Author Archive
大麻取締法違反で強制送還,再入国できるのか
(解説のための架空の事例です)
X国籍で東京都に住んでいたAさんは,自己使用目的で大麻数グラムを所持していたところ,路上で職務質問を受けて大麻の所持が発覚していしまい,現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんは裁判によって,執行猶予付き判決を受けましたが,その後,東京出入国管理局から呼び出されてインタビューを受け,退去強制(強制送還)されてしまいました。
Aさんには婚約関係にあった,日本国籍のBさんという方がいました。Bさんは,Aさんと結婚して日本で生活をしていきたいと思っていますが,Aさんの再入国手続きについて弁護士に相談することにしました。
薬物事件で強制送還された場合
Aさんのように,薬物事件(具体的には,覚醒剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,大麻取締法違反,麻薬特例法違反)によって有罪の判決を受け,その判決が確定してしまうと退去強制の理由(入管法24条4号チ)が生じます。判決が確定した後に強制送還の手続きとなります。
薬物事件で有罪判決を受けたことによって強制送還となると,日本に再上陸できなくなってしまいます。
日本国内で大麻取締法違反による前科(犯罪歴)がある方の場合,刑の内容や刑期に関わらず無期限で再入国できなくなってしまいます。
再入国を求める場合
Aさんのように薬物事件で有罪の判決を受けて国籍国に送還された後,日本への再入国を求める場合には,上陸特別許可を求めることになります。
上陸特別許可とは,本来は再入国できない人(上陸拒否事由がある人)についても,特別に上陸を許可する事情がある場合に,その外国人の上陸を認めるというものです。
強制送還(退去強制)される手続の中における,在留特別許可のようなものです。上陸特別許可を求めて日本へ入国しようとする場合には,大きく分けて二通りの手続きがあります。
- 国籍国のパスポートを取得して,出国して,日本の空港や港の入管で上陸審査を受ける。
- 出国する前に,在留資格認定証明書の交付を請求する。
1の方法は,言ってみれば「ぶっつけ本番」という形で,ひとまず日本へやってきて,そこから上陸特別許可を得られるかどうかの審査をしてもらうという方法です。この場合,形式的には一度「入国拒否」の処分を受けることになり,そこから改めて上陸審査を受けることになりますから,手続には数日かかることがあります。その間,空港や港から出ることはできません。
ほとんどの方は,2の方法で再上陸できるかどうかについての審査を受けることになるでしょう。
本来,「在留資格認定証明書」というのは,日本での在留資格が認められるかどうかについての事前審査として行われるものです。Aさんの場合,おそらく「日本人の配偶者等」のビザを申請することになりますが,本来であれば「日本人の配偶者等」に該当するかどうかが審査の対象になります。
しかし,上陸拒否事由がある人が在留資格認定証明書の請求をした場合,上陸特別許可をするかどうかについても併せて審査をすることになります。
つまり,AさんやAさんの家族のように,既に強制送還された後の人を呼び寄せたいと思った場合には,先に,上陸特別許可がもらえるのかどうか(在留資格認定証明書がもらえるか)についての審査を受けておいた方が良いでしょう。
1のように,ぶっつけ本番で上陸特別許可を求めても,仮に不許可となった場合には,そのまま国籍国へ帰らなければなりません。費用的にも,時間的にも,身体的にも多大な負担となってしまうでしょう。
一方,2の方法の在留資格認定証明書の請求については,弁護士や行政書士に委任すれば,オンラインでの手続きも可能です。
一度強制送還されてしまった方の再入国については,弁護士等の専門家にご相談ください。
上陸特別許可について
「上陸特別許可」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がご説明します。
日本で暮らす外国人の中で、例えば
- オーバーステイで強制送還された
- 事件を起こして逮捕され1年以上の実刑に処せられた
- 執行猶予を含む1年以上の刑に処せられた
- 薬物犯罪で刑に処せられた
などの場合、一定の事情に該当する方は,一度日本を離れてしまうと,再び日本に入国することを拒否される場合があります。
これは「上陸の拒否」とよばれ、出入国管理及び難民認定法第5条1項で「上陸の拒否」に該当する事情と「上陸拒否期間」が定められています。
①の場合、初回のオーバーステイで5年、2回目以降は10年間上陸が拒否されます。
「上陸の拒否」とは日本への入国が認められないという意味です。
②や③,④のように,犯罪歴がついてしまった場合,一度日本から出国すると「無期限上陸拒否」となり、永久に日本に入国することはできず、該当者にとって大変厳しい規定となっています。
しかし入管法5条1項の「上陸の拒否」に該当すると判断された場合でも、人道上の理由等法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるときは、法務大臣の裁量により上陸の許可を与える場合があります。
