罰金の上限が300万円を超える?不法就労助長罪で送検,これからどうなる

弁護士の足立です。

各種の報道などによると,ウーバーイーツを運営する日本の法人とその代表が,東京地方検察庁へ送致されたとの報道がありました。

ウーバーイーツ日本法人を書類送検 共同通信

ウーバージャパン幹部らを書類送検不法就労助長の疑い 朝日新聞

個人としての「人」ではなく,「法人」という会社全体も送致されているようですが,どういうことでしょうか。

また,送検された後はどのような流れになるのでしょうか。

以前解説した件についてはこちら

「会社そのもの」を送致する

刑事訴訟法には,次のように定められています。

刑事訴訟法246条本文

司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。

不法就労助長罪も,出入国管理及び難民認定法(入管法)違反という「犯罪」ですから,司法警察員(:一般的には,警察官のことと読み替えて頂いた構いません)は事件の書類や証拠を検察官に送らなければなりません。

これを「送致」と言います。一般的に「書類送検」と言われるのは,刑事訴訟法上の「送致」を指しているでしょう。

通常,世の中で起きる犯罪は,生身の「人」が起こすものがほとんどです。

ですが,入管法には,

生身の人間(行為者)が起こした犯罪だけでなく,その行為者が属していた「法人」(会社に限らず,法人格のある団体を含む)も処罰するとの規定があります。これを,両罰規定と言います。

不法就労助長罪については,雇い入れた人事の担当者だけでなく,外国人に不法就労をさせて収益をあげている会社も処罰するという趣旨から,両罰規定が定められています。会社に対して「懲役刑」を課すことはできませんが,罰金刑による制裁は可能です。

今回東京地方検察庁に送致されたウーバーイーツの経営母体についても,罰金刑を想定して送致されたものかと思われます。

送致された今後はどうなるのか

不法就労助長罪については,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が定められています。

法人に対しては,(代表役員や幹部ら個人とは別で)300万円以下の罰金が課される可能性があります。

では,法人に対する罰金額はいくらになるのでしょう。

この点について,東京高等裁判所が平成6年11月14日に言い渡した判決が参考になります。

この裁判例では,不法就労助長罪は,「事業所ごとに1罪」が成立するのではなく,「外国人1人当たり1罪」が成立すると判断をしました。

これがどういう意味かというと,「罰金額が300万円を超える可能性がある」ということです。

罰金刑がある犯罪が複数成立する場合,罰金刑の上限は「罰金刑の合計額以内」となります。そのため,不法就労助長罪が2罪成立すれば,罰金刑の上限額は理論上「600万円以下」となるのです。

今回検察庁に送致されたウーバーイーツの事件の場合,不法就労にあたっている外国人の方が何人になったか等の細かい報道はありませんが,これまでの報道からは,1人であるとは限りません。複数人の外国人の不法就労助長罪について送致されているとすれば,複数件について立件,起訴される可能性があります。となると,法人が有罪の判決を受けた場合には,罰金刑の上限が高額になる可能性があります。

もちろん,理論上の上限額ですから,実際に上限額目いっぱいの罰金刑が言い渡されるということは,あまり多くありません。

ですが,複数件が立件されて有罪となれば,それだけ刑事罰も大きくなる可能性があります。

未だ事件自体は検察庁に送致されただけの段階です。外国人の雇い入れる企業側としても,この事件に対して,今後どのような処分となるかは,注目に値するでしょう。

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