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仙台出入国管理局の紹介
今回は仙台出入国在留管理局のご紹介をいたします。
仙台出入国在留管理局の住所;仙台市宮城野区五輪1-3-20仙台第二法務合同庁舎
仙台出入国在留管理局電話番号:022-256-6076
仙台出入国在留管理局への最寄りの駅:JR仙石線、榴ヶ岡駅出口1から徒歩10分
仙台出入国在留管理局の管轄
仙台出入国在留管理局は、全国に8局ある地方分局の中の一つです。
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県。福島県の東北6県を管轄し、6出張所で構成
されています。
出張所として、青森 盛岡 仙台空港 秋田 酒田港 郡山が置かれています。
仙台出入国在留管理局は、総務課、審査部門、警備部門の3つの部門に分かれています。
営業時間はそれぞれ9時~16時までです。
総務課は、管理局全体の管理、総務・人事・会計等の業務を行います。
人事課は、仙台入管で働く人の管理や局内部のお金の管理を行います。
審査部門は、在留審査一般・海港業務、在留の審査と港で日本に来る外国人を調べます。
警備部門は、退去強制業務、法律を守らなかった外国人に、日本から他の国へ帰る命令をします。
仙台入管にあって出張所にない業務として、警備部門による退去強制業務があります。
よく強制送還とか強制退去とか言われています。
退去強制とは、日本に不法に入国したり、在留許可の範囲を超えて滞在するなど、出入国在留管理法第24条に規定する、退去強制事由に該当する外国人を強制的に国外へ退去させ、日本の安全や利益が害されるのを防ぐのが目的とされています。
仙台出入国在留管理局の特徴
6つある各出張所の業務は、①青森出張所が在留審査一般と海港業務②盛岡出張出張所が在留審査一般と海港業務③仙台空港出張所が空港業務④秋田出張所が在留審査一般と空海港業務⑤酒田港出張所が海港業務と在留審査一般⑥郡山出張所が在留審査一般、空海港業務となっています。
6つある出張所は全て海に面しており、出張所の業務に海港業務が多いのが特徴です。
仙台出入国在留管理局の弊所の最寄りの支部は、仙台市青葉区にある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所仙台支部です。
口頭審理で忘れてはいけないこと,日本で在留を続けるため
(以下は解説のための架空の事例です)
事例―MDMAの裁判の後・・・・
Bさんは「定住者」の在留資格で18年間,日本で生活をしていました。日本人の交際相手もおり,日本の企業にも就職していて,出来ればずっと日本で生活し続けたいと願っていました。
しかし,Bさんはある時,仕事がうまく行っていなかったことや友達から勧められたこともあり,MDMAを使ってしまい,警察に逮捕されました。
Bさんには懲役1年6月,執行猶予3年の判決が言い渡さた後,今度は入管からの呼出がありました。
Bさんは,インタビューの中でも日本に残りたいことを伝えましたが,口頭審理では「あなたは強制送還になります」と言われました。
Bさんとその交際相手のかたは,弁護士に相談することにしました。
口頭審理とは何か?
口頭審理とは,入国審査官が「退去強制事由がある」と判断をしたことに対して,特別審査官が再度審査をするという手続きのことです。
強制送還になるまでには,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
という段階がありますが,「口頭審理」という手続きは,この「3」の次にある手続ということになります。
口頭審理期日は,入管の審判部門でのインタビューとなります。
東京入管の場合には,6階のエレベーターを降りて,ちょうどその裏にある部屋になります。名古屋入管の場合には3階です。
口頭審理の場では,,入国審査官の判断が間違っていたかどうか,が審理の対象になります。
そのためまずは,強制送還の理由となった事情について再度細かく質問を受け,その後,日本での在留に関する質問をされます。
口頭審理で忘れてはいけないこと
もしも日本での在留を続けたい方で,これから口頭審理を受ける方がいれば,覚えておいてほしいことがあります。
それは,口頭審理を受けただけでは在留特別許可は出ないということです。
どんな事案であっても,口頭審理の結果として在留特別許可をするということはできません。これは,法律上,できないからです。
口頭審理の結果というのは,
- 入国審査官の判断は間違っていた
- 入国審査官の判断は間違っていない
この二つしかありえません。ですから,口頭審理の場で在留特別許可がされなかったことで,パニックになってはいけません。
在留特別許可を望むのであれば,口頭審理の結果出てから3日以内に,法務大臣に異議の申出をしなければいけません。異議の申出があってから初めて,在留特別許可をするかどうかという判断が始まるのです。口頭審理の結果を受けて諦めてしまい,異議の申出をしないでいると,在留特別許可を受けるチャンスをつぶしてしまうことになりかねません。
口頭審理が終わったら必ず異議の申出をする,ということは,忘れてはいけません。
在留特別許可までの流れが複雑すぎる?