この法務大臣による上陸許可を「上陸特別許可」と言います。
「上陸拒否」に該当する日本国外にいる外国人が改めて日本に入国したい場合は、法務大臣に対して「上陸特別許可」を求める「在留資格認定証明書」の申請をします。
理由書・嘆願書・SNS・写真等の証拠書類を添付した「在留資格認定証明書」を通して、法務大臣に「上陸を認めるべき特別の事情」を説明して在留許可のお願いをします。
オーバーステイ等で強制送還され上陸拒否に該当する場合でも、上陸拒否期間内に日本に戻れる場合があります。上陸拒否にあたる家族や友人を日本に呼び戻したい方はお一人で悩まずに、まずは入管業務を扱う弁護士・行政書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
「留学」の在留資格について解説,ビザがもらえる学校はどこまで?
在留資格「留学」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律所が解説します。
1.「留学」の在留資格に該当する活動
本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動。
該当例としては、大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒。
2.基準 一部抜粋
(前略)四の二 申請人が中学校若しくは特別支援学校の中学部又は小学校若しくは特別支援学校の小学部において教育を受けようとする場合は、次のいずれにも該当していること。ただし、我が国の国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益社団法人又は公益財団法人の策定した学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当することを要しない。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であること。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であること。
ハ 本邦において申請人を監護する者がいること。
ニ 申請人が教育を受けようとする教育機関に外国人生徒又は児童の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていること。
ホ 常駐の職員が置かれている寄宿舎その他の申請人が日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていること。 (後略)
3.基準についてのポイント
基準省令四の二は、申請人が中学校若しくは特別支援学級の中学部又は小学校若しくは特別支援学級の小学部において教育を受けようとする場合の基準です。
イからホまでありますが、学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当しなくともかまいません。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であることが必要です。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であることが必要です。
二 申請人を受け入れる小学校、中学校、特別支援学校等に常勤の生活指導員が必要です。
ホ 申請人が日常生活を支障なく営むための「寄宿舎」「宿泊施設」が必要です。
この「寄宿舎」「宿泊施設」は申請人の監護者の自宅で構いません。
4.「留学」と「資格外活動」について
「留学」としてイメージしやすいのは「大学」ですが、在留資格【留学】は小学校から大学院までを対象としています。
「留学」には日本語学校も含まれます。
在留資格「留学」で日本語学校等に入学された方は本来働くことは認められていませんが、「資格外活動許可」を受けた場合には、週28時間以内(長期休業(夏休み等については1日8時間以内)のアルバイトがみとめられます(風俗営業店舗等を除く。)。
資格外活動許可を超えてアルバイトをした場合、退去強制されたり、在留更新が認められない場合があり、近年、ブローカーの甘言を安易に信じ、入国当初から多額の借金を背負うことになった結果、借金返済のために制限を超えたアルバイトをすることで本来の日本語学校での勉強がおろそかになり、ほとんど日本語が習得できないまま、帰国を余儀なくされたり、より稼ぎをえるために失踪する者が増加していることが問題となっています(出入国在留管理局HPより)。
家族滞在の在留資格について,具体例を解説
在留資格「家族滞在」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.「家族滞在」の在留資格に該当する活動
法律上,「家族滞在」の在留資格が認められる場合としては,次のように規定されています。
