手となった日本人も同様に処罰されてしまいます。「人助けのつもりで」「ちょっと報酬がもらえるから」という理由で結婚相手になってしまう方が多いようです,真剣な婚姻意思がない限り絶対にやめましょう。

また,外国人の方にとっても偽装結婚は重大な問題があります。退去強制となる可能性が非常に高いという点です。偽装結婚をして「日本人の配偶者等」の在留資格で入国した場合,虚偽の申請をして上陸審査を通過したことになるため,不法上陸となり,在留資格が取り消され退去強制事由に該当します。そうでなくとも,公正証書原本不実記録罪によって有罪判決を受け,懲役刑(執行猶予の場合も含む)に処せられると,それだけで退去強制事由に該当します。

この場合は日本における身分関係を偽ったことになるため,在留特別許可を求めるのは非常に難しいですし,退去強制されると5年間日本に再上陸できません。退去後,仮に真正な結婚をして上陸特別許可を申請する場合にも,真正な結婚であるかどうか厳しく審査されますし,日本で偽装結婚していたことが非常に不利に扱われます。

日本における偽装結婚は,現在の日本における在留だけではなく,遠い将来の在留の可能性まで失くしてしまうものです。

 

3 偽装結婚のお手伝いはできません

どうしても日本人の配偶者として在留資格を得て,日本に長く在留し続けたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし,弁護士は偽装結婚のお手伝いや虚偽の在留資格の取得の申請代行をすることはできません。

仮に真正な結婚であったとしても,弁護士も「本当に真正な結婚だろうか」「入管から指摘されることはないか」という視点から検討させていただきます。

偽装結婚である時や偽装結婚であると疑われる可能性が高い時には,手続きのご依頼を受けられない場合や,別の在留資格を取得することを勧める場合があります。

申請内容が虚偽にならないようにすることが,ご依頼者様の利益を最大化する事にも直結すると考えられるからです。

 

 

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