現在の法律によると,在留特別許可がされるかどうかの判断には,
- 強制送還となる事実の発生(例:オーバーステイ,不法就労,虚偽の申請,犯罪歴などなど)
- 入国警備員による調査
- 入国審査官による審査
- 特別審査官による口頭審理
- 法務大臣(もしくは各地方入管局長)の裁決
という手続きを踏まなければならず,事実を認めて争っていない場合であっても,何度もインタビューを受ける必要がありました。一度廃案になってしまいましたが,入管法の改正案の中には,「在留特別許可についても窓口で申請ができるようにする」というものもありました。これまでは,入管側のアクションを待たなければならなかったものが,自分たちでも申請ができるようになる,という改正案です。
将来的には,在留特別許可についても手続きが大きく変わってくるかもしれません。
在留特別許可に関する手続きや,口頭審理に向けた手続きについてご不安がある方は,弁護士,行政書士といった専門家に早めにご相談ください。
強盗罪で逮捕されたら強制送還されるのか?
(解説のための架空の事例です)
Bさんは外国籍の「定住者」(日系三世,在留期間3年)の在留資格を持っています。
ある日,Bさんは同胞の友人たちと居酒屋でお酒を飲み,自宅へ帰るためにタクシーに乗り込みました。Bさんはお酒に酔っぱらっていたこともあり,些細なことからタクシー運転手と口論になってしまい,タクシー運転手の腕を殴って,タクシー代を払わずにタクシーを降りてしまいました。
被害者であるタクシー運転手が110番通報したところ,Bさんは現行犯逮捕されてしまいました。
Bさんの家族は,Bさんが強制送還されてしまうのではないかと心配で,法律事務所に相談することにしました。
タクシー運転手との口論から「強盗」に
タクシー運転手と口論になって暴力をふるい,強盗罪として逮捕されるというケースは少なくありません。
Bさんの事例のように,「暴力」をふるって,「払うべきお金を払わなかった」という場合,強盗罪として逮捕されてしまう場合があります。
強盗罪に対する刑罰は極めて重く,「5年以上の懲役」と定められています。つまり,逮捕されて,起訴されて,刑事裁判で有罪の判決を受けてしまった場合には,特別な事情が認められない限りは5年以上の期間,刑務所に入らなければならないということになります。
強盗罪で強制送還される場合
Bさんは強盗罪によって強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強盗罪によって「5年以上の懲役刑」を受けてしまった場合には,「1年を超える懲役」を受けた場合に該当しますから,例え在留資格が何であったとしても強制送還の対象となってきます。
また,仮に裁判で執行猶予判決がついたとしても,強盗罪の場合だと,身分関係の在留資格(永住者,日本人の配偶者,定住者,特別永住者)以外の在留資格の人については,強制送還の対象となってしまいます。
Bさんの場合には,定住者の在留資格ですから身分関係の在留資格に該当することになり,執行猶予付きの判決に留まった場合には,強制送還の対象にはならないことになります。
逮捕だけで強制送還されるのか
それでは,Bさんの家族としてはどうするべきなのでしょうか。
Bさんの場合,1年を超える実刑判決を受けなければ強制送還の対象にはなりません。つまり,逮捕されただけで,すぐに強制送還の対象となるわけではありません。
ただし,それでも早めに在留資格についても併せて対応できる,弁護士に相談すべきでしょう。
Bさんのように,逮捕された直後では,次のような点に気を付けなければなりません。
・逮捕,勾留されている間に在留期間が切れてしまう場合
・起訴されるのか,示談したら不起訴になる可能性があるのか
・不起訴になったとしても,次回の在留期間の更新申請が認められないのではないか
逮捕された直後から,「これから先,この事件がどのように進んでいくのか」について,きちんと分かったうえで,日本での在留を続けられるように対応していくことが非常に重要です。
「警察から大丈夫だと言われた」,「国選弁護士から『自分はよく分からないから』と言われた」という方が相談に来られることが非常に多くありますが,既に手遅れになっているという場合すらありますし,もっと早く相談に来てくれていればよかったのに・・・と思うことも多くあります。
外国人の方は,逮捕された直後の段階で,在留資格についてもきちんとケアしておかなければなりません。