入管法別表第一の一の表の教授、芸術、宗教、報道、二の表の高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能2号、三の表の文化活動又はこの表の留学の在留資格をもって在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動。
2.該当例
具体的に言うと,「外交」、「公用」、「特定技能1号」、「技能実習」、「短期滞在」、「研修」及び「家族滞在」を除く別表第一の一から四までの表の上欄の在留資格をもって在留する者の扶養を受ける配偶者及び子が,家族滞在の在留資格をもらえる可能性があります。
逆に,配偶者及び子以外の家族は対象とはならりません。ここでいう「子」には養子も含まれます。
子は未成年者であることを要件とされておらず、成年に達していてもかまいません。
配偶者は、これらの在留資格をもって在留する外国人と現に婚姻している外国人です。
婚姻は法的に有効に成立した者でなければならず、内縁の配偶者は、ここにいう配偶者に含まれません。(『入管関係法大全第2巻〔第2版〕』P203)
また、外国で有効に成立した同性婚による者も含まれません。
3.「特定技能」の外国人の場合や,「扶養を受ける配偶者,子」の範囲について
「特定技能」の場合
「特定技能1号」の配偶者及び子は、「家族滞在」の在留資格に該当する活動に含まれません。「特定技能2号」の配偶者、又は子は「家族滞在」の在留資格に該当する活動に含まれます。「特定技能2号」の外国人は、配偶者及び子を「家族滞在」の在留資格で日本に呼び寄せることが可能です。
「扶養を受ける配偶者及び子」の範囲
「扶養を受ける」とは、扶養者が扶養の意思を有し、かつ、扶養をすることが可能な資金的裏付を有すると認められることをいいます。
「配偶者」については原則として同居を前提として扶養者に経済的に依存している状態、「子」にあっては扶養者の監護養育を受けている状態の事をいい、経済的に孤立している配偶者又は子としての活動は含まれません。(審査要領)
外国で有効に成立した同性婚の場合
海外では同性婚が認められる国は複数ありますが、日本では同性婚が認められておらず、海外での同性婚者は、「家族滞在」の在留資格に該当する「配偶者」として認められていません。なお、母国の法律で同性婚が認められたカップルの間でなされた婚姻での一方のパートナーに対して、告示外での「特定活動」の在留資格が認められる場合があります。
「家族滞在」の在留資格についてご心配なことやお困りのことがあるという方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所内の専用窓口(03-5989-0843)までご相談ください。
在留特別許可を争った裁判事例 東京地方裁判所その13
このページでは,在留特別許可を求めて争った裁判事例について,判決文を解説します。
今回の事例は,令和4年4月14日に東京地方裁判所で判決が言い渡された事例です。
この事例では,外国籍の男性Aさんが,日本国内で外国籍のBさんと婚姻し,その後,永住許可を受けて日本で生活していましたが,Aさんは風俗営業法違反や売春防止法の違反によって執行猶予付き懲役刑を受け,強制送還の手続きに付されました。その後,出入国管理局は,Aさんに対して退去強制令書を発付して,正式にAさんを強制送還するとの決定をしました。
Aさんは,日本での婚姻関係やその家族と日本に引き続き在留することを求めて,退去強制(強制送還)令書の取消を求めて裁判を起こしました。
事案の概要
Aさんは「留学」の在留資格で来日した後,Bさんと出会って結婚し,日本の大学を卒業しました。
Bさんには前婚からの連れ子がいましたが,Aさんとの間にも実子をもうけました。Aさんは「留学」の在留資格から「定住者」へと変更し,その後に永住者に変更しました。
Aさんは輸入関係の会社を経営していましたが,それとは別でマッサージ店を経営するようになり,このマッサージ店において無許可で性的なサービスが提供されたことから,風俗営業法の違反によって罰金刑を受け,更にその後もマッサージ店で売春行為が行われていたことから売春防止法違反によって執行猶予付き懲役刑の判決を受けることになりました。
売春防止法違反に当たった行為は,入管法における売春関連業務に従事していることにもなったため,Aさんは退去強制(強制送還)の対象となってしまいました。
①原告であるAさんは,
・Aさんが永住許可を受けていること
・Aさんが日本に定着していること
・Bさんとの婚姻関係や子供との親子関係があること
から,在留特別許可が認められるべき事案であると主張しました。
②これに対して被告の国は,
・Aさんの売春関連業務への従事の違法性が大きいこと,犯罪性が大きいこと
・永住許可は特に考慮する事情ではないこと
・本国への帰国期間が長いこと
・家族関係も含めて,Aさんを強制送還したとして支障は少ない
から,在留特別許可が認められるべき事案ではないと主張しました。
裁判で重要になったポイント,裁判所の判断
裁判所は,Aさんの訴えを認めず,請求を棄却しました。
まず,Aさんが強制送還されるに至った事情である風営法違反や売春防止法違反の事実は,日本で法律を守って生活しようとする意識の低さを表していると指摘しました。
