日本人と結婚していたのに,在留資格が取り消されたという裁判例について解説をしました。
この裁判例の前提として,日本人と結婚していた外国人の方が,離婚した場合にはどうなるのかについて解説したいと思います。離婚したらすぐに国外退去となってしまうのでしょうか。
なお,日本人と結婚していたけれども「日本人の配偶者等」の在留資格に変更していないという方は,全く問題がありません。離婚したとしても,在留資格に関わる活動を継続している限りは,在留資格が取り消されるということはありません。
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離婚したときの在留資格
在留資格とは,日本国内での活動に応じて付与されるものです。「日本人の配偶者等」という在留資格は,日本人の配偶者,日本人の子として日本で生活する場合に認められる在留資格です。
この「配偶者」とは,日本の法律に従って結婚している場合を指し事実婚や内縁関係の場合には「配偶者」には該当しないことになります。また,離婚届が受理されると,「日本人の配偶者」ではないことになります。
では,離婚するとすぐに在留資格が取り消されるのでしょうか。
実は,法律上はそうなっていないのです。
入管法上は,
『その配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合(ただし,当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く)』場合に限って,在留資格を取り消すことがある,としています。
これは,夫婦関係については喧嘩などの理由からしばらく別居したり距離を取ったりすることもあるため,6か月程度は別れるつもりなのかどうか時間をおいてみるべきであることや,日本人と離婚したとしても,その後別の在留資格を取得する可能性があることや,離婚後の手続きなどの関係上,直ちに日本から出国するのが難しい場合があることから,すぐに在留資格を取り消すのは外国人の立場を不安定にしてしまうため,一定の期間を設けていると理解できます。
そして,離婚した時から「配偶者としての活動をしなくなった」となります。
そのため,離婚してから6か月がたつと,「配偶者としての活動を6か月以上行っていない」として,在留資格が取り消される可能性が出て来るのです。
日本人の配偶者としての活動を継続して6か月以上行わず,他の在留資格へ変更しないで在留資格が取り消された場合には,「30日間」の出国準備期間が設けられ,その間に日本から出国しなければなりません。この時の出国は「強制送還(退去強制)」ではありませんので,再入国禁止の期間は特にないことになります。
離婚後に出国準備期間が付与され,一度日本から出国したとしても,すぐに他の在留資格で再度入国するということは可能です。
但し,この出国準備期間の内に日本から出国しなかった場合には,強制送還(退去強制)の対象となってしまいます。強制送還されてしまうと,原則として5年間,日本に入国することが出来なくなってしまいます。離婚後も日本への入国を考えているという方は,出国準備期間を過ぎてしまわないように十分に気を付けましょう。
※親権や養育費をめぐって離婚の調停や裁判が続いている間は?
離婚に関する調停や裁判が続いている間についても,在留期間を6か月として「日本人の配偶者等」の在留資格が認められる場合が多いです。
離婚の調停や裁判が続いている間であっても,その後,夫婦関係が回復する可能性もあるから在留資格がすぐに取り消されるものではありません。
※夫からのDVで逃げている場合
配偶者からの暴力から逃れて一時的に別居しているという場合には,在留資格が取り消されない可能性があります。
但し,DVが原因となり,離婚届けは出していないものの,事実上結婚生活が破壊されているという場合には,そもそも「日本人の配偶者」ではなくなったとして,在留期間の更新が認められない場合があります。そのような場合には,次の「定住者」へ在留資格を変更することを考えましょう。
離婚後の在留資格はどんなものがあるか
離婚したとしても,すぐに在留資格が取り消されて強制送還されるわけではないことが分かりました。
次に,離婚後も引き続き日本での滞在を希望する方の在留資格について解説します。
就労系の在留資格
離婚後,外国人の方のお仕事が就労系の在留資格に該当する仕事であれば,就労の在留資格へ変更することが可能です。例えば,通訳業をしていた方であれば「技術,人文知識・国際業務」,学校の先生であれば「教育」や「技術,人文知識,国際業務」等があり得ます。
もちろん,離婚した後でも転職活動をすることはできますし,離婚後に在留資格が認められるような仕事を探すのでも全く構いません。
技術,人文知識,国際業務の在留資格についてはこちらでも解説しています。
定住者の在留資格
「日本人の配偶者等」の在留資格を持っていた方のうち,一定の条件を満たす場合には,離婚後にも「定住者」へ在留資格することが出来ます。
定住者への変更が認められる場合としては,
1 日本で概ね3年以上正常な婚姻関係,家庭生活が継続していた方(離婚定住)
2 日本人との間に生まれた子どもを監護,養育している方(日本人実子扶養定住)
が該当します。
また,離婚はしていないものの,配偶者からのDVによって事実上婚姻関係が破綻しているという場合には「1」の離婚定住と同様に,定住者への在留資格の変更が認められる場合があります。
定住者の場合には就労の制限がないので違法なものでない限り,日本国内で様々な仕事をすることが出来ます。
離婚後に「日本人の配偶者等」から「定住者」へ変更するという場合には,離婚後も日本で生活を営むだけの資産や技能があることが条件とされています。
まとめ
今回は,離婚後の在留資格がどうなるのかという点について,解説しました。
離婚すると,すぐに在留資格を取り消されるというわけではありませんが,きちんと入国管理局への届け出をしなければなりません。
また,離婚から6か月が過ぎると,「日本人の配偶者等」の在留資格については取り消される可能性が出て来るので,その後も日本での在留を希望する場合には,別の在留資格への変更をしなければなりません。
「定住者」がどのような在留資格なのかについては,また改めて詳しく解説をしたいと思います。