ご不安なことがある方や,逮捕されたご家族の在留について心配なことがあるという方は,いち早く専門家にお問い合わせください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,これまで数多くの刑事事件について弁護を行ってきた実績があります。その中には当然,外国人の方が当事者となっていた事件も含まれています。在留資格の問題をはじめとした入管業務について,弁護士や行政書士がチームを編成して事件に対応していきます。
解決事例 在留特別許可(日本人の配偶者等)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留特別許可が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
(守秘義務の関係上,事実の詳細を明らかにしない部分があります)
事案
ご依頼者であるXさんは,日本国内にて大麻を所持していたという事案によって,執行猶予付きの懲役刑の判決を受けました。
執行猶予付きの判決ではあったものの,大麻取締法違反の事件でしたので,判決が確定後に,入管から違反調査のための呼出が来ることになりました。
ご依頼の経緯
判決の言い渡し前から,Xさんは,「刑事事件の判決によって自分の在留資格がどのようになるか」という点について不安があり,当所へ相談に来られました。
Xさんは日本で育ち,家族のほとんどが日本で生活しているという状況であるため,違反調査の後,強制送還されてしまうと非常に不利益が大きいという状況でもあり,在留特別許可に向けた活動をご希望でした。
刑事事件の判決が言い渡される前からご相談に来られたことで,事前のリサーチなどを行う時間も十分に確保でき,実際に入管からの違反調査が始まって以降は速やかに正式に代理人として受任し,在留特別許可の獲得に向けた活動を行うことができました。
弁護活動
Xさんに対する違反調査,違反認定については,在宅のままで進められました。Xさんは元々日本で生活していた方で,日本人の家族もいたことから,違反調査があっても在留資格は直ちには影響を受けなかったためです。
違反認定の結果,違反事実があり,口頭審理に進むという段階でも,入管の施設内に収容されてしまうということもなく,身元保証人もいたことから,即日仮放免で出てこられました。
代理人弁護士としては,「Xさんが日本にいなければXさんが困る/Xさん以外にも困る人がいる/Xさんを日本に在留させ続けるのが誰にとっても良い」ということを入管にアピールするために,手続の早い段階から,Xさんが置かれた状況について入管の担当者に対して説明を行いました。
口頭審理が行われる前から,先だって在留特別許可を求める具体的な事情を述べ,また,入管が判断する基準に基づいても「在留特別許可するべきである」という意見と理由をつけた意見書を提出しました。ただ意見を言うだけではなく,Xさんのご家族からも嘆願書をもらう等して,資料を集めました。
実際の口頭審理の場でも,弁護士が立ち会い,Xさんに在留資格が付与されるべきであることの意見を述べ,審理の中でXさんにとって不利な供述がなされてしまわないかどうかを立会確認しました。
口頭審理の結果
口頭審理から約2週間程度という速さで,結果が出て,在留特別許可が認められることになりました。
Xさんはもともと,「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留していましたので,在留特別許可(日本人の配偶者等,在留期間1年)という形で認められました。
Xさんは日本で家族との生活を続けられることになり,お仕事についても日本の法律上,何らの問題もなく続けられることとなりました。
ポイント
Xさんの事件では,Xさんが日本に長く在留していたこと,日本に家族がいたことが審理において非常に有利な点として考慮してもらう事ができました。また,Xさんの事例では,Xさん自身が日本で仕事をしていたこと,この仕事が日本や地域社会の利益にもつながっていたことも,入管に対して主張していました。
ただ,大麻をはじめとした薬物事件というのは,やはり入管業務においても重たい事案として扱われていることも事実です。
刑事裁判の結果についても触れて,その責任が必ずしも重大なものではないことについても,刑事弁護的な観点から意見を述べています。
よりよい弁護活動や一貫した弁護活動を目指すのであれば,刑事裁判の段階から入管まで見据えた弁護活動が望ましいでしょう。
今後も在留資格や強制送還に関する手続きでお困りの方,そのご家族の力になれるよう,事案に取り組んでいきたいと思っております。
家族や友達の偽装結婚でもビザが取り消される?