また,永住許可を受けているという事情についても,永住者だから直ちに在留特別許可がなされるというわけではなく,あくまで一事情にとどまり,上記のような法令の違反があることも考慮すると,在留特別許可を認める大きな事情とまでは言うことができないとしました。
そして,Aさんの日本への定着性や家族関係についても,①日本との定着性については,2度の法令違反があったのだから善良な生活状況だったとは言えない,②家族関係については,Aさんの妻と実子はAさんと同じ国籍なのだから本国で一緒に暮らすこともできること,連れ子については成人していて仕事もしているし,Aさんの本国での生活も可能である事を理由に,在留特別許可をするほどの事情ではないとしました。
コメント
在留特別許可を求める事案において,外国人同士の結婚(永住者の外国人同士)の場合には,やはり日本人同士の結婚とは異なり,法律上保護される程度が低くなっています。
また,売春に関わっていたとされると,入管法上は非常に厳しい対応をされてしまいます。売春関連については,刑事裁判で有罪の判決を受けていない段階でも,強制送還が可能とされていますし,仮に不起訴処分になったとしても,入管は退去強制事由があるとして強制送還できます。それだけ,外国人による売春に対して厳しい対応をしているということになります。
この事案のように,日本国内で,比較的安定した家族生活を営んでいるというケースであっても,売春関連業務に関わっているというように,違法性が高いと認められると,在留特別許可の見込みも低くなってしまいます。
在留特別許可に関する対応は,入管が関わる前の段階から,刑事事件での対応の段階で,ある程度の決着がついてしまいます。ご不安なことがある方は,一度弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。
在留期間の延長が認められなくなる!? 特別措置の終了について
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する 在留資格上の特例措置の終了」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
コロナ禍の拡大により、在留期限が経過した後も帰国できない等の事情に鑑みて、新型コロナウイルス感染症による帰国困難者に対する特例措置が取られてきました。
出国者が増加している状況等を踏まえ、特例的な在留を認めている外国人の方について、現に有する在留資格の在留期限に応じ、以下のとおり帰国に向けた措置がなされてきましたが、令和4年11月1日を持って、コロナウイルス感染症の影響によるすべての特例措置が全て終了しましたので、ここで在留期限ごとに特例措置終了について解説いたします。
① 在留期限が令和4年6月29日までの方
以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)次回更新時には「特定活動(4か月)」又は「短期滞在(90日)」を「今回限り」として許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
② 在留期限が令和6月30日以降の方
「今回限り」として、以下のとおり在留期間の更新を許可します。 a)「特定活動(6か月)」等で在留している方:「特定活動(4か月)」 b)「短期滞在(90日)」で在留している方 :「短期滞在(90日)」 注1)現在許可されている範囲において引き続き就労できます。 注2)帰国困難を理由とする在留許可は今回限りとなります。今回許可された期間内に帰国準備を進めてください。 注3)上記の許可に係る在留期間を満了した場合には、在留期間の更新は認められません。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例による在留更新に該当する方はいません。
③ 新たに帰国困難を理由として在留を希望する方
令和4年11月1日までに現に有する在留資格の在留期限が満了する場合に限り、上記②の「今回限り」の措置 を認めます。 注)「特定活動(雇用維持支援)」については最大1年(※「今回限り」)を許可します。
現在、この在留期限における特例措置は全て終了し、特例措置による在留更新に該当する方はいません。
④ 在留期限が令和4年11月2日以降の方
コロナ帰国困難を理由とした「特定活動」又は「短期滞在」への変更は認められません。
(令和4年11月2日以降に在留期限を迎える方はコロナ特例措置の対象外です)
①~④に該当するすべての在留期限において、新型コロナによる特例措置が終了したことで、
これらの期限以後の新型コロナウイルスの影響による在留期限の延長は認められません。
在留期間更新の際は、オーバーステイにならないよう注意しましょう。
参考;「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による帰国困難者に対する在留資格上の特例措置の終了について」 (出入国在留管理局HP)
「技能」の在留資格について
在留資格「技能」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
在留資格「技能」とは,
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う「産業上の特殊な分野」に属する熟練した技能
を要する業務に従事する活動
とされています。具体的に,どのような活動に対して認められる在留資格なのかという点を解説していきます。
1.「産業上の特殊な分野」とは
外国に特有又はわが国よりも高い水準にある産業分野のほか、その技能を有する者が日本に数人しかいない産業分野等も含まれます。
この結果、「技能」の在留資格による入国・在留には、いわゆる日本人との非代替性又は代替困難性が求められることとなり、「技能」の在留資格の対象となる者の範囲は狭く限定されていました。
しかしながら近時人手不足の観点から、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れの要望が強く、2018年に「出入国在留管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が可決・成立され、「特定技能1号」と「特定技能2号」が新設されました。
現在14の特定産業分野において、「特定技能」による就労が認められています。
このうち「特定技能2号」については、従事する業務が「法務省令で定める熟練した技能を要する業務」であることが要件として定められており、業務の熟練性が求められていますが、
「特定技能1号」については、従事する業務が「法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」とされています。
在留資格「技能」において、分野だけではなく、技能水準についても、外国人技能就労者の受入範囲が拡大されました。(『入管関係法大全第2巻〔第2版〕』P154)
2.「技能」の基準について(一部抜粋)
一~三、八(略)
四 宝石,貴金属又は毛皮の加工に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
五 動物の調教に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に 係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
六 石油探査のための海底掘削,地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査 に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削, 地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含 む。)を有する者で,当該技能を要する業務に従事するもの
七 航空機の操縦に係る技能について二百五十時間以上の飛行経歴を有する者で,航空法(昭和二 十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの
九 ぶどう酒の品質の鑑定,評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能 について五年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含 む。)を有する次のいずれかに該当する者で,当該技能を要する業務に従事するもの イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」とい う。)において優秀な成績を収めたことがある者 ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているものに限る。)に出場したことがある 者 ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含 む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者
3.在留資格認定のポイント
(第4号)は、宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能を有し、そのような技能を要する
業務に従事する者です。10年以上の実務経験を有することが必要です。
(第5号)は、動物の調教など、動物の調教に係る技能を有する者で、そのような技能を要する技能を要する業務に従事するものです。
本号の場合も10年以上の実務経験が必要です。
(第6号)は、石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査のいずれかに係る技能を有している者で、そのような技能を必要とする業務に従事するものです。こちらの場合も10年以上の実務経験が必要です。この実務経験の期間には、外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間が含まれます。
(第7号)は、航空機の操縦士です。航空機の操縦に係る技能について250時間以上の飛行経歴を有すること及びこのような航空運送事業の用に供する航空機に乗り込んで操縦者としての業務に従事することが要件として定められています。