Kさんは日本で「定住者」の在留資格をもって在留している外国人でしたが,Kさんの妹が日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することになりました。
Kさんは,妹が日本で結婚する証人になることになり,婚姻届の「証人」の欄に署名をしました。その後,Kさんの妹は日本人配偶者等の在留資格で来日しました。
しかし後日,実はKさんの妹がした結婚は偽装結婚であり,来日してからは全く家族としての生活をしていないことが分かりました。
Kさんは,妹の偽装結婚の証人となってしまったことで自分の在留資格も影響が出るのではないかと思い,弁護士に相談することにしました。
偽装結婚は重い罪
事例のように,偽装結婚というのは入管実務上でも非常に悪質な犯罪とされており,刑法上も重たい刑罰が定められています。
「本当は夫婦として結婚生活を送るつもりがないのに,ビザをもらうためだけに婚姻届けを出して結婚したことにする」というのは,公正証書原本不実記録,供用罪という犯罪にあたり,最大で5年の懲役刑が科されることになります。
また,公正証書原本不実記録,供用罪で有罪の判決を受け,懲役の判決を受けた場合(執行猶予付きの判決も含みます)には,在留資格によっては強制送還の対象となってしまいます。
さらに,元々の在留資格を問わず,
・自分が偽装結婚をして在留資格を不正に取得したり,在留資格の変更,更新の許可等を得た場合
・偽装結婚によって他人に在留資格を不正に取得させたり,在留資格を変更,更新の許可を得させた場合
には,在留資格の取消し,強制送還の対象となってしまいます。この場合,仮に有罪の判決を受けていなかったとしても,入管の独自の調査によってビザが取り消されたり,強制送還に向けた手続きが進んでしまうことがあります。
特に,逮捕されて警察で取調べを受けているという状態の場合,それと並行しながらビザの取消しに向けた調査が進んでいるという場合があります。警察の取調べについては国選弁護士でも対応をしてくれますが,ビザの取消しに関しては国選弁護士も任務の範囲外になってしまいます。逮捕されている事件でビザの取消しも防ぎたいという場合には,早急に自分たちで弁護士に依頼しましょう。
Kさんの事例の場合,「他人の偽装結婚の証人になっている」ということですから,Kさん自身の在留資格については何ら不正をしていないとしても,「Kさんの妹の在留資格について不正な手段を用いた」と疑われてしまうと,強制送還に関する違反調査が始まってしまう可能性があります。
強制送還の対象になるのか
Kさんのように他人の偽装結婚に関わってしまった場合,強制送還されてしまうのでしょうか。
まず,強制送還の対象となる可能性のある場合の法律は,次のとおりです。
三 他の外国人に不正に前章第一節若しくは第二節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)若しくは許可、同章第四節の規定による上陸の許可又は前二節若しくは次章第三節の規定による許可を受けさせる目的で、文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、若しくは偽造若しくは変造された文書若しくは図画若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、所持し、若しくは提供し、又はこれらの行為を唆し、若しくはこれを助けた者
難しいことが書かれているように見えるのですが,簡単にまとめると次のようになります。
誰の在留資格についてか
自分以外の外国人
どんな目的だったか
不正に在留資格を得させる目的で
何をした場合か
文書を偽造した,文書に嘘の記載をした,偽造や嘘の文書を提出/所持/提供した,またはこれらの行為の手助けをした
これらにすべて該当するのであれば,強制送還の対象となる可能性があります。
Kさんの場合には,自分で虚偽の婚姻届を作ったり入管への文書を偽造したというものではないと思われます。そのため,証人になったからと言って,直ちに強制送還の対象になってしまうということはないでしょう。
ただそ,仮に「妹の結婚が偽装結婚であることを最初から知って証人となった場合」には,文書に虚偽の記載をする手助けをしたものとして,強制送還の対象になる可能性もあります。
入管当局は,偽装結婚に対しては特に厳しい態度で臨んでいます。「日本人の配偶者等」の在留資格は,比較的日本で安定した生活を送るためのビザですが,ビザの条件が「結婚」というものだけであることから悪用されることも多いのです。
もしも他人の偽装結婚に関わってしまったという場合には,適切に対応しなければご自身の在留資格まで取り消されて,強制送還されてしまう可能性もあります。偽装結婚に関わってしまったという外国人の方は,早めに弁護士までご相談ください。
無免許運転で逮捕された外国人は強制送還されるのか
(この事例は入管手続きについて解説をするための架空のものであり,実在する地名と設例は必ずしも関係ありません)。
「技術,人文知識,国際業務」の在留資格で日本に在留していたYさん(30代男性)は,東京都内の首都高速道路で自家用車を運転していたところ,スピード違反で検挙されてしまいました。警察官から運転免許証の提示を求められたYさんは,実は日本での運転免許を持っておらず,無免許運転をしていたことが発覚し,現行犯逮捕されてしまいました。
Yさんの会社の友人は心配になり,弁護士に相談することにしました。
無免許運転で強制送還になることはあるのか
これまで当サイトにて解説している通り,入管法上,刑事事件と関連して強制送還される場合というのは,次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
交通違反の場合,そもそも反則金制度の対象となる違反なのか,罰金刑以上が課される刑事罰の対象なのかという点が,区別として非常に重要です。
無免許運転の場合,反則金の対象とはならず,全て刑事事件として扱われることになります。
無免許運転は,道路交通法違反として3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金が定められています。そのため,無免許運転として検挙されて有罪の判決を受ける場合には,最大で懲役3年の刑が科されることになります。
無免許運転を含んだ道路交通法違反の事件は,上記の「一定の刑法犯」には含まれませんので,「1年を超える実刑判決」とならなければ強制送還の対象とはなりません。
これは,どの在留資格であったとしても同じです。永住者,日本人の配偶者等の在留資格の方であっても,留学や短期滞在(旅行者)の在留資格であっても,1年を超える実刑判決を受けない限り,無免許運転をしたことによって強制送還されるということは原則としてありません。
また,「逮捕された」,「勾留された」というだけでは,強制送還や在留資格の取消事由ともなりません。
Yさんのように,逮捕されただけでは,直ちに強制送還までされるということはありません。無免許運転について事実を争わない(間違いがない)ということであれば,刑事事件として有罪ん判決を受けることになりますが,この時,「1年」を超える実刑判決を受けなければ,強制送還されず,日本での生活を続けることができます。そのため,刑事裁判において,いかに軽い処分を受けられるかという点が非常に重要です。
交通違反と在留資格
強制送還の対象とはならない刑事事件であっても,ビザに影響することはあります。
Yさんのように,逮捕された後に,略式罰金によって罰金の支払いを命じられたり,正式な裁判によって執行猶予付きの懲役刑判決を受けたりした場合には,日本での素行が良くないという事情が生じてしまいます。
そのため,次回の在留期間の更新や在留資格の変更申請をした際に,「素行が不良である」として,申請が不許可となってしまう可能性があります。また,長年日本で生活してきた方が永住許可申請をするときにも,前科があるということは非常に大きなマイナスポイントになってしまいます。
無免許運転のように,強制送還とはならない事件であっても,今後の在留資格に影響する可能性があることを忘れないできちんと対応する必要があります。
交通違反,無免許運転について,ご自身・家族・友人の在留資格について不安なことがある方は,是非一度,専門家にご相談ください。
解決事例 在留資格(定住者)が認められた事例
当所の扱った事案について,在留資格認定証明書の発行が認められましたので,その事例を紹介,解説します。
事案・ご依頼の経緯
ご依頼者様は外国籍で日本人の方と結婚されていましたが,本国に外国籍の未成年のお子さんがいらっしゃいました。
お子さんは日本人の子供ではなかったので,「日本人の配偶者等」の在留資格は得られず,また,日本で生まれたお子さんでもなかったものの,家族で集まって日本に住みたいという思いが強くありましたから,なんとか日本に呼び寄せたいとのご希望でした。
なお,このご依頼者様は一度,入管に対してお子さんを「定住者」のビザで呼び寄せようと申請を行っていましたが,不許可の通知を受けてしまいました。
一度申請が不許可となったものの,どうしても家族を呼び寄せたいとの思いから,弊所にご相談に来られました。
弁護活動と成果
ご相談後,在留資格認定証明書の交付請求について,正式にご依頼を頂き,弁護士としての活動を行いました。
ご自身で一度申請をしたものの不許可となった事案で,再度同じ件について申請をしようとする場合,「前にした申請の内容と矛盾しないようにする」という点が非常に大切です。