(第8号)は、スポーツの指導を行うものが対象です。
参考:『入管関係法大全第2巻〔第2版〕』P160~162
在留資格「経営・管理」とはなにか,審査のポイントは
在留資格「経営・管理」について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
「経営・管理」は、いわゆる「就労ビザ」の一種であり、事業の経営・管理業務に外国人が従事できるように設けられました。
1.ビザの該当範囲
入管法別表第1の2の表の「経営・管理」の項の下欄では、本邦において行うことができる活動を以下のように規定しています。
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律を行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
「貿易」は例示であり、我が国において適法に行われる業務であれば、その活動に制限はありません。ただし事業の安定性・継続性が認められる必要性があります。
経営・管理の在留資格の決定において、個人事業と法人事業の区別はありません。
2.経営・管理の在留資格が認められる活動のパターン
ア 本邦において事業の経営を開始してその経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
イ 本邦においてすでに営まれている事業に参画してその経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
ウ 本邦において事業の経営を行っている者(法人を含む。)に代わってその経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
「本邦において貿易その他の事業の経営を行い」とは、①本邦において活動の基盤となる事務所を開設し、貿易その他の事業の経営を開始して経営を行うこと、②本邦において既に営まれている貿易その他の事業の経営に参画すること③本邦において貿易その他の事業の経営を開始した者若しくは本邦におけるこれらの事業の経営を行っている者に代わってその経営を行うことをいいます。(審査要領)
3.「経営・管理」 審査基準
「経営・管理」の在留資格を取得するための審査の基準は,次の2つです。
第1号 事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。
この審査基準は、事業所に関する基準です。
具体的には,事業所が本邦(日本)に存在すること、使用する施設が継続的に使用可能なものであることが必要です。
第2号 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する2人以上の常勤職員(法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものである
こと。
ロ 資本金の額又は出資の総額が500万以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること
この審査基準は,事業の規模に関する基準です。
第2号イは、経営又は管理に従事する外国人以外に本邦に居住する常勤の職員が2人以上勤務する事業であることが要件となります。つまり、一定の従業員がいる場合に、事業の規模が基準を満たしているとしています。
ただし、法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する常勤の職員は除かれます。つまり、就労系の在留資格がある他の外国人労働者は除いた従業員数で審査をするということです。外国人の常勤の職員として認められる在留資格は、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者です。もちろん、日本人の労働者の場合には問題がありません。
第2号ロは、事業が会社形態で営まれる場合を前提とする規定であり、株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社又は合同会社の出資の総額が500万以上の事業であることを要件とします。会社の資金力から、会社の規模を判断するというものです。
第2号ハは、イ及びロのいずれにも該当しない場合に、イ又はロに準ずる規模であることを要件とするものです。例えば、外国人が個人事業の形態で事業を開始しようとする場合に、500万以上を投資して営まれているような場合がこれに当たります。(審査要領)
在留資格 「興行」 とは,どのような在留資格か
在留資格「興行」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.在留資格「興行」の活動
演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(入管法別表第一の二の表の経営・管理の項に掲げる活動を除く。演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行はいずれも例示です。