入管に対する申請については,特に回数制限はありませんが,同じ内容で申請をしても同じ結果,つまり不許可となるだけですし,申請内容を少し変えるとしても,前の申請内容と矛盾してしまうと「申請内容が信用できない」としてやはり不許可になる恐れもあります。
申請に先立って,ご依頼者様やそのご家族からも聞き取りを行い,申請内容が矛盾しないように注意を払いました。
また,不許可となった事案において更に大切なのが,「なぜ不許可となったのか」という点をきちんと洗い出すということです。
新しくビザ(在留資格)の申請をする場合,法律上の要件が満たされているのであれば,原則としてビザは発行(在留資格が認定)されます。それが不許可となったということは,何かしらの要件を満たさなかった,つまり,入管に対して提示すべき事実が欠けていたり証拠が不足していたということです。
この事案でも,不許可となった理由を確認し,不足していた事情を補って再度の申請を行いました。その際,前の申請内容と矛盾が生じないように気をつけなければならないことは先ほど述べた通りです。
弁護士が依頼を受けて再度の申請を行ったところ,申請から約1月弱で審査が完了し,無事に在留資格認定証明書が交付され,ご依頼者様のお子様は「定住者」と支店在留資格が認められることになりました。
同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?その2
2022年9月30日,日本人と同性婚をした外国籍の方が,国を被告として起こしていた裁判について判決の言い渡しがあり,外国籍の方の主張について一部容れた判断をしたという報道がありました。
報道:日米同性カップル、定住資格認めず 「特定活動」を与えないのは違法 朝日新聞デジタル
訴訟の内容
訴訟において訴えていたのは,「定住者」としての在留資格を付与するように,というものです。
そもそも,日本にいる外国人同士の方で同性婚をしている方については,「特定活動」としての在留資格を認めています。しかし,日本人と外国人とが同性婚をした場合の扱いについては何も規定がありませんでした。
この訴訟で原告となった外国籍の方も,日本人の方と同性婚をした後,入管で「定住者」の在留資格の変更を申請しましたが,入管はこの申請に対して不許可処分としていました。
訴訟の中で外国籍の方は,異性婚であれば「日本人の配偶者等」として在留資格が認められるのだから同性婚の場合にも同様に保護されるべき等と言った主張をしていました。
判決の内容
判決の主文としては,原告の外国籍の方の訴え(定住者としての在留資格を付与する)を認めたものではありませんでしたが,入管の対応について違法があった事を認めました。
違法とされた点は,「外国人同士の同性婚」と「日本人と外国人の同性婚」で扱いという部分で,このように扱いが違うのは法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反する,とまで判断しました。そして,同性婚に対して,「日本人の配偶者等」と同じ在留資格までは認められないものの,外国人同士の同性婚と同じ「特定活動」の在留資格を認めなかったのは違法である,と判断をしました。
直接の憲法の違反であるとまでは言いませんでしたが,憲法14条に言及して入管の対応について違法な点があったとまで触れた点は,一歩踏み込んだ判決であるといえるでしょう。裁判において憲法論を扱う,それも,憲法に違反するかもしれないという判断をするということは,先例としても大きな意味を持つ裁判例になります。
判決文の全文は公開されていないため,それ以上の詳しい主張や証拠については分からないところですが,報道などによれば,今後の入管における取扱いとして,日本人と外国人との同性婚において,外国人の方に対しては「特定活動」の在留資格を付与することとなっているようです。また,原告となった外国籍の方は,「定住者」の在留資格が認められなかった点について不服が残るので控訴を申し立てるとのことです。
定住者と特定活動との違い
定住者とは,日本とのつながりや活動内容に応じて,法務大臣が個別の事情を考慮して付与する在留資格です。
「定住者」の在留資格は,就労ビザや留学ビザなどと異なり,基本的には職業に制限がありません。また,定住者として「3年」以上の在留期間がもらえていれば,「永住者」へ在留資格の変更ができる場合があります。
定住者と特定活動の在留資格との大きな違いとして,この,永住者への変更のしやすさというものがあります。
定住者の場合には「3年」以上の在留期間で良いのですが,「特定活動」の場合には「5年」の在留期間が認められないと永住者への変更ができない場合があります。より早く永住者の在留資格を得られるのは「定住者」の方になります。
上記の報道のあった事件で原告の方が「定住者」の在留資格を求めて争っている理由の一つとして,永住者の在留資格の得やすさという点も考慮されているのかもしれません。
同性婚の場合の在留資格はどうなるのか?
日本において,法律上婚姻は「両性の合意」によって成立するものとされています。そのため,日本の民法では異性婚heterosexual marrigeのみが法律上有効なものとして規定されています。
そのため,入管法での「配偶者ビザ」は,日本人夫と婚姻している外国人妻,もしくは日本人妻と婚姻している外国人夫でなければ認められていません。
参考:日本人の配偶者等 日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
ここでいう「配偶者」とは,「法文上,日本人の配偶者であること,すなわち日本人と当該外国人との間の法律上の婚姻関係しか要求していない」ということになる。
コンメンタール出入国管理及び難民認定法2012
ところで近年,性的指向についても異性愛のみならず,同性愛,同性婚に対しても異性婚と同様の法律上の保護を認めようという動きが活発化しています。
例えば東京都では16の市区町村でパートナーシップ制度が導入されています。自治体によって制度の詳細は異なりますが,パートナーシップ宣言をしているカップルに対しては,法律上の家族と同様の扱いをする,例えば行政サービスを受ける時に同じ世帯として扱う,死亡時の情報公開制度の当事者として扱う,医療を受ける時の家族と同じ扱いとする等といった制度です。
では,入管上の扱いはどのようになっているのでしょうか。
基本的には「配偶者等」としていない
2022年時点においては,入管法上の「配偶者」は日本の民法で有効に成立した夫婦,つまり,異性婚の配偶者のみが該当します。
そのため,同性婚をして地方自治体でのパートナーシップ宣言をしていた場合であっても,入管法上の「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することはできないことになっています。
外国人の方が同性婚をして日本での在留を希望する場合には,「日本人の配偶者等」以外の在留資格を得なければならないことになります。
同性婚の場合の在留資格は「特定活動」
同性婚の配偶者の日本でのビザは「特定活動」になります。
平成25年10月18日に,法務省が各地方出入国管理局に対して出した通知には,外国で適法に成立している同性婚の場合には,人道上の理由から外国と同様に安定した生活できるように,原則として「特定活動」としての入国,在留を認めるようにとされています。
※法務省管在第5357号
「外国で成立している同性婚」と挙げられているように,この通知によって「特定活動」の在留資格が認められているのは,外国人同士で同性婚をした場合を指しています。また,同性婚の外国人両方に在留資格を認めるのではなくて,「他の在留資格で日本で生活している外国人」と同性婚をした外国人の方に,特定活動の在留資格を認めるというものです。
例えば,技術人文知識,国際業務のビザを持っているAさんが,Bさんと同性婚をした場合,Bさんは「特定活動」の在留資格を得て日本で生活することができるというわけです。
一方,短期滞在で日本に来たAさんとBさんが同性婚をしたとしても,AさんとBさんの両方に対して「特定活動」のビザが与えられるわけではないのです。
このように,日本の入管法では「外国人同士の同性婚」については在留資格を認めるという運用を行ってきました。その理由が,「外国で同性婚が成立しているのであれば,日本で本国と同じように安定した生活ができるようにしよう」という目的で特定活動を認めていたからです。
そのため,これまでは日本人と同性婚をした外国人の方に対して在留資格を認めていませんでした。この点について,国に対して特定活動の在留資格を認めるように訴えていた方の裁判があり,2022年9月30日に東京地方裁判所での判決が出されました。
次回はこの判決の内容と特定活動,定住者の在留資格について解説をします。
オーバーステイで入管へ出頭,その場で逮捕されるのか?日本人と結婚していた場合を弁護士事務所が解説
(次の事例は解説のための架空の事例です)
Aさん(東京都在住,独身)はSNSを通じて知り合ったX国出身のBさんと仲良くなり,将来結婚することを考えるようになりました。
AさんとBさんは結婚して,日本で生活をしようと思ったため,Bさんは「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しようと考えました。