2.「興行」として在留資格が認められる基準
興行にはいくつかの種類があり,入管実務において在留資格が認められるものとしては,第1号から第4号まであります。
第1号
申請人が演劇、演芸、歌謡、舞踏又は演奏(以下「演劇等」という。)の興行に係る活動
客席において飲食物を提供する施設、客の接待をする施設でのライブハウスのコンサートホール、キャバレー、バー等。
基準(一部抜粋)
①外国の教育機関において当該活動に係る科目を二年以上の期間専攻したこと
②二年以上の外国における経験を有すること。
「外国の教育機関」とは、その外国における学校教育制度において正規の教育機関として設置されている機関を意味します。
「二年以上の外国における経験を有すること」とはプロの芸能人として海外での活動が必要であり、日本国内で興行の在留資格で行った興行に関する活動歴は含まれません。
(入管関係法大全第2巻141頁)
第2号
申請人が演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏(以下「演劇等」という。)の興行に係る活動
第2号も第1号と同様、演劇等の興行に係る活動に従事する場合に関する規定ですが、活動を行う施設として、以下①~③の要件が必要となります。
① 客席において飲食物を有償で提供しない施設であること。
② 客の接待をしない施設であること。
③ 営利を目的としない本邦の公私の期間が運営する施設又は客席の定員が100名以上
の施設であること。
「営利を目的としない本邦の公私の機関が運営する」とは、演劇などの興業が、非営利団体がもつ劇場、ホールなどの施設、公民館、体育館学校等で行われる場合を想定しています。
第3号
演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動
例)プロスポーツの競技、ゲームの大会、ダンスの選手権、各種のコンテスト、ファッションショー等
第4号
興行に係る該当資格には該当しない芸能活動。
商品又は事業の宣伝のために行われる催し(見本市やファッションショー)
放送番組又は映画の製作に係る活動
商業用写真の撮影に係る活動
商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
3.「興行」が認められにくくなった・・・?
在留資格「興行」は、普段あまり聞きなれない在留資格です。しかながら20年位前までは比較的メジャーな就労資格の一つでした。
令和4年現在、興行での滞在者数は2,068人となっています。
2003年当時、興行での新規入国者は133,103人でした。
このうちの大部分はフィリピン国籍者で、その数は80,048人に上りました。
その多くが国内にある「フィリピンパブ」で「タレント」として働きました。
なぜ在留資格「興行」は、ピーク時の13万人から2千人まで在留資格者が激減したのでしょうか?
それは政府の人身取引対策により、在留資格の要件を厳格化が図られた結果によるものでした。
平成12年11月に国連で人身取引議定書が採択され、政府は、人身取引の防止・撲滅と被害者の保護に向け、関係省庁間の緊密な連携を図り、国際社会と協調し、これを早急かつ着実に推進するため、平成16年4月、法務省を含む関係省庁において「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置しました。(出入国在留管理局HP)
在留資格「興行」により入国・在留する外国人については、風俗営業店においてホステス等として不法就労している者が少なくなく、中には人身取引の被害に遭っている者も存在するとの指摘がなされていたことから、「興行」の上陸許可基準に関する法務省令の改正が求められ、外国人芸能人の資格要件の適正化を目的として、在留資格「興行」の上陸基準に関する法務省令が改正されました。(平成17年3月施行)在留資格「興(出入国管理及
改正内容は、演劇、演芸、歌謡、舞踏、又は演奏の興行に係る活動を行うことを目的として「興行」の在留資格で上陸しようとする外国人が、その従事しようとする活動について、「外国の国若しくは地方公共団体又はこれらに準じる公私の機関が認定した資格を有すること」としている規定を削除するものです。
この改正により、演劇、演芸、歌謡、舞踏又は演奏の興行に係る活動を行うことを目的として我が国」に「興行」の在留資格で上陸しようとする外国人は、その興行を行うことにより得られる報酬の額が1日につき500万円以上である場合、国・地方公共団体が招へいする場合、レコードの録音等の芸能活動を行う場合などを除き、その従事しようとする活動について「外国の教育機関において当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと」又は「2年以上の外国における経験を有すること」が必要となりました。
この改正により多くの「タレント」希望者が「興行」の在留資格の基準を満たすことが出来なくなり、結果として、それまで比較的容易に認められた「興行」の在留資格で働く「タレント」は激減しました。
喧嘩で被害届が出たら強制送還されるのか?
2023年1月2日の夜,神奈川県内でベトナム国籍の男性ら2人が刃物で刺されるという事件が起きたことが報じられています。
飲食店でベトナム人ら2人刺され大けが 男が逃走 神奈川 相模原
2023年1月5日時点では,犯人はまだ逮捕されていないようですが,仮に外国人同士の喧嘩だった場合,加害者として検挙される人は暴行,傷害罪の罪に問われる可能性があります。
暴行罪:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金
事実関係はまだ明らかではないですが,もしも仮に,この事件について被害届が出されて,犯人が検挙され,その犯人が外国籍だった場合には強制送還されることがあるのでしょうか。
刑事事件で検挙された場合
刑事事件の犯人として検挙された場合であっても,直ちに強制送還されるというわけではありません。
刑事事件の手続の中で,強制送還される場合というのは次のような場合です。
- 一定の入管法によって処罰された場合
- 一定の旅券法に違反して懲役,禁錮刑に処せられた場合(資格外活動の場合,罰金だけでもアウト!)
- 麻薬取締法,覚醒剤取締法,大麻取締法などの薬物事件で有罪判決を受けた場合
- 一定の刑法犯で懲役,禁錮刑に処せられた場合(執行猶予がついてもアウト!)
- どの法律違反であっても,「1年を超える実刑判決」を受けた場合
報道にあるような暴行,傷害事件の場合には,4つ目,もしくは5つ目の場合に該当することがあります。
暴行,傷害罪は,刑法のうち第27章に規定されている罪であり,これは入管法で言う「一定の刑法犯」に該当します。そのため,暴行,傷害罪で起訴され,執行猶予付きの判決を受けた場合には強制送還の対象となる可能性があることになります。また,裁判の結果,1年を超える実刑判決となれば,強制送還となる可能性が相当高くなります。
具体的な事実関係は不明ですが,暴行,傷害事件について被害届が出されると,警察としては犯人を特定するための捜査活動を行うことになります。加害者と被害者との人間関係や,被害者の怪我の程度によっては逮捕されてしまう可能性がありますし,怪我が重ければ刑事裁判になる可能性があります。
強制送還となる具体的な場合
実際に暴行,傷害事件で強制送還となる具体的な場合について解説をします。
まず,「一定の刑法犯にあたるとして懲役,禁錮刑に処せられた場合」に該当する場合です。これを理由として強制送還されるのは,入管法の「別表1の在留資格」に該当する場合のことを言います。
「別表1」と言われてもよく分からないかもしれませんが,入管法に定められている在留資格には,大きく分けて二種類があり,別表1と,別表2があります。別表1は,日本での活動内容に応じて認められる在留資格を,別表2は外国人と日本との結びつきそのものに応じて認められる在留資格のことです。別表2には「永住者,永住者の配偶者等,日本人の配偶者等,定住者」をさします。
別表1は「別表2以外の在留資格の全部」をさすものと考えてよいでしょう。というのも,別表1には30種類以上の在留資格があります。その多くはいわゆる就労ビザと呼ばれるものですが,「留学生」や「短期滞在」も,この別表1の在留資格に含まれます。
そのため,「別表1の在留資格」(別表2以外の在留資格)で,暴行,傷害罪で執行猶予付きの判決を受けた場合には,強制送還となる可能性があります。
逆に,別表2の在留資格(永住や日本人の配偶者等)である場合や,罰金刑のみで終わった場合には,強制送還の対象とならないで済むことになります。
ただ注意しなければならないのは,罰金刑で終わったとしても,永住の在留資格でない限りは,次のビザの更新の時の不利益な事情となる場合があります。更新した時の在留期間が短くなったり,最悪の場合だと更新が認められないということがあります。
外国人の方の刑事事件は,罰金/執行猶予/実刑という,処分そのものだけでなく,在留資格への影響まで考えて弁護をしなければなりません。
日本で在留している間に刑事事件を起こしてしまったという方や,刑事事件に関わってしまった,強制送還されたくはない,という方は,是非ご相談ください。
刑事事件から在留資格までワンストップでご相談いただけます。
« Older Entries Newer Entries »