しかし,実はBさんは留学生ビザで来日したものの,オーバーステイとなり,Aさんと出会った時から不法残留の状態になってしまっていました。
Aさんも,Bさんから不法残留,オーバーステイの事実を聞きましたが,それでも結婚して日本で夫婦生活を継続したいと思い,インターネットサイト等を見たところ,「入管に出頭した方が良い」との記事を見つけます。Aさんは,Bさんに「配偶者ビザをもらうために,一度入管に出頭しよう」と相談しましたが,Bさんは「入管ですぐ逮捕されるのではないか」と不安です。
そこでAさんとBさんは,法律事務所に相談することにしました。
不法残留に対する対応
日本の入管は,基本的に不法残留に対しては退去強制(強制送還)の手続きをとります。
Aさん,Bさんのように「配偶者ビザをもらうために出頭した」という場合であったとしても,まずは退去強制手続きを行います。
この退去強制手続きを行う中で,日本人の配偶者等として在留特別許可をするかどうかについての審査が行われます。
注意しなければならないのは「在留資格の変更」や「新たな取得」を申請することはできない,ということです。
一度日本国内においてオーバーステイとなってしまうと,元々持っていた在留資格が失効(効果がなくなる)しますので,「延長」であるとか,「変更」の手続きをすることはできません。
延長や変更は,「元々,適法に持っていた在留資格を別のものに変更したり,在留期間を延長したりする」という手続きですから,適法な在留資格がないオーバーステイ状態では取れない手続きということになります。
Aさんのように,親しい方や婚約者である外国籍の人がオーバーステイ(不法残留)であることが分かった時の対応の仕方として,入管へ出頭する,というのは一つの選択肢であります。
というのも,Bさんのように不法残留の状態だと,放っておいても在留資格が認められることはないため,仮にきちんとした在留資格を取得しようと思うのであれば,入管へ出頭する以外には現実的な手段がないのです。
入管に出頭したら逮捕されるのか
それではBさんのように,不法残留の状態で入管に出頭した場合,その場で逮捕されてしまうのでしょうか。
結論としては,逮捕されない場合もあるというものになります。
というのも,確かに入管は不法残留や不法就労について摘発を行うことがありますが,実際に不法残留について逮捕したり捜査を行ったりするのは,警察官がほとんどです。
また,不法残留の人が入管に出頭したという場合であっても,すぐに入管が警察へ連絡するというわけでもありません。
実際には,不法残留になった期間や日本での生活の状況,出頭した経緯や在留特別許可となる見込みがどれだけあるか等といった事情を加味して,入管としての対応が決まることになります。
たとえば,不法残留になってからの期間が短かった,不法残留以外には日本での法律違反がない,出頭した事情から見て在留特別許可がされる可能性が高い,というものであれば,入管としても警察へ通報しないということがあるでしょう。
逆に,在留カードを偽造していた場合や,長い期間にわたって不法就労をしていたというような場合,不法残留以外に日本での法律違反がある等という場合には,入管から警察への通報がなされるということがあります。
在留特別許可については法務省が許可した事例と不許可にした事例を公表しています。
Bさんの事例のように,「日本人の配偶者等」としての在留資格を求めて出頭したという場合ですと,他に法律違反がなければ,逮捕されないままで手続きが進むということも考えられるでしょう。
ただ,Bさんのように「入管に出頭したら逮捕されてしまうのではないか」と不安に思うのも無理ありません。実際にオーバーステイの状態になってしまっているのであれば,なおさらです。
不法残留(オーバーステイ)の状態になっているけれども日本でのビザが欲しい,きちんとビザをもらうために入管に出頭したい,と考えている方も,あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士が,入管の手続きについても対応します。刑事事件については多数の経験がありますから,逮捕される可能性がある事案についても,ご依頼者様の利益を最大化できるような選択肢を一緒に考えていきましょう。
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